超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress   作:シモツキ

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第六十一話 いざ墓場へと

あの全国同時放送から十数分後。ドレスを脱ぎ女神化も解いてプラネタワーから出たわたし達は、準備済みの小型飛空挺に乗って、ギョウカイ墓場への移動を開始した。

飛空挺は教会が保有するプライベート機で、乗っているのもわたし達突入組を除くと操縦士さんと、絶対健康な状態じゃないお姉ちゃん達を救出後すぐ診られるよう待機しているお医者さんの合わせて数人のみ。座席については自由だから皆思い思いの場所に座ったり窓の外へ目をやっていたりしていたけど…その中の一人、イリゼさんは見るからに疲れた様子で、座席に深く身体を沈ませていた。

 

「お疲れ様です、イリゼさん」

「ネプギアもお疲れ様。言うのが直前で悪かったね…」

「あ、いえ。わたし達は殆ど何もしませんでしたし…それよりも、わたし驚きました。こんな大掛かりな計画を進めてたなんて…」

 

放送の内容も、放送する範囲も、その中で出した画像や動画も全て知らなかったわたし達は、国民の皆さんと同じ様にあの放送に驚いた。…我ながら、びっくりしてても表情を崩さなかった放送中のわたしを褒めてあげたい。

…ただ、驚きとは別としてわたしはあの放送の意図が気になっている。何故わざわざ隠していた事を話すのか、どうしてこのタイミングだったのか、イリゼさんがあそこまで演説っぽく(実際演説だけど)やったのは何か理由があるのか…訊きたい事は幾つかあるし、何となくこれはなぁなぁにしちゃいけない様な気がする。だからわたしはそれとなくイリゼさんに話しかけて、あの放送に対する質問を……

 

「聞こえていますでしょうか!こちらはプラネテューヌ国防軍所属のノーレ!これよりプラネテューヌ圏内の間は、我々二機が護衛に入ります。移動中での襲撃は全て我々が迎撃しますので、女神様達はご安心を!」

「……!」

 

しようとしたその時、他機からの通信らしきアナウンスが飛空挺の中に放送された。その声は聞き覚えのあるもので、もしやと思って窓の外に目をやるとそこにあるのは航空形態を取った二機のMGの姿。しかも一機は従来とは違う装備を纏っていて、航空形態でのシルエットもやや変わっている。

 

「プラネテューヌ国防軍…イリゼさん、軍に護衛を依頼していたんですか?」

「あ…うん。空じゃ私達しか満足に戦えないし、道中での消耗は出来る限り抑えたいからね。…依頼したのは私じゃなくてイストワールさんだけど」

「そうなんですか……ってあれ?なんか片方は装備が違う様な…ねぇネプギア、そっちのMGも何か改良「よくぞ訊いてくれたねユニちゃんっ!」……え…いやあの、まだ質問の形になってな「説明してあげるね!」……あ、はい…」

 

うちのMG…ロボットに興味を示してくれた事が嬉しくて、つい近くに来ていたユニちゃんの両手を包む様に握るわたし。何故かちょっとユニちゃんが敬語になったけど…きっと関係ない事だよね!それよりプラネテューヌの女神候補生として、ルエンクアージェの装備について教えてあげなきゃ!

 

「ユニちゃん、あの装備が多い方は改良型じゃなくて追加装備を纏った機体なんだよ。例えるなら…スーパーパックって感じ?だから本体はもう一機の方と同じなの。…あ、でもチューンとか頭部の換装とかしてるから全く同じって訳じゃないんだけどね」

「へ、へぇ…追加装備だったのね。ありがとうネプギア、よく分かったわ…後スーパーパックって完全にそのまんまな表現ね…」

「うんうん、それじゃあ追加装備の内容について一つ一つ言っていくね。まずは武装なんだけど…」

「ちょっ、ネプギア…別にアタシはそこまで詳しく訊いた訳じゃ…」

「……?…興味、ないの…?」

「うっ……」

 

