ペルソナ3×仮面ライダーエグゼイド【ゲンムがほぼメイン】   作:K氏

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 あまり気づかれてないような気がするのでここでも書きますが、前回のは間違って投稿されたのを加筆修正した上で改めて投稿してます。念の為。

 今回は個人的にやりたかった話その1です。長くなりそうなので前後編になります。


S.E.E.S.、黎斗とゲンムについて考察する。【前】

「……でよぉ、ゆかりっち」

「何よ、藪から棒に」

 

 6月も下旬。梅雨の時期も間もなく明け、そしてもうすぐ夏がやってこようかというそんな頃合いの休日に、S.E.E.S.の2年生組は1階の広間で話合いをしていた。

 と言っても、そこには檀黎斗と、その秘書の少女ミネルバの姿は無い。この日、黎斗は幻夢コーポレーションの社長として、ある取引先との打ち合わせの為、朝早々に出かけていた。

 ちなみにミネルバは、先の戦闘……満月の夜に出現すると判明した大型シャドウ二体との戦闘で、現在休息中である。

 

 そして今いるのは、ゆかりや順平に加え、先日仲間になった2年E組のペルソナ使い、山岸風花である。

 貴重な探知能力、及びアナライズ能力を持つ彼女が加わった事で、それまでその役割を担っていた美鶴が戦線に復帰。同じく怪我が完治した事で復帰した明彦の事もあり、S.E.E.S.には十分な戦力が集まった事になる。

 

「思ったんだけどさ、俺達、黎斗がどんな人間か、そんなに把握してね?」

「ホント唐突に放り込んでくるよねアンタ……まぁ、確かにその通りなんだけど」

 

 その二人の言葉に、えっ、と疑問の声を上げたのは、他ならぬ風花である。

 

「あの、確か黎斗さんって、4月にはこの寮に来てたんですよね?」

「うん」

「で、S.E.E.S.にも4月には入ってたんですよね?」

「そーそー」

「……それなのに?」

「そうなんだよねぇ、悲しい事に。……いや、悲しくはない、かな」

 

 実際そうなのだから仕方がない、という風に、ゆかりは肩をすくめる。

 

 実際、黎斗との付き合いはかれこれ二ヵ月程になるが、()()()()()良い人間だとしか言いようがない。

 そう、表面的には。

 

「思えば、彼ってあまり、自分が何をしたいかとかって、そんなに言わないのよね」

「『最高のゲームを作りたい』ってのは聞いたけどよ。そういうんじゃなくてこう、なんかあるだろって」

 

 そう言われて、風花も納得する。

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 檀黎斗と山岸風花の初遭遇は、そんなに特別なものではない。

 風花が故あって学校に閉じ込められ、そしてタルタロスに迷い込む事になる、その数日前。

 ただ、友人――と、風花は思っている――にいじめられていた時に、偶然彼がいた。それだけだ。

 

「……すまないが、そういう事は私の目の届かないところでやってくれないか。正直、迷惑だ」

「あん? ……アンタ、D組の」

 

 穏やかに彼女の友人と、その取り巻きに言い放った彼は、一切彼女らに視線を向けず、ただ黙々とノートパソコンで何かを入力していた。

 風花自身、彼の事は聞いていた。あの有名ゲーム会社、幻夢コーポレーションの社長であり、ヒットタイトル『マイティアクションX』の産みの親。

 その時の風花にとって、密かな憧れの対象――勿論、恋愛的な意味ではない――であった。

 

「ふぅん。随分と偉そうにしてるじゃない」

「まぁ、君達よりかは遥かに偉いだろうね」

「……ッ、何よ、調子に乗っちゃって」

「私の事が気に食わないのなら、さっさと何処かへ行けばいいと思うんだが。それとも、君達は自分が馬鹿だという自覚があるのかな?」

「ッんの……!」

 

 パソコンから一切目を離す事無く、黎斗は淡々とそう煽る。友人達が軽くあしらわれる様子を見て、風花としては複雑な心境だった。

 

「……もういいよ。行こ」

「調子乗ってんじゃねぇよバーカ」

 

 ギャルめいて一番肌が浅黒い、風花の親友だった少女、森山夏紀に促され、取り巻き連中は捨て台詞と共にその場を去った。

 

「あ、あの!」

「気にする事じゃない」

 

