超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress   作:シモツキ

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第六十二話 約束を果たす為に

負のシェアの溜まり場で、外観からして荒廃しているギョウカイ墓場。この場所に足を踏み入れるのは、これで三度目になる。

一度目は、マジェコンヌさんと魔王ユニミテスを足止めする為。あの時は危うく死ぬところだったし、マジェコンヌさんの考え次第では私が今のネプテューヌ達の様に拘束されていたかもしれない。二度目は捕まったネプテューヌ達の状況確認と墓場の偵察を行う為。あの時は一応最低限のノルマは達成出来たけど、幽閉されている四人を置いて帰るのは心が痛んだ。そして三度目…今は、四人を助ける為に来ている。一度目の時、ノワールベールブランの三人が私を助けに来てくれた様に、今は私が助けに来ている。

 

「ここまでヤバい所なんだ、ギョウカイ墓場って…こんな所に女の子幽閉するなんて、犯罪組織許すまじだよ!」

「だ、大丈夫かなベール様達…」

 

ギョウカイ墓場の実態を知り、守護女神四人への心配を募らせる新メンバー達。ここに入ってからそこそこ経つけど、シェアクリスタルのペンダントはちゃんと機能してくれているようで、人間組の皆が体調を崩したり性格悪くなったりした様子はない。…とはいえペンダントにしろスキンシップ加護にしろ汚染を遅らせるだけなんだから、出来るだけ無駄無く進まないと…。

 

「…わっ、とと……」

「……?ユニ、どうかしたの?」

「す、すいません…ちょっと弾丸落としちゃって…」

 

その場でしゃがみ、落とした弾丸を拾うユニ。普段はやらないおっちょこちょいなミスをしてしまったユニの表情は…心なしか、強張っている。

…いや、ユニだけじゃない。ネプギアも、ロムちゃんも、ラムちゃんも緊張感に駆られた様な表情を浮かべて、口数もめっきり少なくなっている。……そうだよね…四人はこの面子の中で、一番緊張するに決まってるよね…。…でも、

 

「…大丈夫だよ。特訓最後の日にも言ったけど四人共強くなったし、連携だって出来る様になった。それにこんなにも力強い味方がいるんだから、失敗なんて絶対しないって」

「道中の厄介事は、全て私達が引き受けるわ。だからそんなに気負わなくても大丈夫よ」

「あたし達の役目はネプギア達を万全の状態で送り届ける事、だからね。…それとも、あたしでよければ安心出来る様撫でてあげても構わないよ?さっきのイリゼみたいにね」

「そうそう……ってファルコム!?さっきのアレ掘り返す気!?また私を辱めたいの!?」

「あ、それならわたしもなでなでしてあげるです。わたしのなでなではねぷねぷに好評だったんですよ」

「コンパも乗らなくていいから!相変わらず天然部分は平常運転なんだね!」

「……ふふっ」

 

ここは敵の本拠地と言っても差し支えない場所なのに、やはりうちのパーティーは平常運転。機内では多少緊張してたけど…舞台に上がると緊張を殆ど忘れてしまう(個人差有り)様に、皆もうその段階に至っているらしい。

そして、私達が漫才的雑談を交わしていると…ネプギアは笑みを零していた。…それもまた、候補生四人揃って。

 

「…心強いです、皆さんがそう言ってくれると」

「…そうね。お姉ちゃん達も、こうやって仲間に支えられてきたのかも…」

「私達はそんなつもり無かったけどね。ねぷ子達は積極的に会話に入ってくる…というより話を回しまくってたし」

「女神の皆さんは、いつもわたし達の会話の中心にいたですね」

「それは私達のぶっ飛んだ会話に皆が付き合ってくれたからだよ。…うん、確かに皆と仲間や友達として馬鹿話が出来ていた事が、私達女神にとっては心の安らぎだったんだと思う。…私と四人とは立場が違うから半分は予想なんだけど、さ」

「じゃあ、わたしたちも…もっとおしゃべりした方が、いいのかな…?」

「そーなのかも。じゃ、だれかはなししてみて!」

「凄い大雑把なお願いだね…えと、じゃあ歌ってみる?…もしかしたらモンスター呼んじゃうかもしれないけど…」

「そ、そんな精神不安定な時のアイモみたいな展開は勘弁して頂戴…」

 

普段おふざけ話においては傍観が主体のケイブもこれは流石にスルー出来なかったのか突っ込みを入れ、それで更にちょっとした笑いが私達の中に。…この様子なら、四人も少しは平常心を取り戻せたのかな。

