時間は、過ぎていく。誰にでも等しく、例えどんな事があり、その結果どうなろうとも、変わる事なく流れ、過ぎ去っていく。
理不尽でも何でもない。ただただそれは、当然の事。そういうものだとするしかない、世の摂理。…でも、だけど…だったら、諦めるしかないのだろうか。失ったものは、もう無いものは…過ぎ去った過去として、受け入れるしかないのだろうか。
「…よし、味の調整はこんなもんか」
まだ夏に早いけど、それでもかなり日が沈むのが遅くなってきたな…と感じる平日の夕方。後はよそう直前に温め直そう、と夕飯のスープが入った鍋に蓋をし、丁度そこで鳴る携帯。誰からかと思って確認すると、それは茅章からのメッセージ。
(偶には僕の方から誘うよ、か…嬉しいけど、これは気を遣わせちゃってるかなぁ……)
今日は少し前から茅章とアプリでのメッセージでやり取りをしていて、その中ではまた食事なら何なりを…という内容も出ていた。
無論…って言うとおかしいけど、俺は茅章にも今の自分の状態を話した。茅章なら早かれ遅かれ話す事にはなるだろうし、だったら早く話しておいた方がいいから。…で、その結果少なからず気を遣わせてしまっていて、今の返信なんて正にそうなんだけど…これは仕方ない。気の遣い過ぎは良くないとはいえ、全く気を遣わないというのもそれはそれで大変だから。
「あんまり大丈夫アピールし過ぎても逆に無理してるように見えちゃうだろうし、どうしたもんかな…」
普段通りにすれば良い、っていうのは分かっているけど、意図的に『普通』なように振る舞うっていうのもまた難しいところ。綾袮や千嵜みたいな、良くも悪くも我の強い人達と違って茅章は大人しく控えめ、でも優しいって性格だからこそ、俺としても色々迷い…そうこう考えている内に、玄関の扉が開いたような音が聞こえた。
「ただいま〜。…お、良い匂い」
「お帰り、綾袮。それに二人も」
部屋の外からの音が聞こえたからそう経たない内にリビングの扉が開き、まずは綾袮が、続けてラフィーネ、フォリンが姿を現す。
「お疲れ様。今日はどうだった?」
「んと、普通」
「ですね、特筆する事ない任務でした」
三人は今帰って来たところ。どこからかと言えば、それは双統殿で、今日姉妹の二人は綾袮に着いていく形で霊装者としての任務に出ていた。
反応に困る、淡白な返しだけど、表情からして実際にそうだったんだろうし、わざわざ話すような事もないなら別に良い。フォリンはまだしも、ラフィーネはなんて事ない出来事から話を膨らませて…っていうのは苦手だろうし。
「そっか…でも今回は普通でも、だからって今後油断するとかは駄目だよ?油断は下手な魔物よりも怖い…って、誰が誰に言ってんだって話だね、これは…はは……」
「いや、まぁ…忠告は、きちんと受け取っておきますね」
つい普段の調子で言ってしまったけど、霊装者や戦闘に関しては二人の方がずっと上手且つ経験者。その二人へ劣る俺が言っても変な話になっちゃうだけで……しかも今の俺は、劣ってるなんてレベルじゃない。そもそも、舞台に立ててすらいない。…なのに、本当に…何を言っているんだ、俺は……。