うっきうきで話し始めたわたしだけど、ユニちゃんの引いた様な顔を見て我に返る。…そうだよね…ユニちゃんは別にメカオタじゃないし、普段の雑談感覚で質問しただけなんだろうから熱く語ろうとしたらそりゃ引くよね……。

 

「ごめんねユニちゃん、わたしが勘違いで解説なんてしそうになって…」

「…………」

「…ユニちゃん…?」

「……したいなら、したらいいじゃない…解説」

「え……い、いいの?」

「えぇ聞いてあげるわよ…」

「ほんと!?やったぁ!ふふっ、じゃあ早速させてもらうね!」

「どうぞ…(はぁ…どんだけ残念そうな顔するのよアンタは…そんな顔されたら、断れないじゃない…!)」

 

……と、いう訳でわたしはユニちゃんにどういう追加装備なのか解説。詳しくないユニちゃんにも分かる様に、でも出来るだけしっかりと伝えていく。機械に関する話は普段開発部の人や工業関係の相手としか話せないから、友達にこうして話せるのはやっぱり嬉しくて、しかも…

 

「ノーレさん!この装備の開発にはちょっとですけどわたしも関わってるんです!パイロットとして何か感想ありますか?」

「感想、ですか?…そうですね、率直に言うなら近接格闘武装を搭載してくれたのがありがたいです!一基とはいえこれでやっと接近戦が出来る…!」

「おぉー……!」

 

飛空挺の通信機越しに聞いてみると、なんと追加装備搭載機は変形からのビームサーベル抜剣で飛空挺の窓に向けて見得を切ってくれた。パイロットさんからの意見をこんなに早く、しかも動き付きで直接聞けるなんて…感動だよぉ…!

 

「…満足顔ね、ネプギア」

「大満足だよ!ユニちゃんも話聞いてくれてありがとね!」

「あ、うん……ところでアンタ、これからの目的を忘れてたりはしないわよね?」

「もう、ユニちゃんたらわたしを何だと思ってるの。そんな事……あ…」

「あ、って何よあって……」

「…イリゼさんに訊きたい事あったの、すっかり忘れてた…」

「…アホギア……」

「アホギア!?確かに忘れてたのは変わらない事実だけど、アホギアは酷くない!?」

 

がびーん、とショックを受けるわたし。ま、まさかネプの部分をアホに置き換えられるなんて…これはネプに対する侮辱だよユニちゃん!今日救出完了したら早速お姉ちゃんに言いつけてやるんだからね!

……というのは勿論冗談で、拳で軽く頭を叩きながらわたしはイリゼさんの下へ。趣味の話が出来てテンション上がってたけど…一旦クールダウンして話を聞かないと、ね。

 

 

 

 

慣れない事してかなり疲労していた私は、飛空挺に乗って以降殆どずっとリクライニングシートに身を預けていた。その間ネプギアとユニが一度ずつ話しかけてきて、暫くした後またネプギアが話しかけてきた。…そういえばさっきは、何か私に話をしたそうだった気が…。

 

「…わたし、イリゼさんがあんなに人前で話すのが得意だったなんて知りませんでした」

「まぁ、私も女神だからね。…私自身あそこまで上手く話せるとは思ってなかったけど…」

「やっぱりイリゼさんは凄いです。…それで、なんですけど…」

「……うん」

 

ネプギアの声音と顔付きを見て、私は座席を直し背筋も伸ばす。ネプギアの話したい事が私の予想通りなら、こんなだらけた格好ですべきじゃないもんね。

 

「…候補生とはいえ女神なのに一切話してもらえなかった事、不満に思ってる?」

「…不満に思ってない、って言ったら嘘になります。…でも、イリゼさんやいーすんさん達は意地悪でそういう事をする人じゃないって分かってますから」

「そっか…じゃあ、うん。隠していた私達がこう言うのもアレだけど、女神として知っておいてほしい事だし話しておこうか。ロムちゃんラムちゃんも聞いてくれるかな?」

「え……アタシはいいんですか…?」

「ユニは元々聞く気あったんでしょ?」

 

