双極の理創造   作:シモツキ

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第二百二十九話 己が為の覚悟

「偽移送作戦?」

 

 茅章と話した次の日、俺と妃乃は宗元さんに呼ばれた。やはりいつものように、執務室へと呼ばれ……ソファへ腰を降ろしたところで、早速始まった話、その中で出てきたのが、今の偽移送作戦という言葉。

 

「えー、っと…取り敢えず一回、確認を取っても?」

「確認?なんだ」

「偽も何も、そもそも移送作戦自体俺は知らないんですけど…」

 

 いきなり質問から始まったから、話はある程度進んだ状態なのか、と思った人もいるだろう。だが、そんな事はない。まだ話は始まって、一分も経っていないのだ。まだ冒頭も冒頭だというのに、突然知らない作戦…それも偽verの話になってしまったんだから、理解出来る訳がない。

 

「それはそうだろうな。存在しない作戦を知っていたら、そっちの方が驚きだ」

「はい…?…駄目だ、余計訳が分からなくなった…妃乃、分かり易く教えてくれ…スリーステップ位の、単純明快な感じで……」

「私はその例えがよく分からないわよ…。…分からないのは事前知識が不足してるからではなく、まだ話が始まったばかりだから…ですよね?お祖父様」

「そういう事だ。やはり悠耶一人より、妃乃がいた方がスムーズに話が進むな」

 

 ちらりと視線を向けた妃乃へ宗元さんは頷き、言葉を返された妃乃は今度はこっちを向いてにやっと笑う。…なんだ今の笑みは。もしも宗元さんに認められた事を自慢したくて浮かべた笑みなら可愛いから許すが、煽りの笑みだったってならその喧嘩買うぞこらぁ!

…などというのは、無駄な思考。そういう考えは一旦脇に置いて、ならばと俺は座り直す。

 

「よく聞け、順を追って話す。…まず、今もまだ不明な点、はっきりしない部分はあるが……一部の霊装者及び元霊装者の離反は、覆りようのない事実だ」

『…………』

「そして、彼等の目的…は置いておくにしても、行動目標として、聖宝が挙げられている。離反した人間の言葉を素直に受け取るのは些か短絡的だが、疑わしいというだけで、根拠もなく否定するのはそれこそ短絡的な判断だ。はっきりしていないのなら、はっきりしていないなりに取るべき行動がある。ここまでは、いいな?」

 

 神妙な面持ちで、改めて宗元さんは話し始める。最初に触れたのは現状についてで…俺達は、無言という形での理解を示す。

 離反は、覆りようのない事実。そんなの分かっていたことだが…いざ言葉として聞くと、やっぱり少しくるものがある。

 

「…話を続けるぞ。最早これは言うまでもないが、富士の地下空間…お前達が見つけた場所に、今も聖宝の原形とでも言うべきものが、存在している。先の作戦で完成には近付いただろうが、まだ完全な状態ではない。…現在狙われている可能性があるのは、その聖宝だ」

「顕人…離反した側は、そのような旨で言っていましたね。…つまり、移送というのは……」

 

 見つめる妃乃の言葉に、宗元さんは静かに頷く。さっきまではさっぱり分からなかった俺も、こういう流れがあれば分かる。…移送作戦というのは、『聖宝』移送作戦なのだと。

 だが同時に、分かった事で疑問も浮かぶ。謎が謎を呼ぶ…じゃないが、内容が分かった事で逆にその内容に対しても気になり始める。

 

「移送するかどうかは、俺がどうこう言える立場じゃないですが…移送出来ると?というか、そもそも完成まで移動はさせないって話だったんじゃ?」

「ふっ、だから言っただろう。移送作戦ではなく、『偽』移送作戦だと」

「あ……」

 

 その端的な返しで、俺は理解した。実際にはどうするのかも、移送作戦の前に付けられた『偽』の意味も。

 

