超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress 作:シモツキ
平和で何事もない日常こそ幸せ。重い過去を背負ってたり、戦場というものを知っている主人公キャラはこんな事を言ったりするけど、それは結構間違ってる。世の中には争いを楽しむ人間だっているし、主人公キャラは何事もない日常というのをよく知らないか慣れていないからこそ勝手な幻想を押し付けているに過ぎない。…と、某御道君みたいな事を言い出した(考え出した)のは、私がずっと入院しているから。幾ら色々用意してもらったり連日人が来てくれたりするからって、本能的な好戦性を持ち何気にそこそこ普通の生活を知らない事もない(と思われる)私やネプテューヌ達にとって、入院生活というのは……流石に、飽きる。
「ねービーシャー、入院をわたしと変わってくれないー?」
「それは色々と無理だよねぷねぷ…」
ビーシャに無茶…というか意味不明なお願いをするネプテューヌ。今私達のいる病室には、
「ノワールさんノワールさん、お腹空いてませんか?喉は乾いてませんか?今なら私が何でもしてあげますよ?」
「だ、大丈夫よケーシャ。気持ちだけ受け取っておくわ…」
「いやー、前に来た時よりも包帯の巻いてある面積が減ってるね。順調に回復してるみたいでアタシは安心したよブランちゃん」
「心配していてくれてありがとう。けど、ちゃん付けは止めて頂戴…」
「…………」
「相変わらず貴女は無愛想ですわねぇ…」
四人はそれぞれ交流が深い相手…つまりは担当国の女神と談笑中(リーンボックス組はエスーシャがそこまでお喋りじゃないからか、談笑してると言えるか微妙だけど)。だから私は教祖の四人が来た時と同じくちょっと会話に入り辛い感じだったけど…別にそれで凹んだりはしない。そんなずーっと一対一で話してる訳じゃないし…他の日ならともかく、今日の私は気分が良いのだから。
「えっと、あの本はどこに入れたんだったかな…」
「うん?イリゼちゃんは荷物を整理しているのかな?」
「そうだよ。何でだと思う?」
「…今日退院出来るから、だろう?」
「うっ…ま、まさか即正答に辿り着かれるとは…しかもエスーシャが返してくるとは…」
「エスーシャは積極的に話すタイプじゃないけど、別に会話が嫌いって訳でもないからねー。それで、ほんとにイリゼは今日退院なの?」
「本当だよ。まだ完治した訳じゃないし、退院しても暫くは戦闘どころか軽い運動も駄目だって言われてるけどね」
怪我の回復速度が異常な程速いから、という事で私達は毎日コンパや医師の方に状態を診てもらっているんだけど…つい昨日、私に退院許可が降りる事となった。…あの時の皆の羨ましそうな顔、写真に撮っておきたかったなぁ…。
「それは良かったですね。ノワールさんはいつ位になりそうですか?」
「そうね…まだちょっと分からないわ。もう大方治ってるとは思うんだけど…」
「病気と怪我は治りかけが肝心、何かあってもわたし達がいるんだから焦っちゃ駄目だよ?」
「おー、珍しくビーシャが真面目な事言ってる〜」
「む、ねぷねぷよりは真面目だもーん」
やはり会話はどうしても同郷組中心のものに収束してしまう。…これって皆もまた、ネプテューヌ達の帰還を友達として待ち望んでいたから…なのかな。ビーシャがネプテューヌと仲良いのは知ってるし、シーシャもブランの事は好意的に見ているみたいだし、エスーシャも…ベールと仲良いのかどうかは分からないけどわざわざ来てくれたんだからそれなりの理由がある筈だし、ケーシャはなんかちょっと……いやかなり食い気味だけど、好感情持ってるのは間違いないし、ね。
