乱暴な音を立てながら思い切り開かれたリビングの扉。怒号と共に鬼の形相で我が家へと侵入してきた少女、時宮妃乃。この瞬間……千嵜家は大騒ぎとなった。
「すぐ出てくるからって言ったから待ってたのに…何十分待たせる気よ!?というか、何夕飯頂いちゃってんのよッ!」
「お、落ち着け時宮!忘れてたんだ!これは100%俺が悪いからこれには謝る!って訳でまず落ち着け……」
「知り合い!?どこの不審者かと思ったら知り合いなの!?お兄ちゃんこの人誰!?まさか彼女!?違うよね、違うよねぇッ!?」
「違うわ!説明する!説明するからお前も落ち着……」
「不審者!?散々待たされしかもそれが忘れてたって理由だっただけでも怒り心頭なのに、しかも不審者扱い!?」
「あーそれもすまん時宮!でも緋奈もテンパってるんだ!だから落ち……」
「えぇしますよしますとも!誰!?お兄ちゃんの何なの!?」
「ですから変な関係じゃ……いや落ち着けよ!落ち着けって言ってんだろ!?そして俺の話も聞けぇぇぇぇええええええッ!」
えー…はい。千嵜家は大騒ぎを超えて軽く阿鼻叫喚でした。…騒がしくしてすいません、ご近所さん……。
『……急に大声出さないでよ、(悠耶・お兄ちゃん)』
「お前等が言う!?……こほん、二人のクエスチョンは八割方俺が答えてやる、だから落ち着いて一つずつ訊け、いいな?」
「じゃあお兄ちゃん、結局何を頼んだの?」
「それは答えられん」
「悠耶、頼んだって何の話よ?」
「こっちの話だ、訊くな」
『……八割方って言ったのに…』
「八割方ってそりゃさっきの質問に対してだよ!全く関係ない質問する奴があるか!後実はお前等気が合うだろ!」
時宮がリビングに来た瞬間は一触即発の雰囲気だったのに、連携して俺を嵌めてきやがった…なんなんだこいつ等……。
「ったく…あーまず時宮、待たせてるの忘れてて悪かった、すまん」
「すまん、じゃないわよ…これは一つ貸しだから、いいわね?」
「はいよ、で…えーとだな緋奈、時宮についてだが…」
「なんでちょっと説明し辛そうなの…やっぱり彼女なの!?」
「彼女な訳ないでしょ!誰かこんな奴と…」
「こんな奴ってお兄ちゃんの事!?時宮さんとやら、確かにお兄ちゃんは友達もデリカシーもやる気も少ないけど、だからってこんな奴扱いはしないでよね!」
「フォローになってねぇ!ちょっ、緋奈お前なに言ってんの!?」
「本心!」
「尚更酷ぇ!」
「友達、デリカシー、やる気……確かに少ないわね…」
「おいこらなに納得してんだ!?っていうか今俺については関係ねぇよ!」
責任の一端は俺にもあるが…敢えて言わせてもらおう。この状況どうなってんだ……つか、なんでさっきからちょいちょい俺は貶められてるんだ…ドッキリか何かか?
