超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress 作:シモツキ
模擬戦によってわたし達女神候補生の、チームとしての弱点を知って、その後クレーンゲームによる特訓を行ってから数日。頼まれた通りシェアクリスタルを精製したり、救出に向けて個々での準備を進める中で、イリゼさんとの特訓……という名の娯楽は連日続いていた。
「さぁ、今日はサッカーをしてみるよ!てぇいっ!エクスカリバー!」
「わぁぁ!?ちょっ、サッカーと言いつつシェアの大剣でぶっ叩こうとするのは何なんですか!?」
「あ…ボール、切られたのにわれてない…」
「わ、本当だ…ってそこより突っ込むところあるよねロムちゃん!?」
例えば、VSイリゼさんで超次元的なサッカーをやったり……
「スターもコインも同数の完全引き分けを狙ってみて!皆ならきっと出来るよ!」
「凄い斬新なやり込みですね!物凄く運が絡むゲームでそれって、とんでもない無茶振りですからね!?」
「確率で言うと天文学的数字になる気がするわ…」
「でもこれとっくんだから時間気にせずゲームできるのよね?わたしはだいさんせーよ!」
大人気ゲームのパーティー版で普通は狙わない様な特殊展開を目指してみたり……
「わたーしねむら〜ない〜♪はい、次はロムちゃん!」
「う、うん…ね、ねむらーなーい、おーもーい…♪」
「うんうん良い流れだよ。ネプギアとユニも物怖じせずに歌ってね?」
「は、はい……(これメドレーの歌唱練習にしかならないんじゃ…)」
「わ、分かりました…(って言うかこれ、いくつかロムラムに歌わせるのはアレそうな歌詞あるわよね…まさかアタシとネプギアはそこをフォローする事で連携能力を鍛えろって事…?)」
元々はデュエットのメドレー曲を四人で分担してカラオケしたりと、本当にわたし達の特訓は多岐に渡っていた。……ある意味すっごい充実してたなぁ…ある意味。
そして今日もまた特訓をするよと指示を受け、わたし達はプラネタワーのフロントへ。
「おはよう皆。今日は何するんだろうね」
「さぁね。まぁまた突っ込みどころのある事するんじゃない?」
「あはは…イリゼさんは時々大真面目で謎の事するよね…」
「でも、みんなでやるとっくん…たのしい…(にこにこ)」
「あんまりとっくんしてるかんじないもんね。……とっくんになってるのか毎日ちょっとふあんだけど…」
指定された時間は早朝…ではないものの、まだまだ朝と呼べる時間。これまではお昼ご飯の後か朝と昼の中間辺りに呼ばれてたから、多分これまでよりは時間のかかりそうな事なんだろうなぁ…と内心思いつつ喋っていると、エレベーターが開いてイリゼさんがやってきた。
「お待たせ。年上の私が一番遅くなっちゃってごめんね」
「気にしないで下さい。まだ指定された時間より前ですし、何となくイメージとしても『生徒は指導者より先にやってくるもの』って感じがありますし」
「私はそういうかっちりとした上下関係を作るつもりはないけど…まぁいいや。今日は長めの特訓になる予定なんだけど、皆は大丈夫?」
わたし達の前に立ち、そう訊いてきたイリゼさんにわたし達は頷く。やっぱり今日の特訓は長くなるんだ…じゃあ運動系なのかな?…ゲームやり込み系の可能性もあるけど……。
「それならよかった。じゃあ、今日やるのは…かくれんぼだよ」
「かくれんぼ?…それはまた…」
「特訓らしからぬ内容ですね…これまでも特訓らしかった訳じゃないですが…」
わたしの言葉を引き継いだユニちゃんが言ったのは、わたしも…恐らくロムちゃんとラムちゃんも思った事。でも最初の特訓、クレーンゲームの時に特訓はきちんと意味あるものだって分かったし、わたしは今回のかくれんぼもわたし達の成長に繋がる事なんだって信じてますよ。