道中で遭遇したモンスターを蹴散らしながら…と言ってもそれはコンパ達がやってくれたんだけど…深部へと歩みを進める私達。目的地までもう半分は歩いたかな…というところで、ふとネプギアが声を上げる。

 

「…あの、わたしの記憶違いじゃなければ、このまま進めば四天王の一人と会う事になりますよね?」

「だと思うよ。ジャッジの役目は墓守って言ってたし」

「ですよね。なら奴…ジャッジ…えーっと、ジャッジ……あれ?ジャッジの後って何だっけ…?」

 

頬に右手の指を当てながら自身の記憶を探り始めるネプギア。…そう言えば私、ジャッジのフルネームって教えたっけ?教えてないなら幾ら考えても出てこない可能性があるんだけど…。

 

「ジャッジ、ジャッジ…ジャッジマンとかじゃないよね…皆は分かる?」

「わたしは知らなーい、しょーじき見た目もあんまりおぼえてないし」

「さあね。別にこれから仲良くする相手って訳じゃないし、ジャッジだけ分かっていれば十分じゃない?」

「それはそうなんだけど、気になっちゃって…ロムちゃんは何か思い付かないかな?」

「わたし…?…えと…ジャッジ…ジャッジ……」

 

口元に軽く握った右手を当てながら思考を巡らせるロムちゃんは、先の二人と違って真剣に名前を当てようとしているみたい。そんなロムちゃんを正答が出なかったら教えてあげようかな…と何となく考えながら見ていたところ、たっぷり時間を取ったロムちゃんは遂に思い付いた様子で……

 

「……あっ…!ジャッジ・バエ──」

『いやその人ではないんじゃない(かな・かしら・かなです)!?』

「ふぇぇ…!?」

 

…なんかとんでもない勘違いをしていた。これが守護女神組ならボケだろうけど…ロムちゃんの場合、本気で言ってる可能性が非常に高い。

 

「ち、ちがった……?」

「う、うん…多分違うんじゃないかなロムちゃん。普通に他作品だし、百歩譲ってそこ無視したとしてもその人が四天王やってたら厄介過ぎる上にややこしい事になり過ぎるからね…」

「そ、そっか…あぅ、わたしもわからないかも…(しょぼん)」

「あ…き、気にしないで。むしろ分かんなくたっていい事にここまでちゃんと考えてくれて嬉しい位なんだから、ね?」

 

しょげちゃったロムちゃんをネプギアがフォローするのも今では見慣れた光景。ユニとラムちゃんが減らず口を叩き合ったり、三人が天然ボケに走ったところへユニが突っ込んだり、何か達成した時四人できゃっきゃと喜んだりと、候補生の四人は守護女神の四人とは違う形の関係を形成しつつある。…私含めた守護女神組が個のぶつけ合いで化学反応起こして一つの力になってるとしたら、ネプギア達はそれぞれの個を重ねて束ねる事で一つの力になってる、って感じかな。この短期間で連携能力を伸ばせたのも、既に信頼関係を築けていたのが要因だろうし。

その後も数十秒程ネプギアはうんうん唸っていたけれど、やっぱりフルネームは出てこない様子。じゃ、そろそろ教えてあげようかな。

 

「ザ・ハードだよザ・ハード」

「へ…?…あの、イリゼさん…それは、ジャッジの後に続く名前…って事ですか?」

「それ以外にあると思う?」

「で、ですよね…」

「私も正直ユニに同意見だけど、まぁ気になったのならちゃんと覚えておくといいよ。奴の名前は、ジャッジ・ザ・ハード……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「────おう、久し振りだなオリジンハート」

『……──ッ!?』

 

ぞくり、と女神の本能が危機を感じ取ったのと同時に聞こえた荒々しい声。弾かれた様に武器を抜き声のした方へと向き直る私達。そして私達が目にしたのは……たった今名を出したばかりの四天王、ジャッジ・ザ・ハードだった。

 

「いつの間に…あたし達の侵入に気付かれていたって事…?」

「来る事自体は分かってたでしょうね。何せ女神がここに来るって大々的に放送したんだもの」

 

言葉を交わすファルコムとアイエフは既に臨戦態勢。勿論臨戦態勢なのは私含めたパーティーメンバー全員の事で、いきなりの事態に対して何かあれば即戦闘開始出来る状態に、私達はある。

 