「……私も国を持つ女神だったら、こうして教祖や
「どったのイリゼ?しんみりモード?」
「あ、いや別にそんな事はないよ。ただちょっとIFを想像してただけ」
『え、アイディアファクトリー社を(ですの)?』
「なんで今の流れでアイディアファクトリー社の事になると思ったの!?というかそこはせめてアイエフじゃない!?なんで元ネタの方いっちゃったの!?」
私も自分で言いつつ「アイエフと間違えられるかなぁ…」とは思ったけど、まさか会社の方が出てくるとは思わなかった。ぼ、ボケにしても突飛過ぎる……。
…と、そこで片付けの手を止めてしまっていた事に気付いた私。皆の会話に混ざったり混ざらなかったりしながら片付けを続け……無事、お迎えのコンパとアイエフがやって来る前に病室を後に出来る状態へ至る事が出来た。
「失礼しますです〜、イリゼちゃんお片付けは出来たですか?」
「あら、今もお見舞いが来てたのね」
もう私は歩くだけなら問題なく出来るし、止められてるからやってないけど走る事も出来る…気がする。だから私は一人でも帰れるんだけど……それは許してもらえる筈もなく、こうして二人が来る事になった。…絶対参加するって言った定期集会には何とか退院を間に合わせられたけど、これだと集会行くのにも誰か付き添いを用意されちゃいそうだなぁ…。
「さて…それじゃああたし達もそろそろお暇しようか」
『えー……』
「帰りたくないならそれでもいいんじゃない?その場合仕事が滞って、それが回り回ってこの四人に心労をかける結果になるかもしれないけどね」
「うっ…シーシャ酷い…」
「いやいやあたしは事実を述べただけだから。因みにエスーシャ、君は…」
「興味ないね」
「言うと思ったよ…それ単体だと何に対して興味ないのかさっぱりだけどね…」
帰りたくなさそうなビーシャとケーシャを窘め、全員が予想していた通りの言葉を放ってきたエスーシャへ突っ込むシーシャ。自らお姉さんキャラを前面に出してる彼女は自然と
「名残惜しいですけど…ノワールさんに心配かける訳にはいきませんもんね。ノワールさん、私また来ますからね?」
「例え戻ってきてもいつまでも入院中じゃ意味がない。早く復帰出来るよう安静にしている事だね、ベール」
「貴女達も仕事頑張って。…それとシーシャ、民間の人が無理に犯罪組織へ仕掛けようとしないようギルドでも気を付けておいてくれるかしら?」
「そのつもりだよ。支部長としてきっちり気を付けるさ」
「じゃあね、ねぷねぷ。退院出来たら一緒に遊ぼうね!」
私達の見送りを受けながら、
「…もう数日滞在したって構わないんだよ?」
「もう十分滞在したから遠慮するよ、というかネプテューヌが決める事じゃないし…」
「イリゼがこれからどれだけ仕事をするのかは貴女の勝手だし、既に再三言われてるだろうけど…退院明けだって事は考えなさいよ?自分の体調もきちんと認識出来ないようじゃ、信仰してくれてる人への規範にならないもの」
「お堅い言い方しますのねぇ…シンプルに『いのちだいじに』とでも言えばいいですのに」
「はは…再三言われてるから分かってるよ。…というか、私ってそんな危なっかしく見える?」
『見える』
「即答&六人同時!?……うぅ、私心の傷で再入院が必要になるかも…」
やっと物理的な傷が退院出来るレベルにまで回復したと思ったら、今度は精神的にばっさりやられてしまった。むむ…もし完治してたらバスタードソード振り回して抗議してたところなんだからね!その場合でも当たったら危ないからそこら辺気を付けはするけど!…多分!
