ペルソナ3×仮面ライダーエグゼイド【ゲンムがほぼメイン】   作:K氏

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 何故か投稿ボタン押してない(つもり)のに投稿した事になってる……疲れて操作ミスでもしたんだろうか。

 それはともかく、一時的にとはいえランキング28位に入れるとは思ってなかったので、改めてありがとうございます。


社長、囚人服の少年と話す。

――檀黎斗は、時々奇妙な夢を見る。

 

 どこか高い場所、その屋上。天辺には不気味に輝く満月――そう、丁度4月と5月の大型シャドウが現れた辺りと同じような月が昇り、まるでこちらを矮小な存在を見るかのように見下ろしているような、気がする。

 

『待っていたぞ……■■■■……』

 

 そこで彼は何かを待ち構えていた。普段通りの、堂々という言葉を通り越して傲慢さを惜しげも無く晒しながら。

 

 そして、彼の前には、吸い込まれそうな程の漆黒。よく目を凝らすと、何かが黒い翼を広げているというのが分かるが、それ以上ははっきりしない。

 

 明らかに尋常ならざる存在を前にして、しかし彼は傲慢にも言い放つ。

 

『人類の運命はお前が決めると言ったな? そして、私は必ず死ぬ、とも……違う、違うなァ……私は、死なない。なぜならば、そうッ!』

 

 夢の中の檀黎斗は、大仰に体を逸らせ、纏った白いジャケットを広げる。

 

『私も、否、私こそがァ……神だからだァァ!!! ヴェハハハハァ!!!』

 

 それは、ある時期からまるで吹っ切れたかのようになった檀黎斗そのもの。自身の神の才能を信じて疑わず、己の意に逆らう者を嫌悪し、排除せんとする。

 

『そして今宵ィ! 貴様の、そして私自身の運命は、この私の手によってェ! 変えられるゥ! 遂に完成した、このガシャットでなァ!』

 

 そう言うなり、懐から一本のガシャットを抜く夢の中の自分。しかし、今の檀黎斗は、そのガシャットには全く見覚えが無かった。ラベルもタイトルも、まるでバグが起きているかのように見えない。

 

 そして、そのガシャットの起動スイッチを押した。

 

 

 

 

 何も、起きない。

 

『……ッ!? 何故だ、何故起動しない!?』

 

 不測の事態に、慌てふためく夢の中の自分。彼は、この手の予測不能の事態には滅法弱かった。

 

『チィ! ならば!』

 

 黒い影がこちらに接近しているのを見た彼は、そのガシャットを仕舞うと、代わりに別のガシャットを取り出す。

 元の世界で製作したガシャットギアデュアルに酷似したそのガシャットのダイヤルを回し、起動スイッチを押す。

 

『ESCAPE FROM DEATH!』

『グレード50……変身ッ』

 

 

 

 

「……なんだったんだ、今のは」

 

 夢は、そこで終わり。

 

 まるで、悪夢だ。見ているだけで、寝苦しくなってしまう。

 

 黎斗は汗ばんだ肌を撫でると、すぐに部屋に備え付けられた洗面台に向かい、顔を洗う。

 

 見た事の無い景色。見た事の無いガシャット。

 

 また私に許可無くゥ……となりかけたが、あれを見た限りだと、作ったのはどうやら()()()()らしい。

 

「……ますます訳が分からん」

「何がだい?」

 

 突然掛けられた声に、黎斗は勢いよく振り向く。

 

 先程、自分が横たわっていたベッドの上には、何時ぞやに見たあの囚人服の少年が座っていた。

 

「……どこから入ってきた」

「そんなのどうでもいいじゃないか。それより、僕は君とお話しがしたいんだ」

 

 黎斗の問いの答えをはぐらかすように、少年はニコニコと黎斗に微笑みかける。

 

「……生憎、私は疲れている。()()()()()()()()()()()()()()、私は寝させてもらう」

「つれないなぁ……大丈夫さ。ほんの少しだから、ね?」

 

 すげなくあしらう黎斗に、それでも食いつく少年。左目近くに泣き黒子があるからか、どこか愛嬌を感じさせるその顔は、しかし黎斗にはどことなく現実味のないようなものに見えて。

 

「……分かった。5分、いや、3分で済むのならいいだろう」

「うんうん、そうこなくっちゃ」

 

 何故そう答えてしまったのか、自分自身でも分からない。しかしまぁ、ほんの数分程度であれば付き合っても構わないだろう。

 そう思い、黎斗は少年と話をする事を決断した。

 

「といっても、本当に些細な事さ。君、大活躍だね?」

「当然……待て。何処で、いや、何処まで私の事を見ていた?」

「そりゃ、もう。()()()()()()、ね」

 

……何かおかしい。

 

 黎斗がそう思うのも無理はない。この少年は、今確かに、「自分の行動を全て見ている」と言った。

 だというのに、何故自分は、この少年に敵意を抱けないのか。

 