「ところで顕人君、その良い匂いのしている鍋の中身は何かな?」
「…あ…これ?これは……」
「待った!やっぱりそれは夕飯が出来てからのお楽しみって事で!」
「…あそう…なら完全に一個前の発言は無駄だったよね…?」
「無駄を楽しむ…それこそが贅沢な時間の過ごし方なんだよ、顕人君」
「そういう事じゃないと思うんだけどなぁ……」
急に出てきたよく分からない、ボケかどうかも謎な発言に対し、困惑気味に突っ込む俺。…ほんと、何だったんだろ今のやり取り…まあ別に良いけど…。
とまぁそんな会話をした後、一度三人は各々の部屋へ。少しするとまずフォリンが戻ってきて、今日も率先して食事の手伝い。今日は任務から帰ってきたばかりなんだから、と遠慮しようとしたけれど、好きでやっている事だからと返されてしまえば遠慮出来る筈もなく、残りの行程を二人でぱぱっと片付ける。
「…ほんと、いつもありがとね」
「いえいえ。代わりに私も料理の知識や技術を教えてもらっている訳ですから、これも持ちつ持たれつの事ですよ」
からかいさえ無ければ本当に良い子なフォリンに軽く心を癒されつつ、俺は食事を食卓へ。それから俺が二人を呼ぶと、二人はすぐに戻ってきて…今日も皆で夕飯開始。
「んー、美味しい!これ、クラムチャウダーだよね?」
「そうだよ。…そういえば、クラムチャウダーってチャウダーの一種の料理だって知ってた?」
「えっ?そうなの?わたしてっきり、大阪の中でもかなり田舎の地域で作られた料理なのかと……」
「お、大阪?田舎?それはまた一体どうして…って、あ、ちゃうだー!?『○○ちゃう+○○だ』って事!?」
「おー、よく分かったね。えらいえらい」
「そんなんで褒められても嬉しくない……」
再び出てきた謎の発言に、今度はかなり強く突っ込み。ちゃうだ、っていう発想はまぁ、面白くなくもないけど…何言ってんだ感が強過ぎる。現に、ラフィーネとフォリンはぽかんとしてるし…。
でも、喜んでくれた事自体は嬉しい。初めて作ってみた料理だけど、我ながら上手に出来たしまた今度作ろう。…そう思っていたところで、不意にラフィーネが俺を呼ぶ。
「顕人、一人で寂しくなかった?」
「え?…それは、今日家で…って事?」
「それ以外、ある?」
「…んまぁ、ないよね……」
スプーンを手にしたまま、『普通』としか言いようのない顔で訊いてくるラフィーネ。さ、寂しくなかった?…って……。
「…家にいるのが俺一人の事なんて、何も今日が初めてじゃないよね…?皆何かしらの用事で出掛けてる、って事は時々あるし、ラフィーネ達は別に何日もいなかった訳じゃないし……」
「そう。それなら良かった」
「……え、終わり?そんだけ…?」
「うん」
「あはは…ふと気になったから訊いただけ。ただそれだけの話ですよね?ラフィーネ」
「…ん」
何か深い理由や続く話があるでもなく、ただただ訊いただけという結論に、なんだか俺は拍子抜け。ラフィーネの性格を考えれば、そういう質問をしてきてもおかしくないけど…それでも俺、一応もう高三だよ…?
