インフィニット・オメガバース   作:蓮零

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この作品はオリ主の争奪戦というタグがつけていますが、読者の皆様としては争奪戦とかは見たいと思うのだろうか・・・?

タイトルのとおり、千冬さん視点のお話です

千冬さんが純粋に雪音に恋している姿と同時に彼を自分の番にしたい欲望を持つ姿。

理性と本能の間で揺れ、罪悪感に苛まれる千冬さんを書きたかっただけです。



番外編 織斑千冬の恋煩い

私がアイツにこの感情を抱くようになってから、私の世界は変わった。アイツの事を考えるだけで胸が燃えるように熱く、そして破裂しそうなくらいにドキドキが止まらなくなる....。キッカケなどを聞かれてしまえば私は答えられないだろう。

 

     

ただひとつだけ言えることがあるとするのならば…。

 

        

 私はこの先、....幼馴染みで私の弟の親友であると同時に、私を本当の姉のように慕ってくれる彼…堀内雪音以上に愛しく、自分のものにしたいと本気で思える相手にこの先、出会う事はないだろうとーー。

 

 

 

◇◆◇

 

 

私と雪音が知り合ったのは当時、まだ幼稚園児だった一夏が、家が近所だった雪音をウチに招いたことがキッカケだった。

 

 

 初めて会った時の雪音の印象は控えめで、とても可愛らしい少年と言った感じであった。しかも、初めて会ったばかりの私に対しても礼儀正しく、そして無邪気な笑顔で挨拶をしてくれた、その表情が少し照れくさそうにしていたことは今でもよく覚えている。

 

 

 その当時の私は初めて会う子供などから目付きが怖い。怒っているのではないかと思われてしまい、大抵は恐がられたり、泣かれてしまうことが殆どだったため、弟である一夏以外の子供の接し方が分からなくなっていた。しかし、雪音は違った。初対面の私を恐がらずに普通に接してくれたのだ。

 

 

 だからだろうか、初めて会ったというのに私は雪音にたいして強い感心と興味を持ち始めていた...あの頃の私なら理由が分からなかっただろうが、今の私ならばあの頃から雪音に惹かれていただろうと確信して宣言することが出来るだろう....今は言うつもりはないがな....。

 

 

それからと云うものの、家が近い為か雪音はよく我が家に来ては一夏と一緒に遊ぶようになっていた。私としても一夏に仲が良い友達が出来たことに安心し、遊んでいる二人を横目に自然に口元に笑みが出ていたくらいだ。

 

 

 そんな風にしている年月の中でも雪音との間には様々な思い出があった。

 

 

一夏と雪音が始めて一緒になって私の為に作ってくれた料理の味。

 

 

雪音と一夏がお互いの家族の良いところを言い合ってた所をこっそりと聞いていた私が恥ずかしい思いをしたこと。

 

 

 道場で剣道の修練をしている時、束が乱入してきたのでコブラツイストを掛けて撃退したところ、慰めを求めた為か、どさくさに紛れて雪音に抱きついた束にアイアンクローをかまして沈めたこと..。

 

 

 焼きいもを焼こうとした一夏が、落ち葉を集めて燃やそうとした時に家の周りにまで火が移りかけ、雪音と一緒になって慌てて火を鎮火しようと躍起になったことなどや…。

 

 

 そんな日々を過ごしていく中で私は雪音に対して感謝の気持ちともう一人の弟ができたかのような気持ちになっていた。私はとても幸せに満たされていた...。

 

 

 

 

しかし、それは突然変わってしまった。

 

 

 

 

 

 それは、私がまだISの日本代表時代の頃、その当時まだ小学6年生になったばかりの雪音との間に起こった、私が雪音に対しての気持ちを自覚してしまった日の出来事であるーー。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「ただいま」

 

 

 

 

 その日の私はいつもより早く帰宅をしていた。連日のように行われるIS関連の仕事に日々身を尽くしていた。IS通称《インフィニット・ストラトス》というマルチフォームスーツが世界中に発表されて早5年になった。