「それで、どこでやるんですか?」
「プラネテューヌの街中全域だよ」
「それはまた広いですね……え、全域!?今全域って言いました!?」
「うん。あ、でも屋内は無しだよ?流石に屋内含めちゃうと広過ぎるからね」
「屋内無しでも過剰過ぎる広さですよ…」
普通(って言うものがあるか分からないけど)かくれんぼでの範囲なんて、そこそこ広い公園の中だけとか学校の敷地内のみとかその位の筈。…いやかくれんぼって言っても、正直いーすんさんから逃げようとするお姉ちゃんに付き合って隠れる位しかした事ないからわたしの認識が間違ってる可能性もあるけど…。
「プラネタワー内とかじゃ駄目なんですか?プラネタワーだって十分な広さがありますし…」
「それじゃ特に何も意識せずともそのうち私見つかっちゃうでしょ?皆にやってもらってるのは特訓であり遊びなんだから、まともな範囲には出来ないよ」
「でも、街全体となると流石に難易度が…」
「大丈夫だって。それに、これまでの特訓もだけど大切なのはその過程で何に気付いてどう実践出来るか、であって成功するかしないかじゃないからね。成功するに越した事はないけど、正直成功するかどうかは二の次なんだよ」
「そういう事なら…まぁ、分かりました」
適当に範囲を決めたのなら困るけど、考えあっての街中全域で、その考えも筋が通ってるなら…とわたしは引き下がる。するとイリゼさんはわたしの同意にこくんと頷いて、そこからルール説明が始まった。
「さっきも言った通り範囲は街中の屋外全域で、私が隠れるから四人は探してね。制限時間は…具体的に決めるつもりはないけど、まぁ大体日が暮れるまでかな」
「じゃあ、昼食はどうするんですか?…まさかアタシ達は見つけるまで抜きとかじゃないですよね…?」
「まさか。ここに戻って食べてもいいし、どこかで昼食にしても構わないよ。で、買ったり外食したりした場合はレシートちゃんと持ってくれば後でお金出してあげるね」
因みに私はこれ、と一瞬脱線してお弁当箱を見せてくれるイリゼさん。あれ自分で用意したのかな?
「…あれ…?」
「うん?ロムちゃんどうしたの?」
「えっとね…そとだけのルールなのに、どうやってお買いものすればいいのかな…って…」
「あ、確かに…イリゼさん、お昼休憩の時だけは屋内も有りなんですか?」
「え?…あっ!ごめんね、私が言葉足らずだったよ。屋内禁止なのは私だけで、皆は普通にお店入ったりデパートの屋上から私を探したりしてもOKだよ」
「えー……先生のくせにおっちょこちょいね…」
「うぐ…気を付けます……」
…と、ラムちゃんに指摘されて反省しながらもイリゼさんの説明は続く。法に引っかかる様な事じゃなければ基本探し方は自由にしていいとか、私は一度決めた場所から動かないから同じ場所を何度も見る必要はないとか、女神化は街中の人に何かあったのかと思わせるかもしれないから禁止とか、鬼が隠れている人を探す…という単純明快なかくれんぼには似合わない位に(得てして本格的な娯楽はルールがしっかりするものだけど)色々とルールが説明されていって、それを一つ一つわたし達は記憶していく。…昨日の夜イリゼさんが部屋で真剣にかくれんぼのルール考えてたのかなぁって想像すると、正直ちょっとイリゼさんが可愛らしく思えてくるけど…うん、これは心の中に留めておこっと。
「…ルールはこんな感じかな。何かあったら連絡取れるよう携帯は持っていくけど…ネプギア、電話して電波から場所を逆探知してやろうとかは無しだよ?」
「や、やりませんよそんな事…わたしそんな目的を理解出来ない子じゃないです」
