超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress   作:シモツキ

98 / 183
第七十七話 浮き島での出来事

「よーし、捕まえた!これで十匹目!」

「わたしも十匹め!まけないわよ、ネプギア!」

「こ、これは勝負じゃないよラムちゃん…」

 

暖かい…というよりちょっと暑い日差しを受けて、キラキラと光る海。その海の中で水着を着て、タコを捕まえるわたし達女神候補生。

 

「…にしても、タコっていうからもうちょっと気持ち悪いかと思ったけど…これならカラフルで可愛いかも」

「うん、かわいい…」

「確かに気持ち悪さはあんまり無い…って、こら!な、何水着に引っ付いてるのよ!離れなさい!」

 

捕まえたタコを運ぶわたしに、競争気分ではしゃぐラムちゃんに、一匹一匹丁寧に捕まえるロムちゃんに……何故か一人だけタコに逃げられないどころかむしろくっ付かれてるユニちゃん。

 

「あ、そっちにもう一匹いったー!」

「え…きゃあぁぁぁぁっ!だからくっ付くなってぇぇぇぇ!」

「本当に凄い数だなぁ…網の上に乗せたり、同じ色のを四つ並べたり、パズルみたいに一筆書きで並べたりしたら消えないかな?」

「アタシの状況に興味無し!?うわ、また一匹来た!」

 

三匹のタコにくっ付かれてユニちゃんは大騒ぎ。そういえば前ここに来た時はイリゼさんがすっごく元気になってたし、ユニちゃんも同じ感じなのかな?

 

「わ…ユニちゃんのところに、どんどんタコさん来てる…」

「嘘でしょ!?きゃっ、わ、そんなに来ないで…いやぁぁぁぁぁぁ!」

「うわー、すごい。タコのハンギャクだー!」

「…ユニちゃん、タコにもてもて」

「あ、アンタ達まで…だったらいいわよもう!こんな奴等、ビームの照射で焼き払って…」

『え…こんな(可愛い・かわいい)タコさんに、そんな(酷い事・ひどいこと)するの…?』

「アンタ達はどっちの味方なの!?そんな事言うなら…助けなさいよぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

 

 

 

イリゼさんからクエストを頼まれた日の翌日。言われた通りの荷物を持ったわたし達は、大量発生の原因調査を行う人達に先行する形で浮き島へと向かっていた。

 

「イリゼさん、確認ですけど…アタシ達は調査の人達の有無に関わらず、クエストを遂行すれはいいんですよね?」

「そうだね。調査の前にそれが安全に出来る状況を作るのが今回の目的なんだから、早めにこなしちゃう分には問題ないよ」

「じゃあ、到着したらすぐ始めてもいいんですね?」

「勿論。何ならユニは島に降りずに空中から狙撃してもいいよ?」

 

先行するのはわたし達四人とイリゼさん。イリゼさんはまだ万が一の可能性があるから、という事で色んな人から女神化を止められていて、今はわたしにお姫様抱っこされていた。…わたしにお姫様抱っこされて恥ずかしがるイリゼさん、ちょっと可愛かったなぁ…。

 

「…あ、見えてきた!タコがいるのってあそこよね?」

「そうだよ、取り敢えず到着したらネプギアは私を砂浜に降ろしてくれるかな?」

「分かりました。…って、あれ…?…なんか海にボールみたいなのが沢山浮いてる…」

「ほんとだ…あれ何かな…」

 

浮き島やそこにある林と同時に見えてきた海。前にお姉ちゃん達と一緒に来た時の事を思い出したわたしはちょっと懐かしい気持ちになって…そこで、海にカラフルな何かが大量に浮かんでいる事に気付いた。一体なんだろうと気になったわたしは、同じくそれに気付いた皆(イリゼさんは女神化してないからかまだよく見えてない様子)と共に目を凝らしてみると、島へ接近している事もあって段々ボールっぽい物の全容が分かってくる。

