超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress 作:シモツキ
図書館での戦いが終わってから一時間と少し。わたし達は教会に戻り、わたしは傷の手当てを受け、ミナさんは早速事後処理を行い、そしてロムちゃんラムちゃんはこれでもかって位べとべとになった身体を綺麗にする為にお風呂に行った。
「これでよし、と。他に怪我しているところや痛む部位はありますか?」
「もう大丈夫ですよ。フィナンシェさんって手当ても出来るんですね」
「侍従ですからね。でもわたしが出来るのは、精々救急箱の中身で対応出来る程度のものですよ」
わたしの手当てをしてくれたのはフィナンシェさん。治癒魔法を教えてもらう中でわたしも手当ての勉強をしたから、救急箱だけ渡してもらえれば自分で何とかなったんだけど…ミナさんに「こちらの事情で怪我をさせたのですから、その治療も自分でさせるなんて訳にはいきません!」と押し切られてしまって今に至る。…今はミナさんに逆らったり不機嫌にさせたりしない方がいいよね、これまでの経緯的に…。
「それにしても、四天王と遭遇して軽傷で済んだのは僥倖でしたね。…ロム様とラム様は別の意味で大ダメージの様ですが…」
「あはは…でもほんとに僥倖だったと思います。もし本気でわたしを倒しにきていたなら、一体どうなっていた事やら…」
情報収集の為に再びギョウカイ墓場に行ったあの時、わたしは四天王に手も足も出なかった。あの時と今とじゃ実力も精神状態も全然違うけど、今だって四天王相手に一人で勝てるかどうかは分からない。…そういう意味じゃ、二人を舐める事に熱を出していた事は感謝した方がいいのかも…。
なんて、ロムちゃんラムちゃんの前で言ったら怒りそうな事を考えていたところで開いた医務室の扉。誰が来たんだろう…と思ってそっちに目を向けると、入ってきたのはロムちゃんとラムちゃん、それにミナさんの三人だった。
「ネプギア様、お怪我の具合はどうですか?」
「フィナンシェさんに手当てしてもらいましたし、問題ないですよ。二人は…あれ、パジャマ?」
「うん。今日はもう、おでかけしないと思う…から」
「今日はもうくたくたよ…」
お揃いの可愛いパジャマを着たロムちゃんとラムちゃんは、珍しく顔に疲労の色を見せている。…正直、ほんとに今日の二人にはお疲れ様って言いたい。言ったら舐められてる最中の事思い出しちゃいそうだから止めておくけど。
「それで、どうしたんです?」
「あぁはい、一先ず今日の出来事の情報をまとめておこうと思ったんです。これも一連の事件の一つですし、何より四天王が現れたのですからね。ロム様ラム様、少し話をする事になりますがまだ寝ないで下さいね?」
『はーい』
仲良く返事をした二人は椅子に座り、ミナさんはメモ用らしき手帳を取り出す。…ここ医務室だしちょっと事情聴取みたいなシーンになってるかも…。
「ではまずロム様ラム様。最初に四天王…トリック・ザ・ハードでしたね?…と会ったのはお二人で宜しいですか?」
「そうよ。えーっとたしか…」
「気になる本があって、でもそれがとどかないところにあって、それで困ってたら…出てきた…」
「そうそう、でだれかと思ったらあいつだったのよね…」
「…という事は、もしやその本は…」
「うん、とってくれた…」
「よむどころじゃなくなっちゃったんだけどねー」
現れた瞬間の出来事を聞いて目を見合わせるわたしとミナさんフィナンシェさん。え、そんな人のいいお兄さんみたいな感じで現れたの?あのトリックって犯罪組織の四天王だよね?傷だらけのお姉ちゃん達を吊るし上げて捉えてる奴等の幹部格なんだよね?