 

 

 

当初は宇宙での活動を想定して開発されたものだが、『ある事件』がきっかけでその高い性能が従来の武器を遥かに凌駕してしまうことが世界中に知れ渡ってしまったことから、今では宇宙進出よりも飛行パワード・スーツとして世界の軍事力の要として変わって行ってしまった。

 

 

 

 これには開発者であり、私の古くからの親友である篠ノ之束(しののの たばね)は嘆いていた、自分が開発したのはそんなくだらないことの為じゃないのにと。この時ばかりは束に同情の念を抱かずにはいられなかった。普段の束を知る者からしたらよく分かるであろう。あいつにしてみれば落ち込みっぷりは半端ではなかっただろうから。

 

 

 

その後からは束は行方不明となった。世界中でもISの稼動力になるコアを作れるのは世界でただ一人、束だけだからであるからな。なぜかその後もちょくちょくこちらに顔をだしてはバカな事を仕出かしていたが・・・。そこはもうあきらめるしかないのが腹立たしいくらいだ。

 

 

 そんなこんなで規格外な親友が居たおかげか、 ISの知識に関しては束の次ぐらいまでは覚えられていた。それに加えてISの適正試験では最高値であるSを叩き出し試合でも一度も負けずにいたためか、私は瞬く間に日本代表操縦者へと道を駆け上がっていた。

 

 

 何年か前に両親が失踪してからはバイト三昧で一夏との生活を切り盛りしていた私にとっては、高い収入が入るために、一夏を養っていくにはこれ以上ないくらいに都合がよかった。しかし、その仕事は多忙を極め、オマケに日本代表になり、ISの世界大会で優勝してしまってからは連日のように公式の試合、ISの取材や雑誌のモデルなどに引っ張り回されて休みがなく、家にもマトモに帰れる状態ではなかった....。

 

 

そんな状態の中で、その日は珍しくIS関連の雑誌の取材だけしか入っておらず、午後は全て空いていたために、久しぶりに我が家へと帰って来たのだった。

 

 

「一夏?....いないのか?」

 

 

久しぶりに帰ってきた我が家に、いるはずである弟の名前を読んだが返事が帰って来なかった。少し疑問に思いつつも、私は靴を脱ぎスリッパを履いてリビングへと向かった。

 

 

リビングの扉の前に着き、扉を開けた。そこには一夏の姿はなく、いつものように綺麗に掃除されている状態だった。そんな中でふっとした瞬間、私は妙な甘い香りが室内に漂っていることに気がついた。

 

 

甘い匂いの発生源の方を見ると、そこにはリビングに設置されているソファーがあり、そこから誰かの頭が見えた。私は一夏が寝ているのかと?思いながらも、ゆっくりとソファーに近づいていった。

 

 

しかし、そこに寝ていたのは全く違う人物だった。

 

 

「雪音...?」

 

 

そこにいたのは、しばらくは会っていなかった、わたしにとっては幼馴染みであり、もう一人の弟のような存在であり、一夏の親友でもある雪音だった。何故我が家で寝ているのかと思ったが、それよりも彼に近づくたびに何故か甘い匂いの強さが増したのだった。

 

 

 

「(なんだ..この感覚は....?急に息がしずらく..?それに雪音を見ているだけで、体中が熱くて、動悸が激しく....なって、きて..?)」

 

 

そんな風に体調がおかしくなりながらも、千冬は雪音の方へとさらに近付くのだった。しかし....。

 

 

 

ドクンッーー。

 

 

 

雪音の姿を直で目にした途端、心臓が強く脈を打つかのような錯覚を千冬は覚えた。否、実際に錯覚ではなかった。千冬は強い何かの感情に襲われた。

 

 

「(なんだ..さっき、....よりも..激し....く!?なんだコレは、...目眩が、動悸が....早く..!顔が....熱い..。)」

 

 