「相変わらず野郎の居ねぇパーティーなんだな、そこらの男よりよっぽど腕の立ちそうな面子ではあるが。…それに…随分と面構えがマシになったじゃねぇかよ、女神候補生」

「ふん、アタシ達があの時と同じと思ってるなら大間違いよ。女神候補生を舐めないでよね!」

「舐めねぇよ、テメェ等が舐めてかかっていい相手じゃねぇのは面構えを見りゃ分かる事だ。そっちこそまさか、物量頼りで俺に勝てるとは思っちゃいないよなぁ?」

 

ジャッジは肩にかけていたハルバートを私達に向け、にやりと挑発的な笑みを浮かべる。それを受け、皆は更に緊張感を張り詰め戦う意思を露わにしていく。

 

「むむ、すっごいらんぼーそうなやつよね…ロムちゃん、ネプギア、ユニ!あいつコテンパンにしてやるわよ!」

「えぇ、アタシ達の成長を見せつけてやろうじゃない!」

「待って、気持ちは分かるけど…道中の戦いはボク達の役目の筈だよ」

「四人はお姉ちゃん達を助ける為に力を温存しなきゃなんだから、ここはアタシ達に任せてくれなきゃ駄目だよ!」

「で、でもこのジャッジって四天王はすっごく強いんです!…いや勿論他の四天王も強いんですけど‥幾ら皆さんでも、女神抜きでの戦闘は無茶ですよ!」

「おいおい仲間割れか?賑やかだなぁテメェ等は」

 

作戦通り自分達だけで戦おうとする人間組の皆と、四天王の強さを知っているが故に異を唱えるネプギア達。途中言葉を挟んだジャッジを無視して更にやりとりは続く。

 

「無茶でもここで貴女達が疲弊した結果奪還失敗…なんて事になるよりはマシよ。それにこの作戦では四天王を倒す事が絶対条件じゃないのだから、私達に任せて」

「それを言うなら皆で戦うのが一番安全且つ速い筈です!他の四天王が来たら不味いですし、強敵相手に戦力温存なんて…」

「はっ、駄目だなこりゃ。ったく、テメェ等……トランキーロ!あっせんなよ!」

『え……っ?』

「…………」

『…………』

「…………」

「…………プロレス観てたの…?」

「あぁ、暇だったからな」

 

中々意見が纏まらない中、突然ジャッジはそう声高に叫んだ。で、それを受けた私達はちょっと…いや大分反応に困って決まった。…いやこのタイミングでそれ言う!?敵キャラがこのタイミングでそんなパロディ発言をする!?確かにジャッジはそれっぽいけど!制御不能な男って感じではあるけども!

 

「…んで、どうすんだよ?それとも何か?俺に攻め込んできてほしいってか?」

「う…どっちにするにしても、早く決めなきゃ攻撃されちゃいそうです…」

「わ、わたしは…わたしも、みんなでたたかった方がいい…と思う…」

「だよね。皆さん、これはお姉ちゃん達を助ける作戦ですけど、わたし達にとっては皆さんだって大切な人達なんです。だからわたし達にも戦わせて……」

「……いや、待ってネプギア。ネプギアも、皆も…ここで戦う必要はないよ」

 

ネプギアがネプギアらしい、優しい女神らしい言葉を言いかけた時…それまでずっと会話に入らず(ジャッジに質問はしたけど)、最後にもう一度だけ選択をどうするか考えていた私が、彼女の言葉を遮った。言葉を遮り、一歩前に出て、手で皆を制する。

 

「戦う必要はない…?…イリゼそれはどういう意味かしら?」

「言葉通りの意味だよ。…ジャッジは、私が倒す」

「……は?…いや、イリゼあんた…何言ってんの…?」

 

言葉の意味をケイブに問われ、それに私が返し…アイエフに唖然とされる。アイエフだけじゃない。パーティーメンバー全員がそこまでの会話を根本から覆す様な私の発言に、私の言葉を疑うかの様な目線を送っていている。そうしていないのは…私の意図を分かっているであろう、ジャッジただ一人。

 

「私はジャッジと戦わなきゃいけない理由があるんだよ。それは個人的な理由だけど女神として蔑ろにしちゃいけない気がするし、もしジャッジが現れたらこうするってイストワールさん達にも伝えてある。だから…皆は先に行って」