「い、色々気になるところではありますが…まぁそれは置いておくして、そうすると二人はその後すぐ戦闘…というか捕まってしまったと?」
「その前に、ほんだなたおしちゃった…」
「わたしもロムちゃんもびっくりしてほんだなにぶつかっちゃったのよ」
「あ、何かが倒れた様な音はそれだったんだ…」
「そういえば、ネプギア様がその音を聞いてからお二人の悲鳴が上がるまでは少しありましたね。その後舐められるまでにまだ何かあったんですか?」
「…こわがらなくていいとか、また会えてこうえいとか言われた…」
「その後わたしたちがほこりはらってたら、きれいにしてあげるとか言ってなめてきたの…」
「…………」
「…………」
「……いやな、じけんだったね…」
「いやな…じけんだった…(どよーん)」
「よ、よく話してくれましたね二人共!それによく頑張りました!ご褒美に明日何か買ってあげますよ!」
俯き見るからに落ち込んでしまった二人を見て、慌ててミナさんはフォローに入った。わたしとフィナンシェさんもいつも元気な二人がどんよりとしてる姿は見ていられずわたしはロムちゃん、フィナンシェさんはラムちゃんの頭をそれぞれ撫でて、皆で二人の励ましにかかる。あんなのわたしやユニちゃんだって泣いちゃうレベルの事だろうし、ほんと二人はよく頑張ったよ…。
そうして励ます事数分。二人のテンションがある程度戻ったところで事情聴取…じゃなくて経緯確認は再開する。
「えー…それで二人が悲鳴を上げ、それを聞きつけたネプギア様が二人とトリックのある場へと向かった…ここまではよいですか?」
「はい。そこからわたしは戦闘に入って、途中でトリックの策に嵌められて……あ…その、戦闘で駄目になっちゃった本の事、本当にミナさんに任せちゃっていいんですか…?わたし程度じゃ責任取れない事かもしれませんけど、やっぱりわたしが潰しちゃった本に関して何かした方が…」
「ですからその事は大丈夫ですよ。あの状況ではやむを得ませんし、この様な事で国家間に波風を立てたところで得をするのは犯罪組織だけですから」
「でも……」
「昨日も言いましたがネプギア様には借りがありますし、今回も色々と助けて頂いたのですから、この位借りを返すの内なんですよ。…持ちつ持たれつはお嫌いですか?」
「そ、そんな事ないです。…そういう事なら…改めて、お願いしますね」
わたしがそう言うと、ミナさんはにこりと笑みを返してくれた。…持ちつ持たれつ、か…わたしは持たれてばっかりだと思ってたけど、そう言ってもらえたって事は、わたしは自分の気付かないところで誰かを持ってあげられてるって事なのかな…?
「その後の事はわたし自身が目にしたからいいとして…経緯としてはこんなものでしょう。もし何か気になる事を思い出したら言って下さいね」
「気になる事…確かトリックと下っ端は何かを盗んだみたいな事言ってましたよね。盗まれた物が何かは分かったんですか?」
「それはまだ確認中です。何せ保管庫にある本は膨大ですから」
言われてみれば、下っ端はどんな本を盗ったのかもどこから盗ったのかも分からないんだから、監視カメラに盗む瞬間が映ってたとかじゃない限り手当たり次第に探すしかない。…ある本を見つける、じゃなくて無い本が何なのか調べるんじゃ大変だよね。ある本を見つけるなら目的の本の情報だけ覚えればいいけど、無い本を調べるとなるとそれ以外の本の情報を全部持ってこなくちゃいけなくなるし、もし他にも盗難されてたり紛失したまま気付かれてない本があったら…うぅ、想像するだけでも疲れそう…。
「…しかし、女の子向けアニメのロゴが本当に手がかりだったとは…」
「あー、フィナンシェちゃんわたしたちのすいりうたがってたんだー」
