今回は主人公の心情を物語ります。
それではお楽しみください
第一話 彼は己の性を呪う
僕は授業中に突然、激しいめまいや動悸に襲われた。心臓の鼓動が激しくなり、呼吸はすることさえも苦しくて堪らなくなる。しかし、僕にとってはもう当たり前にな出来事になってきてもいた。
・・・
あぁ、またあれが来たのか....。
「すみません、先生っ…、気分が悪いので保健室に行きたいのですが...」
「またか堀内。行ってもよいが、大丈夫か?今年で受験なんだから体調管理もしっかりしろよ」
「すみません...直ぐに、...戻ります。」
僕は急いで教室から出る。クラスメイトの何人かは僕を心配している様子で見ていた気がしたが、今の僕にはそれを気にする余裕など持ち合わせてはいなかった。
◇◆◇
僕が向かった先は保健室ではなく、学校の屋上だった。何故保健室ではなく屋上に向かったかと言うと、万が一でも「アレ」を服用している姿を誰かに見られる事がイヤだったからだ。あれと言うのはいずれ分かることだから、説明はしないでおくことにする。
僕は荒い息をつき、働かなくなる体にムチを打ち、ズボンのポケットから小さな箱を取り出した。その箱の表面には青い十字架の線が描かれている。
中を開けるとカプセル型の薬が何十錠か入っており、僕は二粒ほど手にとって口の中に放り込んだ。そして屋上に向かう途中に買ったペットボトルの水で薬を体の中へと流し込む。
薬が効いてきたのか、ようやく激しい動悸やめまいは収まり、体が楽になってきた。僕は屋上の柵に体を預ける。閉じていた学ランの制服の襟部分を開け、中のTシャツのボタンを少し外す。ーーその中から覗かれたのは、僕の白い首回りを囲む鈍く光る黒い首輪だった。それに手をかざし、思わず愚痴混じりなため息を付いた。
「朝に飲んだばっかりなのに、何で今頃こんな風になるんだろうなぁ...」
僕はそんな風に恨みがましく思いながらもその原因であるのが、自らの「第二の性」であると言うことに嘆くことしか出来ないのであった...。
◇◆◇
僕の名前は堀内 雪音(ほりうち ゆきね)年は14歳。来年の2月に受験を控えている中学3年生だ。
趣味は料理と紅茶入れと花の世話。父はカフェの経営者であり実際に現場で働く店長さん。母は世界中の様々な場所を回って教鞭をとっている教師。それ以外を除けば今年で高校受験を受けるどこにでもいる普通の中学生...と言いたいところだが、僕には両親と一部の人以外には誰も知らないある秘密があったーー。
それは僕がオメガ<Ω>であると言うことだ。
オメガ<Ω>と言うのは、この世界の中で男女の性別以外に存在する「第二の性」と呼ばれる性別のなかのひとつである。
男性、女性、そして、アルファ<α>、ベータ<β>、オメガ<Ω>の5種類である。
男と女は元々いるが、その性別の中にいるのが「第二の性」だ。
アルファ<α>は生まれながらのエリートだ。社会的にも経済的にも高い地位についているほとんどがアルファ<α>であるため、アルファ<α>に生まれたものは人生の勝ち組だとも言われている。実質的に言えば世の中はアルファ<α>の人間によって支配されている。
ベータ<β>は比較的に平凡だ。社会的にも経済的にもアルファに使われる側の人間で人口の七割はベータ<β>の人間によって占められている。この辺りに生まれればとりあえずは普通の生活を送れることは間違いない。
そして僕自身の性でもあるオメガ<Ω>。社会的にも経済的にもアルファ<Ω>やベータ<β>のようにはなれず、社会のお荷物扱いをされてしまう。そして世間からは偏見や差別などの風当たりがとてつもなく強い。
何故オメガ<Ω>が社会のお荷物扱いを受けたり、偏見や差別が強いのかと言えばそれはオメガ<Ω>の者しか持たない特殊な性質によるものが大きな原因のひとつだからでもあるのだ...。
それはオメガ<Ω>の性を持つ人間には発情期が存在することだ。
オメガ<Ω>は元々、生殖能力が圧倒的に低く、その生殖能力の低さをカバーする為に三ヶ月に一度、体中からフェロモンを放ち、生殖能力が高いアルファ<α>を男女問わずに引き寄せてしまいオメガ<Ω>の男性や女性は相手がアルファ<α>の場合なら同性でも妊娠してしまうのだ。
しかし、オメガ<Ω>だからと言ってそれを望んでいる者は少ない。それなのに世間はオメガ<Ω>ばかりを批判し、偏見や差別の目で見てくるのだ。
オメガ<Ω>は発情期のせいで望まない妊娠をさせられてしまう、そんな事件はこれまで沢山起こっていた。僕はそのことに許せない気持ちでいっぱいになりながらも、それと同じくらいに僕は自分自身の性を呪った。
どうして僕がオメガ<Ω>なんだと、自分が何か悪いことでもしたのだろうか?自分が神様から嫌われるようなことでもしたからか?
誰か教えてください。....どうすれば..ボクは....自分の存在を呪わずに生きていくことが出来ますか...?
どうすれば、僕は自分の存在意義を見いだすことが、出来ますか...?
そんな風にボクが自分自身を呪うようになってから何年も経っていた。....でもこの時のボクはまだ知らなかったのだ。
ほんの数ヵ月先に彼、堀内 雪音の人生と価値観を変えていく出会い、そして彼にとっての居場所を見つけていく物語がもうすでに始まっていることをこのときの彼はまだ知らないーー。
途中から眠すぎて何を書いているのか分からなくなっていますが、とりあえず雪音の心情を私なりに形に出来たと思っているのでとりあえずかこれくらいで!
あれっ?でも途中から只の説明文になっている気が…?
……気のせいと言うことで。