最初ボールの様に見えた球体は、よく見ると顔みたいな部分とぴょこっと生えた手、又は足みたいなものがあった。顔みたいな部分の一部、口に該当するものはすぼめたみたいになっていて、ぴょこっとしたものは頭から直接生えてるみたいで、しかもそれは八本あって…………って、これまさか……

 

『……タコ(さん)!?』

 

赤に青に黄色に緑。どれもタコの体色としては明るい色合い過ぎる気もするけど…外見情報は間違いなくわたし達の目的である、蛸のものだった。……けど、今見えている蛸…いやタコは、あまりにも普通とかけ離れている…というか、ファンシー過ぎる。

 

「え、蛸?あのカラフルなのが?…いやいや、お風呂で使う玩具じゃあるまいしそんな事……タコ!?」

「ど、どうしましょう…どうします…?」

「そ、そうだね…一旦砂浜に降りて、近くで確認してみようか…」

 

視力の関係でわたし達に遅れて反応したイリゼさんの指示を受け、わたし達は動揺しながら砂浜に着地。…で、言われた通り砂浜からじーっと見て……

 

「……近くで見ても、タコですね…」

「タコね…」

「タコだと思う…」

「タコさん…」

「…全会一致で、タコだね…」

 

──マスコットみたいな見た目のタコは、やっぱりタコでした。

 

「…えっと、このタコが目的のタコ…よね…?」

「だと、思うけど…」

「うーん…まぁ、このタコを相手にすればいいと思うよ。仮に依頼者側で想定していた目的が別だったとしても、このタコだって大量発生という見過ごせない事態になってるんだしさ」

「よーし、じゃあさっそくやっちゃうわよ!」

「クエスト、がんばる…!」

 

想定していたのとは全然違うし、今日の朝お姉ちゃんに電話した時言われた「タコ?あーそれはサービス回だね!多分キャラ的にまずユニちゃんとラムちゃん、続いてイリゼが巨大タコに捕まる可能性が高いから、ロムちゃんと協力してタコを倒すんだよ!それとポロリは絶対駄目!すぐポロリする安い女には絶対なっちゃ駄目だからね!」…ってアドバイスも役に立ちそうにないけど…まぁそれはそれ。お仕事なんだから、しっかりやらなきゃ!

 

「皆、まずはここからの面制圧で数を減らすよ!」

「えぇ、射撃で嫌な感じのないタコを…」

「魔法でぬいぐるみみたいなタコを…」

「こわくないタコさんを…」

 

 

『…………』

「……皆?」

「……う…」

「う?」

『──(撃・う)てませんっ!』

「えぇぇ!?」

 

わたし達は武器を向け、狙いを定め、タコ達を見据えて……断念した。だ、だって…だってあのタコ達つぶらな瞳をしてるんですよ!?ラムちゃんの言う通りぬいぐるみみたいなんですよ!?ゆらゆらと波に揺られてたり、タコ同士でぶつかって『(><)』みたいな顔してたりするんですよ!?タコが想像通りの見た目だったり、襲ってきたりするなら戦わなきゃって気持ちにもなるけど……これは無理だよぉ!

 

「くっ…撃つのを躊躇うなんて、アタシはいつの間にこんな甘くなったというの…!?」

「うぅ、こんなタコをいっぽーてきにたおしたら今日ゆめに出てきちゃうわよ!」

「イリゼさん、あのタコさんたち…たおさなきゃだめなの…?」

「あ、あぁ…そういう事ね……」

 

武器を下ろして頭を振ったり、イリゼさんを見つめたりするわたし達。幾ら引き受けたとはいえ、わたし達は感情を無にして戦う事なんて出来やしない。仮に出来たとしても…間違いなく、後味悪い終わり方になってしまうとわたしは思う。

そしてそれはイリゼさんも分かってくれたみたいで、数秒考えた後わたし達へと提案をしてくれる。

 

