超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress   作:シモツキ

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第五十話 襲来の図書館

偶然の閃きで次に狙われる場所を特定したわたし達。わたしは勿論、ロムちゃんとラムちゃんもミナさんとの約束の一つ『勝手に行動はしない』というのを覚えていてくれて、わたしと一緒にミナさんへ報告しに行ってくれた。

で、翌日。ロムちゃんとラムちゃんは……教会で待機を言い渡されていた。

 

『む〜……』

「あはは…不満そうだね、二人共…」

 

頬を膨らませて不満を露わにするロムちゃんとラムちゃん。報告を終えた昨日からずーっとこの様子……って事は流石になくて、ご飯の時とか遊んでる時とかは普段通りの二人だったんだけど、それ以外…気を取られる事柄が無い時はこんな感じだった。……わたし相手に不満を表現されても困るよ…。

 

「すいりをしたのはわたしたちなのに、わたしたちはここで待ってなさいなんておかしいわよ!ネプギアもそう思うでしょ!?」

「探偵の仕事、って意味なら実際に警護したり犯人捕まえたりは管轄外だから当然なんだけどね…っていうか、その言い方だと推理をした面子にわたしも入ってるんだよね?ふふ、ありがとラムちゃん」

「と、とくべつに入れてあげただけよ!メインはわたしとロムちゃんで、ネプギアはあくまでお手伝いなんだからね!」

「はいはい。ロムちゃん、ラムちゃんが認めてくれたよ」

「うん。ラムちゃんが、ネプギアちゃんとなかよくしてくれて…おねえちゃんうれしい…(ほっこり)」

「うっ…ろ、ロムちゃんまでわたしをからかわないでよ、もうっ!」

 

顔を赤くして手を振り回すラムちゃんを見て、わたしとロムちゃんはにっこり。お姉ちゃん達は互いにからかい合う間柄で、わたしはそれをちょっと不思議に思ってたけど…今ならその気持ちも分かるかな。っていうか、ロムちゃんも他人をからかう事あるんだ…。

 

『ラムちゃんは(可愛い・かわいい)なぁ…』

「うるさーい!というか、わたしがはなしたいのはそういうことじゃないの!」

「ごめんごめん。でも、ミナさんも言ってた様に盗難はいつ起こるか分からないんだよ?犯人が来るまであの美術館にずーっといるつもりなの?」

「それはあれよ、えーっと…あすたりすく?…ってのを使えばちょうどいい時間になってくれるんでしょ?」

「あ、そっかその手が……っていやいやあれは狙って出せるものじゃないよ!?仮に技術としてあったとしても、わたしやラムちゃんに出来る事ではないからね!?」

「じゃあ、わたしなら…かのう…!?」

「ロムちゃんの名前を出さなかったのはそういう意味じゃないよ!?」

 

それが出来るのは守護女神クラスだけだよ…(失礼を承知で言えば)ぶっ飛んでる的な意味で…。

 

「…でもやっぱり…待ってなさい、はきらい…」

「それも関わっちゃいけません、って意味じゃなくていつでも動ける様に待ってて、って意味だと思うよ?ミナさんって二人に優しいし」

「だけど、はんにんがすぐつかまっちゃったらわたしたちの出番ないじゃない」

「それは女神としては喜ばしい事なんだけどね…」

 

国の守護が女神の務めだけど…女神が出るまでもなく事件が解決するなら、そっちの方がいいに決まってる。ただそれでも二人の気持ちは分かるし、そうでなくても二人が『待っていなさい』って指示に不満を持つのも性格的に当たり前。だからわたしは、説得じゃなくて脱線を試みる。

 

「話は変わるけどさ、ブリキ屋の最新話って録画してたりする?」

「え?……まぁ、とってあるけど…」

「じゃあさ、それ見せてくれないかな?実はわたし、見るのも録画するのも忘れちゃって…」

 

てへへ、と照れ隠しの笑みを浮かべるわたし。勿論この話題を振ったのは話を脱線させる為だけど…忘れちゃってたのは事実。今日の夕方にはわたし帰るつもりだし、録画してあったら見せてほしい…っていうのも本心なんだよね。

 