「ほんと落ち着けよ…俺が説明放棄したらどうすんだよ…」
「それはそうだけど…そう言うなら時宮さんとの関係を勿体ぶらずに言ってよ」
「それはそうだな…」
落ち着け落ち着けと言っている俺だが、もし逆の立場なら…俺が緋奈と食事してる最中に、謎のイケメンが不法侵入してきた上に陽奈と関係ありげな事を言ってきたら、俺は絶対冷静さを保てない。そう考えれば落ち度があるのは俺の方だし、早く説明してやるのが筋に思える。
……が、だからと言って真実を話す訳にはいかない。本当にただの一般人な筈の緋奈をこの事に巻き込むのは避けにゃならんし、そもそも信じてもらうまでが大変過ぎる。となれば……
「…時宮、今から俺がそれっぽい事言うから合わせろ」
「合わせろ…って、誤魔化す気…?」
「勿論だ。お前だってありのまま話すより誤魔化した方が楽だろ?」
「ま…それは確かにね。分かったわ、上手く言いなさい」
服を引っ張り、時宮と軽く打ち合わせる。傍から見れば打ち合わせしてる事バレバレな格好だった訳だが…緋奈もいい加減落ち着かないと説明を聞けないと考えてくれたのか、黙って見ていてくれた。
そして数秒後、俺は適当にでっち上げた話を始める。
「……『三万でどう?』…こう言ってこいつは俺に近付いて…」
「ふんッ!」
「ぐふっ……と…というのは冗談で、時宮はクラスメイトだ。人気者で、勉強も運動も結構出来て、人徳者として定評のある時宮さんだ」
なんか説明をしてたら時宮に脇腹を殴られた。威力が明らかに華奢な少女のそれじゃなかった辺り、霊装者としての力を少し使いやがったな…くそ、暴力に訴えてくるとは…。……ま、ふざけた俺の自業自得ですけどね。
「クラスメイト…という事はやっぱりわたしより年上?」
「そうだな。えーと、ちょっとした手違いで昨日時宮のノートと俺のノートがすり替わっちまって、今日俺はそのノートを学校で探してたんだ。んで暫く探した後にそのノートを昨日持ち帰った事に気付いて、それを渡す為に着いてきてもらったんだ」
「ふぅん…お兄ちゃんが明日返すって言えばよかったんじゃないの?」
「今日課題にそのノート使いたかったのよ」
俺の説明と時宮の返答を受け、腕を組みながらもゆっくりと頷いた緋奈。この様子だと、一応は納得してくれた様だった。ふぅ、即席の話の割にはまぁまぁな出来だったな。アドリブで合わせてくれた時宮にも感謝しねぇと。
「そっか、そうだったんだ…じゃ、もう一度だけ訊くけど、お兄ちゃんは時宮さんと男女の仲ではないんだね?」
「あぁ、そうだ」
「……分かった。時宮さん、なにか勘違いで色々言ってすいませんでした」
「あ、えぇ…私もちょっと頭に血が上ってて短絡的だったわ、ごめんね緋奈ちゃん」
緋奈は俺から時宮へと向き直り、ぺこりと頭を下げて謝罪する。時宮も既に冷静になってた事、そして緋奈が年下という事で矛を収め、自分の非を認めてくれる。ファーストコンタクトは最悪に近かった二人だったが…一応マシなレベルにまでは向上した様だった。
「これでお互いの疑問は晴れた訳だな、よし……あー疲れた…」
「貴方が忘れずにいたら誰も疲れず済んだのよ?」
「はいはい分かってますよーだ…んじゃ思い出したところで行くとするか」
「行く?ノート渡してそれで終わりじゃないの?」
「送ってくんだよ。女の子を夜一人で帰したら親父とお袋に怒られちまうから、な」
ちょいちょいと上を指差し立ち上がる。夕飯は…帰ってきてからこれを元に作り直すか。うん、これなら食材が無駄にならないし少しはマシな味になるもんな。一石二鳥というやつだ。
「それじゃ、そういう事だから私も失礼するわ」
「あ、お茶も出さずにすいません…」
「押しかけた様なものだし気遣いは不要よ。じゃあね」
この二人はやはり良好になった様だった。…まぁ、どっちも多少性格に難はあっても基本常識があるから、変な展開にならなきゃまともに会話出来る訳か。…変な展開になった途端手がつけられなくなるが。