「…じゃあ、全部捕まえるって方針に変える?ただ倒すより時間はかかると思うけど…」

『そっちに(します・する)!』

「く、食い気味に答えるね…それならまずは網を使おっか。ロムちゃんラムちゃん、用意してきた網を広げてもらえる?」

 

イリゼさんに言われ、二人は一人じゃとても持てない…それこそ船での漁業で使うようなサイズの網を広げる。それはプラネテューヌを出る前に用意してきた道具の内の一つで、いくつかある道具をイリゼさんを運ぶわたし以外の三人が持ってきていた。

 

「んしょ…これでいいの…?」

「いいよー。…うん、このサイズならいけそうだね…ネプギア、ユニ、二人は水中でも動ける?」

「水中で、ですか?…多分、いけると思いますけど…」

「泳げるのでアタシも大丈夫だと思います。…もしかして、四人で潜って下からタコを掬い上げるって寸法ですか?」

「それでもいいけど…私は二人には水中、ロムちゃんラムちゃんには空中から動いてもらうのを考えてるよ。ロムちゃん達を潜らせるのはちょっと不安だし、これなら底引き網漁業を手本に出来るからね」

 

漁業については人並みの知識しかないわたし達だけど…底引き網、と言われればイリゼさんがどういう方法を提案しているのか伝わってくる。…あれ、でも底引き網漁業って……

 

「…それって、実際には下で網引っ張る人はいませんよね…?」

「実際には重り使ったりそもそも専用の網だったりするからね。けどそれは無いし、それより女神のパワーで一網打尽にしちゃう方が楽だと思うよ。…まぁ、やるかどうかは負担の大きい二人に任せるよ」

「…いいわよね?ネプギア」

「うん、これが一番効率良さそうだもんね」

 

わたしとユニちゃんは顔を見合わせ、こくんと頷き合う。確かにロムちゃんラムちゃんよりわたし達の方が大変ではあると思うけど…やるのを躊躇う程じゃないもんね。

タコ捕獲の方法を決定したわたし達は、ロムちゃんラムちゃんと一緒に捕獲の手順を聞いて早速実行へ。

 

「二人共、もし苦しくなったら一旦網を離して出てきちゃえばいいからね」

 

網の四方をわたし達は持ち、ロムちゃんラムちゃんは空、わたしとユニちゃんは水中へ。腰まで水に浸かったところでイリゼさんが声をかけてくれて、それにわたし達は首肯する。首肯して、深呼吸。深く息を吸って、肺の中に出来る限りの空気を取り込んでいく。

 

(……よし)

 

しっかりと息を吸って、ユニちゃんへ視線で合図を送ったわたしは水中へ。わたしとユニちゃんの動きに合わせてロムちゃんラムちゃん達も動き出して、広げられた網はタコを巻き込み始めていく。

 

(よっ…と……)

 

頭まで水に浸かってから数秒後、浮力で脚が離れたわたしとユニちゃんはそのまま歩行から遊泳に移行。勢いでタコが逃げたり網の外に出たりしないよう、ゆっくりと前へ。イリゼさんは苦しくなったら…と言ってくれたけど、まだまだ全然苦しさはない。

息継ぎ無しの水中遊泳なんて、普通の人なら一分か二分、訓練した人でも五分前後出来るかどうからしいけど…女神の肺活量ならそれを軽々と超えられる。それに極論女神はシェアエナジーさえあれば何とかなる身体だから、ここで息を吐いて肺を空っぽにしちゃっても多分大丈夫。…お姉ちゃん達は手術後(というか捕まって以降)初めての食事を感極まってそうな位喜びながら食べてたし、『呼吸をシェアで賄う=苦しくない』…なんて保証もないからやらないけど…。

 

(……きた…!)

