続、やはり俺の魔王攻略は間違っている。   作:harusame

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第2話 俺と魔王と雪ノ下の驚愕

 

エンドレスに繰り返すことが望まれるような夏休みの8月後半と違い、元から短いと分かりきっている春休みは割りとあっさり過ぎるものである。例年、俺はぼっちの時間を有効に活用し、怠惰かつ快適に過ごすことにしていた。

 

が、それは去年までの話である。

 

 

「なあ、小町?デートって何日まで連続するものなんだ?」

 

俺の何気ない一言に小町は目を真ん丸にしていた。

 

「…うわぁ。お兄ちゃんからお兄ちゃんらしからぬ単語が出てきてびっくりだけど、質問がやっぱりお兄ちゃんだよ。小町的にはポイントが大暴落だよ…」

 

「…そんなに変な質問か?」

 

「うーん。まあ。お兄ちゃんの言わんとすることは分かるけど、小町にそれ聞いちゃうんだ…」

 

ハイブリットぼっちである我が妹は、ぼっちマスターである俺の言わんとすることを理解はできる。が、受け入れることはできないらしい。

 

 

夜11時の我が家のリビング。

寝る前の甘いコーヒーを飲みながら小町と談笑をしていた際の会話であった。

 

 

 

陽乃さんと今日まで三日連続で会った。

つまり三連続でデートをしたことになる。

 

初日からあんなことになるなんて誰が想像が出来ただろうか。二日目も三日目も本当にやばかった。何回意識が飛びそうになっただろうか。

 

魔王様は半端ない。

まじで、半端ない。

だって、少しでも人通りが減ったら…。

 

 

「お兄ちゃん。なんか、毎日たいへんそうにして帰ってきてるけど」

 

「ああ、やばいんだよ…」

 

「ふーん。でもお兄ちゃん。楽しそうだよね」

 

「…否定はしないが。でも、いろいろやらかしてしまってる」

 

当然、カッコよくデートをエスコートできるはずもなく、今日なんか緊張のせいか食事した店に上着を忘れる始末だった。しかも帰ってから気が付くし。陽乃さんが帰りに取りに行ってくれたらしい。本当にダメダメとしか言いようがない。

 

 

しかし、今後どうするかだ。

過去は忘れよう。気にすると恥ずかしくて生きていけないから。

 

 

とりあえずだ。

その、あんまりガツガツしていいものなのか…。正直、会いたいか会いたくないかと言えば前者になる。

 

 

まあ、一緒にいると目立って仕方ないし、こっそり後ろを歩くことは許してもらえない。

 

しかし、陽乃さんと話すのは素直に楽しかった。

 

どんな話題にも乗ってくるし、その豊富な知識もさながら話の切り返しがとても上手い。話していると俺まで話上手になったような気さえする。

 

いつか一色が絶賛してたが、そのカリスマはまるで王様なのかもしれない。

 

 

だからこそ、躊躇してしまう。

 

 

「さすがにそれは小町には答えられないよ。自分で考えてね」

 

「なんだよ薄情だな…」

 

「お兄ちゃん、おやすみ~」

 

そう言って手をひらひらさせながらリビングを後にする小町。一気に静寂が訪れた中、改めて考える。

 

 

…どうしたものか。

 

 

マイシスターに頼れないと既に手詰まり感がある。しかし、こういうのを詳しそうなやつとなると、あざとい後輩が頭をよぎるが…。

 

 

 

ーしかし、今日の出来事を思い出す。

 

 

 

「八幡、スマホ光ってるよ?」

 

「メールみたいですね…。なんだ一色か…」

 

「生徒会長ちゃん?」

 

「ええ。なんか『美味しいスイーツ食べている私』見たいな写メ付きですね。」

 

「ふーん。生徒会長ちゃんはこんなメール送るんだ~」

 

「ええ、暇なんでしょうね…」

 

「ふーん。生徒会長ちゃんはこんなメール送るんだ」

 

「今流行りのインスタなんたらですよ」

 

「ふーん。生徒会長ちゃんはこんなメール送るんだ…」

 

 

そう言った陽乃さんの目は俺のスマホから微動だにしていなかった。

 

 

 

 

………よし、仕方ないが材木座に聞いてみるか。

 

 

さすがに電話するのは気が引けるので一応メールにしてみる。

 

 

 

 

ー相談があるー

 

 

ー我だ、何なりと申すがいい八幡よ!-

 

 

はえーよ!

相変わらず返信が高速だな!

まあ。今回は助かるが。

 

 

 

ーデートってどのくらい連続でしていいものなんだ?-

 

 

 

…。

 

……。

 

………あれ?

 

 

 

ーどういった経緯で私に相談に至ったかは判断つきかねますが、そういう相談は部長殿かお団子の人か、生徒会長様にして下さい。本当にお願いします。というかご勘弁下さいー

 

 

ーというか貴殿が爆発馳せることを切に願うばかりですー

 

 

 

 

 

俺は言葉を発することなくスマホから手を離した。

 

 

 

しかし、まあ今日はもう陽乃さんからメールもないし、明日はいいってことなのだろうか?

 

俺と違ってプライベートもいろいろ忙しいだろうし。いろいろ無理させても悪いだろう…。

 

後ろ髪を引かれながらも、こんなもんだろうと自分を納得させるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

「姉さん?その服は?」

 

 

「これは、八幡のだよ」

 

 

「比企谷くんの?忘れ物かしら?とりあえず後日返すのでしょう?丁度洗濯するところだから一緒に洗ってしまいましょうか?」

 

「だめ」

 

「え?」

 

「洗っちゃだめ」

 

「意味が分からないわ。預かりものなんだから綺麗にして返さないと?もしかして普通に洗ったら駄目な素材なのかしら?一般的なパーカーに見えるのだけれど?」

 

「え。うん。あのね」

 

「どうしたの?」

 

「………から」

 

「?」

 

「……なくなっちゃうから」

 

「なくなる?何がよ?」

 

「…洗ったら八幡の匂いが無くなっちゃう」

 

「…………はぁ?」

 

「今日は…これ抱いて寝るから」

 

 

「……」

 

「おやすみ雪乃ちゃん」

 

「ええ…おやすみ……」

 

 

「……」

 

「……あれが…姉さんなの?」

 

 

 

 

「……もしもし?夜分にごめんなさい由比ヶ浜さん。ちょっと聞いて欲しいことがあって…」

 

 

 

 

 

 

 


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