「ちょ、ちょっと待ってよ!じゃあ女神様を助ける作戦はどうするの!?」

「私の役目は、ネプギアにやってもらおうと思ってる。…大丈夫、今の四人なら私無しでもきっとアンチシェアクリスタルを破壊出来るよ」

「えぇ!?そ、そんな土壇場で大丈夫なんて言われても…それにさっきネプギアが言いましたが、全員で戦うのが一番確実…」

「奴は私達全員で戦っても一筋縄じゃいかないよ。勝ち目は十分あるだろうけど、ジャッジは相手が多いなら多いなりの戦いが出来る筈だから。……ごめんね、勝手な事言って…でもどうか、私の我が儘を聞いて下さい」

 

そこで私は振り向いて、皆に向かって頭を下げる。だって、うだうだ説明を並べても結局のところ私の考えは作戦全体の流れより個人の約束を優先しようとしてるんだから。これが我が儘じゃないのなら、世の中で我が儘と言われている多くの事が真っ当な主張になってしまう。

親しき仲にも礼儀あり。その理念で深く深く頭を下げて、数秒。分かってもらえるか、それとも怒られるか…そう心の中で私は思いを巡らせて……

 

「……もう、仕方ないですねぇイリゼちゃんは」

「こうも頭を下げられちゃ、付き合いの長い身として無下には出来ないわよね。…私達からもお願いするわ、イリゼの意思を汲んであげて頂戴」

 

下を向いている私の視界の端に映ったのは、たらんと垂れたコンパとアイエフの髪の毛だった。先程まで見えていなかった髪が見える様になった理由なんて、そんなの二人が私の為に同じく頭を下げてくれたから以外にあり得ない。

二人は理解してくれるどころか私の為に頭を下げてくれまでした。私は我が儘を言っているのに、そんな私を肯定してくれた。そんな二人の優しさに、良い友達を持てた事に、私は心がじんわりと暖かくなる。…そして更に、私の心は暖かくなっていく。

 

「……っと…これは…」

「ふふっ…イリゼちゃん、頭を上げてみて下さいです」

「へ?……あ…」

 

コンパに言われ、何だろうと思いながら顔を上げた私。顔を上げて、皆の顔を見て……気付いた。皆が笑みを浮かべている事に。それは勿論、皆が皆満面の笑みって訳じゃない。苦笑いだったり、少し呆れの感情を含んでいたりする笑みでもあったけど…それでも、皆の顔には表れていた。私の願いを、尊重してくれるという意思が。

私は本当に良い仲間を、友達を持ったと思う。今いる皆も、今は他の場所で頑張ってる前の旅の皆も、論ずるまでもない良い人達。だから後は…ネプギア達、女神候補生の四人。

 

「…駄目、かな?」

「だ、駄目かどうかって言われると…その…」

「えと、わたしは……」

「…わたしは、いいと思います」

「ネプギア…」

 

皆が口籠る中、一人私の意思に賛成してくれたのはネプギア。ネプギアは三人の方を向いて続ける。

 

「確かに、ここにイリゼさん一人残すのは良い事じゃない気もするけど…でも、イリゼさんはこれまで私達に指導してくれたり、手助けしてくれたり、時には私達を信じてくれたりしたでしょ?…だからわたし達からもイリゼさんを信じてあげる事が、候補生として出来る恩返しだと思うんだ。…皆も、そう思わない?」

「……そうね。わたしたちだけでもおねえちゃんたちを助けられるってしんじてくれるなら…わたしたちもしんじなきゃよね」

「…うん。わたしも、しんじてあげたい…」

「……ユニちゃんは、どうかな?」

「…イリゼさん、まさか玉砕覚悟とかじゃないですよね?」

「そんな訳ないよ。私はまだまだやりたい事もやり残した事もあるんだから、こんな所で死んでなんていられないって」

「そう、ですか……なら、分かりました。イリゼさん、ここは任せます!」

「…皆、ありがとう」

 

今一度、私は頭を下げる。さっきのは頼み込む為のもので…今のは、感謝を伝える為のもの。親しき仲にも礼儀ありだとしてもちょっと過剰かな…とも思うけど、私の感謝を素直に伝えるならこうして形にするのが一番なんだから、やっぱり私は深く頭を下げる。下げて、待って、上げて……皆に笑顔を向ける。皆の優しさへ泥を塗る様な事はしないって思いの笑みを。

 

「……行きましょう、皆さん」

「…私もすぐに後を追う、って言っておいた方がいいかな?」

「それは死亡フラグだから止めときなさい…」

「あはは…でも私はそういうつもりだよ。だから…」

「分かってます。…期待してますね、イリゼさん」

 