「ちょっとショック…」
「う……み、ミナ様も疑っていましたよね?」
「さ、さぁ…わたしからはノーコメント、という事で…」
「ひ、酷いですミナ様……」
フィナンシェさんの発言はごもっともで、わたしも冷静に考えると「え、何故に…?」って思うんだけど…ロムちゃんラムちゃんはそこに何の疑問もナッシング。うーん……
「…あのトリックが女の子向けアニメにハマってる…なんてないよね、あはは」
「それはそうぞうしたくない…(どんびき)」
「そうなったらキモさ8割ましね…」
「まぁ恐らく、大人の盲点を突く為でしょう。実際わたし達教会も警察も気付けませんでしたし」
「あ、っていうかマークの通りならとしょかんがさいごよね?ならもうドロボーじけんはおしまいになるの?」
「言われてみるとそうだね…どうなんだろう?」
「それは今後の経過を見るしか無いでしょう。ただ、これまでとは違い国立の施設を狙った事や四天王が直々に現れた事からも今回が本来の目的で、これまでのものはフェイク…という可能性も考えられてますし、ラム様の言う通りになる線もあるでしょうね」
「…それじゃ、ネプギアちゃんはもうかえるの…?」
ミナさんの言葉で気付いた様な声を上げて、残念そうな表情を浮かべるロムちゃん。そのロムちゃんにそうだって言うのは心苦しいけど、言わずに黙って帰ったらもっと悲しませちゃうだろうからって思って、素直にそうだよと言うと……
「もーロムちゃんったら、どうせまたちょっとしたら集まるんだからそんなかおしないの」
「…そ、そうだよね…ごめんね、ラムちゃん…」
「んもう…ネプギアもロムちゃんをかわどこしたんならもっと気をつかいなさいよね」
「は、はい……(かわどこした…?…か、拐かしたって言いたかったのかな…?)」
いつもの様にラムちゃんに割って入られてしまった。しかも軽く窘められてしまった。…でもなんだろう、今のラムちゃんの言葉からは普段とはちょっと違うものを感じた気がする……印象的には言い間違えの方がずっと強いけど…。…っていうか、ラムちゃん拐かすの意味ちゃんと分かってるのかな…?
そんな感じで経緯確認も終わって、わたしは当初(マークの欠落部位に気付いていない時点)の予定通り、帰る事にした。多分予想外の事が起きたしもう一日居ていいかって訊けばきっとOKしてもらえると思うけど…今は出来るだけ自分の国から離れるべきじゃないし、何より他の四天王も何か企んでるかもしれないからね。もし連続盗難がこれ以上発生しないのならわたしがわざわざルウィーに残る必要は無いし、自分の国の事ほっぽり出して他国の問題に首突っ込むのも何か違うもん。
「もう少し休まずとも大丈夫ですか?怪我もまだ手当てしてから時間経っていませんし…」
「ただ飛んで帰るだけですし、わたしはそんなに疲れてませんから。また何かあれば呼んで下さいね」
持ってきた荷物(っていう程色々ある訳じゃないけど)の確認をして、借りてた部屋を出ると、わざわざミナさんとフィナンシェさんが部屋の外で待っていてくれた。
「その時は今度こそわたし達だけで何とかします。…いやそれ以前に『何か』が起こらないのが一番なのですけど…」
「で、ですよね…ロムちゃんとラムちゃんは部屋戻っちゃいました?」
「いえ、お見送りするって言ってたので正面の出入り口の所にいると思いますよ。ラム様は向かう方向が違ったので、一回部屋に寄ったのかもですけど…」
「そうなんですね。それじゃ、お世話になりました」
ぺこり、と頭を下げてわたしは出入り口へ。…ラムちゃんは一体何の為にどこに寄ったんだろう……まさかお見送りしてくれない、とかじゃないよね…?
