双極の理創造   作:シモツキ

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第百十八話 文化祭の季節

季節の境目というのは、中々難しい。急に気温が変わるだとか、毎年決まった月の初めに始まって決まった月の終わりに終わるとかなら分かり易くていいんだけど、まぁそんな事はまずあり得ない。気付けば気温が変わっていて、気付けば始まって終わっているのが季節というもの。

でも、正確に季節の境目を把握する事は出来なくても、「もう○○だなぁ…」と感じる事はある。桜並木が鮮やかに色付き始めたら春だなぁとか、吐いた息が白くなったら冬だなぁとか、「○○といえば」で季節を認識するのが人というもの。そして今、俺は…夏と秋の境目を、感じつつある。

 

「…って訳で、わたしは演劇が良いと思うな!やっぱり文化祭は、お客さんにインパクトを残したいからね!」

「演劇、ねぇ…そう言いつつ実際は主役やりたいだけなんでしょ?」

「それは勿論!」

 

まだ企画段階だというのに物凄く楽しそうな、綾袮さんの提案。それに妃乃さんが冷めた口調で突っ込むと、綾袮さんは立ったまま元気に首肯。その子供っぽい、純朴そのものな綾袮さんの反応を受けて、クラス内はほんのりとほっこりした空気が流れていく。……現在我がクラス、というかうちの高校のこの時間帯は、各クラスで文化祭の企画会議が行われていた。

 

「あはは…では演劇に一票という事で、他に意見はありませんか?」

「あー、じゃあ喫茶店の方で、和菓子を出すってのはどうだ?まあ勿論和がメインって事じゃなくて、メニューに何品か和菓子加えるってだけでもいいんだけど」

「はいはい和菓子ね。和菓子、っと…」

 

教卓の前に立った文化祭実行委員の一人が更なる意見を求めると、一人が和菓子について提案。それを受けたもう一人の実行委員が黒板に和菓子と書き、その下へ『数品だけでも可』と付け加えた。

今回の会議は先週の会議を元に正式決定を行う(と言っても、各クラスで被りがないよう後々実行委員や生徒会で調整するんだが)為のもので、現状うちのクラスの出し物は演劇か喫茶店のどちらかという流れになっている。どちらかと言っても演劇は映画作成を吸収合併した状態で、喫茶店の方も複数上がった○○喫茶を一先ず全て統合したものだから、単純な二択って訳じゃないけど……恐らくここが、企画会議において一番大きな決断となる。

 

「うーん…どっちも捨てがたいよね……」

「だな…なぁ御道、二つは駄目なのか?」

「駄目だね、演劇をメインに簡単な食べ物を売る…とか程度ならともかく、一クラス一つが基本だよ」

「そこは何とかしてくれよ、生徒会なんだから」

「それが出来ないから駄目だって言ってんの。ルール変えるのは半端なく難易度高いんだから」

 

出たよ生徒会への無責任な欲求…と思いつつ返す俺。知らない事に気を遣えっていうのも無理な要求ではあるが、生徒会は勿論委員長だとか○○会(組合)だとかをやった事がある人なら、この気持ちも分かってくれるんじゃないかと思う。……って違う違う、愚痴を言ってどうすんだ俺は…。

 

「えぇと…それでは他に意見のある人は……」

『…………』

「…いない、みたいですね…じゃあ、多数決……?」

「最終的にはそれも有りだと思うけど、今のまま多数決をしても6:4位の比率になっちゃうんじゃないかしら?」

「あ、それは確かに……」

 

別の意見がない事で実行委員は多数決での決定を一度口にするも、それに妃乃さんが待ったをかける。

実際今のままだと僅差での決定になる可能性が少なくなくて、その場合選ばれなかった方の人達にはしこりが残ってしまう。これが9:1位なら、少数派の人も「この差なら仕方ないか…」と思えるだろうけど、6:4辺りじゃそれは厳しい。そしてクラス一丸となって企画を進める以上は、出来る限り納得の上での進行をしたいというもの。

 