「よし、行くか……と言ったところだが、数十秒待ってくれ」
「なによ?まだ何か用事あるの?」
「ちょっと取ってきたいものがあるだけだ、待ってろ」
説明してる間に持ってこれるだろう…と思った俺はさっさとリビングを出て自室へと向かう。そして自室に入った俺はそのままベットへダイブ…なんて事はせず、目的の物を取り出して玄関へと向かう。うむ、体感では一分経ってないな。
「何を取ってきたの?」
「手紙だよ手紙、ほら」
わざわざ見送りをしてくれている緋奈の姿を目にしながら、手順良く玄関で待っていてくれた時宮と家を出る。その後、時宮の質問に俺は手にしていた古い手紙を歩きながら見せる。……あ、いやこれは…
「なぁ時宮、これ渡しておくからそっち着いたら宗元さんに渡してくれないか?」
「…お祖父様に、それを?」
「怪しいと思うなら中を確認しても構わねぇよ?破ったり捨てたりしようものなら俺はブチキレるがな」
「他人の手紙をそんなぞんざいに扱ったりしないわよ…ま、分かったわ」
俺から受け取った手紙を、時宮はロングコートと羽織りを合わせた様な上着の内ポケットにしまう。そこそこ胸の発育がいい時宮が内ポケットにしまったら手紙曲がるんじゃ…と思ったが、夜道で二人きりの時にセクハラ発言をするのは流石に俺も不味いと思い、出かかった言葉を飲み込む。…出来るだけ綺麗な状態保ってほしいなぁ。
「…ここなら良さそうね」
「良さそう?」
「飛んで行くのよ、そっちの方が速いし」
「え?…いや、俺は徒歩で構わんぞ…?うん、構わんというか徒歩の方がいいな。人間地に足をつけて進む事こそ至高--------」
「つべこべ言わずに行くわよ!暴れないでよね!」
「拒否権無しかよぉぉぉぉぉぉぉぉッ!」
がしっ、と掴まれ光の翼で飛翔する時宮に連れていかれる俺。……ははっ、こっちの世界にもねぷねぷ航空はあったんだな…。
*
科学技術が発展し、世界各国の要素が入り込んだ現代の日本においても、日本家屋…所謂屋敷というものは存在する。勿論屋敷と言っても昔のまま、或いは昔の再現をしているのは外見だけで、内装は現代風になっている事が多い。実用性や安全性を考えりゃ当然の話だが…外見とのギャップが凄いんだよな、これが。
で、なんで俺がそんな事考え出したかっつーと……
「さ、到着したわよ」
「こ、ここかよ……」
目の前に、その馬鹿でかいお屋敷があったからなんだよな。
宮殿の様な見るからに広い屋敷と、それを挟む様に立つ二邸の屋敷。合わせた面積はどっかの国の城にも匹敵する様な屋敷の目の前に、俺は連れてこられていた。
「……時宮、お前が連れてきたかったのは霊装者の本拠地だよな…?」
「そうだけど?」
「……ここがそうなのか?」
「そうだけど?」
「…ここって確か、重要指定文化財に認定されてて立ち入り禁止だったんじゃ……」
「そうだけど?」
「お前俺が知らない間に同じ言葉繰り返すだけのNPCになったの?」
「違うわよ。順を追って説明してあげるから着いて来なさい」
残念、四度目は「そうだけど?」とは言ってくれなかった。激しくどうでもいいけどな。
「まず始めに、貴方の言う通りここは重要指定文化財になってるから、一般には立ち入り禁止よ」
「だよな…ってどこ行くんだ?」
「入り口よ。表向きは立ち入り禁止なんだから正面から入る訳ないじゃない」
時宮は屋敷にではなく、近くの小さなビルへと歩き出した。向かった先のビルに書いてあるのは聞き覚えのない塾の名前。……この様子だと、この塾はダミーだな。
「後で教えるけど、こういう入り口は他にもあるわ。でも当然こっちも一般には秘匿なんだから、人目には気を付けなさいよ?」
「それ位言われなくても分かってるよ」
ビルに入り、ドアノブの付いた扉の前へと立つ時宮。時宮が扉の横の壁に指をかけるとその部分が上にスライドし、隠れていた液晶が露わになる。
「…なんかちょっと秘密基地っぽいな」
「あら、興奮してるの?」
「……少しはするさ、男だからな」
