双極の理創造   作:シモツキ

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第三十三話 拠点強襲作戦、始動

ある日を境に、魔人調査はぐっと進んだ。なんと、運良く寝ぐらへと帰る(勿論行き先が寝ぐらだと分かったのは到着してから)魔物を発見し、その魔物を追跡した結果寝ぐらが魔人の拠点でもある事が判明したのだ。…よっぽど運が良かったのか、よっぽどその発見した部隊が優秀だったのか、よっぽどその魔物が抜けてたのかは知らないけど、あり得ない様な出来事も世の中起こる時には起こるらしい。

それを機に拠点強襲作戦が発案され、その準備が着々と進められてきた。そして……今日、その作戦が実行される。

 

「おーいたいた、元気か顕人」

「あ…上嶋さん」

 

協会からの通達通り、双統殿へとやってきていた俺。もう後は作戦開始をするだけ、という段階では逆にもうやる事なんてなく、だからって呑気に休んでたり出来る程精神が太くない俺は手持ち無沙汰でただ座ってたところ、武装した状態の上嶋さんがやってきた。

 

「よっ、どうしたそんな緊張した様な顔して」

「い、いや大規模作戦前なら緊張するのは当たり前だと思いますけど…」

「そりゃ確かに大規模作戦前だ。けど……お前は待機してるだけだろ?」

「…………」

 

……そう、協会から通達が来たと言っても別にそれは出撃命令ではない。この作戦の決行に際し予想外の事が起きた場合の保険として、出撃命令が出ていなくても出来る限りこの地域の霊装者は双統殿に集まる様指示が出ていただけなのである。しかもその保険というのは『ほんとにどんな予想外があるか分からない以上、皆一ヶ所に居てくれた方が色々楽』という戦闘を期待されての事ではないのである。……綾袮さん、俺の力を誇張表現しちゃったってなんだったんだよオイ…。

 

「……ん?どしたよ顕人」

「ちょっと綾袮さんの取り越し苦労に安心していいのか拍子抜けした方がいいのか迷いまして…」

「なんだそりゃ…」

「色々あったんですよ…上嶋さんは出撃ですか?」

「あぁ、俺の部隊は雑魚担当さ。つっても、作戦が作戦だけにいつも通りの感覚で…って訳にゃいかねぇだろうがな」

 

特に出撃準備をしていない俺と違って、上嶋さんは現在フル装備。…親切に質問以上の事を返してくれたけど、これ見りゃ分かるだろって質問だったなぁ…双統殿の警護担当の可能性もゼロじゃなかったけど。

 

「…上嶋さんは緊張してないんですか?」

「してない、つったら嘘になるが…魔人討伐部隊や当主様達の護衛部隊に比べれば負担も難易度も低いからな。そう考えれば多少は楽になるし……こんなんでも俺は隊長の一人だ。部下や周りの奴等の為にも緊張してる素振りは見せない様にしてんだよ」

「……上嶋さん、格好良いっす」

「だろ?憧れてくれても構わないぜ?」

 

…なんて、調子のいい事を言う上嶋さん。その言葉が本心からのものなのか、それもまた俺を心配させない為の演技なのかは分からないけど…そういうところは、本当に格好良いと思う。……これでナンパ癖がなきゃモテるんだろうけどなぁ…。

因みに、国防省の重役としての肩書きも持つ協会のトップ二人(綾袮さんと時宮さんのお祖父さん)は、国防省での会議……という名目で、護衛を連れて双統殿を出ているらしい。何でもこれはこちらが拠点へ攻め込むつもりだというのを魔人側に悟られない様にする意図があるんだとか(綾袮さん談)。

 

「おい今失礼な事考えただろ…」

「さ、サイコメトラーですか貴方は…」

「地の文読んだだけだが?」

「いやなんでわざわざ心読んだ方面に持っていこうとしたのにそれ言っちゃうんですか!あんまり良くないですよそういう発言は!」

「第一話からそういう発言した奴がそれ言うか…」

「うっ……」

 

メタ発言は千嵜と綾袮さん、それに受動的な形で俺が言う位だろうと思っていたら、まさかの上嶋さんがぶっ放してきた。こりゃ今後も誰が言うか分かったもんじゃねぇぞ……って、なんだこの思考は…えーと、なんの話だっけ…。