 その時、風花は「え?」と疑問符を上げる事すらできなかった。

 さもどうでも良さげに、黎斗は言い放つ。

 

「私の(崇高な)作業の時間を妨害されたくなかったというのもあるが……君が放っておけなかった。ただそれだけの事だ」

 

 それが、如何なる意図を持った言葉だったのかは分からないが……少なくとも風花にとって、感謝しなければならない事なのは確かだった。

 

「そ、それでも、ありがとうございました……でも、大丈夫ですから。あの子……夏紀ちゃんとはその、友達だから」

「そうか。でも、友達はもう少し選んだ方がいいと思うよ、私は」

 

 その一言は、彼女にとっては鬼門であった。彼も善意で言っているのかもしれないが、しかしこれだけは譲れない。

 

「……お気遣い、ありがとうございました」

 

 しかし、彼女にはその言葉に反抗できる程の度胸も無く、またほんの少し、ほんの少しだけ、彼の言う事は的を得ていると思ってしまったが故に、ただそれだけを告げ、その場を去った。

 

 

 

 

******

 

 

 

 

「でもまぁ、案外色んなところで見かけるって話、聞くぜ」

「そうなの? 仕事してる最中とか?」

「それもあんだけど、意外と色んな奴と絡んでるらしい。ほら、同じクラスの友近とか」

「あー……それでも意外っちゃ意外なんだけど」

 

 檀黎斗という人間は、一見すると人当りは良さそうだが、かと言って社長という肩書も含め、クラスメイトと楽しく談笑するといったようなイメージが全く浮かばない。

 寧ろ、会議室で偉い人と会話をしているシーンしか浮かばない。

 

「それに、運動部にも顔出してるらしいぜ」

「えっ」

 

 こちらに至っては、完全にイメージの外だ。なんでも、先生に無理矢理部活に入るよう言われ、仕方なく水泳部に入ったそうだ。

 これがまた意外と筋がいいらしく、将来有望視されているとかいないとか。

 

「……なんでだろう。想像できないけど、様にはなりそうなのがまた……」

「なんでもできそうって感じは、あるよね」

 

 『プールでクロールを泳ぐ檀黎斗』というイメージを勝手に思い浮かべ、納得する2年組。

 

「あとは生徒会の手伝いしたりとか、文化部にも顔出してるとか何とか……」

「え、何? 本業もあるのにわざわざ掛け持ちしてるって事?」

 

 ここで言う本業とは、言わずもがな、幻夢コーポレーションの社長の事である。

 

「……この話題、やめとこ。前に俺、アイツに嫉妬しかけた事あったけど、そもそも俺らとは比較にならないレベルでハイスペックだったわ……」

「アレに張り合えるの、桐条先輩ぐらいじゃない……?」

「そうだね。……でも、実績で言えば檀君も凄いし……」

「おいおい、そこで何故、対抗馬に俺がいない」

 

 急に新しい声が聞こえたと思い、順平が振り返れば、そこには彼らの先輩、真田明彦が立っていた。汗まみれで。

 トレーニングをしてきた帰りなのか、来ているタンクトップは汗で湿っており、首からかけているタオルで額の汗を拭ってはいるが、あまり意味は無さそうだ。

 

「……まぁ、直接バトルってなると、真田先輩に軍配が上がりそう……かな」

「思えば、アイツとは一度も拳を交えた事が無かったな。むぅ、一度でいいからやり合ってみたいものだ……」

 

 「絶対断るだろうな」と、順平が呟く。

 

「そ、そうだ! そういえば私、まだミネルバ、さんにお礼言えてないんだけど、どんな人なのかなぁって」

 

 何やらこの先の会話に不安を感じた風花は、思い切って話題転換を試みる。

 

「あー、ミネちゃんね。つっても、俺らも正直、キャラ掴み損ねてるっつぅか」

「分かる。何というかこう……不思議ちゃん? と言えなくもないし……」

「だが、強者というのは分かる。……そうだな、ミネルバともいずれは……」

「あー、はいはい。それはミネルバ本人に直接言ってくださいねっと」

 

 試みは上手くいったらしく、皆、ミネルバの話をしだし、風花も胸を撫でおろす。

 