 

慎重に、確実に網の内側はタコを巻き込んでいって…そして遂に、上へと引っ張られる感覚が網から伝わってくる。……それは、巻き込めそうなタコはもう全て巻き込んだという二人からの合図。

合図を感じ取ったわたしとユニちゃんは、水を蹴り翼も展開して一気に浮上。網をしっかりと掴んだまま水上へと飛び出てそのまま空へ。

 

「うっ、きゅーにおもい…」

「ロム、ラム、落っことすんじゃないわよ!」

「う、うん…!」

 

ラムちゃんの言う通り、それまで浮いてたタコがまとめて載った事で一気に網は重くなる。…けど、その網を持っているのは女神化しているわたし達。水中から引き揚げた瞬間こそずっしりときたけど……慣れてしまえば四人で十分持てる重さだった。

 

「イリゼさーん!成功しましたー!」

「見えてるよー!……にしてもこうして見ると凄いね!引く程網の中でタコがぎっしりしてるよ!」

『……(確・たし)かに…』

 

偶にやってるお菓子とか野菜のセルフ袋詰め並みにぎっしりとなったタコ達は、ある意味圧巻の姿だった。……し、下の方にいるタコは潰れてたりしないかな…?

 

「…で、これどうするのかしら…」

「そうだね…これはどうしますかー?」

「じゃあ砂浜に持ってきてー!それか四人がもう暫く頑張ってくれるならそこで持っててもいいよー!」

「…だって、ユニちゃん持ってる?」

「嫌に決まってるでしょ…砂浜行くわよ」

 

と、いう事でわたし達は捕らえたタコを砂浜へ空輸。逃げられないよう砂浜の奥側まで移動して、網と共にゆっくり着地。すると当然橋の方にいたタコは外側へと転がっていって……カラフルなタコの山が完成した。

 

「…これだと何かのモニュメントみたいだね…」

「それで、つぎはどうするの?まだタコのこってるわよ?」

「そうだね。残ったタコは…数的に網はもう非効率だろうし、手掴みでどう?…あ、でもタコの手掴みは女の子として嫌だよね…」

「…そうでもないと思いますよ?このタコ、触り心地そんなに悪くないですし」

 

蛸といえばぐにゅぐにゅぬるぬるで触りたくない触感…ってイメージがあるけど、このタコの見た目からはそれを感じない。で、試しに突いてみたら…すべすべで適度な弾力のある、むしろどっちかといえば触りたくなる触感だった。感覚的にいえば、普段のライヌちゃんに近いかもしれない。

 

「ほんとだ…ちょっとかたいけど、ぷにぷに…」

「そう?それなら手掴みをお願いしちゃってもいいかな?」

『はーい』

「それじゃ皆頑張って。それとこのタコは私が見てるから心配しなくていいよ」

「分かりました…って、手掴みなら別に女神化してる必要はないのかな…?」

「それはそうだね。どっちの姿でやるかは皆に任せるよ」

 

そう言われたわたし達は四人で顔を見合わせる。どっちの姿でやるかはともかくとして…一人だけ皆と違う方になっちゃった、っていうのはちょっと恥ずかしいもんね。

 

「どうする?シェアエナジーの消費化的には解除した方が良さそうだけど…」

「はいはーい、わたしはこっちのすがたでやるわ!だってこっちじゃないとサイズ合わないもん!」

『サイズ?……あ…』

 

言うが早いか女神化を解除するラムちゃん。一瞬わたしとユニちゃんはラムちゃんの言う事が分からなかったけど…すぐに気付く。気付いて、それで女神化を解きつつ荷物からラムちゃんの言う『人の姿じゃないとサイズが合わないそれ』を取り出して……前回来たきり使われてなさそうな、簡素な作りのプレハブ小屋へ。そして……

 

「よーし皆!残りのタコも、ぜーんぶ捕まえちゃうよ!」

『おー!』

 

プレハブ小屋から出てきた時、わたし達はいつものわたし達じゃなくて……水着姿のわたし達だった。

 

 

 

 