 

千冬は体調がおかしくなった理由に気付いていなかった。しかし、本能でそれを直感をしていた。そう、彼女のアルファ<α>としての本能が.....。

 

 

 

ーー千冬は、雪音に欲情をしたのだ。

 

 

 

今までも、恋愛に関しては千冬はモテる方だった。しかし、ISが世界に浸透してからは、男性の方に言い寄られることは少なく、むしろ女性の方からはその圧倒的な強さと、その美しい容姿に魅いられ、国を越えてまでの人気ぶりを発揮していたのだった。

 

 

その中で、オメガの女性や男性が近づいていた来たことも何度もあったが、千冬は欲情どころか、フェロモンによる誘惑も効なかったのだ。アルファ<α>である彼女としては、誘惑されないで助かったようであったが…。

 

 

それなのに彼女は今、目の前でスヤスヤと眠るまだ小学生である雪音のフェロモンにやられたのだ。今の彼女の状態は目の前に獲物がいるのに、手が出せない肉食動物のような状態に陥っていたのだーー。

 

 

 

「はあっ....はぁっ...!..うっ....落ち着け..!私..!..クソ..絶対..に....駄目.....だ!」

 

 

 

千冬は欲情していながらもその鋼の如く強い理性で本能に必死の思いで抗がっていた。しかし、彼女の本能は甘い誘惑に身を捧げてしまえと語りかけていた。

 

 

 

«何をしている?早く彼を襲ってしまえばいいのに?»

 

 

「イヤだ....!わたし..は..襲いたく..なん....て!!」

 

 

«だが、お前は彼のフェロモンに惹かれている。ーー今までお前が出会ったオメガでは絶対になかったことだ、彼がお前の運命の番かもしれないんだぞーー?»

 

 

「ちが...う!..雪音...は、わたし..の、弟のような....存在..なん....!」

 

 

«まだ、そんな見栄すいた嘘をつけるんだな…彼の姿を見て欲情したのだろう?彼の匂いを思いっきり嗅いで、あの無防備なうなじに強く噛みついて自分だけの物にーー本当はしたいんだろ?»

 

 

「っ....!わたし..は!....そんな...こと...など...!」

 

 

しかし、そんなことを言っている千冬だが、内心では全てを見透かされている気持ちになっていた。

 

 

千冬は、ソファーでいまだスヤスヤと眠る雪音の姿が目に入ってきた。

 

 

一緒に過ごした中でも何度も見てきた可愛らしい顔立ちは、まだ子供らしい幼さを残しつつも、整った顔立ちをしており、閉じられている目は切れ長で、長いまつげをしている。

 

柔らかな髪は白い首筋にまでかかるほどの長さをしており、天井の光に反射しているためか、まるで絹糸のような艶やかなな光を帯びている。

 

体は程よく、そして無駄かないくらいに細めでありながらも、服から除かれる腕や足にはつけすぎない程度にしなやかな筋肉がついている。

 

そして、規則正しい寝息が聞こえてくる、その柔らかなそうでそしてハリがある唇をみているだけで、千冬の喉からゴクリと生唾を飲み込むような音が聞こえてきた。

 

 

 

そして、千冬はこう思ったのだーー。

 

 

 

ーあの全てがわたしだけの物になったら、どれだけの幸福感がわたしの中に与えられるのかーー?

 

 

そう思った時には、もう遅かった。千冬は眠る雪音が起きないように、そっと彼の上に跨がった。彼のフェロモンがより強く、そしてより激しくなり、千冬の欲情と支配欲、何よりも彼女自身の興奮を煽った。

 

 

雪音の首筋に近づきその匂いを嗅いだ、それだけで、より一層、雪音のフェロモンの虜になっていた。そして、千冬はその無防備にさらされた首筋に、自身の鋭い歯で深く、そして噛み跡が残るように噛みつこうとした、その瞬間ーー。

 

 

 

「ただいまー!雪音~!今、帰ったぞ~。」

 

