第二話を更新した直後にこの作品がお気に入り20件を突破しました。ありがとうございます!!
オリ主は可哀想です。オリ主が自嘲的な考え方が多いです。それでも共感をしていただければと思っています!
それではどうぞ!
季節は木枯らしが吹き付ける秋から、冬へと移り変わらせる。秋には感じられないような冷たい風を吹かせ、町ゆく人達はマフラーやコートなどを身に纏い、白い吐息を吐きながらも歩いて行くだろう。
冬という季節は何だか他の季節よりも特別な行事などが多い。クリスマス、大晦日、バレンタインなど様々だ。今の時期は12月の上旬。その為かどこのかしこもクリスマスムード一色で染められている。家族と過ごす者、友人と過ごす者、恋人と過ごす者などーー。今の時期は大切な人達と過ごすのにはうってつけの季節だと断言できる事は間違いないだろう。
しかし、僕と一夏は違う。今年の冬を楽しめない理由が存在していた。
それはーーー。
カキカキカキ
「・・・・・」
「・・・・・」
カキカキカキ
「・・・・・」
「・・・・・」
カキカキカキカキカキカキ
「…もう無理だぁ!!俺にはこの悪魔のごとくの魔術式の解き方なんて分からないんだぁぁぁぁ!!!」
「落ち着いて一夏。それは数学の公式だからね。分からないからって問題集を投げ出そうとしないでね?」
絶賛、受験前の追い込み(悪あがき)の真っ最中だからである。
◇◆◇
僕と一夏は現在、灰色真っ只中の高校受験生である。
そんな僕らは学校が休日の日である事を利用し、現在は一夏の実家でもある織斑家で僕達二人の志望校である私立藍越(あいえつ)学園の入試に向けての入試対策の勉強中なのであった。
しかし開始から早一時間。・・・一向に進む気配を感じさせません。原因ですか?そんなの決まってますよ。一夏の奴が分からないと言って中断させてくるからに決まってるじゃないですか!!
「…ちょっと一夏、さっきからまったく進んでないよね?このままのペースじゃ不味いんじゃ….」
「ああ、俺も今まさに同じことを考えてるよ....」
「一応、君にもちゃんと自覚があることには感心だね」
「お前は俺を一体どんな風に見てるんだよ….。」
どんな風に見てるかって?そんなの決まってるよ。
「鈍感唐変木でどうしょうもないくらいのシスコン」
「それはただの悪口じゃないか!?」
「事実だからしょうがない」
「しょうがない要素なんてどこにもないだろ!?」
「ほら、さっさと続きやるから集中だよ集中~。」
「話をそらされた….っ!!」
とりあえず一夏をからかって遊ぶのはこれくらいにしておくとして、さっさと勉強を再開させないとね。進むものまで進まなくなっちゃうからね。
すると、一夏は少し不服そうな表情をしたまま、問題集を睨みつけながら愚痴を言い始めてきた。
「だいたい、俺には分からないところが多すぎるんだよなぁ…..雪音は頭が良いから羨ましいぜ。」
「何言ってるの、僕だって復習を何度もしてるからついていける状態なんだよ?頭が良い訳じゃないからね」
「....毎回、テストが行われる度に学年トップを取る奴のセリフじゃないと思うんだけどそれ....。」
「まぐれだよ、まぐれ」
「....雪音が相手だからかなぁ?嫌味だとはあまり思えねぇんだよなあ........」
一夏はそう言って、深い溜め息を吐いていた....。自分には無理だと言った感じの雰囲気をかもしだす一夏に、僕は少しばかりのアドバイスを送った。
「一夏、最初から何でも分かる人なんていないよ。みんな誰かから教わって、そして間違えて、それで学習して覚えといくんだよ。勉強もそうだし、人間関係だって同じことが言えるからね。一夏だって剣道をやってた時は、努力をして覚えたことはいっぱいあるだろ?」
「....確かにな。あの頃は剣道を教わるのが楽しかったからなぁ、夢中になって技を学んで強くなるのが嬉しかったから」
「そう。僕は人にとって一番大事なことは『向上心』だと思うんだ。だって学んで覚えたとしても、それを上げていこうっていう気持ちがなきゃ結局は意味がないからね。だから僕は、しっかりと覚えて知識になるように復習をしているんだよ。」
「とても同い年の考え方には思えないんだが…。お前は本当に大人びてるな....羨ましいぜ。」
一夏はそういうが、僕はその言葉に少し苦笑いしながら、自嘲気味に言葉を返した。