タコが大量発生した浮き島へと到着してから一時間強。前半…というか序盤でタコを大方捕まえたネプギア達は、その後水着に着替えて取り逃がした残りのタコ捕獲を行っていった。私はそれを見ていただけだったけど…きゃっきゃとはしゃぎながら(一人タコに襲われてそれどころじゃなかったっぽいけど…)タコを捕まえて砂浜に運ぶネプギア達の姿は、見ているだけで心が和むようだった。

 

「うぅ…なんで、なんでアタシだけこんな目に…」

「よしよし、ユニはあんな中でもよく頑張ったね。偉い偉い」

 

ビーチパラソルで作った日陰に敷いたレジャーシートに、膝を抱えて座り込むユニ。結局あの後海に残っていた殆どのタコがユニに引っ付こうとしてきて、海上はなんだか凄い事になってしまった。流石にその時はネプギア達が寄ってきたタコを片っ端から捕まえていったから全身に引っ付かれるという悪夢の出来事は回避出来ていたけど…それでも、ユニの精神的なダメージは結構なものになっていた。

 

「…アタシ、そんなに美味しそうに見えたんですかね…」

「う、うーん…食べる事が目的で寄ってきた様には見えなかったけど……」

「じゃあどうして…あ、アタシってまさか母親がタコのアイドルとかだったんじゃ……」

「そ、それは無いだろうから安心していいと思うな」

 

普段のユニからはまず出そうにない意味不明な発言を聞く限り、ユニのショックは私の予想以上みたいだった。…こうなると不憫過ぎる……。

 

「こうなるなら女神化したまま飛んで掴んでいけばよかった…」

「か、かもね。……あー、後…今思った事ちょっと言っていい?」

「…なんです?」

「もしこのクエストを守護女神組でやってたら…やっぱりノワールがユニと同じ様に襲われてたと思う…」

「……アタシ帰ったらお姉ちゃん誘って、二人でDNA鑑定受けようと思います…」

「だから母親がタコのアイドルって可能性はないと思うよ!?」

 

ユニ(と可能性の上でノワール)がタコに襲われるのは、タコが弄りというものを知っていたからかもしれない…なんて思ったけど、どう考えてもこれは更に状態を悪化させそうだからアウト。え、えーと…こうなったら何とかユニの気持ちを紛らわせるか気を逸らすかしないと…えーとえーと……

 

「……あ、そ、そうだ!ユニ、終わったら私が何か用意しておくって話したの覚えてる?」

「え……まぁ、覚えてますけど…」

「なら今からそれを出してあげるよ。三人共ー!ちょっとこっちに戻ってきてー!」

 

全員に慰められても逆にいたたまれなくなるだろう…という事で、水中に隠れているタコがいないか確認(という名目の自由時間に)してもらっていた三人を呼び寄せ、荷物の一つ…クーラーボックスを取ってくる。

 

「……?…もしかして、アイス…?」

「アイス?やったぁ!」

「あ、二人はアイスがよかった?」

「…ちがうの…?」

「うん、アイスじゃなくてこれなんだけど…」

 

ロックを外し、蓋を開け、オープン。私はクーラーボックスの中へ両手を突っ込み、中に入れておいた果物を引っ張り出す。

それは黄緑の下地に白っぽい網目の付いた、ボールの様な果物……そう、メロン。

 

「……二人は止めとく?」

『食べるっ!』

「あはは、だよね。…という訳で頑張ってくれた四人へのご褒美はこれだよ〜」

 

メロンを見て目を輝かせるロムちゃんラムちゃんを前に包丁とまな板を用意し切っていく私。食べ易いサイズにカットし、更に果肉へ切り込みを入れ、スプーンとお皿を四人に渡して準備完了。

 

「これでよし、っと。四人共好きなのを取ってね」

「はい!…でも、いいんですか?このメロン、見るからに高そうですけど…」

「メロン買うだけで苦しくなる程私の懐は貧相じゃないよ。それよりメロンが緩くなっちゃう前に食べて食べて」

「そう、ですか?…じゃあ、頂きます」

『いただきまーす!』

 