「…どうします?もう少し時間をかけて、意見を出し合います?」

「それだと今日中に決まらない可能性あるんじゃねーの?これ、提出が遅れた場合は間に合ったクラスの企画が優先されるんだよな?」

「な、ならやっぱり沢山の時間はかけられないよね…ど、どうしよう……」

「それを私に訊かないでよ…」

 

対極…ではないけど両立の難しい二つの意見に、実行委員さんは困り顔。もう一人に意見を求めるけど相方もまた困り顔で、こういう話し合いの進行は慣れていません…って感じがこっちの方まで伝わってくる。

 

(クラスでの話に生徒会はあまり出しゃばるなって言われてるし、それ無しでも『なら俺が話を進めよう』みたいなのはなぁ…とはいえ黙ってても状況は変わらないし、どうしたものか……)

 

一発解決のアイデアでも出せればそれが一番いいけど、それがあるなら俺はもう発言している。それがないから黙っている訳で、とにかく誰かが何かを言わなきゃこの状況は好転しない。そう俺が考えている間にも、実行委員の二人は何やら話していて……

 

「…あの、五分程考えてみて下さい。それでまた、意見を訊きます。…あ、周りと話すのはOKで」

 

膠着した状況に対しては無難な、けれど問題の先送りでもある言葉を口にした。それを機に、ぽつぽつと周囲からも話し合う声が聞こえてくる。

どっちがいいかというものもあれば、早く決めなきゃだよなというものもあるし、あんまり関係なさそうな声もちらほらと発生。ただそんな中、明らかに他とは違う声…いいや、音が一つ。

 

「ふぁ、ぁ……」

 

背後から聞こえるそれは、言うまでもなく欠伸の音。…千㟢、こいつ……

 

「…寝てやがったな…?」

「寝てねぇよ、眠くなってただけだ」

 

自然と半眼になりながら振り返ると、やはり千㟢はぼけーっとした顔。何事も決め付けるのは良くない、良くないが…絶対千㟢、何も考えてなかっただろ……。

 

「あのなぁ…興味ないのは分かるが、クラスの一員なんだから最低限考える努力はしろよ……」

「ん?別に俺は興味ない訳じゃねぇよ。文化祭だって嫌いじゃないしな」

「なら何故眠くなる……」

「興味あったって眠くなる時はなるだろ。それとも御道は寝落ちした事ないのか?」

「それは…ぐっ、言われてみると確かにそりゃそうだった……」

 

つい言い返してしまったものの、確かに千㟢の言う通り、睡魔は時に興味ややる気を凌駕するもの。…まさかこの流れでこっちが言い負かされるとは……って、そういう話をする時間じゃないんだった…。

 

「…こほん。なら千㟢はどうしたらいいと思うの?興味がない訳じゃないなら、考えも一つ位はあるだろ?」

「ふっ……俺は皆より長く生きてるからな。もう自己主張をしたくなる精神構造はしてないのさ」

「うん、何を言いたいのか全然分からん」

「なら御道はどうなんだよ」

「俺?俺はまぁ…どっちかと言えば演劇を推すかな。喫茶店はほぼ確実にどっか別のクラスも出すだろうし、そうなると調整しなきゃならないし。ただ、今重要なのはどっちを推すかじゃなくて……」

「五分経ったので、また意見をお願いします」

「あ……」

 

こういう場で関係ない話をしていると悪い気がしてしまう俺としては、少しでも真面目な意見交換をしたいところ。…と、思っていたのに…気付けば五分経ってしまっていた。思った以上に、本題に入る前のやり取りで時間を使ってしまっていた。

 

「さ、前向け御道ー」

「……(こんにゃろう…)」

 

何だか嵌められた気分の俺は、その気分を視線で千㟢にぶつけながらも元の姿勢へ。

殆ど本題は話せなかったけど、時間なんだから仕方ない。ならせめて周りの意見を参考にして……そう思っていた俺だけど、会議は少々不味い流れに。

 