 

「あー…こほん。本当は出撃直前で言うべきなんだと思いますけど…上嶋さん、それにここにはいませんけど赤松さんと杉野さんにもご武運を」

「おう、二人に伝えておくぜ。んじゃ、俺も人生の先輩として一つ言っとくか。…顕人、お前後悔は出来るだけ避けたいと思うよな?」

「へ?……そりゃまぁ、そうですけど…」

「だったら、準備は怠るなよ」

「え、と…それは……」

 

上嶋さんが真面目な表情を浮かべたのを見て、言葉を心して聞こうと考えた俺だったが……聞いた後まず、俺は困ってしまった。確かに後悔先に立たず、と言うし準備を怠るなというのには異論ないけど、それは当たり前過ぎて何とも……

 

「俺はな、選んだのに実行出来なかった時が一番後悔すると思うんだよ」

「…選んだのに実行出来なかった時、ですか…?」

「戦う、逃げる、隠れる…出来事も選択肢も世の中には山程あるし、どれが正解か、正解は一つなのかってのは選ぶ段階じゃまあまず分からねぇものだ。だから後悔しない選択だとか、どうせ後悔するならやって後悔を…なんて類いの言葉が生まれたんだろうけどよ、折角選んだのに、自分の答えを出したのに準備を怠ったがばかりに何も出来ず終わった…となったら悔やみきれないだろ?全力出して失敗したならある意味充実感はあるだろうし、選択ミスだった場合は間違ってたんだって諦めが付くが、準備不足だったら実力発揮も正解かどうかの確認も出来ないんだ、そんなの一番辛いに決まってる。だから、準備はしっかりしておけ。分かったか?」

「…はいっ!」

 

長々と上嶋が言った事は、決して目から鱗の情報だった訳じゃない。結論だけを手っ取り早く言うならそれこそ「準備は怠るな」の一言で終わる様な事で、そりゃそうだで流してしまう事も出来る話。…けれど、その言葉には上嶋さんの思いが籠っていて、ずっしりとした感覚を持ちながら俺の心へと入ってきた。……きっと、色んな経験をしてきた人なんだろうな、上嶋さんは。

 

「さって、いい感じの事も言ったし俺はそろそろ行くわ。……ん?いい感じの事って死亡フラグになったりするか…?」

「え、ええと…多分今のはセーフだと思います…」

「だ、だよな…うん、セーフであってくれ…」

「……上嶋さん、最後に訊きたいんですけど…もしや上嶋さんは俺に気遣ってきたんですか?」

「お前が可愛い女の子ならそうだったかもな」

「それは残念でしたね……って、締めの言葉がそれでいいんすか…」

 

可愛い女の子だったら俺もナンパ対象になるのか…と内心かなり反応に困っていたら、ひらひらと手を振って上嶋さんは行ってしまった。…結局なんだったんだろうか…。

 

「…緊張解す為に屋内散歩をしてた、とかかねぇ……」

 

そうぼんやりと考えながら、俺は近くの椅子へと腰を下ろす。双統殿のどこにいろ、という指示は受けていない為俺同様作戦に参加しない霊装者は各々思い思いの場所にいる訳だけど…今俺のある場所、所謂エントランスには比較的若い人達が多く見受けられる。多分、その人達はこれまた俺と同じ様にまだ霊装者となってから日が浅くてどこにいたらいいか分からないんだろう。

 

「……千嵜…も向こうで同じように手持ち無沙汰にしてるんだろうなぁ…」

 

経緯が経緯なだけに俺よりずっと霊装者として経験豊富な千嵜だけど、能力の方は事実上のリセット(ゲームでいうジョブチェンジの方が表現的に近いらしいけど)を受けてるんだから出撃命令が出ているとは思えない。…指揮系統も違うし断定は出来ないけど。

協会は宮空家の派閥と時宮家の派閥から成り立っていて、本部である双統殿は二つの棟をそれぞれの派閥で分ける様にして運営している。だからって敵対してる訳じゃないし、自分が所属していない方の派閥の棟に行ったらいけないなんて事もないから千嵜に会いに行こうと思えば行けるけど…そこはやはり男子高校生。そういうのはちょっと恥ずかしいのだ。