「そういえば、聞いた話だとミネルバさんは、その、人間じゃないというか……」

「あー、なんていやぁいいのかなぁ……限り無く人間に近いロボット娘って話だけど、俺もよく分かんねぇんだよな」

「こればっかりは、順平の頭が悪いってだけじゃないのがね」

「サラッと貶すのやめて頂けませんかね……」

 

 

 

 

******

 

 

 

 

――時は遡ること、6月9日の影時間。

 

 この日、S.E.E.S.の面々は、虐めによって体育倉庫に閉じ込められ、そのままタルタロスに迷い込んでしまい、加えてペルソナ能力の適性者と思われる少女、山岸風花の救出の為、数名が同じ方法でタルタロスに侵入した。

 山岸風花救出チームには、明彦を臨時リーダーとして、順平、そしてミネルバの三名。残りの三名は、タルタロス1階のエントランスにて待機していた。

 この場所はタルタロスの中でも比較的安全な場所の為、アナライズ担当の美鶴は此処から探索組の支援を行っているのだ。

 しかし、今回はエントランスからタルタロスを登るのではなく、変異前の月光館学園から直接侵入した事で、彼らが何処にいるのかまるで見当がつかず、更に通信も行えない為、支援が一切できないでいた。

 焦燥感と、あとゆかりが美鶴と黎斗に対して気まずさを覚えて、微妙な空気が漂う。

 

――そこに突然、大型シャドウが出現した。しかも、これまでに前例のない二体同時の出現。

 

「う……ぐ……」

「つ、よい……」

 

 アナライズの結果、腹部が太った女王のような姿のシャドウは『女帝』、逆に盛り上がった上半身と細い手足を持つシャドウは『皇帝』のアルカナのシャドウだという事が分かったのだが、その力は今までの大型シャドウとは比べ物にならない。

 

 何せ、攻撃がことごとく防がれるのだ。

 

「が、は」

 

 剣で応戦しようとした黎斗も、斬りかかった相手の『皇帝』にはまるで通用せず、結果、地面を這う事となった。

 

(なんだ、コイツは。光ったと思ったら、こちらの攻撃が効かなくなるなど……)

 

 そこで、黎斗は思う。そういえば先程、戦闘向けのペルソナを持つゆかりと美鶴、二人の攻撃の際、最初は通用していなかったかと。

 最初、ゆかりの『イオ』の風の魔法は『皇帝』を。そして美鶴のペルソナ――如何にも女帝らしい姿をした『ペンテシレイア』が、手にした剣による斬撃で『女帝』を転倒させた。

 光ったのはその直後。その瞬間から、先程は通用した彼女らの攻撃が、まるで通用しなくなったのだ。

 

(まさか、こいつらは耐性を自在に変えられるのか!?)

 

 ペルソナ、及びシャドウには、それぞれが持つスキルや魔法以外にも、耐性というものが存在する。例えば、ゆかりのイオは風属性に対して耐性があり、風の攻撃を受けても軽減する事ができる。

 更に、シャドウの中には攻撃を完全に無効化する事が出来るものもおり、オマケに反射・吸収するものまでいるのが確認されている。

 

(だが、これまでに確認されたシャドウの中には、耐性を変化させるものまではいなかった……厄介な)

 

 そして、そういった耐性や相性に関しては、仮面ライダーも例外ではない。ガシャコンマグナムによる銃撃が通用しない事もあれば、格闘攻撃が効かない事もある。

 

 しかし、大抵の場合は別の攻撃が通る。しかも、耐性以外にも弱点があったりするので、そこを上手くつけば、総攻撃を仕掛ける事すら可能なのだ。

 

(クソッ、弱点はなんだ!? ……いや、慌てて探したところで、また弱点を変えられては……やはり手探りでは限界があるか)

 

 こういう時に、弱点をサーチできる支援者がいればと思うのだが、今の時点ではいない。

 

「美鶴ッ!」

 

 ペルソナ召喚時の特有の割れる音と共に、『皇帝』と似て上半身がマッシヴな長髪のペルソナ――『ポリデュークス』が、その尖った右腕で『皇帝』を殴る。

 

「援護射撃!」

「行けェ! ヘルメス!」

 

 それに続くように、プロトスナイプ レベル2に既に変身していたミネルバがガシャコンマグナムで『皇帝』を射撃し、順平もヘルメスの持つ炎の魔法で『女帝』を燃やす。

 

 だが、二人の攻撃は無効化され、掻き消える。

 