「....僕はオメガ<Ω>だからね。オメガ<Ω>はどんな事にも、アルファ<α>やベータ<β>には勝らないのが当たり前な世の中になってるからね、...別にアルファ<α>やベータ<β>の人が嫌いなわけじゃないよ。でも、せめて才能や立場で勝てない分は、努力でなんとかしたいんだ。叶う訳ないって分かっているけども....」
そんな風に哀しそうにそして自嘲気味に笑う雪音を見て、一夏は先程、自分が不用意に放った言葉を恥じ、己に怒りを感じるのであった。
「(何が羨ましいだよっ…俺の馬鹿野郎…っ!!)」
雪音が自身の性を呪うようにしていることは知っていた。自分はそれを気にせずに雪音の傍にいれている。親友として、雪音を支えていると思っていた。
それなのに、自分は彼を意識なく傷つけた。彼がこの年でこの様な大人びた考え方をそして努力をするようになったのは考えればわかるずなのに。
「....悪い雪音、俺はお前の気持ちをちゃんと....」
「平気だよ。むしろこっちが気を使わせてごめん」
「でも、俺はお前の気持ちを知ってるのに...それなのに俺は考えなしに....っ!」
「一夏....。」
一夏自身は自分の軽率な発言で雪音を傷つけたと思っているようだが、雪音はそうは思わなかった。
普段は飄々として余裕を持たせている態度や無意識に女の子をときめかせるような発言をしている鈍感唐変木だが、その本質は熱い心を秘めていて曲がった事が大嫌いでとても他人の心の痛み(恋愛以外)を分かってくれる、自分にとっては傍にいてくれてすごく息抜きが出来る大切な親友だ、少なくとも雪音はそう考えている。
「(君は、....優しすぎるよ)」
自分の事よりも人の世話をかけたり、自分が傷つくよりも相手が傷つく事をいやがり、相手が悲しんでいたら手をさしのべてくれるところも、自分が傷つけられて、酷いことを言われたとしても...見捨てたりしない。
僕にとっては君が羨ましいよーー。
そんな風に思うが、それ以上にそんな一夏だからこそ、自分は傍にいて居心地が良いと思えるのだった。
「一夏、勘違いしないで。君は考え無しに僕を傷つけたって言ったけど、違うよ?むしろ君からそんな風に言ってもらえたことが、僕はよかったと思っているよ」
「....そうなのか?」
「うん、だって、僕が努力していることを、形が違うとは言え、君は僕を認めてくれたんだ。ーー親友からそんな風に言われて嬉しかったよ。」
そんな風に僕は一夏に言った。これは本心だ。自分を分かってくれる人に認められたことがよかったと、心から言えるんだからねーー。
そう言って、一夏を見ると、少し申し訳なさそうに、そして安心したような笑顔で僕を見て言ったのだった。
「....ありがとう、雪音…お前が友達でよかった。」
その言葉に雪音は少しばかりキョトンとしたが、すぐさま嬉しそうに、そして照れくさそうな笑顔を一夏に向け、言葉を返した。
「ーーこちらこそ、君が友達でよかったよ。一夏」
そうして、彼らは笑い合うのだ。冬と言う季節にも負けないような優しい温かさを覚えるような感覚に二人は呑まれるのであった。
「雪音、早速勉強の続きをはじめようぜ!分かんないところは何度も聞くことになると思うけど...大丈夫か?」
「もちろんだよ!絶対にふたりして受験に勝とうね!」
「よっしゃーー!俺はやってやるぞー!」
「その意気だよ!一夏!」
そうして彼らはまた勉強に取り組むのである。ふたりなら絶対にやれると互いを信じてーー。
余談だが、この後、一夏が真面目に勉強をしている所をたまたま実家に帰宅した世界最強の姉が見たところ...。
『....あんな真面目な表情の一夏は初めてだった。これも雪音のおかげだ....さすがだな』
と、言っていたそうだ。何故だか、雪音の名前を口に出した時の顔が優しさに満ち溢れていたようだが…。
雪音本人はもちろん、弟である一夏もそんな事は知らないのであったーー。
いかがでしたでしょうか?
前回投稿したときから時間がかかり過ぎてしまい、申し訳ありませんでした!
なぜだか、私が文を打つと暗い感じや、長すぎる心情ばかりで、読んでいても退屈に思わせてしまうのではないかと心配になっております!
ですが、この作品を応援していただける人がいてくださるかぎりは絶対に更新をやめることはありません!
次回は番外編になりますので、速めに更新をさせていただきます。
これからも、応援よろしくお願いします!