 

(…恥ずかしい、と言えば……)

 

ぶつくさと独り言を口にしたり、ぼけーっと色々考えてる事からも分かる通り、今俺に同行者はいない。で、周りを見回すと同じく一人でいる人もちらほらいるけど…全体的には数人の集まりを作っている人の方がずっと多い。……多分、普通の霊装者は数人か十数人で揃って訓練を受けてたり勉強してたりするから自然と面識が出来るんだろうなぁ…。

 

「……ちょっと移動するか…」

 

怪我はそれに気付いてから痛くなるという様に、自分が今端から見るとぼっち状態なんだろうなぁと思って(気付いて)しまうと途端になんだか恥ずかしくなってしまう。……と、いう訳でエントランスを後にする俺。…別にぼっちが辛い訳じゃないよ?「ぼっちかな?」って思われてる(と思ってる)のが嫌なのであって、一人なら一人でやれる事あるし、辛かったりは断じてしないんだからね?

 

「…とはいえ、どこ行こう…」

 

協会内において俺が知ってる人は殆ど作戦に出てしまっているだろうし、何度か来ているとはいえ記憶にある部屋なんて高が知れている。…まさかゲームコーナーや遊技場がある訳ないし……今俺が出来る準備でも探そうかな。

…なんて考えながら、双統殿内をうろつく俺だった。

 

 

 

 

「……やべぇ、迷った…」

 

双統殿に呼ばれて、暫く待機してて、何もないから暇になって双統殿内を散歩し始めて。気付けば俺は、迷子になっていた。

 

「何にも考えず歩くんじゃなかった…」

 

確固たる目的があった訳じゃなく、ただ暇潰しにが出来りゃそれでいいと思っていたとはいえ、迷子になるのは流石に洒落にならない。迷子という状況事態もそうだし、何よりこの歳になって迷子というのは恥ずかし過ぎる。

 

「電話…は論外だな。ふむ…」

 

一瞬俺は携帯を取り出そうとしたが…即ポケットから手を引く。仮に電話したとして、一体こんな目印も何もない場所を相手にどう伝えるというのか。そして恥ずかし過ぎる状況を初手から誰かに教えようとする馬鹿がどこにいるというのだろうか。……いやほんとに危機的状況になったら恥なんて気にしてる場合じゃないけど、今はまだそういう段階じゃないし…。

考えながら取り敢えず歩く。ここがジャングルとかなら無策では歩くのは危険だが、生活圏(というか屋内)のここには携帯という最終手段があるしな。

 

「非常階段でいいから見つかってくんねぇかなぁ……ん?」

 

拠点強襲作戦中なだけあって人気のないこの階層。当然人がいなければ生活音もしない訳で、さっきからずっと俺の周りはしーんとしていたのだが…廊下を曲がった瞬間、何か賑やかそうな音が聞こえてきた。しかも、耳を澄ますとその中には人の声も混じっている様に聞こえる。

 

「……不自然だな…」

 

この階層に人がいるのは何らおかしな事じゃなく、人がいるならそれ相応に音がするのも当然の事。だが、どうにも聞こえてくる音は今の状況……作戦発動中には似つかわしくない。具体的に言えば、なんかちょっと明る過ぎる。流石の俺も、こういう中で明るく賑やかにしてるってのは理解が出来んぞ…?

 

「…ここ、じゃないな…ここでもない……」

 

気になった俺は音の発生源を捜索開始。どこら辺から聞こえてきているのか大体の見当を付け、扉に一つ一つ耳を当てて(何してるか知らん奴から見れば怪しいんだろうな、今の俺…)聞き分ける事約二分。遂に…って程苦労はしてないが、それらしき場所を俺は発見した。

 

「…………うん、ノックしてみるか」

 

十数秒扉の前でどうするか考えた後、迷子状態である事を思い出して俺はノック。…そこ、見つけた後どうするか考えてなかったのかよとか言わない!

 

「…………」

 

トントン、と手を握り指の付け根で扉を叩いて反応を待つ。……が、反応がない。相変わらず明るい感じの音は聞こえてくるものの、扉が開いたり返事の言葉が返ってきたりは全然しない。…と、言う事でもう一度ノック。

 

(…反応無いなぁ…聞こえてないって事はねぇよな…?)