「方向性としては、先の作戦と同じだ。移送すると見せかける事で、聖宝を狙う勢力を誘い出す。現在の協会全体としての戦力は落ちている以上、こちらが後手に回るのは避けたいからな」

「聖宝を狙う勢力…」

「そうだ。聖宝の情報が流出した今、搦め手や交渉ではなく、力尽く奪いにくる存在がいてもおかしくはない。使い方次第ではあるが、どんなに組織としての評価や信用を捨てる結果になろうとも、聖宝を使える状態で確保出来たのなら十分過ぎる程の釣りが来る。…聖宝とは、そういうものだ」

 

 そこまで話して、宗元さんは視線を妃乃から俺の方へ。確かにそれはその通りだなと、俺はその視線に頷く。

 普通はリスクがでか過ぎて出来ない事でも、それを上回る成果が得られるんだとしたら、リスクを冒すのも当然選択肢に入り得る。そして聖宝が現状一つしかない…つまり他の勢力に使われてしまえばもう手に入らない以上は、悠長に構えてる勢力なんてないんだろう。

 そしてそれを踏まえた上で、移送という防御が手薄になる隙をわざと作って、攻めさせる。誘い込んで敵を倒し、同時にどこの勢力が狙っているのかもはっきりさせる。本当に、富士での作戦…わざと一見防衛戦力が減ったように見せ、魔物と魔人に攻め込ませた先の作戦と、狙わんとしている事は同じであり……だからこそ、そんな上手くいくものなのかと俺は思う。

 

「偽移送作戦が、何を目的にしてんのかは分かりました。…けど、そう都合良くいきますかね?別の国の勢力はともかく、御道達は最近まで味方だった、それこそ聖宝が簡単には移動させられない事も、防御が手薄に見せかけて…って作戦をしていた事も知っている相手な以上、『偽』の移送だった事は、簡単に予想されるんじゃねーかと思いますね」

「だろうな。…だが、無視はしないだろうさ。偽の行動だと予想は出来ても、間違いなく仕掛けてくる」

 

 断言をする宗元さん。断言するって事は、何かしら根拠がある筈。だから、そりゃまたどうして…と俺が訊けば、宗元さんは言葉を続ける。

 

「確かに先の作戦や聖宝の実情を知る者からすれば、それは怪しい行動だ。だが万が一、本当に移送していたらどうする。その場合、折角のチャンスを逃す事になる。それどころか、凡そ防衛には向かない山中から、組織の総本山へと聖宝が移ってしまう事にもなる。…どれだけ怪しかろうと、本当に移送していたにも関わらず無視してしまった場合の損失が大き過ぎる以上は、動かざるを得ないという事だ。心理的にも、合理性の面でも、な」

 

 もしも、本当だったら?…その可能性を完全否定するだけの根拠がない事と、無視した場合に起こり得る変化が相当なものである事の二つがある限り、無理する事など出来ないのだと、宗元さんは言った。…確かに、そうだ。十中八九偽の移送だったとしても、それを考えれば無視は出来ない。自分達以外にも狙っている勢力があると分かっているのなら、尚更先を越される事を恐れて動かざるを得ない。

 

「そして、富士での作戦を引き合いに出しているが、その時とは大きく違う点が一つある」

「防衛対象…聖宝の有無ですね」

「その通りだ、妃乃。富士と違い、今回は誘い出す場所に聖宝はない。初めから突破される事を意識するんじゃ世話ないが…仮に防衛を突破されたとしても、そこに存在しない以上は、奪われる事もまたないという事だ。…尤も、富士から碌に離れない内にバレてしまえばそれも意味はなくなるが」

 

 そう言って、宗元さんは肩を竦めた。ここまで聞いてきて、俺も大体作戦の事は理解出来た。やろうとしている事は単純だが…作戦にしろ機械にしろ、単純な作りの方が壊れ辛いというもの。だからこの作戦を悪いとは思わないし…とはいえまだ、疑問も残っている。

 