「そっか、じゃあ失礼な事言っちゃったね。さて、何か質問はある?」
イリゼさんが結構細かい部分まで説明してくれたおかげで分からないなぁと思う事は特に無くて、わたし達は首を横に振って無いという意思を示す。するとイリゼさんは数秒程「うーん…」と考える様な素振りを見せた後、だったらいいかなと説明を終える。
「それじゃ、早速始めるよ。私が隠れに行くから、ここで三十分待っててね」
「え、三十分も?十びょうじゃなくて?」
「十秒じゃ全力疾走してもプラネタワー周辺にしか隠れられないよ…あ、別に1800まで数えなくていいからね?」
「か、数えませんよ…じゃあタイマーをセットして、っと」
Nギアのタイマーを三十分に設定して、イリゼさんに見せるわたし。それを見たイリゼさんはこくんと頷く。
「…皆の発想と根気に期待しているよ。じゃ、スタート!」
くるり、とターンしながら開始宣言。そしてわたしがタイマーをスタートさせると同時に(正しくはわたしが合わせたんだけど)イリゼさんは歩き出し、プラネタワーの外へと出ていった。
「…いっちゃったね」
「えぇ。…追いかけてみる?」
「うわ、ユニきたなーい」
「ズルは、よくないよ…?」
「わ、分かってるわよ…しかし待ち時間三十分となるとそこそこ長いわね」
間違って止めちゃったりしないようNギアを近くのテーブルに置いていると、何やら三人が話し始めていた。…そういえば、いつの間にかユニちゃんとロムちゃんが言葉を交わす機会増えた気がするなぁ…。
「…ネプギアちゃん…?」
「何暖かい目をしてるのよ」
「気にしないで。友達として嬉しい事があっただけだから」
『……?』
「それよりこれからどうしよっか?ゲームでもしてる?」
「いやそこは普通作戦会議でしょ…成功するかどうかは二の次って言ってたけど、アタシはやる以上成功させたいもの」
「ユニちゃん…ごめんね呑気な事言っちゃって。うん、そうだよね。やれる事しないで失敗なんて、女神らしくないもんね」
わたしとしては軽い気持ちで言った言葉だけど、ユニちゃんの真剣な表情を見て反省した。待ち時間とはいえこれからするのは特訓なんだから、わたしももっと真剣にならなきゃ駄目だよね…よし。
「それじゃあ作戦会議しようかユニちゃん。まずはユニちゃんの意見を聞かせてくれないかな?」
「え?……い、いやその…まだ具体的な案は浮かんでないんだけど…」
「あ……そ、そっか…」
表情をキリッと引き締めたわたしはまずユニちゃんの意見を……と思ったけど、何だか気不味い空気になってしまった。…ユニちゃんごめんね……。
「ねーねー、わたし思ったんだけどあんがい近くにかくれてるんじゃない?うらをかく、ってやつよ」
「そうだね…でもイリゼさんはわたし達に連携能力を鍛えてほしくてこれ企画したんだろうし、しらみ潰しに探して見つかる様な距離にはいないんじゃないかな?」
「…四人でいっしょに、さがす…?」
「ううん、四人一緒じゃ流石に効率が悪いと思うよ。…あ、でもわたし以外プラネテューヌの地理に詳しくないんだよね…」
「じゃ、二組に別れない?一人と二人じゃ気持ち的に大分違うし、二重チェックは大切でしょ?で、情報は常に携帯でやり取りし合うって感じでどう?」
「いいんじゃないかな?それで後は、時々高い建物に登って上からも見てみようか」
なんて感じに話し合う事二十分弱。二人組と大まかに探す流れを決めて、残った時間でわたしは別行動する二人に向けて、出来る限りの地理情報を伝えていく。そうしてタイマーが鳴ったところでわたし達は外に出て、それぞれ探し始めるのだった。
*
プラネタワーを出てから数時間。プラネテューヌの地理をちゃんと分かっているわたしはロムちゃんと一緒に、比較的複雑な通りになっている場所を探していた。