「駄目だ! どういう理屈かは分からんが、こいつらは耐性を変えられるらしい!」

「えぇッ!? そんなのどうやって倒せっつぅんですかァーーッ!?」

「嘆いてる暇はないぞ順平!」

 

 そこからまた、壮絶な戦いが繰り広げられたのだが、その最中に、突然エントランスに一人の少女がやってきた事で事態は急変する。

 

「……あの女は」

 

 戦闘に巻き込まれないように柱にもたれかかり、傷薬で応急手当をしていた黎斗の死線の先には、山岸風花の親友、森山夏紀が。

 

(……そういえば、影時間に適性のない人間も、シャドウの『呼び声』で一時的に影時間に入れるんだったな)

 

 ここ最近、港区を中心に起きている無気力症患者……S.E.E.S.の間では『影人間』と呼ばれる者達の増加も、この『呼び声』があるからこそである。

 こうして影時間に入ってしまった人間は夢心地に誘われ、そして最後はその精神を喰われてしまう。

 

 風花の事情を話し、訳あって巌戸台分寮で保護していたはずの森山夏紀もまた、そうしてこのタルタロスにおびき出されたのだ。

 

「わ、私……風花に謝らなきゃ……」

 

 恐らく、呼び出された理由も、彼女の言葉通りなのだろう。彼女の心の影に、シャドウは付け込んだのだ。

 だが、その辺りは黎斗には関係ない。

 

 その後、夏紀を守る為に、お守り代わりとして渡されていた召喚器を使い、風花がペルソナ能力者として覚醒。

 彼女をスカートに包むように現れた目隠しをされた乙女のペルソナ、『ルキア』は、しかし戦闘向けではないらしく、風花の視界を確保するスカートのガラスのような部分で、なんとか攻撃を防いでいた。

 

 その本領が発揮されたのは、それから程なくしての事だった。

 

「クッ、これ以上はまずい――!」

 

 流石に二体の大型シャドウの攻撃を一方的に受けさせるのはまずいと判断したプロトスナイプが、彼女を庇う様に吶喊。

 バンバンクリティカルフィニッシュで『女帝』を運良く転倒させたが、今度は『皇帝』の一撃を貰い、彼女はエントランスからそのまま大きな門を弾き、外へと吹っ飛ばされてしまった。

 

 しかし、時間稼ぎは十分だったようだ。

 

「私……分かります。あいつらの、弱点」

 

 ルキアの本来の能力、それこそがアナライズ。敵の弱点を的確に当てた彼女の言葉に従い、残りのペルソナ使い達が攻撃を仕掛ける。

 幸いにも、基本となる攻撃……つまり『斬』『打』『貫』『火』『氷』『風』『雷』、以上の攻撃手段を全員で補える為、それをもって弱点を突き、次々と転倒させ、総攻撃を加える。

 

 だが、2体の大型シャドウも負けじと攻撃を返し、斬って斬られての消耗戦が続く。

 

 

 

 

――その最中。

 

 

 

 

『MIGHTY ACTION X!』

 

 もはや聞き馴染みすら感じさせる音声が、エントランスに響き渡る。それと共に、灰色のホログラムめいたエリアがエントランスの壁に沿って展開され、チョコレートのブロックのようなものがエントランスを飛び交う。

 

「――ッ、まずい! 奴だ!」

 

 それにいち早く反応したのは、他ならぬガシャットの製作者である黎斗だった。

 

 その声に、S.E.E.S.の面々と風花が反応し、『女帝』と『皇帝』も、先程の奇妙な音声と共に発生した空間の変質に気付く。

 

 黎斗が指差す方向を、シャドウ含め全員が見る。

 

 先程、プロトスナイプが吹っ飛ばされ、大きく開かれたエントランスの出入り口の門に、黒い人影。

 

――これまで、大型シャドウが出現していたのは、満月の夜であったと、明彦は推理した。

 

――ならば気づくべきだったのだ。

 

『マイティジャンプ! マイティキック! マイティアクショーン、X!』

 

――大型シャドウが現れるところ、常に黒いライダー、ゲンムが現れるという事を。




(社長特有の狂喜スマイル)

 ちなみに社長の部活は、檀黎斗役の岩永氏が子供の頃やっていた習い事から。選択肢にバスケ部があるのはP4だからね、仕方ないね。

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