夕暮れに燃える赤い色   作:風神莉亜

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あれ……今日木曜……


八話:堕天使キューピッド

「ところで」

「うん?」

 

 膝の上に巴の頭を乗せ、またアキラの膝枕でくつろぎながら。テレビに映るバラエティ番組を見ていた二人の片方が、そういえばと疑問を口にする。

 

 時刻は夜の七時過ぎ。

 少し前までは、晴れて恋人になったことから微妙にギクシャクしてしまったものの、そこは長い付き合いの二人。気が付けばお互いに元通りの状態に戻っていた。多少雰囲気に甘いものがあることを除けば、の話ではあるが。

 

「何かあったか?」

「いや、今日いきなりここに来た理由を聞いてなかったな、と」

「……言わなきゃダメか?」

 

 テレビから頭上のアキラへと視線を移し、躊躇いがちに尋ねる巴。それに対し、アキラはテレビへと視線を向けたまま、

 

「俺と今井が二人きりで不安になったとか」

「……わかってるなら聞くなよ」

「え、マジか。冗談のつもりだったんだけど」

「…………」

「痛ぇ痛ぇ。脇腹をつねるな」

 

 唇を尖らせながら、わりと遠慮なく脇腹をつねられる。その手をぺしぺし叩きながら、先程自分で言った言葉を頭の中で繰り返すアキラ。

 それは、有り体に言えば嫉妬と言うのでは? そんな意味合いを込めて巴へと視線を向ければ、彼女はぷいとそっぽを向いてしまう。

 まるで小さな子供のような拗ね方に、アキラは小さく笑いながらその頭を撫でた。

 

「そう拗ねんなよ。俺は嬉しいぜ?」

「……アタシだって、自分でも意外だったよ。いつもアタシがいた場所で、リサ先輩が楽しそうにしてるのを想像したら、どうにもならなかった」

 

 今日の練習だって、あんまりにもアタシがひどいから早めに切り上げる羽目になってさ、と。苦笑して言う巴は、テレビ側に向けていた身体を反転させて、つまりはアキラのお腹へとその顔を埋める。

 どうにも今日は甘えたがりだな、なんて思いながら、ぽんぽんとその背中をあやすように叩くアキラ。

 

「で、どうなんだ」

「……どうなんだって、何が」

 

 その体勢のまま、くぐもった声で聞いてくる巴に、アキラは思わず首を傾げる。

 少し顔を傾けた巴は、じとっとした眼でアキラを片目で見据えてくる。訝しげに眉を潜めたアキラは、何がどうというのかと本気で考え込もうとして、

 

「リサ先輩とは何かあったんじゃないのか」

「あるわけねぇだろ」

 

 次いで放たれた疑惑を切り捨てるように即答して、大きく、それは大きく溜め息をついた。

 

「仲良いじゃないか」

「仲悪い奴とパートナー組むわけねぇだろ」

「だから不安なんだ」

「気持ちはわからんでもないが……」

 

 先程互いに気持ちを伝えあったというのに、何故早くも疑惑をかけられなくてはいけないのか、と嘆息するアキラ。

 アキラからしてみれば、今井リサという存在は『なついてくれているかわいい後輩』というものだ。そこに、共通の趣味であるダンスでの関係もあり、波長が合う気安い間柄としてアキラはリサと友人関係を築いている。

 が、それをそのまま伝えても、巴は納得しないだろうと考え、

 

「あれだな。今井はあこと同じようなもんだ」

「あこと?」

「あぁ。かわいい妹と、かわいい後輩とで多少違うけども。あいつらに向けてんのは親愛であり友情。お前に抱いてるのは恋心であり愛情だ。区別するなら、そんなとこ」

 

 ふむ、と。我ながら上手い例えを出せたんじゃないのか、とうっすらどや顔を覗かせるアキラ。

 事実、リサとはダンス仲間でありパートナーとして活動するが、巴の妹であるあこもまた、中等部ではダンス部に所属しているのだ。

 流石にパートナーを組むことこそ無いにしろ、発表会やら何やらで顔を合わせることもある。案外、リサとあこはアキラと関わる部分が似通っているわけだ。

 