こくり、と頷いたネプギアの顔は真剣なもの。だからそれに合わせて私も真面目な表情を作る。…ユニが自分の座席に座りながらもこっちに聞き耳を立てている事は、この流れの中で気付いたんだよね。

 

「はなし長くなる?」

「そんなに長くするつもりはないよ。ここに資料がない以上詳しい話は出来ないし、細かい事は帰ってから確認すればいい事だからね」

 

ネプギアとユニは思うところがあるみたいだけど、さっきまで窓の外の景色見て楽しんでいたロムちゃんラムちゃんはそこまで興味がない様子。…まぁ、面倒くさい話である事は事実だからね…。

 

「さて、まずは…あの画像や動画かな。あれは放送で言った通り、教会と私達のよく知る協力者によって集めたものだよ。見易い様多少編集はしてるけど、捏造ではないから安心して」

「アタシ達のよく知る協力者?後で合流するイリゼさんの協力者さんとは別の方ですか?」

「別だよ。今言った通り、私の招集した人達と違って私『達』の知る人だからね」

「だれだろう…おねえちゃんの、お友だちかな…?」

 

さぁ、それはどうでしょう?…と曖昧な笑みでロムちゃんの問いを流す私。…予定通りなら今はプラネタワーに各々帰還してる辺りだよね…影の立役者たる皆にはほんと感謝しないと…。

 

「次は行った目的を話そうか。まず第一の理由は、皆のシェア率ブーストだよ。そろそろ反映され始めてもおかしくないんだけど、皆シェア率が上がってる感じしない?」

「あ…さっきから身体の調子がいいのはそれが理由だったんですね。わたし精神的なものだと思ってました…」

「わたしも何かきゅーにつよくなったかんじがさっきからしてるわ!」

「確かにあの内容ならシェア率ブーストにはなりそうですね…でもこういう方法での上昇って、大概は長持ちしないのでは?」

「だろうね、言ってみれば今は多くの人の気分が昂ぶっているって状況だし。けど、これは奪還成功の確率を上げる為のブーストだから助けるまで持てば十分なんだよ」

 

…なんて第三者的発言をしてる私だけど、実のところ私も身体の奥底から力が湧き出てくる様な感覚を抱いている。これはつまり、あの放送で私に対しての応援や信頼をしてくれている人がそれなら以上にいるという訳で…正直に言えば、とても嬉しい。本来の目的から若干外れてるけど、それでもやっぱり嬉しい。嬉しいけど……っと、今は説明の途中だったっけ。

 

「こほん。…第二の目的は、世論を味方に付ける事。女神

の私達からすればこれは第一の理由と少し被るんだけどね」

『…よろん……?』

「世論って言うのは…うーんと、沢山の人達の考え…って感じかな?だよね?」

「そうね。国民の気持ち、って言ってもいいかもしれないわ」

「何をするにしても、世論…国民が味方してくれてた方がやり易いからね。無茶も世論が味方なら勇敢な行為って事になるし」

「…そうなの…?」

「わ、わたしにきかないでよロムちゃん…」

「え、ええとね二人共。これは…」

 

目的をそのまま説明した結果、ロムちゃんとラムちゃんは不思議そうな表情に。けれど私に先んじてネプギアとユニが分かり易い言葉や言い回しに言い換えてくれたおかげで割と説明はスムーズに進む。

そうして第二の目的も説明し終え、話は第三の…守護女神奪還作戦における裏側へ直結する、最後の目的へと入る。

 

「…じゃ、これが最後の説明なんだけど……」

「……イリゼさん?」

「…今から言うのは、聞いててあんまり気分のいいものじゃない事だよ。それを念頭に置いておいて」

 

そう前置きを入れて、私は目的を口にする。誤魔化したりオブラートに包んだりせず、何故私があそこまで熱弁を振るったのかを話していく。この結果どういう事が起こるのかまで含めて私は話し切り、説明終了と同時に私は口を閉じた。

 