「やっぱ、やるなら喫茶店じゃないか?演劇って、準備がかなり大変だろ?セット作りは勿論、練習も重ねなきゃ出来ないし…」

「準備なら喫茶店だって同じでしょ。文化祭とはいえお客が来る以上、接客の事も考えなきゃいけないんだから」

「接客…そういや、演劇も接客…てか色々案内が必要だよな?それはどうすんの?」

「え、待って。今ってそういう話なの?時間がないから〜…って話じゃなくて?」

 

最悪なのは、全く意見が出ない事。だから今は決して最悪の状況ではないけど…端的に言って、意見がバラバラに出過ぎている。主張は勿論、何に対する意見かもバラけてしまって、纏まりのない状態が生まれてしまっている。そしてこんな時、上手く纏めるのが進行役なものの……二人はまた、困り顔になっていた。

このままじゃ、時間ばかりが流れるだけ。誰かが纏めなきゃいけないし、先生は極力黙っているというスタンスだから、先生に頼る事も出来ない。

ならもう、変な注目を浴びようと声を上げるべきだろう。この時俺はそう思って、同時に綾袮さんや妃乃さんも同じように声を上げようとしている事に気が付いた。……けど…結果から言うと、この状況を変えたのは…俺でも綾袮さんでも、妃乃さんでもなかった。

 

「間怠っこしいなぁ……ならいっそ、演劇喫茶でいいんじゃね?」

 

騒つく教室の中に放り込まれたのは、何ともやる気のなさそうな千㟢の声。どう考えても積極性を持って発された訳ではない、思った事をそのまま口にしたような言葉。けど声量を間違えたのか、それとも恥ずかしいから誤魔化しただけで本当はやる気があるのか、千㟢の声は俺どころかクラス中にしっかりと届き……

 

『…………』

「……あ、やべっ…えーと、今のは皆さん聞かなかった事に……』

『それだ!』

「えぇッ!?」

 

……千㟢の言葉が鶴の一声となり、我がクラスの企画は『演劇喫茶』に決定するのだった。

 

 

 

 

「へぇ、それはまた急転直下の決まり方ですねぇ」

「でしょ?まさか千㟢が活躍するとは思わなかったよ…」

 

文化祭での企画が決まった放課後、俺は慧瑠と印刷室で書類を大量に刷っていた。より正確に言えば今俺と慧瑠は生徒会活動の途中で、刷っているのも近々全校に配布する書類の一つ。

 

「何気ない一言が決め手になる、ってやつですね。でも良かったじゃないですか、企画が時間内に決まって」

「まぁ、それはそうなんだけどね。慧瑠の所は何やるの?」

「自分のクラスは謎解きと迷路を混ぜたような…えぇと、リアル脱出ゲーム、でしたっけ?…みたいなのをやる予定です」

「そりゃ中々面白そうだ。でもそうなると、ある程度の数の部屋か大部屋を確保しなきゃならないね」

「そう、そこが厄介なんっすよね。生徒会として上手く部屋を確保してくれって、無責任に頼まれてしまいまして…」

「あー、慧瑠もなんだ……」

 

業務の最中とはいえ、印刷中は当然待つしかないし、数百枚の印刷が十秒二十秒で終わる訳もない。つまり今俺達は暇な訳で、そうなれば雑談に花が咲くのも自然な流れ。

 

「生徒会って、各行事を素直に楽しめないのが辛いところですよねぇ…どうしたって運営側の立場が付き纏う訳ですし」

「確かにね。でも運営として立ち回れる事自体は楽しくない?」

「ははぁ、先輩は生粋の運営ですね。普通運営なんて面倒臭がるものですよ?多分」

「面倒でも楽しい事はあるでしょ。というか、何故多分を……」

「それは先輩以外にも同意見の人がいた場合に備えた、軽い保険ってとこですねー」

 

慧瑠の緩い回答にこっちも緩く頷きながら、内心でこれからの活動に思いを馳せる。

言われた通り、運営なんて面倒に決まっている。やりたくない人の気持ちもよく分かる。けれど俺にとっては面倒でもやる価値はある…と思えるからこそ生徒会の本部に入った訳で、きっと生徒会の面子は皆多かれ少なかれ俺と同じ思いがある筈。じゃなきゃ、内申書に書いてもらえるとはいえ、権利もなしに義務ばっかり与えられる生徒会の仕事なんてやってられない。