「あ、来たわねネプギア」
「よかった、居てくれた…」
『……?』
ちょっとだけ不安になってたわたしだけど、聖堂の出入り口に一番近い長椅子の所で二人が足をぷらぷらさせて座ってたのが見えて(というかラムちゃんの声が聞こえて)一安心。そんなわたしの心境を知らない二人はわたしの言葉に首を傾げてたけど…話す様な事でもないしいいや。
「二人共お見送りありがとね。もしまた事件が発生しても、その時は二人だけで捜査したりどこかに突撃したりしちゃ駄目だよ?」
「うん。ちゃんとまた、ネプギアちゃん呼ぶね」
「あ…えっと、そういう意味で言ったんじゃないけど…ま、まぁいっか。何かあったらまた来るつもりだったし…」
「それと、ネプギアちゃん…がんばってたすけようとしてくれて、ありがとう…」
「え……?」
きゅっ、とわたしの右手がロムちゃんの両手に包まれる。それは暖かくて柔らかな…ありがとうが伝わってくる様な、両手。
「ネプギアちゃん、またたすけてくれた。今日はけがとかもしちゃったのに、わたしたちをたすけるって言ってくれた。わたしね、それがすごくうれしかったの。だから…ネプギアちゃんがたいへんな時は、わたしたちをたよってね」
「ロムちゃん…そんなの当たり前だよ。友達だもん。困ってる時に助けるのも、大変な時に頼るのも、友達なら当たり前だよ」
「…前の時は、ともだちになってないのにたすけてくれた…」
「あ…そういえばそうだったね。でもそれは…うーん、多分その時からわたしはロムちゃんと友達になりたいって思ってたのかな。うん、きっとそうだよ」
ロムちゃんに言われて、その時の事…ロムちゃんがペンを探していた時の事を思い出す。あの時、わたしがロムちゃんに声をかけた一番の理由は泣きそうなロムちゃんを放っておけないから、放っておいちゃ駄目だと思ったからだけど…わたしはユニちゃんと仲良くなれた事で、二人とも仲良くなりたいって思ってたし間違いじゃないよね。
嬉しそうなロムちゃんにつられて笑顔になるわたし。そこから数秒わたしとロムちゃんは微笑み合って…ふとロムちゃんは思い出した様に手を離す。
「ん…ラムちゃんの番だよ」
「ラムちゃんの番?」
「う…ろ、ロムちゃんふらないでよ…わたしのタイミングでいこうと思ってたのに…」
どうしたんだろう…と思って見ていると、ロムちゃんはラムちゃんの背中を押した。それを受けてラムちゃんは、ちょっと追い詰められた表情に。
「…もしかして、ラムちゃんもありがとうを…?」
「い、いがいそうなかおするんじゃないわよ!何!?ロムちゃんとちがってわたしはありがとうも言えないって思ってたの!?」
「そ、そういう事じゃないよ!?でもそう思わせちゃったなら…ごめんね、ラムちゃん」
「ふん……」
「ほ、ほんとにごめんね…」
「……ネプギアは、どんどんロムちゃんとなかよくなるわよね」
つい「え?」みたいな顔をしたものだから、ラムちゃんはご立腹に。……でも、その後ラムちゃんは普段しない表情を見せる。
「ミナちゃんとフィナンシェちゃんからもしんらいされてるみたいだし、ガナッシュのはなしもわかるみたいだし……そういうところ、わたしは気にくわなかった」
「…ラム、ちゃん…?」
「…ズルいのよ、あんたは」
「それは…そんな事、言われても…」
「ら、ラムちゃん…ネプギアちゃんは、ズルい子じゃないよ…ネプギアちゃんは、そんな子じゃ……」
「……でも」
ズルい。そう言われて、わたしは心がズキリとした。ラムちゃんの気持ちも分からない事はないけど……でもやっぱり、友達になりたいって思ってる相手にそう言われたら…辛い。それでわたしが上手く言葉を返せなくて、わたしの代わりをしてくれる様にロムちゃんがラムちゃんへ伝えようとして……そこで、ラムちゃんは『でも』と言った。
「でも、それはネプギアがズルしてるからじゃないんだよね。…ネプギアがしっかりしてて、ちゃんと相手のことを考えられる……やさしくていいやつだから。…それはわかってるの。前にわたしとロムちゃんをまた前を向けるようにしてくれたのも、そういうことでしょ?」