「納得したか?」

「え!? あ、あぁ。うん、大丈夫」

「驚くとこあったか……?」

 

 返事が無かったので声をかけると、びくりとして慌てた様子で返事をする巴。そんな巴に瞬きを数度繰り返したアキラだったが、まぁいいかと再度テレビへと視線を向けた。

 巴にしてみれば、遠回しとはいえ改めてストレートに好意を伝えられた訳で。

 この無自覚たらしめ、とぼふぼふ腹に頭突きをするという精一杯の抵抗をする巴であった。

 

 

 

 

 翌日。

 昼休みにて、昼食を求めて校舎から出ていったアキラは、近場に存在するとあるパン屋へと足を向けていた。

 周辺にはあの羽沢珈琲店や、懇意にしている精肉店等、なにかと足を運ぶことの多い商店街である。

 

「いらっしゃい。お昼休み?」

「どうも」

 

 そのパン屋――やまぶきベーカリーでは、夫婦である二人が交代しながら店番をしている。今カウンターに立っているのは奥さんの方で、アキラはパンを物色しながら、

 

「身体の方は大丈夫なんですか?」

「あら優しい。大丈夫よ、無理なら出させて貰えないし」

「あんまり信用出来ないですけど」

「ひどいわぁ。その言葉で倒れちゃいそ」

「別にいいですけど、また担いで病院まで運びますよ」

「そ、それは勘弁して欲しいかなぁ」

 

 放たれた冗談に、こちらも冗談ながら、けれど大真面目な顔で返された女性――山吹(やまぶき)千紘(ちひろ)は、苦笑しながらパタパタと顔を手で扇いでいた。

 そこに、新たな人物が現れる。

 

「お母さーん」

「あら、沙綾まで」

「までって、誰が……ありゃ、アキラさん。そっちもお昼?」

「沙綾。そういうお前は心配が先走ったと見た」

「せーかい。随分良くなったとはいえ、まだまだ不安でさー」

「わからんでもないな」

「もう。完全に一人って訳じゃないんだから、そんなに心配しなくても」

「っていうか! 立って接客はしなくていいってお父さんにも言われてるんでしょ? お母さんは座ってて」

「さっきまで座って……」

「アキラさん?」

「バッチリ立ってたけどな」

「お母さん!」

「アキラ君の裏切り者……」

 

 言いながら、すごすごとレジの裏にある椅子へと腰かける千紘。どっちが親だかわからない会話が終わると、そこそこパンを収穫していたアキラへと近付いていく。

 パンと言えば青葉のパンはすごい数だったな、と思い返しつつ、チョココロネの前に立ち思案しているアキラに、

 

「そういえば、巴とはその後、どうなの?」

 

 ここ数日の中でも一番のインパクトを持つ話題に、ピンポイントで質問をぶつけられたアキラは一瞬、身体が固まった。それでも表情は変えなかったのだから、当たり障りのない返事でも返せば追求はされまい、と口を開こうとして、すぐ横にいた沙綾のニンマリとした笑顔が目に入る。

 

「おやぁ、らしからぬ反応」

「……黙秘権を行使する」

「ちょっとちょっとぉ~まさか、まさかぁ?」

 

 チョココロネをひとつ確保したアキラは、これ以上情報を与える気はないと言わんばかりに早足でカウンターへと向かう。

 とっとと会計を終えて逃げてしまおう。そんなアキラの試みは、

 

「ごめんなさい、レジの調子が悪くて~。楽しいお話聞かせてくれたらすぐ直るんだけどなぁ」

 

 現れた二人目の敵により、早くも頓挫することとなった。

 病弱で儚げだった千紘が元気にこうしたやり取りをしていること自体は喜ばしい。が、その矛先が自分に向いているとなればまた話は変わってくる。

 一瞬、パンを放棄して逃げの一手を打とうかとも考えたアキラだったが、そうすると間違いなく晩まで持たない。二次成長がほぼ終わりかけているアキラと言えども、日頃動いている高校生は燃費が悪い。昼飯抜きはほぼ死刑宣告に等しい問題なのだ。