「…まさかとは思いますが、聖宝が本当にある場所…富士の地下空間から、全戦力撤収させるなんて事は……」

「するか馬鹿。移送が嘘だった場合に備えて富士にもある程度の戦力を向かわせてくるに決まってるのに、そこで地下を丸腰にしてどうする」

「いやんな事は分かってますよ、しませんよね?…って訊きたかったんですよ俺は…。…けど、そうだとしても戦力は……」

「えぇ、移送を装う以上、表立って残せる戦力は本当に僅か。逆に移送の方は、これが本当の移送だと思わせる為、誘き出した勢力に勝つ為に、かなりの戦力を用意しなきゃいけない。…目立つ準備も出来ず、僅かな戦力で…少数精鋭で聖宝の防衛に当たらなきゃいけない事が、この作戦最大の難点って事になるわ」

 

 酷ぇ、決め付けからの馬鹿呼ばわりなんて…というのは置いとくとして、妃乃の言う通りだと俺も思う。作戦の性質上、どうやったって富士には極一部しか残せないだろうし、だというのに責任は重大。移送が嘘だとバレなきゃ、そもそも戦いにすらならないかもしれないが…間違いなく、一番大変になるのは富士に残る部隊だろう。

 

「…因みにこれ、どの勢力も全く仕掛けてこなかった場合はどうするんで?」

「これだけの餌と万が一のリスクがあっても尚、動かないようならそれは初めから脅威などではないという事だ。眠れる獅子は本当に獅子かどうか見極める必要があるが、眠り続けるのであれば、獅子だろうと何だろうと関係ないからな」

「それは……や、それもそうですね…」

 

 そんな単純な話なのか?一度の作戦で、仕掛けてこないなら脅威じゃないと判断するのは早計じゃないだろうか。一瞬俺はそう思ったが、すぐに考え直す。動くという判断、動くという決心…それも実力の一つであり、仮に相手の中に「いざとなれば動く」という勢力があったとしても、それは裏を返せば追い詰められるまでは碌に動かないという事であり、ならばやはり積極的な警戒は不要だろうと。こっちの想像が及ばないような理由で仕掛けてこなかったんだとしても、その理由が想像出来ないレベルなら、どっちにしろ対応なんて出来ないだろうと。

 戦いにおいては、優先度を見極める事も重要。全てに全力を注げるだけの力があるなら別だが、そうでなければ無駄を削り、必要なところへ必要なだけのリソースを割く事が、全体としての勝利に繋がるんだから。

 

「目下、部隊編成を構築中だ。実質的な内部抗争の面もあり、聖宝も完成が近い以上、絶対に失敗を…敗北をする訳にはいかん。必要ならば、俺が出る事も考えている」

「……!?お、お祖父様がですか…?」

「心配するな、妃乃。じじいにはじじいなりの戦い方がある。…まあ尤も、俺が出にゃならん状況になった時点で、これまで協会が築いてきた地位が崩れかけてるようなものだがな」

 

 だから、そうならないようにしなきゃいけない。宗元さんの言葉の裏には、そんな意図もあるように感じた。

 まあともかく、それ位出し惜しみなしで作戦を遂行させる気だって事は分かった。最悪の場合とはいえ、宗元さんも出るって事は、恭士さんや由美乃さんも出る可能性はあるんだろう。そして、要職に就いている人間が富士山側に残っていたら、間違いなく怪しまれる訳で……って、うん…?

 基本は騙す事前提な以上、宗元さん達がいるとすれば、各拠点や移送部隊の方だろう。逆に富士山で、本当の意味での聖宝防衛に就くのは、単純な強さだけじゃなく、単独での戦闘でも十分実力を発揮出来て、本当はこっちに聖宝があると知っていても口外しないという信頼を置けて、更には離反しないという意味での信頼も開ける霊装者に限られる。そしてわざわざ、ここに呼んで作戦の話をしてるって事は……

 

「…ほぅ、その顔…中々察しが良くなったじゃねぇか、悠耶」

「…俺は、一介の霊装者な筈なんですけどねぇ……」

 