 

「保険、ね…なら、慧瑠はどうして生徒会に?」

「自分はただの興味ですね。有り体に言えばやってみたかったー、ってやつです」

「よく興味本位で生徒会なんてやるね…じゃ、今は後悔してたりするの?」

「いえいえ、そんな事はないですよ。全部が楽しいとは言いませんけど、やって良かったと思う事は確かにありますからね」

「そっか、そりゃ良かった」

「はは、なんで先輩がそれを言うんですか。…ま、安心したんなら何よりです」

 

確かに慧瑠の言う通り、誘った訳でも勧めた訳でもない俺が「そりゃ良かった」なんて言うのはおかしな話。…だが何故か、俺はそう言いたくなった。それは…慧瑠が後輩、だからかねぇ……?

そこで一度会話は途切れ、印刷機の音だけが部屋に響く。そうして排出口を覗いた俺が、まだ時間かかりそうだなぁ…と思ったところで、慧瑠はまた口を開く。

 

「…先輩、夏休みの間に何かありました?」

「え?」

 

全く脈絡のない、突然の質問。それ自体、「え?」と言うに十分な要因ではあったけど……それ以上に俺は驚いた。だって、今年の夏休みは激動そのものだったんだから。

 

「…どうして?」

「いや、深い理由はないですよ?夏休み明けにその間の事を訊くのはよくある事じゃないですか」

「あぁ…もう夏休み明けって言えるか微妙な時期ではあるけどね」

「そこはまぁ、ご愛嬌って事で」

 

訊かれてドキリとした俺ながら、慧瑠はちょっとした世間話感覚で訊いただけの様子。そんな反応に俺は一安心し、いつの間にか入っていた肩の力をすっと抜く。

 

「…そうだね、色々あったよ。楽しい事も、びっくりした事も、大変だった事も…ね」

「ほうほう、それは自分が夏休み前に聞いたお出掛け絡みの事ですか?」

「幾つかはね。…いやほんと、今年の夏はこれまでで一番濃かった……」

「みたいですねー。先輩、夏休み前と何となく雰囲気が違いますから」

「え、そう?」

「ほんと、何となくですけどね」

 

思ってもみなかった、夏休み前とは雰囲気が違うという言葉。そんなの今日初めて言われた言葉で、俺自身にもそんな自覚は欠片もなかった。…慧瑠は、そういうのに敏感なタイプなんだろうか。

 

(…いや、それともまさか…慧瑠も霊装者か協会の人間だとか……?)

 

そこでふと思い浮かぶ、別の可能性。本当は多かれ少なかれ夏休みにあった事を知っていて、その上で話を持ちかけたんじゃないかと、俺は一瞬想像した。

 

「…………」

「……?先輩、どうかしました?」

「…や、何でもない」

 

だが、すぐに俺は思い直す。確かにその可能性もゼロではないんだろうけど…流石にこれは思い過ぎだろう、と。

 

「そうですかー?先輩、本当は何か考えてたでしょう?」

「さーてどうだか。…あ、残りは後十枚みたいだよ」

「あからさまにはぐらかしましたね、先輩…まぁいいですけど」

 

そんなこんなで夏休みの話を終わらせ、ついでに印刷も後僅かとなった事を確認した俺。その後すぐに印刷機が止まり、印刷された書類を取り出して……

 

「……なんで、こんな雑用みたいな事やらなきゃいけないんだろうね…一応は学校動かす側なのに…」

「…一応、だからじゃないですかね……」

 

二人、大変虚しい気持ちになるのだった。…地方自治ならぬ校内自治をしてる生徒会なんて、所詮はサブカル業界だけの幻想さ……。

とまぁそんなやり取りも経て、俺も慧瑠は書類を抱えて生徒会へと帰還開始。

 

「悪いね、半分持ってもらっちゃって」

「これ位はお安い御用ですよ。というか、先輩が全部持って自分は手ぶらとか、それじゃ何の為に自分は来たんだって話になりますし」

「や、それはそうかもだけど…」

「まぁ、何の為かって言えば上手い事息抜きが出来そうだったからなんですけどね」

「…………」

 