…とはいえ、まあ全く理解出来ない話でもない。考えてみれば、ラフィーネとフォリンは別の場所にいる時間の方が少ないんじゃないかと思う程、毎日一緒にいるし(流石に家の中では別室にいる時間もそこそこあるけど)、そんなラフィーネであれば『一人』で家にいた俺が気になる事もあるんだろう。でもほんと、一人なんてこれまでにも……
「……ぁ…」
──いや、違う。確かに、一人の時間は過去にもあった。ラフィーネとフォリンがここに住むようになる前は俺と綾袮の二人だけだったから、その頃は家に俺一人って事もざらにあった。
でも、ある時から俺は、『一人』という状況にはなっていなかった。常に、俺は誰かといた。だって…あの日の、あの出来事以来、ずっと俺の側には慧瑠がいたんだから。姿が見えていない時でも、そこには慧瑠の存在が確かにあった筈なんだから。
だけど今は、もう見えない。もう慧瑠の存在を、感じられない。今日、俺は…本当に、一人だったんだ。
「やっぱりフォリンの援護は頼もしいよね。欲しい、ってタイミングで撃ってくれるんだもん」
「同感。他の人の何十発より、フォリンの一発の方が頼もしい」
「そ、そういう話は気恥ずかしいので、出来れば私のいないところでお願いします……」
今日の任務絡みの話だろうか、綾袮達は普段の調子で会話を交わす。…当然だろう。それが、普通なんだから。皆にとっての普通の会話を、普段通りにしているだけの事だから。
だからこそ、感じる壁。霊装者の三人と、今はもう違う俺との間に無意識の壁があるように、それによって隔てられているかのように、俺の心は感じてしまう。本当に一人だったんだという事を理解し、嘗ての俺とも隔たりがあるかのように感じてしまう。
嗚呼、それでも時は過ぎていく。隔てられたまま、開いたまま、時間は進んでいってしまう。俺の心は取り残されたまま、無くしたものに囚われたまま…心と思いを、置き去りにして。
(…あぁ…なんで、だろうなぁ……)
こういう事を考えるのは、今が初めてじゃない。何度も何度も考えて、けど考えて変わるようなものでもないから、途中で思考は有耶無耶になり、またふとした拍子に同じ事を考えてしまう。
認めてしまえば、受け入れてしまえば、楽なんだろう、もう全部、過去のものなんだって。もう失った、無くなったものとして、進む時に従えば…きっと全部、諦観に変わるから。
でもそれは、出来やしない。今も、これまでも、そして恐らくこれからも。
「…実際、前に模擬戦をした時は凄かったよね。フォリンだけじゃなく、ラフィーネもだけど」
「確かに確かに。二人は一人一人でも強いけど、連携してこそ真の力を発揮するってタイプだよね」
俺は、思いを心の底へと封じ込める。どうせすぐに、また何かの拍子に浮き上がる程度の封じ込めしか出来ないけど…それでも今は思考を伏せ、苦悩を隠し、皆の賑やかな話へ加わる。
それは、自分へ対する慰めじゃない。気遣われないようにする誤魔化しでもない。…これもまた、俺は大切な時間だから。失ったものばかりに目をやっていて、そのせいでまだ手の中にあるものが見えなくなる事こそが、一番勿体無い…それ位は、俺だって分かるから。
だから俺は、この過ぎていく時間の中で、日常を続ける。心にはぽっかりと穴が空いたまま…楽しく、だけど心からは楽しめていないような気もする日常を、これまで俺がしてきた通りに。
*
「悠弥、話があるの」
夕食を終え、片付けも済み、これで一息吐く事が出来る。…ある日の夜、そんな事を考えていた俺に、妃乃は話があると言ってきた。それが真面目な話であると、一発で分かるような表情と共に。
「…保険の見直しか?」
「そうそう、保険は一度入ったらそれでいいなんてものじゃなくて…って、違うわよ!そんな訳ないでしょうが!」
「んまぁ、だよなぁ……」
試しにボケてみると、返ってきたのは鋭いノリ突っ込み。スルーしたっていいのに、わざわざきっちり突っ込む辺りは、流石妃乃クオリティ。
「なんか全然嬉しくない評価をされてる気がするんだけど…。…で、どうなの?今、話出来る?」