「ほら、しょげてないで行くわよ」
「しょげさせた側が言わないでよ…じゃあ皆、私も出来る限りお見舞いに来るから、皆も早く身体治すんだよ?」
「えぇ。…と言っても意識的にどうこう出来る事ではないけど…」
「それならちゃんと休んで、ちゃんと食べて、ちゃんと寝るのが一番ですよ。リハビリだって無理にやったら逆効果になっちゃうですからね」
「はーい。よーしそれじゃあ皆、わたし達もイリゼに続けるよう頑張るよー!」
『だから回復は頑張る云々じゃないん(だって・ですわ)…』
そんなこんなで、私は退院する事になった。……実を言うと、私だけ先に退院する事に申し訳ない気持ちがあった(申し訳なく思わなきゃいけない理由なんて微塵もないんだけど)んだけど、結局最後まで平常運転のままな皆の声を受けているとその気持ちも薄れてくれた。…さ、これでやっと自由に動き回れる事になったんだから、やりたい事もやるべき事もこれから進めていかなきゃね。
*
「ライヌちゃん、見て見て。また写真増えたんだよ〜」
「ぬらー?」
「この人達皆私を信仰してくれてる人達なんだよ?もう、なんか最近『Knight of Lord Origin』だとか『オデッセフィア協会』だとか変な組織名考え出しちゃってさ〜…私の事思ってくれるのは本当に嬉しいけど、あんまり本格的な組織になられても私としては戸惑っちゃうんだよね…」
「……ぬら?」
「あ、因みに教会じゃなくて協会らしいよ?…って、ライヌちゃんはこんな話されても困っちゃうだけだよね」
膝の上に乗せたライヌちゃんに、携帯で撮った写真を…今日参加した私の信仰者さん達による集会(という名のプチパーティー)で撮った写真を見せて話す私。ライヌちゃんがどこまで理解しているか分からない…もしかすると写真そのものをまずよく分かってないのかもしれないけど、私はライヌちゃんとこうしてお喋り出来ればそれでいいんだから問題無し。
「今日もライヌちゃんの身体はぷるんぷるんだね〜、はー…癒される…」
「ぬらぬらぁ〜」
入院中、色んな人がお見舞いに来てくれたけど…ライヌちゃんは『医療施設に凶暴では無いとはいえモンスターを入れる訳にはいかない』…という事で病室に呼ぶ事が出来ず、また暫しの間一人(一匹)ぼっちにしてしまっていた。…だから、その分の埋め合わせをしてあげなきゃだよね。抱っこしてあげたり遊んであげたりお菓子あげたりして、寂しい思いさせちゃった分喜ばせてあげないといけないよね。うんうん、その過程の中で私が癒されたりしてもそれは副次的なものであって、決してそれ目的で今抱き上げた訳では……
「イリゼさん、おりますか?( ´ ▽ ` )ノ」
「はわぁっ!?」
「ぬらぁ!?」
「イリゼさん!?∑(゚Д゚)」
ライヌちゃんと戯れてる最中に人が来るのはもう何度目か。ただ何度目であろうと戯れてる最中は物凄く気の抜けてしまう私にとって、来客は半ば奇襲のようなもの。だから今回も私は驚いて、ライヌちゃんをかなり強く抱き締めて…いや締め上げてしまった。
「あぁっ!?ら、ライヌちゃんごめんね!後その声イストワールさんですよね!?ど、どうぞ!」
「あ、はい……今来るのはご迷惑でしたか…?(´-ω-`)」
「そ、そんな事はないです…ちょっと驚いちゃっただけで…」
一瞬瓢箪みたいになってしまったライヌちゃんをベットに降ろし(離したらすぐ身体が元に戻ってくれた。…良かったぁ…)、胸に手を当てて落ち着かせながら扉を開ける。…ライヌちゃんと戯れてる時は奥の部屋使おうかな…それなら廊下から聞こえる音も小さくなってここまで驚きはしないだろうし…。
「それならいいですが…ではお邪魔しますね(。・ω・。)」
「ぬら?ぬら〜」
「こんばんは、ライヌさん。またイリゼさんと過ごせるようになってよかったですね(*^▽^*)」
「ぬらぬら、ぬらー!」
イストワールさんの声に反応したライヌちゃんがスライヌ流(?)の挨拶をし、イストワールさんもライヌちゃんへと言葉をかける。お世話を頼んでいたからか、それとも背格好の関係で怖くないのか、ライヌちゃんはイストワールさんに対してもう殆ど警戒しないようになっていた。