 しかし、話さなければ手元のパンはレジを通ることがない。こうして考えている間に、適当に誤魔化せる雰囲気でもなくなってしまった。

 もうこの際暴露しちまおうかな、などと諦めが顔を覗かせ、不意にポケットから着信音が鳴り響く。

 まさかな、と思いつつトレイを置いて、スマホを取り出して見れば。

 

「渡りに船って感じ?」

「三途の川を渡る船かな……」

 

 言いながら、電話に出る。

 もう面倒臭いので、あちらの要件を聞く前にこちらの現状を話してしまおうと口を開こうとして、それよりも早く、電話先の巴が言う。

 

『どうしようアキラ……』

「何がだよ……どうしようはこっちの台詞だよ……」

 

 何ともまぁ弱々しい声か、と。そう考えるアキラの返事もまた力無いもので。

 そのほんの少しのやり取りで、二人の頭に嫌な閃きが走った。

 そう。

 互いの置かれている状況が、同じようなものなのではないか、という、根拠こそ見当たらない、けれど半ば確信出来るような閃きが。

 

「まぁ、隠すことでもないか。お前が良いなら言ってしまえ」

『アキラがそう言うなら……。ちなみに、お前は誰に気付かれたんだ?』

「やまぶきベーカリーの親子にな。言わなきゃパンを買わせて貰えねぇんだ」

『なんだそれ』

 

 電話の向こうでクスクスと笑う巴に、アキラも苦笑する。

 どうやら、アキラも巴も、お互いが構わないなら関係を隠すつもりはないようで。

 それならまぁ話は早い、と。早々に通話を終えたアキラは、ニヤニヤと親子で良く似た笑顔を向ける二人へと、巴との関係を打ち明けるのであった。

 

 

 

 

「聞いたよ~アキラせ、ん、ぱ、い!」

「何をだよ。どんだけ広まるの早ぇんだよ」

「言葉が矛盾してるぞ?」

「うるせぇよ、誰から聞いたんだよ」

「ふふ~ん? さぁ誰からでしょうか」

 

 その日の晩、わざとらしくこちらを煽ってくるリサに向けて、割りと本気で嫌な顔を向けるアキラ。無意味にベースにて重低音を響かせてくるのが妙に腹立たしく、準備運動を止めて腰に手を当てた。

 

「多分、もうすぐ来るんじゃない?」

「お前勝手に人の家に呼ぶんじゃねぇよ……」

「それはごめんなさい。でも、先輩だって昨日言ってたじゃない? 今度呼んでみるかってさ」

 

 流石に少し申し訳なさそうにしたリサだったが、次いで放たれた言葉に少し考え込んだのはアキラ。

 昨日そんなような言葉を口にしたとすれば、該当するには一人しかいない。と、すれば。

 

「アキ兄! 久しぶりー!」

「だよなぁ、お前しかいねぇよなぁ」

 

 防音扉を勢い良く開き、勢いそのままアキラへと飛び付いてくる少女を抱き止めて、その紫色の頭を撫でる。

 撫でられた少女――宇田川あこは、ふふ~、と満足げに鼻を鳴らしながら胸元に頭を擦り付けていた。

 あこが一人で来る訳もなし、遅れて巴が階段の奥から現れて、妹の姿を見ては苦笑する。

 

「成る程、今井はあこから聞いたわけだ」

「そそ。学校終わりにあこがはしゃいであたしに会いに来てさー。話を聞いたらびっくりしたわけ」

「帰ってすぐにあこに疑われてさ。誤魔化しきれなかったんだ」

「だって、お姉ちゃんすっごいニコニコしながら帰ってきたんだもん。アキ兄の紅茶の匂いするし、何かあったのかなって」

「一日でえらく広まったもんだな……」

 

 巴の幼なじみメンバーは言うまでもなし、あこからリサに、アキラから沙綾へ。恐らくは沙綾からまた別の人間へと――恐らくは精肉店の娘さん辺り――話がいったと考えれば、近しい友人にはあらかた巴との関係が広まったことを思うと、悩みを通り越して感心すら感じてしまうアキラ。