「…いないね、イリゼさん…」
「物凄い範囲だもんね…でもまだまだ時間があるし、落ち着いて探そっか」
「うん。…よんだらへんじ、してくれるかな…?」
「あはは、そこまでイリゼさんはおっちょこちょいじゃないと思うなぁ」
ロムちゃんに呼ばれてどこかからひょこっと顔を出すイリゼさんを想像して、わたしは少し笑ってしまう。言ったロムちゃんも流石にこれは冗談半分だったみたいで、わたしと同じ様に少し頬を緩ませていた。
「…でも、ちょっと不思議だよね。イリゼさんが目覚めたのってわたしのお姉ちゃんとコンパさん、アイエフさんが出会ってから少し後な訳で、そこから考えばわたし達とイリゼさんは同い年位でもおかしくないのにこんなに違うんだもん」
「うん…女神は、ふしぎ…」
熱中しない程度の会話をしながらわたし達はイリゼさんを探す。…まぁ、それを言ったらわたしとユニちゃん、ロムちゃんラムちゃんでも差があるし、逆に普通の人よりずっと長く生きてるお姉ちゃん達が見た目相応の年齢のコンパさん達と仲良しだったりしてるんだから単純な話じゃないんだろうけど…もしもイリゼさんの目覚めが前の旅じゃなくて今の旅だったら、わたし達に感化されてもう少し幼い感じになってたりしたのかな?…あ、でもそうなると先生がいなくなっちゃってわたし達は今程強くなれない可能性が…いや、それ以前にお姉ちゃん達の旅にも影響するよね?もしかしたら、イリゼさんがいなかった場合大きく違う旅になってたり……?
「…って、これじゃ探すのに集中出来ないよ…ifの想像って怖い…」
「アイエフさん、こわいの…?」
「そ、そっちじゃないよ?…こほん、ここはこのまま真っ直ぐ行こうか」
「はーい」
そうして探す事数十分。途中ちょっとした休憩も挟みながらわたし達は歩き回り、つい先程繁華街に到着した。
「ここは人が多いから探し辛いけど…頑張ろうね、ロムちゃん」
木を隠すなら森の中って言葉もあるし、人の多い場所にイリゼさんが隠れてる(この場合は紛れてる?)可能性は十分にあると思ってここに来たんだけど…当然その分ここは人気が無い場所より見渡しが効かない。だから改めて声をかけたわたしだけど…何やらロムちゃんは上の空だった。
「…ロムちゃん?どうかしたの?」
「あ……あのね、思い出してたの…」
「思い出してた?…それって、ペン探した時の事?」
「うん、その時のこと…(こくこく)」
「そっか、あの時も街の中で探し物してたもんね。今回は物探しじゃなくて人探しだけど…」
ペンを探したのはそんなに昔の事じゃないのに、その前もその後も色々あったからか、結構前の出来事の様に感じられる。…思えば、あの出来事があったからわたしはロムちゃんと、そしてラムちゃんと仲良くなれたんだよね…そういう意味じゃペンには感謝しなきゃかも。
「…それとね、ネプギアちゃん。おねがいがあるの…」
「お願い?」
「わたしをね、イリゼさんと同じくらいのたかさにもちあげてほしいの」
「持ち上げる…あ、そっか。勿論いいよ」
一瞬ロムちゃんの言う意味が分からなかったわたしだけど…イリゼさんと同じ位、という部分を頭の中で反芻した事でピンとくる。これってつまり、目線を合わせる事で見えてくるものがあるんじゃないかって考えだよね。
そう考えたわたしは後ろに回り、腋の下に手を入れてロムちゃんを持ち上げる。そして待つ事数秒。ロムちゃんから聞こえてきたのは…あんまり芳しくなさそうな声だった。
「……どう?」
「…ちょっとたかい…けど、それだけ…」
「そっかぁ…でもこうして試してみるのは悪くないかもしれないよ?相手の立場になって考えるのは大切……あ」
「あ…?」
「…そうだ…もっとイリゼさんの立場になって考えてみたらいいのかも…」