「…旅の間もそうでしたが、本当にライヌちゃんのお世話を引き受けて下さりありがとうございました」
「いえいえ、ライヌさんは暴れませんしご飯も普通に食べてくれましたから楽なものでしたよ。…偶に寂しそうな顔して鳴いている事はありましたけど…(><)」
「そうだったんですか…ライヌちゃん……」
不思議そうな顔をして会話を見つめているライヌちゃん。今はなんて事なさげな顔をしているライヌちゃんも、不在の間はやっぱり寂しく思っていたんだと知ると私の心はきゅんとしてくる。…ライヌちゃん、後でまたぎゅーってしてあげるからね。
「…こほん。それでどうしたんです?…犯罪組織に何か動きがあったんですか?」
「いえ、そうではないんです。…あ、いや…全くもって無関係という訳でもありませんが…~_~;」
「…と、言いますと…?」
イストワールさんを中に招きつつ、早速要件についての会話をスタート。他の人なら椅子を勧めるけど…普段浮いてる&本に座ってるイストワールさんに勧めても「あー…えっと…」みたいな空気になってしまうから今回は無し。
「一先ずかいつまんで説明すると…今、とある浮き島である生物の大量発生が起きてしまっているんです。それで調査と必要ならば駆除を行ってほしいというクエストがギルドに持ち込まれたのですが…」
「ですが…?」
「…その浮き島は、犯罪組織の残党が潜伏している可能性があるんです( ̄^ ̄)」
「だから教会にクエストが移された…って訳ですか…」
信次元ゲイムギョウ界は主に四つの大陸によって成り立ってる世界だけど、四大陸の他には何もないって訳じゃない。現在は繋がってる四大陸の外側にも大小様々な浮き島があって、そこは未開の地だったりある程度開発がされていたりして個々の差が大きいけど…普通の人は勿論女神であっても距離があってすぐには行けないから地域としての危険度は高めになっている。それだけでも受注制限は出るだろうし、そこに確率はどうあれ犯罪組織残党の潜伏すらあり得るとしたら…私のところにまでそのクエストがきてもおかしくはない。
「…でも、よく大量発生が判明しましたね。そこって小規模な町が出来ていたりする島なんですか?」
「そうではありません…が、イリゼさんにとっては覚えのある島ですよ( ̄∇ ̄)」
「覚えのある島…?」
これまでの旅の中で浮き島に行く事なんてまず無かったし、実質的には四ヶ国の外である浮き島なんて特務監査官として出向く事も無かった私にとって、浮き島なんてどこも身に覚えなんて……
「……って、もしや…」
私は浮き島とはほぼ無縁の女神。…けど、一ヶ所だけ確固たる目的を持って行った島が、よく覚えてる場所があった。そして、その場所を思い浮かべながら口を開くと……イストワールさんは、ゆっくりと頷いた。
*
発明というのはトライアンドエラー。どんなに知識と思考力がある人でも一度の試作で100%の完成品を作る事なんてまず無理だし、逆に実際に作ってみた結果想定していなかった利点や長所に気付く事だってある。複製とか簡易的な改造とかならともかくこれまでになかった物を創り出すのが発明なんだから、これまでにあった事柄の知識と思考力だけじゃ分からない部分が生まれるのは当たり前の話だよね。で、その中で新しい事を知ったり判明した問題をなんとかしようとするのも、物作りの楽しさだって思うな。
「ユニちゃん、さっきのマイナスネジを取ってくれないかな?後油もお願い」
「マイナスネジと油ね、はい」
「ありがと。……あ、ボタン型電池近くにある?」
「はいはい、ボタン型電池ね」
「うんこれこれ。…えっと、ここはまだどうこうしない方がよさそうだから…これ置いておいてくれる?」
「…アンタ、人使いが荒いわね…」
「あ…ご、ごめんねユニちゃん…集中しててつい…」
現在わたし達女神候補生四人は『魔術式即応充電器(仮)』の開発中。だからわたしの部屋とわたしとお姉ちゃん共用の部屋は今、その新充電器の試作工房になっている。
「ついで顎で使われちゃたまらないっての…ロム、ラム、そっちはどう?」
「どーもこーもないわよ…」
「魔導具づくり、たいへん…」