「ぽかーん…」

「わけわかめ…」

 

第三の目的は第二の目的以上に複雑で、ラムちゃんは擬音を、ロムちゃんに至っては死語を口にしてしまう程理解出来てない様子だった。そして、ネプギアとユニは……複雑そうな表情を浮かべていた。私と教祖さん達で考え実行に移した事を否定するでも賞賛するでもなく、ただ複雑そうな顔で私を見ていた。

 

「…これから士気上げていかなきゃって時にする話じゃなかったかもね…ごめん、私が軽率だった…」

「そ、そんな事…元はと言えばこの話はわたしがきっかけを作った様なものですし…」

「今の話を気にしてパフォーマンス落とす程アタシ達も子供じゃないですから、気にしないで下さいイリゼさん。……それに…政治はそういう面もあるものだって、分かってますから…」

「……っ…」

 

自分で自分を納得させている様な、どこか諦観の念も感じられる言葉に私は胸を締め付けられる。その言葉とそれを口に出させた心境はきっと、ユニが物分かりの良い子だからこそ出てきたもの。けれど候補生の中では比較的冷めているものの本心では『女神』への憧れを抱いている筈の彼女にそう言わせてしまうのは、女神の先輩として、短い期間ながら先生をしていた身として不甲斐なくて不甲斐なくてしょうがなかった。

言葉にはしなかっただけで、ネプギアも恐らくユニと同じ思いを抱いている筈。私もイストワールさん達もこの選択を間違っていたとは微塵にも思っていないけど、それでも二人のこんな姿を見てしまうと私は…………

 

「なーに沈んだ顔してんのよ、イリゼ」

 

──ぽふり、とその時私の頭に手が置かれた。それは、いつの間にか近くに来ていたアイエフの手。

 

「アイエフ…」

「そりゃ色々思うところのある策かもしれないけど、別に法を無視したとかねぷ子達の頑張りを蔑ろにしたとかじゃないでしょ?ベストじゃなくともベターな選択ではあるんだから、気にするのも程々にしなさいよね」

「そうですよ、イリゼちゃん」

 

またぽふり、と私の頭に手が着地。その手の主はコンパで、更にその後ろには皆が集まっていた。しかも、ネプギア達は空気を読んでちょっと下がっていた。

 

「わたしは政治の事詳しくないですから、ちゃんとした事は言えないですけど…イリゼちゃんやいーすんさん達が出した答えですから、わたしはそれを応援したいと思ってるです」

「コンパ…あ、あはは…皆もごめんね、沈むだけに留まらず皆に心配かけちゃうなんて…」

「構わないよ、あたしはこのパーティーじゃ一番の新参ではあるけれど…何かあれば力になろうとするのが仲間ってものでしょ?」

「そうそう、イリゼは可愛いんだからもっとにこにこしてなきゃ!…あ、大丈夫!勿論皆も可愛いよ!」

 

ぽふぽふと皆が私の頭に手を当ててくれる。こんな時皆に心配や気遣いをさせるのは女神として情けなく、本当に私は何やってるんだろうと更に沈みそうな気持ちになる。……けど、同時に嬉しかった。仲間が、友達が私の様子を見てすぐに元気付けようとしてくれるなんて、嬉しくない訳がない。マイナスの気持ちとプラスの気持ち、その両方を抱いた私だけど…数値化するならば、気持ちの上では圧倒的にプラスだった。…だって、私にとってはそれ位嬉しい事だもん。

…ただ、一つ思うところがあるとすれば……

 

「…あの、皆…撫で過ぎだから……」

 

何故か皆は、代わる代わるで私を撫で続けていた。…コンパやREDはまだ分かるけど…なんでケイブやファルコムまで私を撫でるの……?