液晶は指紋認証装置だったらしく、時宮が指を当てると電子音が鳴り……扉が横にスライドした。
「…って、引き戸だったのかよ!?ドアノブは!?」
「ダミーらしいわよ?こういうのは念入りに作っておいて損はないし」
指紋認証とその隠蔽で十分だろ…どんだけ資金潤沢なんだ……とは思ったが、完成してる上十中八九時宮が設置の主導をしていた訳ではないだろうから、言ったところで仕方ない。…これは今後も突っ込みどころあるんだろうなぁ…。
扉の先…は部屋ではなくてエレベーター。それで地下へ潜り、地下道(空港とかにある動く歩道的なやつが付いてた)を暫く歩き、またエレベーターに乗って、そして……
「--------到着よ。…ようこそ千嵜悠耶。ここが日本に存在する霊装者組織・霊源協会の総本山『双統殿』よ」
*
双統殿に到着してから数十分後。俺は何ヶ所かに連れていかれた挙句、時宮が一人で何かの部屋に入ってしまったせいで廊下でぽつんとする羽目になった。
「むぅ…全然知らない場所でただ待たされる事の辛さ分かってんのかあいつは…」
つい一時間程前に今とそっくりな展開が違う立場であった気がするが…まぁ気のせいだろう。にしても、やはりと言うべきか何と言うべきか、双統殿の内装は昔っぽさが全然なかった。現代的っつーか…中学の時の課外授業で行った国会議事堂みたいな感じだな。まだ廊下と幾つかの部屋しか見てないが。
「うーん、どうしたものか…」
ここが学校か時宮の家かなら扉をノックしつつ「いつまで待てばいいんですかねー?」とでも言うところだが、ここは知らない奴等ばっかりの場所。知らない方々に変な目で見られるのは勘弁だっての…。
仕方ない、ソシャゲでもして時間潰すか…と思い携帯を取り出した瞬間、時宮が入っていった部屋の扉が開く。
「やっとか…時宮、お前この部屋で何を……うん?」
何をしてたんだ、と言いかけて俺は首を傾げる。時宮は何かさっきと変化していると思ったからだ。そして一瞬の思考の後、変化したのは服装である事に気付く。
「…着替えしてたのか?」
「そうよ?貴方を連れてくるのはれっきとした任務だもの。ブレザーで『連れてきました』とは言いたくないわ」
先程までコート羽織り(正式名称なんだろうな)の下にうちの学校の女子様ブレザーを着ていた時宮だったが、今はどこか軍服や制服っぽさを感じさせる服装に変わっていた。
「…あの、俺もブレザーなんですけど…」
「貴方の制服はないんだからそれでいいわよ。学生服ってのは正装として扱われるんだし」
「そりゃそうだが…」
俺…というか大概の学生にとって学生服はしょっちゅう着てる服であり、正装と言われてもその実感に欠ける。……恐らくはお偉いさんに会うというのに、普段から着てる服というのはどうも釈然としない。…ちぇっ、知ってりゃ親父のスーツ借りてきたのに…。
再び時宮に連れられて歩く俺。その結果辿り着いたのは、扉の時点でなにか風格のある部屋。…ダンジョンならボス部屋だな、こりゃ。
「到着っと…これから会うのは霊源協会の二大トップの一角とその娘夫婦よ。間違っても失礼のない様に、いいわね?」
「…失礼があった場合、袋叩きにされるとかすんの?」
「する訳ないでしょ…お母様もお父様もお祖父様も皆、聡明で穏和な方なんだから」
「そうなのか……って、これから会うのお前の家族かよ!てかその言い方だとトップの一角って宗元さんだよな!?…宗元さんほんとにそこまで上り詰めたのか…」
「ちょっ、大声出すんじゃないわよ!…まぁそういう事だから、分かったわね?」
また叫ばれたらたまらない、と言いたげな様子で時宮は返答を待たずに扉をノックし中へと入る。それに続いて中に入る俺。
そこは予想通り、お偉いさん(この場合は宗元さんか)の執務室だった。気品を感じる部屋の中にいたのは威厳を感じるご老人と、なんとなく時宮に似ている大人の男女。その三人は……怪訝な顔で、こちらを見ていた。まぁそりゃそうだよな!いきなり廊下から大声聞こえたら、そりゃ扉の方を怪訝な顔で見るよな!