「……うん、ロムちゃんとラムちゃんをこのままにしちゃ駄目だって思ったからだよ」
「…やさしいやつだってわかってるのに、たすけてもらったのに…なのにズルいって思っちゃうの、わたしは。……これって、しっと…って言うのよね。…ねぇネプギア、まだあんたはわたしとともだちになりたいって思ってる?」
そう言って、ラムちゃんはわたしの顔を見上げる。真っ直ぐな瞳で、わたしの気持ちを知りたいってわたしに伝えている。
その言葉を、瞳を受けて、それは…と、考えようとしたわたし。けれど、すぐにそんな必要はないって気付いた。だって……
「……それも、当たり前だよ。わたし、こう見えて欲張りだからね。そんな事聞いたって、ラムちゃんと友達になりたいって気持ちが薄れたりはしないよ」
「そっか。だったら……今日はありがと、ネプギア。わたしとロムちゃんのためにがんばってくれたこと、とってもうれしかったわ」
「ラムちゃん…」
「はいこれ、えーと…つまらないもの?…だけど、お礼としてうけとって!」
──ラムちゃんと友達になりたいっていう気持ちなんて、考えるまでもないんだからね。
そして…やっと、やっとラムちゃんは朗らかな顔を見せてくれた。それまでずっとわたしに対抗するみたいな言動をしてきたラムちゃんがありがとうって言ってくれて、わたしは胸が熱くなる。
手渡された小さな箱を受け取ったわたしは、ラムちゃんに開けていいか訊いた後に蓋に指をかける。一度別の所行ってたのは、もしかしてこれを取りに行く為かな?ふふっ、ラムちゃんも可愛いところあるなぁ。そんなラムちゃんが用意してくれたプレゼント、わたしはすっごく楽しみ────
「けろけろっ!」
「きゃあぁぁぁぁああああああああっ!!?」
「あははははははっ!ひっかかったわね、ばーかばーか!あははははっ!」
蓋を開けた瞬間、ぴょこんと出てくる緑色の何か。何だろうと思ってよく見たら……カエルだった。
「か、かかカエル入れてたの!?これカエルだよね!?」
「そーよ、カエルはカエルでもカエルのおもちゃだけど」
「へ?……あ…」
反射的に悲鳴を上げながら尻餅をついてしまったわたしと、わたしの無様な姿を見て笑い転げてるラムちゃん。その後、ラムちゃんの言葉を聞いてよく見たら…確かに生きたカエルじゃなくてカエルの玩具だった。…な、なぁんだ玩具か…………って、
「お、玩具でもタチが悪いよ!このイタズラはタチ悪過ぎるよ!」
「えー…あ、もしやネプギアはぐんそうとかオヤブンの方がよかった?」
「そういう問題じゃないよ!ろ、ロムちゃんも何か言ってやって!」
「え、えと…ラムちゃん、ナイスイタズラ…(ぐっ)」
「まさかのロムちゃんはラムちゃんサイド!?さてはロムちゃん分かってたね!?」
あまりのショックを受けたわたしはロムちゃんに助けを求めたけど…ロムちゃんはラムちゃんへサムズアップするだけだった。……そ、そう言えば前にブランさんがお姉ちゃんと話してる時「二人はイタズラばっかりして困る」って言ってたけど…こ、こういう事だったんだ…。
「さくせんだいせーこー!いぇーい!」
「うぅ、酷いよラムちゃん…」
「ふっふーん。これからもいっぱいイタズラしてあげるから、ともだちとしてちゃーんと付き合ってよね、ネプギア」
「このレベルのイタズラをいっぱいされるとか嫌過ぎる……え?い、今…友達として、って言った…?」
「どーかしらね。さ、ロムちゃんゲームしよっ!」
「うんっ、ネプギアちゃん…またね」
「ちょ、ちょっと!?そこは適当にしないでちゃんと答えてよ!そして最後の挨拶軽くない!?ロムちゃん!?ラムちゃん!?ねぇ!?ねぇっ!」
軽快に走り去る二人の後ろで、わたしの叫びが虚しく木霊する。そして……ただ一人、扉の前でぽつんと立ち竦むわたしだった。……ま、まぁロムちゃんとはより仲良くなれたみたいだし、遂にラムちゃんにも友達として認めてもらえたみたいだから、結果オーライだよね!……ね!