 悩むといっても、精々がちょっとしたからかいを食らう程度。開きなおってしまえば大した問題でもないと、この問題に対するスタンスを決めてしまう。

 

「んで? ただそれだけで呼んだのか?」

「まさか。イベントにあこも出るって」

「友達と出るんだ。リサ姉に誰と出るのって聞いたら、アキ兄とって言うし。一緒に練習してるなんて羨ましくって」

「じゃあライバルじゃねぇか。敵に塩送れってか」

「冷たいやつだな。少しくらいいいだろ」

「別にやだなんて言ってねぇだろ……」

 

 腕を組んで冷めた視線を向けてくる巴に、妹には本当に甘い奴だなと嘆息するアキラ。

 ちらりと胸元に視線を落としてみれば、悲しそうにこちらを見上げてくる小動物の姿。

 

「やるなら上で着替えてこい。まさかその格好で練習するつもりか」

「やったー! 色々教えてね、アキ兄!」

 

 言うが早いか、アキラから離れて来たときよりも勢い良く階段を駆け上がっていくあこ。その後ろ姿に、転ぶなよと声をかけつつ、準備運動を再開する。

 その姿に、じゃああたしもー、とベースを片付け始めるリサ。

 

「ここで着替えた方が良い?」

「だ、ダメに決まってるじゃないですか!」

「お前が反応すんのか……」

 

 ケラケラと笑いながら、リサも階段を上っていく。

 残された二人は、

 

「…………」

「いや、俺は悪くねぇ」

 

 むぅ、と微妙に頬を膨らませる巴と、悪くないはずなのに何故非難されなきゃならんのだ、と腑に落ちないアキラなのであった。

 

 

 

 

 

「あこはオールドスクールだったか」

「一番得意なのはロッキンだけどね」

「ロッキンか……あんまり教えられねぇけど」

「でもあこ、アキ兄の見てこれに決めたんだよ?」

「たまたまやってたんだろうな。どっちかって言えばポッパーだし」

「んー……でも格好いいからロッキンでいく!」

「まぁいいさ。絞った方が良いし」

 

 適当なダンスナンバーが流れる中で、靴のグリップ音が響く。

 リサでは畑違いになってしまうので、あこの練習はアキラが見ることに。

 先ずは適当に合わせてみろ、との言葉に、言われるままに踊り始めるあこの動きを眺めつつ、気になった箇所にぽつらぽつらと指摘していくアキラ。

 あこの為に、合わせやすい、多少早めの曲をかけてやると、

 

「せんぱーい。曲はやーい」

「頑張って合わせろ。イベントで都合良くジャズなんてそうそう流れんぞ」

「うへぇー……」

 

 と、リサが微妙に文句を言ってみたり。

 

「そうだな、もうちょっとしたらバトルの真似事でもしてみるか。ジャッジは巴で」

「うぇ!?」

「ただ見てるだけとかつまらんだろ」

「でも、何が良いとかわかんないぞ?」

「純粋に凄いと思った、とかでいいんだよ。今回のジャッジはそんな感じだろうし」

 

 遊びながらプチバトルを始めてみれば、

 

「……アキラがインパクトあったな、やっぱり」

「アキ兄大人げない!」

「ブレイク使わないって言ってたじゃん!」

「イベント前に負け癖付けたくないし」

 

 ほぼ大技で勝負を決めたアキラに、負けた二人が苦言を呈してみたり。

 はたまた、

 

「どうせだからなんか叩けば?」

「あ、じゃあベースで入ろ」

「アキラも入れよ。ピアノやってたろ」

「アキ兄ピアノ弾けるの?」

「母さんから妙にスパルタに叩き込まれてな……」

 

 妙なところで過去を掘り起こされ、遠い目をしながらガタガタとキーボードを引っ張り出して、素人一名が混じったセッションをしてみたり。因みに、ここでは体力切れを起こしたあこは不参加である。

 