 俺の顔を見て、宗元さんがにぃっと口角を吊り上げた事で、俺の中の「まさか」は「やっぱり」に変貌した。…俺こと千嵜悠耶、どうやら担当は富士での聖宝防衛になるようである。

 

「お祖父様から信用されてるって事なんだもの、光栄に思いなさいよね」

「いや、俺そんな忠義の人間じゃねぇし…まあもう歳いってる宗元さん自身が出る覚悟決めてるってなら、それに応える位の事は俺もするけどよ…」

「へっ、ぶーぶー言いつつも毎度頑張るお前のそういうところ、俺は前から悪くないと思ってるぞ」

「そりゃどーも…」

 

 今も昔も、宗元さんはこうやって俺を子供扱いする。実際俺は年下だし、今となっては子供どころか祖父と孫レベルの差になってる訳だが…歯痒いなぁ、こういうのって。子供扱いするなって言ったら、それこそ子供っぽく映るんだから。

 

「…ごほん。とにかく悠耶、それに妃乃にも、俺は聖宝の防衛に就いてもらいたい」

「分かりました、お祖父……え、私も…?」

 

 既に伝わってるとはいえ、ちゃんと言っておくべきだろう…って事なのか、改めて言う宗元さん。それに俺は頷こうとし…「へ?」となった。目を丸くした、妃乃と共に。

 

「妃乃もだ。戦闘能力、判断力、信頼…凡ゆる面において、妃乃は申し分ないからな」

「あ、ありがとうございますお祖父様…。…でも、私が残ると……」

「おかしいと思う、か?…いいや、逆だ。司令としてだけでなく、一騎当千の霊装者としてもこれまで動いてきた妃乃ならば、『何らかの目的を持った別働隊』として見られる可能性も高い。別の作戦も同時展開している、敢えて遅れて出発する事により、移送車両が襲われた際、移送部隊と共に敵を挟撃出来るようにしている…なんであれ、妃乃の存在はむしろ、勘違いを誘発する要因になり得ると、俺は見ているのだ。今回もまた、大変な役目をさせる事になるが…引き受けてくれるか?妃乃」

 

 高評価に一度は嬉しそうな顔をした妃乃だが、自分が…立場ある人間が残るのは、偽装の面で大丈夫なのかと問いを返す。そして、それに対する宗元さんの回答は、分かるような、分からないような…少なくとも、ここまでの説明に比べるとすとんと納得がいくものではなく、だが当の妃乃自身にはちゃんと伝わっていたようで……引き受けてくれるか?という言葉に、妃乃はしっかりと頷いていた。

…もしかすると、この責任感の強さも理由の一つかもしれない。全員とは言わずとも、離反した霊装者達の中には、妃乃の責任感の強さを見てきた人がいる筈で、それを知っているが故に、妃乃へ対し「完全に撤退が終わるまで、責任を持って現場に残っている」…という勘違いをする可能性がある。そんな事も、宗元さんは考えているのかもしれない。

 

「ならば、必要事項は順次伝える。当然妃乃は、会議の場で直接知るだろうが、な」

「分かってます。…因みに、私達以外の人員は……」

「選定中だ。移送部隊の方もだが、離反せずスパイとして残っている者がいるかもしれないからな。だからこそ、ここで話した事は口外厳禁だ。実際の作戦でも、大半の霊装者には『偽』移送であるとは伝えない事になるだろう」

(大半の霊装者には、か……)

 

 情報流出の危険を避ける為、そしてそれが失敗に繋がらないようする為に、情報の統制をするのは至って普通の事。一般の社会や組織でも当たり前のように行われてるだろうし、言ってしまえばサプライズパーティーだって、実質的には同じもの。だからこれを悪くないというのなら、その善悪の価値観は現実に全く即していないものだろう。

 だが、組織の都合で真実を隠し、しかもそれを幾度となく行う在り方が、離反の要因となった事も事実。…そこについて、宗元さんはどう思っているのだろうか。仕方のない事だと思っているのか、それとも……