「そうなんだ…ラムちゃん、まだろくが消してない…?」

「わたしは消してないよ?」

「じゃあ、のこってるよね…ネプギアちゃん、いっしょに見よ?」

「わぁ、ありがとう。二人はもう見たの?」

「そうだけど?……あ、せっかくだからネタバレしてやろうかしら…」

「や、止めてね?振りとかじゃなくてほんとに止めてね?」

 

悪どい顔をするラムちゃんにネタバレの危機を感じたわたしは、軽く冷や汗をかきながら頼み込む。せ、折角なんて感覚でネタバレされちゃたまらないよ…。

と、わたしとラムちゃんがやり取りしている間にロムちゃんがリモコンでテレビを操作してくれて、後は再生ボタンを押すだけ…ってところでわたしの方へ振り向いてくる。

 

「じゅんび、できたよ」

「みたいだね。それじゃ、お願いしまーす」

「はーい」

 

そうしてわたし達はアニメ観賞開始。二人の気を逸らしつつ見逃したアニメを視聴するという一石二鳥作戦が上手くいった事に満足したわたしは、そこから暫く目的の片方を忘れて観賞する。

 

「そういえば、こうして二人とテレビ見るのは初めてだっけ?」

「うん。三人だけなのは、はじめて…」

「だよね。今回来たのはお仕事みたいな形で来たけどさ、次は遊びで来たいな。それか、二人がプラネテューヌに来てくれる?」

「うん、行く。その時は、いっぱいあそぼうね(たのしみ)」

「…ま、ロムちゃんが行くならわたしも行くわ。呼ぶならおかしちゃんとよういしておいてよね」

 

…なんて、アニメを見ながら約束を交わす。ロムちゃんは話す度にぎこちなさが無くなってきてるし、ラムちゃんも何だかんだルウィーを出る時よりもわたしに歩み寄ってくれてる感じだし、これって二人とかなり仲良くなれてるって事だよね。……ねぇお姉ちゃん、わたし女神候補生の皆と仲良くなれたし、旅の中で色んな人と知り合って仲間も増えたんだよ?わたし、まだまだ勉強しなきゃいけない事も経験した方がいい事も多いと思うけど…それでも、少しはお姉ちゃんに近付けたと思うな。お姉ちゃんも、そう思うよね?

 

(…って、これだとお姉ちゃんが死んじゃったみたいだね…縁起でもないって怒られちゃうよ、あはは……)

 

こんな事を考えていたら、お姉ちゃんに『んもう、お姉ちゃんまだ生きてるんだからね!?勝手に殺すなんて酷いよネプギア!』なんて言われそうな気がする。っていうか、お姉ちゃんなら実際に言ってるかもしれない。だってお姉ちゃんだもん。

そんな感じで時々喋りながら見る事約二十分。CMは飛ばしていたからちょっと早めにAB両パートが終わって、ブリキ屋はEDに突入する。

 

「…ねぇ、なんかアニメってEDでおどってばっかりいない?」

「言われてみると、そうかも…どうしてかな…?」

「な、なんでだろうね…最近はドラマのEDでもよく踊ってるし…」

 

有名な作品がやって定番になったとか、ダンスEDで好評になった作品の後追いだとか、そんな感じかなぁ…と想像は出来るし、某SOS団のアニメとか某雇用被雇用関係の夫婦のドラマみたいに具体的な例も思い浮かぶけど、実際のところはどうなのか分からない。サブカルに関してはお姉ちゃん達四人の方がずっと詳しいし、もし助けた後も気になってたら聞いてみようかな。

 

「…それにしても、どうしてこんな女の子向けアニメの要素を取り入れたんだろうね。…わたし達の推理が当たってるなら、の話だけど…」

「しゅぼーしゃも女の子、とかじゃないの?」

「この事件を裏で操ってたのが女の子だったら恐ろしいなぁ、色んな意味で…」

「それかネプギアがしゅぼーしゃか、ね。一番さいしょに気付くなんてあやしーもの」

「ちょっ……ら、ラムちゃん…?」

 

EDは毎週同じだしじっくり見なくてもいいや、と思ってまた別の話題を振ったわたし……なんだけど、何故か返答はあらぬ方向へ。

 