 楽器を触ったぶん、前日よりも一時間程遅く、その日の練習は終わりを告げる。

 つつがなく清掃を終えた四人は、順番にシャワーを浴びて、少しの間リビングで寛いでいた。

 

「他二人はともかく、あこは何にする」

「コーラ!」

「帰ったら歯磨けよ」

「あたし達には聞かないの?」

「アイスティーに文句があるなら聞く」

「ないですけどー」

「なら言うなよ……」

 

 言いながら、確か、あこが飲むぐらいなら、缶でいくらかあったはずだな、とキッチンの奥にある冷蔵庫を探るアキラ。

 その間、女子だけとなったリビングでは、二人による尋問が始まっていた。

 

「で、どっちから?」

「えっ?」

「とぼけないとぼけない。どっちから告白したの? 聞かせて聞かせて~?」

「アキ兄じゃないかな!」

「でも先輩、あぁ見えて奥手なとこあるからなー。巴から動かなきゃ、進展しなかったんじゃない?」

「え、えーっと……」

 

 巴から行ったのは事実ではあるが、それを正直に伝えるには少々内容が危ないことに、笑顔を浮かべてごまかそうとする巴。

 まさか嫉妬に駆られて押し倒した挙げ句、勢いでキスしちゃいました、なんて。

 

(……言えるわけあるかっ!)

 

 内心で叫びながら、どうなのどうなのと迫り来る妹と先輩に、早く戻ってきてくれとアキラに助けを求め、しかし現実は無情である。

 その手に何も持っていないアキラは、一度自室へと姿を消すと、財布片手に現れる。

 

「あこ、コーラ無いから自販機で買ってくるわ」

「ちょっと待っ……!」

「いってらっしゃーい」

「こ、紅茶はどうするんだ!? 見てなきゃ……」

「あん? 今蒸らしてるだけだし、帰ってきたら淹れてやるよ」

「そうじゃなくて……!」

「はいはーい。行ってきた行ってきた」

「男は邪魔ってか? 肩身狭ぇなぁ」

 

 巴による必死の引き留めも、リサによって背中を押されたアキラは飄々とした態度で行ってしまった。

 玄関の扉が閉まる音に、これだけ絶望感を感じるのは初めてだ、と彼女は思う。

 家主が消えた今、巴の味方はどこにも居ない。いるのは好奇心に舌なめずりをする、二人の獣と哀れな獲物のみだ。

 

「さて。ではでは? 色々聞かせてもらおっか?」

「はは、は……」

 

 

 

 

 

 

「すまん、巴」

 

 玄関から外に出たアキラは、両手を合わせてそう呟いてから歩き出す。

 彼女の様子を見れば、自分に助けを求めていたのは一目瞭然。しかし、あそこで素直にあの場に残るのは、見えている落とし穴に自ら引っ掛かりにいくようなもの。

 あの様子では、自分が帰る頃には洗いざらい、根掘り葉掘り質問されて蹂躙されているだろう。

 自分にも関わるので当然後でダメージは食らうだろうが、それでもアキラはあの場から逃げることを選んだ。

 

「コーラ無いのは本当だし、うん」

 

 可愛い妹分の為だ、致し方なし。

 そう自己を正当化し、アキラはいつもよりもゆっくりと、近場の自販機に向かうのであった。

 

 

 

 

 

 そうして帰ったアキラを出迎えたのは、ゆでダコのように顔を真っ赤にして俯いている巴と、こちらもまたいくらか頬を染めたリサとあこで。

 

「あたしってば……結果的に天使なキューピッド?」

「アキ兄、ファーストキスって紅茶の味するんだね!」

「マジでお前ら容赦ねぇな」

 

 思ったよりもひどい暴露っぷりに、生け贄にしてしまった巴に流石に申し訳無くなるアキラであった。




本作の千紘さんは割りと元気です。沙綾はまだバンドに参加していないので、ポピパは未だ未結成。時系列に不安を感じる今日この頃。
次いでに言えばあことリサのダンススタイルは勝手に決めてます。あんまり描写は深くしないので、適当に読み流してくれれば。

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