 

控えめに叩いた一回目と違い、二回目はそこそこの強さで叩いたんだから普通なら聞こえている筈。なのに返事なしという事から考えられるのは…中に居る奴が居留守を使っているか、実はこの扉が防音仕様で中ではどんちゃん騒ぎをしている(から実際にはノック音が聞こえていない)かの二択。

 

(……とは限らないか…そういや音はテレビ番組っぽいし…)

 

どっちにしろ碌でもないな…と思ったところで第三の可能性、テレビ点けっぱなしで寝てて音が聞こえ辛い&第四の可能性、この部屋を使っていた奴がテレビをを消し忘れて出て行ってしまったが俺の頭に浮かび上がる。どっちもあんまり現実味がない(最初の二択も大概だが)が……もうここまで来たら確認するしかないだろう。しれっと道を教えてもらう為にも、俺はここで返事をしてもらう可能性に賭けるしかない。そう謎の闘志を燃やし、俺は三度目のノックを──

 

「……何…?」

「あ……」

 

……しようとした瞬間、扉が開いた。叩く一瞬前に開いたもんだから、片手だけガッツポーズをしているみたいな体勢になってしまった。…って、そんな事はどうだっていいんだよ…。

40度程開かれた扉から顔を出した(というか顔が見える様になった)のは、俺より少し年下に見える少女。そこに一つ情報を付け加えるなら……その少女は、何だか物凄い陰気&ダウナーな感じの雰囲気を纏っていた。

 

「……何…?」

「…ど、どうも……」

「…だから、何……?」

 

覇気をまるで感じられない目で俺を見て、ぼそっと同じ言葉を再び言った少女。対する俺はまさかこんな人物が出てくるとは思ってなかったものだから言葉に詰まり、戸惑いながら一先ず挨拶を口にしたら…少女はむっとした様に三度同じ言葉を、しかも今度は『だから』付きで返してきた。…うん、これは俺の第一印象悪くなってるな…。

 

「あー…そのだな、音が気になって来ました」

「は…?……あ、プラグ抜けてる…」

 

いい会話の切り出しが思い付かなかった俺はシンプルに来た理由を伝える事に。すると少々はまず「何言ってんの?」みたいな表情を浮かべ、続けて何かに気付いた様に振り返って、その後部屋の中へ引っ込んでいった。そこで俺がこっそり開いた扉から覗いてみると…中で少女がテレビにヘッドホンのプラグを挿していた。あ、やっぱりテレビの音だったのか…てかプラグ抜けてるのに気付かなかったって、ベタな事するなぁ…。

少女がテレビ前でごそごそする事数秒。俺が首を引っ込め廊下で待っていると、プラグをきちんと挿した事で音の聞こえなくなった部屋から少女がまた顔を出した。

 

「…以後気を付けるから、じゃ」

「おう。……ってちょっ!?話終わってない話終わってない!」

 

申し訳程度の終わりの挨拶と共に扉を閉められ、俺は慌ててまた扉を叩く。な、なんなのアイツ!?こんな一方的に会話終わらせる奴なんて滅多にいないぞ!?俺ですらもうちょっと気を付けるぞ!?ほんとなんなの!?

 

「……何?」

「あ、よかった出てきた……何?じゃなくてだな…まだ話は終わってないんだ」

「…騒音問題で訴訟でも起こしたい訳?」

「そんなデカい話じゃないしそもそも音に関してはさっきので済んでるから…別件だよ別件」

 

元々こんな感じの奴なのか、この数十秒で俺を凄く嫌いになったのかは知らないが、とにかくこの少女は愛想も会話へのやる気も感じられない。ほんと他人の事言えない俺だが、何とか道教えてもらわねぇと…。

 

「別件?…てか、あんた誰よ…」

「ふらふらしてた霊装者さ、そういうお前は?」

「あんたに名乗る程のものじゃないわ」

「突然謙虚になったな…っていや、それ体良く自己紹介しない気だろ」

「ちっ……」

「えぇー……」

 

初対面の相手を謀ろうとして、それがバレたからってこんなあからさまに舌打ちするこいつは本当に何なんだろうか。…まぁいいや…どうせ今後会う機会もないだろうし、適当に訊くだけ訊いて終わりにするか…。