 

「…悠耶、悠耶ってば」

「んぁ?…あ、すまん。なんも聞いてなかった」

「いや話の最中なんだからちゃんも聞きなさいよ…」

 

 ちゃんと話を聞けという、全くもってご尤もな返しを受けて、俺はこくりと一つ首肯。

 どうやらまだ、後一つ宗元さんから言いたい事…というか、訊きたい事があるとの事。それが作戦の事か、それ以外の事なのかは分からないが、質問されるのであれば答えるまで。そう思い待つ俺、それに妃乃へ向けて、宗元さんは言った。

 

「最後になるが…この作戦は、間違いなく同じ霊装者との戦いになる。移送部隊はまだ、弾幕や陣形で接近を許さず、そのままここ周辺まで逃げ切るという戦い方も出来るが、聖宝防衛はそうはいかない。もし勘付かれ責められた場合、撃破ないし撃退は必ず迫られる。同じ人間を…いや、元は同胞だった、友だった相手であろうとも、戦う事は出来るか?」

 

…それは、基本にして最も重要な事。考えなければいけない、避けては通れない壁。

 歴戦の妃乃でも、人と戦う事が予め分かっている作戦なんて、躊躇う部分はあるだろう。むしろ個人的には、躊躇い無しの方が嫌だ。

 一方俺は…ああそうだ。昔はそっちの経験の方が多かったから、戦う事自体に躊躇いはない。だが、元仲間と…もしかすると、御道と矛を交えるかもしれないと考えると……正直、戦えると即答する事は出来なかった。

 

「すぐに答えろとは言わない。だが…覚悟は、決めてほしい。覚悟なく戦場に立てばどうなるかは、分かっている筈だ」

 

 頭では答えが出ている。だが心がそれに躊躇いを抱く。そんな中で、真剣な眼差しをした宗元さんに言われ…それには俺も妃乃も、深く頷いた。覚悟なく戦場に立てば、それは迷いや躊躇いに繋がり、そのせいで命を落とす事は決して特別な事じゃないと…戦いにおいては普通にあり得る事だと、分かっているから。

 ならば…自分の身を守るのであれば、無理矢理にでも覚悟を決めるのが一番だろう。……それで、後悔しないのなら。

 

「…すまないな、こんな覚悟を強いる事になって」

「…いえ。そりゃ確かに、楽な覚悟じゃないですが…戦いから逃げれば、得られないものも、失うものも、俺にはあります。そうしない為なら…覚悟決めてやりますよ、全力で」

 

 すまない。…そう謝る宗元さんに俺は首を振り、言葉を…思いを返す。

 ああ、そうだ。俺は死ねない。俺には大切なものが、大切な人達が、いるんだから。その為なら、悲しませない為なら、なんだってする。だが…俺は茅章と話したじゃないか。直接会って、聞いてやろうって。そして俺がちゃんと聞きたいのは…御道が下らない事を言い合って、一緒にしょうもない事もやってきた、そういう事が出来る相手だったからだ。なら、俺が決めるのは、死なない為の覚悟じゃない。死なない、悲しませない事も含めた……後悔しない為の覚悟だ。

 

(…まあ、覚悟は決めるって思えば即決まるもんでもないんだけど、な)

 

 軽く啖呵を切ったような俺だが、覚悟を決める事を決めただけじゃ意味がない。覚悟を決めた「つもり」も意味がない。そして覚悟ってのは、こうすれば決まるってものでもなく…強いて言うなら、とことんまで自分を見つめるしかない。

 それに、覚悟以外にも必要なものはある。ただ待つだけじゃなく、出来る事もある。だから俺は、話を終え、宗元さんの執務室を出た後に、電話で園咲さんと連絡を取りつつ技術開発部へ。突然の連絡にも関わらず話す時間を作ってくれた園咲さんにまずは感謝を伝え…それから、言った。

 

「園咲さん、例の試作品の件で…お願いがあります」


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