初めわたし達は、電撃魔法をそのまま充電器に流してゲームの充電を出来るようにしようとした。けどそれってつまりは電撃魔法を充電器に撃ち込んでるのとあんまり変わらなくて、そんな事をしたらロムちゃんとラムちゃんの体験談と同じく電撃で壊れちゃう可能性が高い。…と、いう事で充電器には電撃魔法を充電に適したパワーまで調整する為の魔導具を組み込むという事になった。でも…そっちは難航してるみたい……。
「…今回の魔導具って、前に説明してくれた魔法のブースト型でも魔法内包型でもない、言ってみれば魔法を弱める魔導具よね?それってほんとに作れるの?」
「たぶん、できる…でも、とってもむずかしい…」
「じゅうでんきの中に入って、ちょうせーしたでんげきをきかいにうつせるように、ってじょーけんがなければもうちょっとらくだと思うけど…」
「その条件クリア出来なきゃ意味ないでしょ…」
「わかってるわよ!しゅーちゅーしてるんだからはなしかけないでよね!」
「あ、うん…悪かったわね…」
普段ユニちゃんはよくラムちゃんをからかったりするんだけど、ここのところはあんまりそういう姿を見せない。最初はそれを「ユニちゃんだって四六時中からかってる訳じゃないもんね」と結論付けていたわたしだったけど……
(……遠慮、しちゃってるのかな…)
充電器作りはわたしとロムちゃん、ラムちゃんはそれぞれ得意分野(わたしなら工学部分、二人なら魔法部分)がそのまま活かせる開発だけど、ユニちゃんはそうじゃない。勿論ユニちゃんだって役目はあるし今だってわたしはユニちゃんの手を借りてるんだけど……ユニちゃんからすれば、自分だけ『必要不可欠な人員』じゃない…って思ってるかもしれないって思うようになってきた。
…でも、どうしたらいいか分からない。一番楽なのはユニちゃんの長所を活かせる銃要素を組み込む事だけどそんな事をしたら発明が一気に物騒なものになっちゃうし、今はまだわたし達三人が暴走や脱線をしてないからストッパー係としての仕事もさせてあげられない。もしかするとこれがわたしの思い過ごしで、心配する事なんてなんにもないのかもしれないけど…それでもわたしは気になっちゃう。……部屋の扉がノックされたのは、そんな事を思っていた時だった。
「あ…ネプギアちゃん、だれか来たよ…?」
「みたいだね…はーい」
機材を置いて、扉の前へと動くわたし。誰だろうなぁ…と思いつつ開けてみると、そこにいたのはイリゼさんだった。
「今時間大丈夫?…って、これは……」
「あ、あー……気にしないで下さい!休暇の有効活用をしていただけですから!」
「ず、随分とエキセントリックな有効活用方法だね…じゃあ今は来ない方がよかった?」
「いえ、大丈夫ですよ?皆もいいよね?」
そう訊くと三人は頷いてくれたから、わたしは「散らかってますが…」と前置きしつつ扉前から退いて道を開ける。始めてから結構時間経ってたし、人も来たんだからちょっと休憩にしようかな。
「……片付けはちゃんとやらなきゃ駄目だよ?ネプテューヌが退院するのもそう遠くはないんだしさ」
「そ、そうですね。気を付けます」
「うん。…で、さ…ちょっと言い難い事なんだけど…」
『……?』
「…明日、クエストをお願いしてもいいかな…?」
「それって…」
頬をかきながら、言葉通り言い難そうな顔でイリゼさんは言う。その言葉を受けて、わたし達は顔を見合わせる。…休暇中のわたし達に、そこそこ急なクエスト依頼って……
「…まさか、犯罪組織に動きが?」
「私と同じような事言うねユニ…犯罪組織に動きがあった訳じゃないよ。でも犯罪組織の危険性が少なからずあるから、教会にそのクエストがきたんだよ」
「ふーん…でもわたしたち、今お休み中よ?」
「うん、知ってる。だから私としては四人の代わりに私が行ってきたいんだけど…」
「そ、それは駄目ですよイリゼさん!身体に悪いですし、コンパさんに怒られちゃいますよ!?」
先日無事退院出来たイリゼさんだけど、コンパさんはまだ静養が必要だって言っていたし、実際まだ何ヶ所かイリゼさんの身体には包帯が巻かれている。そのクエストの内容がどういうものなのかはまだ知らないけど…女神として静養が必要な人にクエストをやらせる訳にはいかないよ!