 

「小さい子って撫でられると安心するでしょ?折角皆がやってあげてるんだから甘んじて受け入れなさい」

「う、うん…って私は小さい子じゃないよ!失礼な!もう安心したからいいですっ!」

「表情がころころ変わるわね…少し面白いわ」

「楽しんでる!?ちょっとケイブ、ケイブは目的変わってない!?」

「楽しんでいるのは私だけじゃないわ。ほら」

「う…なんの事か、ボクは分からないなぁ…」

「はは…気のせいだよ気のせい、そうだよねRED」

「あたしは楽しんでるよ?」

「…振る相手を間違えた……」

「振る相手を間違えた…じゃないよファルコム!これつまりは皆楽しんでるって事じゃん!う、うぅぅ…うにゃあぁぁぁぁっ!皆の馬鹿ぁ!もう知らないっ!」

 

バタバタと両手を振るって頭上を占領する皆の手を振り払い、ぷいっと頬を膨らませながら顔の向きを窓の外に向ける私。心配してくれてたのかと思ったら、私を玩具にして遊んでたなんて…酷い!酷過ぎる!見損なったよ皆!

 

「…………」

 

数十秒後、自分からそっぽ向いた癖に皆の反応が気になってしまった私は、ちらりと機内の通路側に目をやる。するとそこでは皆揃って私が見る事を予想していたかの様ににこにこと笑みを浮かべていて、私は慌ててまた視線を窓の外へ。そして、もう今度こそ知らない、と意気込みながら窓の外…つまりは窓を凝視した結果…

 

(……って、なんて顔してるの私…)

 

──窓に映る私は、まんざらでもなさそうな顔をしているのでした。

 

 

 

 

そうして移動を続けて数十分。プラネテューヌの圏内から離れるところで護衛の二機は離脱し、更にギョウカイ墓場が見えてくると同時に飛空挺の高度も下がっていく。

 

「…緊張、してきたね……」

「そうだね。…まさか、ギョウカイ墓場に向かう日がやってくるとは…」

 

窓から見えるギョウカイ墓場の形相に緊張を見せる5pb.とファルコム。…と言っても緊張してるのは二人だけじゃなく、突入組全員が今同じ心境を抱いている。特に女神候補生の四人は作戦の要且つ苦渋と絶望を抱いた場所なんだから、心穏やかにいられる筈がない。

そこで少し前に平常心を取り戻した私が雰囲気を少し緩めようと、話のネタを探して……ギョウカイ墓場の入り口付近に止まっているトレーラーを発見した。

 

「あ……あのトレーラーは、もしかして…」

『……?』

 

わざとらしく大きめの声を出して皆の注目を集める私。皆の気分を完全に変える事は出来なくても、一時的に気を紛らわせる事が出来るならそこに価値があるよね。

 

「ほら、あれが私の協力者さんが乗ってきた車両だよ。…正しくは協力者さんの物と思われる車両だけど…」

「じゃあ、へんけーするしれーかんのかのうせいもあるの?」

「その可能性は限りなくゼロに近いんじゃないかな…でもどうしてあんな大きい車両で来たんだろう…」

 

見えてきたばかりの時点では普通のトラックか何かに見えたけど、近付くに連れてそれがどう見ても市販されていないサイズの物であると判明していく。…まさか私の知らない間にメンバーが物凄く増えたとかじゃないよね…?

 

「イリゼちゃん、その協力者さんってやっぱり強いんです?」

「うーん…それなりには戦える筈だよ?…ここの面子と比較したら流石に弱いけど…」

「それは、なんというか…私達と比較しても強い人なんて、それこそ女神様達位じゃないかしら…」

 

ケイブの何とも言えないその言葉に、しかし皆はうんうんと首肯。…と、そうしてる間に飛空挺は着陸シークエンスに入って、私達は全員一度座席に戻る。

 

「うー、耳キーンとする〜…」

「そう?ガクンってしておもしろいよね〜ロムちゃん」

「わたしは、ちょっとにがて…かも…」

 

ギョウカイ墓場周辺にちゃんとした滑走路がある筈もなく、飛空挺はそれを想定したランディングギアを搭載しているとはいえ機内は結構揺れてしまう。…私達にとって、この位の揺れは慣れたものだけどね。