「でも、不思議だよねぇ」

「……何がだ」

「君の扱う、『異形の仮面』の力。確かにあれは強い。そこら辺のシャドウなら、苦も無く倒せるだろうね」

「そうだとも。私の才能の賜物だ。寧ろ褒めちぎってくれてもいい」

「うんうん、凄いね。……でも、だからこそ不思議なんだ」

 

 何が、と黎斗は問う。

 そして少年は、意外にも素直に答えた。

 

 

 

 

「だってあの力――『()()()()()()()()()()()』には見えないんだもの」

 

 

 

 

「――フッ」

 

 その答えに、黎斗は鼻で笑ってのけた。

 

「戦えて当然だ。何故な――」

「何故なら?」

「――私には神の才能があるのだからなァ……」

「へぇ。そっか。凄いんだね、君自身も」

 

 その時は自信満々にそう返した黎斗だったが、反面、彼もまた、その事への疑問が生まれていた。

 

――檀黎斗は、この世界でシャドウを倒す為に『仮面ライダー』を生み出した。しかしあれは本来、元の世界における人類の脅威、『バグスター』を倒す為の物で、シャドウとはまるで異なる存在だ。ユング心理学的に言えば、似通った部分――例えば、かの天才ゲーマーと、彼と存在を同じくするバグスターの事――はあるが。

 

(……私は、ごく自然な流れで『シャドウに対抗できる仮面ライダー』を生み出した。だが、今思えば何故そんな事が私にできる? シャドウはともかく、ペルソナの事すら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 確かに、この月光館学園に転入する以前にも、シャドウという名前は知らずとも、何かが存在しているというのは知っていたし、実際に接触した。しかし、その知識自体は中途半端なものだった。

 かつて、10年前に回収したあの物質から情報を得ようとした事があった。恐らくそれには、シャドウに纏わる重要な情報が記録されていたと思われるが、調べてみるとその幾らか欠落していたのだ。

 その為、仕方なく手探りで残りの知識を得る目的も兼ねて、影時間における仮面ライダーのテストプレイを行ってきた。

 

 だが、そこで疑問が生じる。

 

 ここに来るまでの檀黎斗には、影時間への適正はあったが、知識に関してはまるでなかった。

 影時間が特定の人間だけに訪れるものだという事は感覚的に把握できたが、何故それの適正が自分にあるのかは、此処に来るまで終ぞわからなかった。

 

 調べていく中で、あの物質――ミネルバが『パピヨンハート』と呼んでいた物は、機械が動かなくなる影時間において、唯一機械を動かす事ができる物質だという事で、彼はそれを削り、ゲーマドライバーやガシャットに組み込んだ。そこまではいい。

 

 しかしながら、彼女のパピヨンハートにも限りがあるし、何より()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、それすらわからない。それ程までに、シャドウという存在には謎が多かった。

 

 だが、黎斗は確固たる自信をもって、ガシャットのプログラムを組み上げ、仮面ライダーを生み出した。ペルソナという、それまでは唯一シャドウに対抗できる力の存在を知らないままに。

 結果的にシャドウに対抗できたそれを、自身の神の才能が成し得た事だと断じる事もできた。……だが、はたしてそれで済ませて良いのだろうか? 彼の()の事も含めて。

 

(……妙だ。スムーズに事が進み過ぎている。まるで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 そこまで考えて、黎斗は首を振る。

 

(……馬鹿馬鹿しい。理由付けなどどうにでもできる。「私の神の才能があったからこそ解決した」、「私にかかれば10年もあれば余裕」。そうだ。複雑に考える必要などない)

「――ねぇ、ねぇってば」

 

 そこまで思考したところで、黎斗は無理矢理、思考の海から引きずり出される。

 

「ん、あぁ。すまないな。少し考え事をしていた。……おっと、もう3分は過ぎたな。さぁ、子供はさっさと帰れ。そして寝ろ」

「えー」

「……次来た時に、私の製作したゲームで遊ばせてやる。ありがたく思え」

「ホント? 僕、ゲームやった事ないんだよねー」

 

 楽しみだなー、とウキウキした様子で、少年はベッドからぴょいっと飛び降りる。

 黎斗自身、酷く甘いなと思ったが、子供が相手なのだから別に構わないかと思い直す。自身のゲームを楽しみにしてくれる子供に、冷たくする道理などないのだ。

 

「じゃあね、また会いに来るよ。約束、忘れないでよ」

「分かった分かった、早く帰れ。……いや、少し待て」

 

 今度はなんだい? と、自分勝手にも程がある黎斗に不満を漏らすでも、ましてや悪するでもなく、ニコニコと彼に振り向く少年。

 少しばかり意外な反応だった為、驚く黎斗だったが、すぐに持ち直し、最後の問いかけをする。

 

「……名前」

「名前?」

「君の名前だ。何という」

 

 その問いに、うーん、と少し考える素振りを見せ、少年は顔を上げる。

 

「――ファルロス。僕の名前は、ファルロスだ。じゃあね!」

 

 ファルロスと名乗ったその少年は、以前と同様、闇に溶けるように消えてしまった。

 


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