何の悪びれもなく「ちょっとサボりたかった(意訳)」と言ってのける慧瑠に、俺は何と言ったものか。っていうかこの後輩、俺を舐めてる訳じゃないんだろうけど……何だろうね、初対面から今に至るまでずーっと変わらないこの緩さは。

 

「まあまあ怒らないで下さい先輩。先輩を手伝おうって気持ちがあったのは嘘じゃないですから」

「…まぁ、それを疑ってはいないけどさ…」

「……そうやって疑うより信じる事を大事にする精神は、立派だと思いますよ、先輩」

「慧瑠……それ、後輩が先輩に対して言う言葉じゃなくない…?」

「あー、言われてみると確かにそんな気もしますね。いやぁ、これは失礼」

「あのねぇ…全くもう……」

 

軽く肩を竦める慧瑠に、やっぱり悪びれるような様子はなし。そんな慧瑠に呆れながらも、呆れる以上の事はしない俺。ほんとに呆れてるし、何だかなぁって思いもあるんだけど……それはそれで、悪くないんだよね。慧瑠と、こんな感じに他愛ない話をするのは。

 

「…そういや、慧瑠こそ夏休みに何かあった?…って言っても俺は何か違いを感じたとかじゃなくて、ほんとに単なる質問なんだけど」

「自分ですか?……自分は、まぁ…」

「…あ、顕人君はっけーん!」

 

一度は終わった話ながら、慧瑠の事は聞いてなかったな…と思って話題を巻き戻した俺。するとそのタイミングで廊下の先から現れたのは、もう夕方になるのにまだまだ元気な綾袮さん。どうも俺を探していたらしく、軽快に走ってやってくる。

 

「こらー、廊下を走るなー」

「お、いいねお約束ネタ!でももうちょっと強めに言ってくれないと雰囲気出ないかなぁ」

「いや、そこまでやる気が出る台詞じゃないし…で、何?」

「あ、うん。クラスで文化祭の企画の詰めをやってるのは知ってるでしょ?その件で、顕人君にも幾つか訊きたい事が出来たから探してたんだけど……今忙しい?」

 

俺と慧瑠の持っている書類を見て、綾袮さんは忙しいかどうか訊いてくる。因みに企画の詰めをしているのは実行委員さんと二人の友達数人であって……多分綾袮さんの事だから、誘われたか自分から入り込んでいったんだろう。

で、忙しいかどうかと言われれば、別に忙しくはない。でも仕事中ではある訳で、どうしたものかと考える俺。そこで慧瑠に視線を送る、というか慧瑠の方を向くと……

 

「あ、自分が先に戻って伝えておくので、先輩は後からでも大丈夫ですよ」

「そう?じゃ、お願いするよ」

「えぇ、お任せあれー」

 

ただ見ただけで俺の意図を察し、慧瑠は歩いていった。…何だかなぁ、って思う部分もあるけど…基本察しは良いし、良い後輩だよなぁ、慧瑠って…。

 

「……顕人君、何変な顔してるの?」

「へ?俺変な顔してた?」

「うん、真実の口みたいな顔してた」

「俺あんな顔になってたの!?…ってそうじゃなくて、訊きたい事があるんでしょ?」

「あはは、焦らないでよ顕人君。今回は登場してるのに出番が少なくて残念だったんだから、ここはもう少しボケさせてくれても……」

「そんなメタさ全開のお願いぶつけないでよ…ほら本題に入る入る」

 

慧瑠に続いてまた呆れの感情を抱きながら、流れに飲まれるものかと話を進める。すると綾袮さんも俺が暇な訳じゃない事を分かってくれているのか(だったらボケないでよと思うけど)、普通にやり取りをしてくれて質疑応答はスムーズに進行。それから会話を終えた綾袮さんは教室に、俺は生徒会室に戻ってそれぞれしていた活動を再開。文化祭へと向けた準備を進めていく。…さて、これで二度目とはいえ文化祭は中学生の頃から楽しみにしていた行事なんだ。だから今年も準備、頑張りますかね…!


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