ネプギアに少し心配されたけど、それへ私は軽快に返答。そのまま軽い調子で私は勧め、四人はスプーンを持って食べ始める。

 

「んー、おいし〜♪」

「うん、おいしい…♪」

「ふふっ、そうだね。砂浜と言えばスイカだけど…メロンもいいかも」

「メロンって高級感あるし、落ち着いて食べたい時はこっちの方がいいかもしれないわね。…ロムラムはがっついてるけど」

「む、なによ…」

「別に?まだまだ二人は子供だってだけの話よ?」

「むー!ユニだって子どものくせに!」

「…くせに…(ぷんすか)」

「はいはい悪かったわね。…でもほんとに美味し」

 

さっきまで楽しそうにしていた三人は勿論として…ユニもまた、メロンを口にしてから少し顔がほころんでで調子も戻ってきたみたいだった。…ふっ…幾ら女神とはいえ、所詮は女…甘い物を食べればそれだけで気分が良くなるというものよ!かくいう私含めてねっ!……と、こっそり指に付いた果汁を舐めて頬を緩める私でした。

その後も四人はメロンを堪能。やっぱり用意してあげた物を喜んでもらえるのは嬉しい訳で、私も気分が良くなっていく。

 

「あ…ねーねーイリゼさん、あのタコってたこやきにできる?」

「え、たこ焼きに?」

「あのタコまるっこいし、そのままたこやきにできないかしら?」

「おっきいたこやき、食べてみたい…」

「確かにそれは魅力を感じるね。……でもこのタコ、多分モンスターだよ?」

「え…そうなの……?」

「絶対、とは言えないけど…少なくとも私達がここに到着するまで考えていたタコとは別種、それも普通じゃない種類だって事は間違いないと思うよ」

「じゃあ…モンスターたこやきになっちゃう?」

「うん、それだと物凄く大きいたこ焼きの名前みたいだね…」

 

モンスターたこ焼きじゃ、特大たこ焼きとかジャイアントたこ焼きの更に上のサイズみたいに聞こえてしまう。丸ごと一匹使ったたこ焼きっていうのは私も食べてみたいけど、勝手に安全かどうか分からない生物を食べさせる訳にはいかないよね。

そんな雑談も交える事十数分。食べ終わった四人はまだまだ元気一杯で、今度はユニも一緒に水遊び……もとい、取り逃がしたタコがいないか探しに行く。

 

「…イリゼさん、さっきは気を遣ってくれてありがとうございました」

「気にしないで。これ位仲間なら当然の事なんだから」

「…はい。…そういえば、イリゼさんは水着持ってこなかったんですか?」

「あー…一応あるよ?けどほら、調査担当の人達が来た時説明する私が水着姿だったらちょっと気不味いでしょ?」

「そ、それはそうですね…」

「ユニちゃーん、早く行こうよー!」

「分かってるー!…もう、ネプギアもまだまだ子供なんだから…」

 

…なんてユニは言うけれど、そう言いながらも口角を上げつつ小走りで友達の下へ向かうユニだってまだまだ子供だよ、と私は心の中で呟く。……でも、それを言うなら私だって、ネプギア達よりは大人かもしれないけど…世間一般で言うような大人であるかどうかは怪しいところ。

 

(……ほんとは水着に着替えたらテンションが上がって、皆と同じ位はしゃいじゃいそうな気がするから…とは言えないよね)

 

そんな事を考え苦笑しながら、私は四人をのんびりと眺める。快く引き受けてくれたとはいえ、休暇中の四人をクエストへ連れていくのは少し申し訳なかったんだけど…四人は楽しんでくれているみたいだったから本当に良かった。勿論それはクエストそのものじゃなくてクエスト後に遊んでるだけ。でも、ただ休暇を過ごしてただけならここに来る機会はなかっただろうし、ね?