 

 

玄関から聞こえて弟の声に千冬は一緒で正気に戻った。それからの彼女の行動は速かった。

 

 

千冬はすぐさま雪音の上から降りると、たまたまソファーに掛けられていた毛布をとり、眠っている雪音の体へと急いでかけた。そしてすぐさまに雪音から少し距離をとり、キッチンに向かい備え付けられた冷蔵庫から水を取り出して慌ててコップに注ぎ込み、口の中へと流し込んだのだった、少しばかりむせてしまったが。

 

 

するとリビングの扉が開かれ、買い物袋を片手に下げている一夏が入ってきた。どうやら夕飯の買い出しに出ていたようだった。

 

 

「あれ?千冬姉、今日は早かったんだな。お帰り」

 

 

「あ、あぁ、今日は午前中だけだったからな、やることもないし、早めに帰ってきたんだ....ただいま」

 

 

「そっか、久しぶりにゆっくり出来るんだから、よかったな。....あれ雪音、寝ちゃてんじゃん。だから返事がなかったのか」

 

 

「そ..そうだな、きっと雪音も疲れているんだろう...しばらくしてから起こしてやってくれ、....私は部屋で少し、休んでくる」

 

 

「了解。あっ、千冬姉、夕飯の時には呼びにいくからな!」

 

 

「わかった、そうしてくれ....。」

 

 

そう言って、千冬はそそくさとリビングから退散した。階段をかけ上がり、すぐさまに物が散らかりかえっている自身の部屋の中に駆け込み、ベッドに身を預けた。

 

 

そしてすぐさまに千冬の中には雪音に対しての尽きない罪悪感が募らせた。

 

 

「(私は....いったい、..何をしょうとして....っ!!)」

 

 

わかっていたのに、あんなことをしてしまえば雪音に嫌われるどころの話ではない。あの場で一夏が来てくれていなければ、きっと自分は欲に身を任せて雪音を犯していただろうと、欲望のままに彼を傷つけかけたのだ。 

 

 

それなのに、私は彼に嫌われてしまうのが恐い、話せなくなってしまうことが嫌で仕方がなかった。だからこそ、気づいたのだ、自分の本当の気持ちに....。

 

 

「(そうか、私は弟として雪音のことが好きなんじゃないんだ....)」

 

 

千冬は長く、そして深いため息をはくと同時にその瞳に涙をためながらもぽつりと呟いたのだった。

 

 

 

「私は...雪音のことが....異性として好きなんだな...」

 

 

そういった千冬は涙を流し、雪音の笑顔を思い出しながらも、心の中でけっして言葉に出来ない、雪音への懺悔の言葉が並べられたのだった。

 

 

 

ーこの日、世界最強と呼ばれる女性は恋を知った。そして、同時にけして許されない永遠の業を自ら背負うのであったのだーー。

 

 

そして、彼女は知る。この先、雪音と自らの関係が変わっていくことを、彼女はその先でなにを得て、何を失うのだろうか...。

 

 

 

 

 雪音、私はお前に許されないようなことをしてしまった。それでも私が抱くこの感情はきっとお前以外には抱くことは永遠にないだろう。だからこそ、今はお前の姉として傍にいて、一夏とお同じようにお前のことを守り抜いて支えていこう...。

 

 

 

 

そしてーー

 

 

 

 

いつか必ず、お前自身を手に入れるためにーー。

 




速めに更新するとか言っておきながら結局、一週間になっていました....。

大変申し訳ありませんでした!!!(土下座)

どうか書き始めたばかりの素人が調子に乗ってしまったと思い、水に流して頂きたいと心から思っています!

この番外編では、千冬さんらしさを残したいと思いつつもアイディアが出てこず、一週間もかかるはめになりました!それでも作者としては渾身の回だと自負しております!

感想や評価など、それが貰えれば作者はもっとやる気を出すことができます!

これからも、どうかこの作品をよろしくお願いします。

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