「ネプギアの言う通りです、イリゼさん。イリゼさんがクエストをするって言うならアタシ達が止めますよ?」
「でも、そうなると四人に頼むしかなくなるんだよ?犯罪組織潜伏の可能性があるから民間に任せる訳にはいかないし、国外だから軍もおいそれとは展開させられないし、コンパやアイエフ達は明日すぐじゃどうしても時間が合わないみたいだし…」
「いいんですよ。わたし達だって何かあったら頼むって言われてますし、自分が休みたいからって困っている人がいるのを見て見ぬ振り、なんて出来ませんから」
休暇を返上してクエスト、というのは勿論嬉しい事じゃない。でも…それ以上にわたしは誰かに無理をさせたり、助けを求められてそれを無視する事の方が嫌だしやりたくはない。嫌だし、やりたくないし……何より、そんなの女神じゃないもんね。
「……三人は、どう?」
「アタシだって構いません。毎日休んでいたら身体も鈍っちゃいますし」
「わたしも、やる…」
「ま、一日でおわらせちゃえばそのあとはまたお休みでいいんでしょ?だったらぱはっとおわらせちゃえばいいじゃない!」
「…ほんとに悪いね、四人共。そのクエストが終わったらクエスト報酬とは別に私も何か用意しておくから、皆頑張って」
流石にご褒美で簡単に釣られる程子供じゃない(ロムちゃんラムちゃんはちょっと目を輝かせていた)けど、そう言われるとやっぱりちょっとやる気がプラスされる。…でも、何を用意してくれるんだろう…まさか現金じゃないよね?現金は貰えて困る物じゃないけど、凄く雰囲気が微妙になりそうだし…。
「それで、クエストの詳細は…」
「だよね。皆、前にバカンスへ行った浮き島覚えてる?あそこに大量発生した生物調査の為の捕獲と必要であれば撃破するのが目的だよ」
「バカンス……あ、でっかいスイカきった時の?」
「そうそこ。戦闘には参加しない…というかさせてもらえないだろうけど私も同行するし、細かい事は私に任せてくれれば大丈夫だよ。イストワールさんがまず私に話をしてきたのも、それが理由だろうし」
「あ、いーすんさんからの話だったんですね」
「それで、多分一番気になってる『何が大量発生しているのか』なんだけど…」
そこで一度言葉を区切り、わたし達を見回すイリゼさん。それが何の理由でもってかは知らないけど、それが絶妙な間になってわたし達はほんのりと緊張をし始める。あそこは林と水辺がメインの浮き島だから、やっぱり水棲か森林に住むタイプの生物かな?でも突然の大量発生なら普通はいない生物なのかもしれないし、もしかしたらモンスターなのかもしれないし…うぅ、考えてたらもっと気になってきちゃった…。
「…皆、心の準備はいい?」
「え、心の準備が必要な対象なんですか…?」
「ある意味、ね。……」
「ちょ、ちょっと…早くいってよ…」
「皆に相手してもらいたい生物、それは…」
「…………(どきどき)」
「それは……」
『…………』
「…………タコさんです」
『…………はい?』
──という事で、わたし達は明日浮き島に行ってタコさんを何とかする事に。…タコさんって…は、反応し辛いです、イリゼさん……。
今回のパロディ解説
・某御道君
双極の理創造の主人公が一人、御道顕人の事。なんとシモツキさんの作品をパロらせて頂きました!……と、やってみてちょっと恥ずかしくなっているシモツキです。
・アイディアファクトリー
本作の原作シリーズの開発元の一つである、株式会社の事。こちらもアイエフも略すとIF…まぁアイエフはアイディアファクトリーを縮めているので当然なんですけどね。
・いのちだいじに
ドラゴンクエストシリーズにおける、味方への命令の一つの事。いのちだいじに、はその前に『戦闘中』が付くと思うので、正確にはこの時のイリゼに合いませんね。