 

(……また、皆で来たいな…)

 

今候補生の四人は休暇中だけど、その休暇は何かあればすぐに返上しなきゃいけないもの。だから、私は思う。四天王も犯罪神も倒して、平和を取り戻す事が出来たら、前みたいに皆揃ってここへバカンスに来たいって。…出来るよね。だって皆頑張ってるもん。ここまで進めてきたんだもん。だから、多分とか出来ればじゃなくて、絶対また私達はあの時の面子で…ううん、あの時よりももっと沢山人を呼んで、皆で楽しくバカンスに……

 

 

 

 

 

 

 

 

「──犯罪組織を潰して戦勝気分か、気楽なものだな」

「……──ッ!?」

 

……その瞬間、私は本能的に女神化した。危険を察知したとか、敵を認識したとかじゃなくて、女神の本能が直感的に女神化をさせた。

振り返りながら長剣を掲げる私。そこへ血の様に赤い刃を持つ大鎌が叩き付けられる。

 

(……ッ!こいつはまさか…マジック・ザ・ハード…!?)

 

反応こそ間に合ったものの、私は長剣を掲げるので精一杯且つ足元は柔らかい砂浜。そんな状態で四天王の一撃を防ぎきれる筈がなく、私は海へと跳ね飛ばされてしまう。

 

「え……わぁぁ!?い、イリゼさんが飛び込んできた!?大丈夫ですか!?

「大丈夫!それより皆、戦闘準備ッ!」

 

ネプギア達の横を通り過ぎるように吹っ飛んだ私は、そのまま海にダイビング。あっという間に結構な水深の所へと沈んでいってしまったけど…即座に姿勢を正し、シェア爆発を推進力に一気に海上へ。

 

「仕留め損ねたか…運のいい奴め」

「……何故貴様がここにいる…!」

「…ふん、女神に答える義理はない」

「なら……!」

 

四天王の存在に気付いたネプギア達が女神化する中、私の言葉へ冷ややかに返してくるマジック。突然の事に驚きつつもまずは倒すべきだと考えた私は長剣を構え、突撃を仕掛けかけた私だけど……その瞬間、マジックは大鎌で砂浜を抉り砂煙を作り出す。

 

「目眩し…!?だったら…皆!」

『はいっ!』

『うんっ!』

 

その一言だけで私の意図に気付いてくれたネプギア達は、砂煙へ向けて集中砲火。弾丸と魔法が砂煙を切り裂き後ろの林ごと貫いていく。……だが…

 

「……いない…?」

 

……砂煙の消えた砂浜にあったのは、私達の持ってきた荷物と砂が目に入ったのか『(ノ <)』と短めな足で目を押さえるタコの姿だけだった。

 

「……た、たおせたの…?」

「まさか。撃たれる前に逃げたのよきっと。…でもなんでここにマジックが…」

「…分からない。けど……」

『……けど…?』

「…私達が調査担当の人達に先行してここに来ていたのは、正解だったみたいだね」

 

長剣を下ろし、神経を張り詰めながらも後ろへ振り向く私。振り向いた私の視界に入ってきたのは……もしもう少し早く来ていたら大変な事になっていたであろう、調査担当の人達が乗る航空機だった。




今回のパロディ解説

・同じ色のを四つ並べたり
ぷよぷよシリーズにおける、基本システムの事。このイベントで出てくるタコ(原作参照)はぷよ並みに丸っこいですし、もしかしたら本当に消えるかも…?

・パズルみたいに一筆書きで並べたり
パズル&ドラゴンズにおける、基本システムの事。コンボさせたらネプギア達がパワーアップ…しても意味ありませんね。戦闘中ではありませんし。

・『──(撃・う)てませんっ!』
機動戦士ガンダムUCの主人公、バナージ・リンクスの名台詞の一つのパロディ。原作及びメディアミックスでは「せ」と「ん」の間を伸ばしてません、ここ重要ですよ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。