着陸し、減速し、飛空挺は停止。その後機長さんから女神様達の救出を宜しくお願いします、と頼まれた私達は荷物を持って、飛空挺の出入り口へ。外側からはタラップが地面へと降りて、それが降り切ると出入り口の扉が開き私達は飛空挺の外へと……

 

「──カーペットを敷け!全員並んでアーチを作れ!さぁ、我等が至高の女神様がお通りだッ!」

「え……ええぇぇぇぇええええっ!?」

 

奥からタラップに向けて勢いよく敷かれるレッドカーペット!その左右にトレーラーから出てきて整列する人達!その人達の持つ武器によって二人一組で作られるアーチ!……そう、これは全て私の協力者さん達の行なってくれた事!……って、

 

「いやいやいやいややり過ぎだよ!?滅茶苦茶やり過ぎだよ!?やり過ぎだし、これどっちかっていうと凱旋の時にやるべき事だよ!?何考えてるの!?」

「え?……いえ、状況的に神根様をイリゼ様は彷彿としているかと思ったんすけど…」

「私はゼロじゃないんだけど!?…もう、いつも言うけど皆は色々オーバーだよ…」

 

さっ、と私達の前に出てきた二人に対し、私は辟易としながら注意を促す。…私の為に頑張ってくれるのは嬉しいけど、何事も限度ってものがあるよね…。

…と、そこで私が振り返ってみると、皆は何が起こったのか分からない…と言いたげに呆然としている。…至って普通の反応である。

 

「あ、あー…えっとね皆。驚くと思うけど…この人達が、私の言った協力者さん達です…」

『…えぇーー……』

「だよねっ!そういう反応になるよねっ!なんかごめん!」

 

立場的に責任を感じ得ない私はぺこぺこと平謝り。しかもそこで皆が「イリゼ様が謝る事ではありません!」だの「くそうっ!もっとテキパキやってれば…!」だの言うものだから余計空気は変な感じに。

 

「…ど、どういう方達なんですか…?」

「……私の、信仰者…」

「あー……え?…イリゼさんの、信仰者さん…?」

 

遂にネプギアにその事を訊かれ、返した結果、更に変な空気に。……どうしよう、私皆を呼んだのがちょっと間違いだったかもって思い始めたよ…。

 

「か、かなり独特な方々ですね…」

「あ、あはは…でも良い人達なんだよ?こんな物騒なお願いも、何一つ嫌がらずに引き受けてくれたし…」

「そりゃ当たり前っすよイリゼ様!何せイリゼ様直々の依頼なんですから!」

「イリゼ様に頼まれて拒否する者など、ここにはおりません…」

「……あ、愛されてますね…」

「あ、あはははは……」

「え、えーと…大きいトレーラーですね。何か凄い物持ってきたんですか?」

 

返す言葉が見つからず、ただただ乾いた笑いを漏らしていると…コンパが話を逸らしてくれた。こ、コンパ…助かったよ!ありがとうコンパ!

 

 

……と、思いきや…

 

「お、やっぱり気になります?ではでは…おい、トレーラーを開け!」

「了解!」

 

コンパの言葉がきっかけで、トレーラーのハッチがオープン。それによって少しずつトレーラーの中身が見える様になっていって、私達の目にその姿が…横になった、普通の人間の数倍以上もある人型のそれが映っていく。

それは、黒が基調となった重厚なデザインの兵器。そう……ラステイションの、MGに他ならない。

 

「え、こ、これって……」

 

思ってもみない物の登場に、私だけでなくパーティーメンバー全員の視線がラステイションの女神であるユニへと集中。勿論それは『何故?』という疑問に答えてほしくてのものだけど…そのユニも、「なんでこれがここに!?」…と言いたげな表情を浮かべている真っ最中。そんなユニの反応から、私達が何かヤバい事情があるんじゃと不安になり始めた時……飛空挺から降りる際身に付けたインカムから声が聞こえてきた。

 