「あ、えと、その……彼のご無礼をお許し下さい…」
「あ、あぁ…気にしなくていいよ妃乃。そちらの君もね」
「貴方が、例の方かしら?」
バツの悪そうな様子で謝る時宮と俺を気遣う男性と、時宮が気にし過ぎない様に話を進めようとする女性。考えるまでもなく、この二人が時宮のご両親なんだろうな。
「あ……はい、そう…らしいです」
「そうです。魔物に襲われているところを救出し、一度彼の自宅へ寄った上でこちらへ来ました」
『自宅へ…?』
時宮の言葉を聞いた瞬間、両親の目付きが若干鋭くなる。…あ、安心して下さい親御さん。やましい事はしてませんから!しょうもない言い争いはしたけど!
「ふむ…ご苦労であったな妃乃。では、君には自己紹介をしてもらおうか」
そこで口を開いたのはご老人。俺に老人の知り合いなんてあんまりいないが…間違いない。俺の目の前にいる老人は……間違いなく、あの人だ。
「あ、はい…俺…もとい、私は千嵜悠耶と申します。諸事情により、霊装者や魔物についてはそれなりに知識があります。それと、時宮さんとは同級生でして…本日は、危ないところを助けて頂きました。ええと……」
突然自己紹介、と言われても何を言っていいのか分からず、頭を捻りながら言葉を紡ぐ俺。意見を求め隣の時宮を見ると…我関せずみたいな顔をしていた。くそう…。
続いて見たご両親の顔は結構驚いた様子。驚いたのは知識の部分だろうなぁ…と思いながら最後に見た老人は……見覚えのある、老人とは思えない笑みを浮かべていた。
それを見て、つい同じく笑ってしまう俺。時宮親子がなんだろう…と小首を傾げている中、俺は懐かしさを感じながら言った。
「……お久しぶりっすね、宗元隊長」
「ふん、手紙を見た時は心底驚いたわ。お前もほんと運のない人間だな」
時宮親子が驚愕で言葉を失う中、老人…宗元さんは俺の前まで来て、俺の肩に手を置く…と言うか、当てる。
若干痛さを感じる勢いで肩に手を置くのは宗元さんの得意技。…これも、凄く凄く懐かしかった。
「随分老いちまいましたね、やっぱ年には勝てないですか」
「人間なんだから仕方ねぇだろ。お前は…意外と見た目変わってないな、インチキでもしたか?」
「してねぇよ!一応転生っすからね!?インチキ転生とか俺してないですから!」
軽口を叩き合う俺と宗元さん。それは正に昔馴染みが再開した時のやり取りであり、それがまた外野状態の三人の驚きを加速させる。
それでも一足先に冷静さを取り戻した時宮の父が、おずおずと会話に入ってくる。
「お、お義父様…千嵜君とは知り合いで…?」
「む?あぁ…すまない、つい大人気なく会話をしてしまったな。…坊主、今は今の名で呼んだ方がいいか?」
「そっちで頼みます…てか宗元さんは前から名前じゃなくてしょっちゅう坊主って呼んでた気が…」
「ふっ…皆、私が第三次霊装大戦に参戦した事、そしてその戦いの末『熾天の聖宝』が顕現した事は知っておろうな?」
「はい、存じております。聖宝は出現条件、使用条件不明ながら手にした物のいかなる望みでも叶えるものと……まさか…!?」
「左様。彼…千嵜悠耶は、第三次霊装大戦にて私と共に戦い、聖宝に触れた人間だ。そして彼は転生を…平和な世界に生まれ変わる事を望んだ。彼が私の元部下である事…それは、私が転生前の彼に送ったこの手紙が他でもない証拠だ」
宗元さんは、机に置いてあった手紙を…俺が時宮に頼んでおいた手紙を、俺達全員に見せる。
そう…俺は生まれ変わった人間。霊装者として生き、その果てで触れた聖宝によって転生した--------元霊装者だ。