「あぁ、別に構わねぇよ。長くなるようなら、途中待ったをかけるかもだが」
「出来るだけ簡潔にはするわ」
一回ボケを挟みはしたが、別に話をしたい訳じゃない。だから俺が了承すると、今度は俺の返しに妃乃が了承。けど、今リビングにいるのは何も俺と妃乃の二人だけじゃない。
「…妃乃さん。その話って、わたしはいない方が良いですか?」
「ううん、居てくれて構わないわ。最低限とはいえ、緋奈ちゃんも訓練をしてる、霊装者の一人なんだから」
その方が良いなら、わたしは席を外す。声にそんな含みを持たせて言った緋奈に対し、妃乃は首を横に振る。
分かっていたが、やっぱり霊装者絡みの話らしい。そしてこれは、緋奈が聞いても大丈夫な話だからって事で「構わない」と言ったのか、逆に重要極まりない、先に話しておくべきだった…って後悔する事もあり得る話だから言ったのかは…実際に聞いてみなきゃ、分からない。
食卓の椅子で佇まいを正す俺と緋奈。逆側に座る妃乃は、こほんとひとつ咳払いをし…話を、始める。
「まずは軽く説明なんだけど、先月富士山で、協会は結構大規模の作戦を行ったの。ある事の調査を目的にした作戦をね」
「先月…あ、妃乃さんのお母さんが来た時の……」
「そう、その時のよ。で、先月の時点では一時中断を余儀無くされる事態が起こって、全部隊が撤退と解散をする事になったの。詳しい話は…また、後で話すわ」
どうも話というのは先月の件に関係があるらしく、最初に妃乃は緋奈へと説明。物凄くざっくりとした説明で、細かい部分は丸っと後回しにしたが…これは多分、緋奈にどこまで話すべきか、どこまで緋奈も聞きたいのか、そこがまだはっきりとしていないからだろう。
まあでもそれはいい。それはいいが…不安を感じるのは、先月の件絡みってところ。富士山の件な時点でもう、明るい話になるとは到底思えない。
「じゃあ、本題に入るとするわ。…続行不能になって一時中断になった作戦、その再開の目処が立ったのよ」
「再開…?」
「それは…良い事、なんですよね…?」
「…協会としては、ね。それにあの場に現れた魔人が何かしらの目的…それも私達にとっては不都合な何かを考えていたのは間違いないし、そういう意味でも再調査をしておく必要があるの」
調査の再開。それを聞いた瞬間、俺は驚き…だが、すぐに「それもそうか」と思い直す。
別にこれは、何もおかしい話じゃない。大規模な作戦として行った調査であれば、中途半端で終わらせられる訳がないんだから。そもそも「一時中断」なんて表現の時点で、その内再開する事を視野に入れているんだろうから。
だが同時にこれは、『あんな事』があったにも関わらず、再びその場に踏み入れ、同じ調査をするという事。緋奈からの返しに、ほんの一瞬言い淀んだ事からしても、その自覚はあるんだろうが…。
「…で、つまりはなんだ?そういう事をする、って言って終わりじゃないだろ?」
「えぇ。前回と違って、今回は少数精鋭で動くわ。万が一があっても、今度は素早く対応出来るようにね。そして……その時は悠弥、貴方にも来てほしいと思ってるの」
「え……?」
「……そう来たか…」
ただのお知らせなら、もっと軽く言ってくる筈。なら本題は、一番言いたい事は、この更に先にある。そう思った俺が訊くと、妃乃はゆっくりと頷き…そして言った。俺に、作戦に参加してほしいと。
「…どうして、お兄ちゃんが?」
「悠弥の実力は、私もお祖父様もよく分かってるからよ。それに悠弥は、今回の事情もしっかり知ってる。これも理由としては結構大きいわ」
「…………」
俺より先に、緋奈が理由を聞く。それを受けて、妃乃が二つの理由を挙げる。…だが、妃乃が俺に来てほしいと言った時点で、理由は何となく予想が付いていた。付いていたし、当たってもいた。
前者はまぁ、言葉通りの意味だろう。経験値は確かにあるし、今は実力もそこそこマシになってきてるんだから。だが後者は、半分正しく半分間違った…或いはわざと誤魔化すようにした言い方だろう。俺が事情を知ってるってのは、確かに間違いないが……