残念そうなロムちゃんを降ろして、わたしは励ましの言葉を…かけたところで、気付いた。最初、わたし達はイリゼさんの行きそうな場所を考えていた。けれどそれは『わたし達から見た』イリゼさんが行きそうな場所で、イリゼさんの視点で考えた訳じゃなかった。
それに気付いたわたしは思考を巡らせる。思考を巡らせる事で、段々と思うところも出てくる。
(これまでわたし達は四人での連携を特訓してきたけど…イリゼさんや他の人と連携する機会だってある筈だよね。で、連携する時には自分の視点ばっかりじゃなく周りの視点も考えなきゃいけないし…今日の特訓って、ひょっとしたらそれを考える事が目的の一つなのかも…)
わたしはイリゼさん本人じゃないし、天才でもないからイリゼさんの考える事を完全に再現するなんて不可能だけど、それでも考える事を予想する位は出来る。例え確信のない予想でも…当てもなく探すよりは望みがあるよね、きっと。
「…ねぇロムちゃん、一回休憩してイリゼさんの気持ちになってみよっか」
「え?…んと、うん…」
「考えるならこんな道の真ん中じゃなくて、もう少しゆっくり出来る所がいいよね。えーと、近くでよさそうな場所は……」
────くぅ。
「ふぇ……?今、へんな音しなかった…?」
「…………」
「…ネプギアちゃん?」
「……えっと、その…今のは、わたしのお腹の音…」
「ネプギアちゃんの、おなかの…?」
「う、うん…」
「…………」
「…………」
「…おひるに、する…?」
「そ、そうしてくれるとありがたいかな…」
……という事で、考える事も兼ねてわたし達はお昼休憩を取るのだった。…うぅ、凄く恥ずかしい音聞かれた……。
*
「ここならかなり見晴らしが良さそうね…」
お昼も過ぎ、街を歩く人もかなり増えてきた頃。ネプギア・ロム組とは別行動のアタシとラムは大型デパートの屋上へと上がっていた。
「さて…一番望遠率が高いのはこれよね」
「……?何それ、パピコ式そーがんきょー?」
「何よパピコ式双眼鏡って…いや何が言いたいかは分かるけど。…狙撃銃のスコープよ、銃まるごと下に向けてたらえらい事になっちゃうでしょ?」
スコープだけを持って見回すアタシ。こうして見回すのも決して効率がいい訳じゃないけど…それでもただ歩いて探すよりずっと早い。…ま、ここからじゃ陰になっちゃう場所にいる可能性もあるしこっちも色々難点はあるんだけど。
「…………」
「見つかりそう?」
「あんまりそんな感じはないわね。イリゼさんは隠れたらそこからは動かないって言ってたし、一応ここから見える場所にはいないって分かったけど…」
「ふーん…」
それからも数分程見える範囲を調べてから、アタシは居ないという判断を下す。その後、アタシ達は屋上から出てデパート内へ。
「ゲームコーナーは行かないわよ?」
「む…それくらいわかってるわよ。子どもあつかいしないでよね」
「はいはい。にしても意外だったわ。アタシは『わたしはロムちゃんといっしょに行くー!』とか思ってたのに…」
取り敢えずロムラムで組ませるのは不味いと思って二人を別々にしたアタシとネプギアだったけど、ロムもラムもそれに不満を言う事はなかった。…二人もアタシが思ってるよりは大人だって事かしら?それとも……
「…自分とロムじゃ迷子になる可能性が高い、って思ったとか?」
「……ぴゅー、ぴゅふ〜…」
「分かり易いわね、アンタは…」
何とも気の抜ける口笛(しかも口笛として成り立ってるか微妙なレベルの下手さ)をラムがするのを見て、アタシは心の中で断定した。これは後者だと。
「う……そ、それよりさっさとさがすわよ!このままじゃ見つけられないわ!」