「こほん。聞こえているかな?」

「その声…ケイさん?」

「その通りだよ。協力者達とはもう合流したのかい?」

「あ、はい…あのケイさん、今私達の前にあり得ない物が…」

「あぁ、それはラステイションから特務監査官である君への貸与品だよ。少し調べてみたら、うちの軍のパイロット中で退役した一人がその組織に参加しているみたいだったからね。手続きはこちらで進めておいたから、彼諸共この作戦で有効に活用してほしい」

「…そ、そういう事ですか……」

「それは先に伝えておきなさいよケイ…」

 

えー…どうもあのMGは私の協力者…というか私へ貸し出された物らしいです。私の知らぬ間に、一時的ながら私の所有物が増えていました。…た、確かにありがたいけど…なんか釈然としない…!

そんなこんなで一応無事到着&合流した私達は、出入り口の防衛及び敵の迎撃を私の信仰者さん達に任せて突入体制に。

 

「…イリゼ、あの人達は大丈夫なのよね?」

「うん。テンションはちょっとアレだけど…それでも私は信頼してる、大事な人達だからね。だから任せて頂戴」

「そう。…なら、突入ね」

「よーし!テメェ等!イリゼ様達が突入すると同時にこっちも任務開始だ!これはイリゼ様の、女神様達とその仲間の方々の生死にも少なからず関わる作戦だ、全員気張れよ!」

「はい!よっしゃ、この命はイリゼ様に捧げた物、死んでもここは死守してやるぜ!」

「私もよ!命張ってこそ真の信仰ってものじゃない!」

「……ごめん、数分皆待ってくれるかな?」

 

一つ深呼吸をし、私達は目を合わせる。もう既に準備も心構えも十分にしたんだから、後はとにかく突き進むだけ。

…けど、私は一つ、突入する前にやらなきゃいけない事が今出来た。それを遂行する為に、一度皆の下から離れて信仰者さん達の前へ。

 

「…あのさ、皆!次の定期集会っていつだっけ?」

「再来週末、ですね」

「そっか。…じゃあ、私はその会に絶対参加するよ!ゆっくり出来るかどうかは分からないけど…この作戦の打ち上げも兼ねて絶対参加する!だから…ここにいる皆も、絶対欠席しちゃ駄目だからね!来られませんなんて言語道断、私は皆が来てくれるのを楽しみにしてるんだから!いいね!?」

「……っ!イリゼ様……そういう事だテメェ等!イリゼ様の言いたい事、分かるよな?……絶対ここで命落とすんじゃねぇぞッ!」

『了解ッ!』

 

皆の表情が生き生きとしてるのを見て、私は一安心。改めてパーティーの下に戻り、ギョウカイ墓場の内部へと足を踏み出す。

命を懸けてまで頑張ってくれるのは、女神冥利に尽きる事だった。国を持たない私にそこまで信仰してくれる人がいるなんて、私はそれだけで皆の為に頑張ろうと思える事。……けれど、だからこそ皆には命を落としてほしくない。私を大切にしてくれる人だからこそ、私はそんな人達を大切にしたい。それを言うならまずこんな役目を頼むなって話だけど…この案が、これまでに取ってきた事が、私の出来る最善の事。さっき皆に元気付けてもらったんだから、またここで落ち込む訳にはいかないよね。

そうして私達は出入り口を彼等に任せ、ギョウカイ墓場の中へと向かっていった。守護女神の四人を助ける為に、犯罪組織に打ち勝つ為に。……皆との明日を、この手に掴む為に。




今回のパロディ解説

・スーパーパック
マクロスシリーズに登場する、バルキリーの追加装備の一つ。スーパーパック、又はストライカーかトルネードパック的な物を纏っていると思って頂けると幸いです。

・わけわかめ
元ネタが幾つが見受けられる、訳が分からないという意図の言葉。これは元ネタが創作物ではない可能性も大いにあるので、もしかしたらパロディではないかもしれません。

・神根島、ゼロ
コードギアスシリーズに登場する島及び、主人公ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの扮する人物の事。…別にイリゼの信仰者達は黒の騎士団じゃないですよ?

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