 

「…こほん。ちょっとエレベーターか階段の場所教えてくれないか?」

「…あんた迷子なの?」

「かもな。で、分かるか?教えてくれたら即立ち去るんだが」

「そこを右に曲がって二つ先を左、その後突き当たりでまた左行けばエレベーターよ」

「うわ、俺が立ち去ると言った途端ちゃんと話してくれたな…」

「悪い?」

「別に……」

 

予想通り、さっさと居なくなるよスタンスで話したらすぐに道を教えてもらえた。へへ、分かり易い奴だぜ…。

 

「まぁ助かるぜ。えぇと、右で左でまた左だよな?」

「そう、途中で忘れてももう教えないから」

「あぁはいはい。んじゃ、邪魔して悪かったな」

 

扉を閉めようとする少女に背を向け、手を挙げて軽く謝罪。相手がもっと丁寧な奴なら俺だってもう少しちゃんと礼を言うが……こいつ的にはちゃんと礼を言うより一秒でも早く行ってくれる方がありがたそうだしな。望み通り適当な挨拶で帰ってやるさ。

そう考えて歩き出す。気を付けなきゃいけないのは二つ先を左ってとこだな、そこ間違えてまた迷ったらアホの極みだし、余計な事考えて見逃したりしない様にしねぇと──

 

「……ん?」

 

右脚を出した瞬間、後ろからどさり、と何かが倒れた様な音が聞こえた。それがちょっとした程度の音なら無視する俺だが…今の音は、明らかに小物が落ちたレベルの音じゃない。それで気になって振り返ると……

 

 

 

 

──先程まで俺と話していたあの少女が、扉を半開きにして倒れていた。

 

「な……っ!お、おい大丈夫か!?」

 

その突然の出来事に目を剥きながらも、急いで戻り少女の身体を仰向けにする俺。あんまりいい印象のないこいつだが、そんな奴でもすぐ近くでぶっ倒れられたら無視なんて出来る訳がない。急にどうしたんだよこいつは…!

 

「しっかりしろ!どうしたんだよおい!…って…いや、落ち着け俺…!」

 

意識を失っている様子の少女の首下に腕を回し、起こそうとして…俺は授業で『意識のない人を強く揺さぶるのは危険』と言っていたのを思い出す。そうだ、こういう時一番不味いのは慌てて適当な対処する事じゃねぇか。だからまずは落ち着くんだ俺、落ち着いて状況確認を……

 

「……っ…」

「…っと、起きたか…ひ、ヒヤヒヤさせんなよ……」

「……あ、あんたは…」

「そうだよさっきの面倒な野郎だよ。お前、今気絶してたんだ──」

「……──ッ!あんたは急いでエレベーターの所向かいなさい!あたしはやる事あるから早くッ!」

「は……?」

 

俺が落ち着こうとしたところで目を覚ました少女。それに安堵しつつ、まだいまいち意識がはっきりしていなそうな少女に俺が説明と質問をしようとして……かなりキツめの指示を飛ばされた。…え、な、何……?

 

「は?じゃないの!いいから早く行きなさい!道筋は覚えてるでしょ!?」

「そ、そりゃ覚えてるが…急に何なんだよ?幾らそんな切羽詰まった顔されたって、数分前会ったばかりの奴にそんな強い口調で言われて素直に従えると思うか?」

「従ってもらわなきゃ困るのよ!一刻を争う事態なの!」

「だからそれじゃ分からないんだよ!俺エレベーターの所行ったらそれでもうOKなのか?違うだろ?言ってくんなきゃ俺何にも出来ないんだって!」

「……っ、あーもう!今魔人討伐作戦中でしょ!でも侵攻をかけようとしてたのはこっちだけじゃないのよ!」

「……っ!?…って事は、つまり…」

「そうよ!あたしも連絡入れるけど、あんたもさっさと降りて部隊に戻ってくる様連絡員に伝えなさい!じゃないと、もう間に合わな────」

 

鬼気迫る表情で俺を掴み、少女は怒鳴る様な声で話す。そしてその少女が結論を言い切ろうとした瞬間……爆発音が響き渡った。


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