「……はぁ…」
……なんて自分に言い聞かせてみたけど、やっぱり何か心の中に木枯らしが吹くわたしでした。…帰り際、受付担当の職員さんにちょっと同情的な視線を受けたのがより辛かった…。
*
感動しつつもいいオチついて終わるのが、このシリーズの定番なんだよ!…とお姉ちゃんは言っていた。でも、それと同時に割とそうじゃない事もあるんだよね!…と、じゃあもう何でもあるんじゃん…なんて言いたくなる事も、お姉ちゃんは言っていた。それで……今回は、その複合型みたいです。
「ネプギアさん、ケイさんからお電話ですよ(´・∀・`)」
「ケイさんからですか?…もしもし…」
プラネテューヌに帰った次の日。女神の平常業務の一つである雑務をこなしていたわたしに、ケイさんから電話がかかってきた。勿論わたしとケイさんは知り合いなんだから、電話が来る事があってもおかしくないけど…同じ教祖であるいーすんさんじゃなくて、わたしにわざわざ電話…というのは珍しい気がする。
「やぁ、ネプギア。唐突だけど、ユニは今日そちらに来ているかい?」
「ユニちゃんですか?…来ていませんけど…」
「そうか…ならば、連絡か何かは?」
「それもないです…ユニちゃん、どうかしたんですか?」
本人の言う通り、前置きもなく早速本題に入ったケイさん。仕事人間っぽさのあるケイさんならそれは違和感のない流れだけど…何か少し、普段とは違う様な雰囲気を声から感じる。…ユニちゃん、どこかに出かけてるのかな…?
「どう、というか……ふむ…女神候補生である君には隠す事でもないか…」
「え……な、何です?何かあったんですか?」
ほんの数秒考え込む様に黙った後、ケイさんは声のトーンを落とした。その声はどう考えてもどうでもいい話をする様なものじゃなくて、しかもユニちゃんが関わってるってなると、わたしは不安にならざるを得ない。
ユニちゃんに何かあったのか、わたしの力が必要なのかと思って、少し前のめりに問いかけたわたし。それを受けたケイさんは、また一瞬黙って……そして、
「…今日の朝、かなり有力な四天王…それも、恐らくノワールと矛を交えていた奴の情報が入ってね。……もしかしたら、ユニは単独でその四天王を討伐しに向かってしまったのかもしれない」
「え…………」
──その言葉を聞いた途端、わたしは背筋が寒くなるのを感じた。
*
「…失礼します、トリック様」
「む…なんだリンダよ。吾輩は今休憩中だ」
「す、すいません。……テレビ、見てるんですか…?」
「うむ。女の子向けアニメは良いものだ…特に出てくる小さい女の子は、良いものだ…」
「は、はぁ…そうっすか……」
今回のパロディ解説
・「……いやなじけんだったね…」「いやな…じけんだった…(どよーん)」
ひぐらしのなく頃ににおける、冒頭の台詞の一つのパロディ。物理的な被害は勿論こっちの方が少ないですが、精神的には……えぇ、両方キツいですよね…。
・ぐんそう
ケロロ軍曹シリーズの主人公、ケロロの事。箱からケロロ軍曹が出てきたら…なんかありそうですね。クルル辺りが小さくなる道具作って実際にやりそうです。
・オヤブン
NARUTOシリーズに登場する口寄せ獣の一体、ガマブン太の事。どうやったらオヤブンが小さな箱の中に入るのでしょうね。中に印が書かれてたとかじゃなきゃ無理です。