そう言って、ネプギアが走る。その後を追う様に皆も走り、ジャッジとは距離を取りつつこの場を去っていく。その後ろ姿を見ながら、私は心の中で最後の言葉に返答をする。……期待しててよ、皆。なんたって私は、大切な人と大切な人が守りたいものを守る女神、オリジンハートなんだからね。

 

 

 

 

「……墓守なのに、追わなくていいの?」

 

皆の後ろ姿が小さくなり、もうすぐ見えなくなるかな…というところで、私は口を開いた。誰に対しての言葉なのかは…言うまでもない。

 

「あ?そりゃ墓守としちゃ追った方がいいが…テメェ相手に余所見して別の目標へ攻撃なんて真似出来るかよ。俺は自殺願望はねぇっての」

「…理由はそれだけ?」

「そうさなぁ…もう一つ理由があるとすりゃ、それは……楽しみにしていたテメェとのタイマンを捨てるのが惜しいってところだなぁッ!」

 

どすん、とハルバートを地面に叩き付けにんまりと笑うジャッジ・ザ・ハード。……全く、奴は絶対女神と互角以上の戦闘狂だよ…。

 

「…っとそうだ。一つ確認しとくぜオリジンハート。…何で俺とのタイマンを選んだ。俺は大した頭は持っちゃいねぇが、テメェの選択が非合理的だって事位は分かるつもりだぜ?話したくねぇなら話さんでもいいが、そうじゃねぇなら聞かせてくれや」

「理由?…何を聞くかと思えば……言ったでしょ?次に来た時は一対一で刃を交えるって」

「はっ、つまりは約束を守ったって事か!流石は女神様だなぁ!」

「皆に話した理由も嘘じゃないんだけどね。……さて、そろそろ始めようかジャッジ」

 

品性の感じられないジャッジだけど、同時に彼からはある種の真っ直ぐさを感じる。その方向性はとても褒められたものじゃないけど、正直私は奴をただの悪人とは思えなかった。……だとしても、情け容赦をかけるつもりは毛頭ないけどね。

短い深呼吸を一つして、私は女神化。自身の身体を人としてのものから女神としてのものに戻し、プロセッサユニットを身に纏う。

 

「へぇ、その装備…わざわざ新調してきたってか?」

「この戦いで生き残る為には手なんか抜いていられないからね。…今の私は、前とは違う」

「だよなぁだよなぁ!テメェから感じる気迫は明らかに前以上だ!へっ、一層楽しみになってきたじゃねぇか!」

「それは良かったね。──馴れ合いはここまでだ四天王。死にたくなくば、原初の女神たるこの私に打ち勝ちたくば、全身全霊を持って戦うがいい」

「……そうだな。じゃあ、始めるとしようじゃねぇか…」

 

長剣を手元に顕現させる私。ハルバートを持ち上げ、笑みを浮かべながらもその奥で強者の顔を見せるジャッジ。私達は一歩ずつ近付いていく。一歩、また一歩と近付き、互いに十分な距離にまで近付いたところで一度止まり、そして…………吠える。

 

「この時を今か今かと待ちわびてたんだッ!さぁ、楽しもうじゃねぇかオリジンハートォォォォッ!!」

「覚悟するがいいジャッジ・ザ・ハード!貴様は、私が……ここで討つッ!」

 

地を蹴り互いに肉薄した私達の長剣とハルバートが激突する。両者の得物が火花を散らし、私とジャッジの視線が交錯する。

ジャッジの意思により一度中断され、そして約束された私達の一騎討ち。女神と四天王による、雌雄を決する戦いは……今ここに、始まった。




今回のパロディ解説

・アイモ
マクロスFrontierにおける劇中歌の一つの事。5pb.の歌には特殊な力があるみたいですが、具体的に何なのかは語られてませんね。原作はどれもそんな感じですが。

・ジャッジ・バエ──
本作と同じくハーメルンにて投稿されている作品『女神世界の新生世代』(作フェルデルトさん)の登場キャラ、審判の悪魔(ジャッジ・バエル)の事。まさかの二次創作パロディ、この件はフェルデルトさんに話してありますよ。

・「〜〜トランキーロ!あっせんなよ!」
プロレスラー、内藤哲也選手の代名詞的台詞の一つのパロディ。…別にジャッジはデスティーノしたりスターダスト・プレスしたりしませんよ?イリゼ潰れちゃいますし。

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