(最初から事情を知ってる面子で出来る限り固める事で、隠している真実が明るみに出る可能性を下げたい…ってのが、本当の理由ってとこだろうな……)
それが、悪いとは言わない。想定し得る危険には警戒と事前の対処をしておくなんて、誰でもやってる普通の事なんだからな。だから、悪いと否定する事はしないが……俺にだって、思うところはある。
「…先に確認しとくが、それは強制か?それとも、要請なのか?」
「要請よ。少なくとも、今のところはね」
「そうか。…緋奈、緋奈としてはどう思う。緋奈は俺に、どうしてほしい?」
「お兄ちゃんに…?…え、それは……」
「別に自分で何も考えてない訳じゃないさ。けど、緋奈だって何となく察してはいるだろ?…この作戦は、かなり危険な部類になる筈だ。だから、緋奈としての思いを聞かせてくれ」
「わたしは…わたしは、勿論お兄ちゃんが心配だよ。だけど…わたしを理由に断る、っていうのは嫌。お兄ちゃんにはちゃんと、自分の為に考えてほしいし、わたしは自分の為に考えた答えなら、どっちでも応援するよ」
「…そっか、なら……」
一度途切れさせ、けれどそこからは落ち着いた声音で発された言葉。俺の求めた通りに、素直な思いを言ってくれた緋奈の声。その内容は緋奈らしい、本当に俺を思ってくれている言葉で…何か不安に思っていた訳でもないのに、ただそれだけでほっとした。正直頬も、緩みそうになった。
俺に、自分の為に選んでほしい。それを応援する。緋奈は、そう言ってくれた。なら、俺の答えは……一つ。
「分かった、了解だ。調査において、俺に何が出来るのかは怪しいところだがな」
「大丈夫よ、別に複雑な事を頼みはしないだろうから。…むしろ、いいの?」
「よかなきゃ了解なんてしねぇよ。妃乃だって、半端な気持ちで判断されても困るだろ?」
「それは、そうだけど…」
しっかりと妃乃の目を見据えて、俺は言った。その求めに応じると。やれる事はやってやる、と。それが妃乃は意外だったようで、訊き返してくるが……あぁそうだ。確かに俺は了承したが、真面目に協力…っつーか参加するつもりだが、当然思うところはある。だから俺は一拍置き…トーンを落とした声で、続ける。
「…妃乃、前に正しさ云々の話した事覚えてるか?」
「覚えてるわ。そんな前の話でもないし…それをすぐに忘れる程、私は恩知らずじゃないわ」
「じゃあ、説明は不要だな。俺はその要請を受ける。手だって泣くつもりは一切ない。けどそれはあくまで、妃乃や宗元さんありきの話だ。その作戦に対しては、やろうとしてる事、考えてる事には……身勝手だとしか、思わねぇ」
「……っ…そう…肝に、命じておくわ…」
「…お兄ちゃん……」
別にドスなんか効かせちゃいない。俺は脅す気なんか微塵もねぇんだから。あくまでこれだけは言っておく、そういうつもりで言っただけだから。だがそれでも、妃乃は一瞬表情を歪めつつ頷き、緋奈も恐らくは分からないなりに俺の事を見つめていた。
結局のところ、富士の調査を諦めるって選択肢はないんだろう。人命を大切にはしても、その為にするのは中断止まりで、中止の選択はしないんだろう。勿論、調査もまた協会に所属する人間や、ひいてはもっと多くの人達の為になる行為なのかもしれないが…そうであろうとなかろうと、『今』へ対する事は同じ。
だがそれでも、聞いた瞬間妃乃は表情を歪めた。褒められた事じゃないと分かっているから、歪めたんだろう。…それなら良い。そういう妃乃なら、やはり信頼出来る。だから…あぁ、その時は全力を尽くすさ。任された役目を果たし切るさ。そして…その上で俺は、仮に何かあってもちゃんと帰ってくる。御道の為…にはなりはしないが、御道の為にこの作戦そのものを否定するべきだったのかもしれないが…そうしたって、御道の『今』が何か変わる訳じゃない。だったらせめて…もしそうなりゃ、やれるだけの事はしてみせようじゃねぇか。俺の周りで、知っている範囲で、霊装者の力を、望みもしないのに誰かが失うなんざ……何度も起こって堪るかってんだ。