「…そうね、まだ可能性のある範囲は結構広いし、少し急がないといけないかも…」
お昼時にネプギアから『イリゼさんの立場になって、行きそうな場所をいくつか考えてみたよ』という旨のメールが来て以降、アタシ達はその場所を中心に探していた。それは確かに大きく範囲を狭めるものだったけど…それでも元が広過ぎるせいでその情報も決定的なレベルには至っていない。…やっぱり、もっと頭捻って策を練らなきゃかしら…。
(もう少し範囲を狭めてみるべきかしら…でも下手に狭めてイリゼさんのいる場所を範囲外にしてしまったら本末転倒だし、範囲はこのままにしておいて移動スピード上げる方がベターかも…)
「…みけんにしわがよってるわよ?」
「考え事してるのよ。ラムも何かアイデア出してみなさいよ」
「えー…じゃあ、おまわりさんにきいてみるのはどう?」
「あぁ、迷子探しなら警察に頼るべきだものね。……アンタに聞いたアタシが馬鹿だったわ…」
「ば、ばかってなによ!それをいうならこんなに広いのに四人でさがせなんて方がずっとばかなちゅーもんよ!そうでしょ!?」
「それは言ったってしょうがない…………ちょっと待った、今なんて言った?」
元々幼いんだから仕方ないとはいえ、まともなアイデアを出さないラムにアタシは軽く辟易。更にその後根本から否定する様な事を言ったラムに重ねて辟易……の直前、アタシの頭に何かが走った。それが何かは分からないものの、ラムの言葉に触発された結果だって事だけは確信出来ているアタシはラムへと問う。
「へ?…あー、ばかって言われておこったの?でもばかっていう方がばかなのよ、わかった?」
「そこじゃないわよ、もっと後!馬鹿云々はどうでもいいわ!」
「えぇ…?…えーと…こんなに広いのに四人で、ってやつ?」
「……!そう!それよ!よく考えたらこれ、とんでもない裏技が使えるじゃない!」
興奮してラムの肩をがしっと掴むアタシ。ラムには「ちょ、なに…?」みたいな反応をされているけど、正直それはどうでもいい。だってアタシは今、大どんでん返しの裏技に気付いてしまったのだから。
携帯を取り出し、メールでネプギアにその裏技を伝える。これはアタシでも出来るけど…ここはプラネテューヌなんだから、アタシよりネプギアの方が適任な筈。そしてネプギアがその裏技を素直にやってくれれば…たった数分で、その裏技は機能し始める。
「ちょっと、さっきからきゅうにどうしたのよ?うらわざ、って何?」
ネプギアからの反応を待つ中、怪訝な顔をしたラムが問いかけてくる。それを受けたアタシは、まずラムに説明してなかった事に気付き……にぃ、と笑みを浮かべて言った。
「アタシ達は四人で街中から探さなきゃいけないと思ってて苦労してたわよね?でも、それはとんだ勘違いなのよ。だって……
──四人だけで探さなきゃいけないなんてルールは、どこにもないでしょ?」
今回のパロディ解説
・エクスカリバー、超次元的なサッカー
イナズマイレブンシリーズ及び、その中で登場する必殺技の一つの事。超次元繋がりパロディというやつです。繋がりがなくても多分パロディしてたと思いますが。
・大人気ゲームのパーティー版
マリオシリーズの一つ、マリオパーティーシリーズの事。実際スターもコインも同数で終わらせる事って出来るのでしょうか?…出来ても絶対時間かかるでしょうね。
・元々はデュエットのメドレー曲
マクロスFrontierの挿入歌の一つ、娘々サービスメドレーの事。ロムラムはそれぞれその一部を歌っています。女神四人なので差し詰めねぷねぷメドレーでしょうか…?
・パピコ
江崎グリコ社の発売するアイスの一つの事。二つに外してそれぞれ望遠鏡として使える、それがパピコ式双眼鏡!……私は一体何を言っているんでしょうか。