「……あ、ミナちゃんがわたしたちに待ってなさいって言ったのは、わたしたちにかんしをしてほしかったからなんじゃ…」

「ミナさんは一瞬で全てを推理し理解していた!?…っていやいやいや…冗談キツいよラムちゃん、わたしじゃないって…」

「考えてみれば、昨日来たばっかりのネプギアがこんなすぐ気付いたことじたいがおかしいというもの…」

「た、偶々だよ!?考えてみれば、ってラムちゃん真剣にわたしを疑い始めてるよね!?違うからね!?」

「はんにんはみんなそう言うのよ!ロムちゃんもあやしいと思うでしょ?」

「…………」

「……ロムちゃん?」

「ふぇ…?…あ、ごめんねラムちゃん…」

『……?』

 

どこまで冗談でどこまで本気なのか分からないラムちゃん。わたしが疑われてあたふたする中、ラムちゃんはロムちゃんへ同意を求め……たけど、ロムちゃんはわたし達の会話を全く聞いていなかったみたいで、名前を呼ばれて始めて気付いた様子だった。そして、何故かテレビ画面は停止状態になっている。

 

「ロムちゃん、どうかしたの?……あ、もしやEDを楽しみたかったのに、わたし達が近くで喋ってるせいで集中出来なかったとか?だとしたらごめんね…」

「あ…ううん、ちがう。…気になってたの」

「気になってた?」

「これ…きのう書いたマークと、ちがうの」

 

そう言ってロムちゃんはテレビ前へと向かい、画面の一ヶ所…タイトルロゴのハートマークを指差した。それを受け、指差されたマークを見つめる私とラムちゃん。

わたしはこれまでハートマークって表現してきたけど、ロゴのそれはシンプルなハートマークじゃなくて、正しくは女の子向けらしい装飾が付いたハートになっている。だからこそわたしはただのハートじゃなくて、この作品のハートマークだって気付いたんだけど……

 

「……違ったっけ?」

「たぶん…」

「うーん…じゃ、昨日書いた地図取ってくるよ。見比べれば分かるしさ」

 

わたしは扉を開け、地図を取りに向かう。もし違っているなら見過ごせないし、間違ってたのがロムちゃんの方なら勘違いだったね、で済む話。ぱぱっと確認しちゃおっと。

資料と一緒に置いておいた地図を取って、二人の部屋へと戻るわたし。今日はホワイトボードを用意していないから、ボードじゃなくて床の上に地図を広げる。

 

「えーっと、ここは合っててここも合ってて…」

「……あ、ほんとだ。ほら見なさいよここ」

「あ……」

 

ラムちゃんに言われて見ると、地図には確かに一ヶ所違っていた…というか足りない箇所があった。それはわたしが書いたマークの最後、私立美術館の辺りを指している部分の抜け落ちで、本物のマークにはそこから右上に向かって流れる様な線が続いている。長さ的にはおまけサイズだけど……ロムちゃんの言う通り、わたしの書いたマークは違っていた。

 

「こんな細かい違いに気付けるなんて、凄いよロムちゃん!ずっと気になってたの?」

「あ、えと…ぐうぜん気付けただけだよ…?」

「偶然でも凄いものは凄いよ。ね、ラムちゃん」

「そうそう、ロムちゃんがすごいのはひつぜんってものよ!」

「必然って言うとまた違う感じになっちゃうけど…とにかくラムちゃんも凄いって思ってるし、やっぱり凄いんだよロムちゃんは」

「そ、そうかな…?」

「そうだよ?」

「……はぅぅ…」

 

両手の人差し指をくっ付けて、もじもじと訊いてくるロムちゃんににこりと笑みを浮かべながら言葉を返すと、ロムちゃんは恥ずかしそうに手を頬に当てて軽く首を振った。……ほんとにロムちゃんは可愛いなぁ…。

 

「もー、ほんとにロムちゃんはかわいいんだから〜」

(あ、ラムちゃんロムちゃんの指の間から頬つついてる…いいなぁ…)

 

数十分前とはロムちゃんとラムちゃんの立場が逆転。という事は、次はわたしが弄られる番?…っていや、弄られるって意味じゃ昨日のメイド服が該当しそうな気が……ん?

 

「ちょ、ちょっとラムちゃんストップ。わたし、結構重要な事に気付いたかも…」

「じゅーよーなこと?ロムちゃんのほっぺたが片方あいてるとか?」

「ね、ネプギアちゃんまでつんつんするの…?」

「そうじゃなくて……今思ったんだけど…書き忘れがあったって事は、昨日の推理は不完全だったって事だよね?」

『…………』

 

ふと気付いてしまった事を口にした瞬間、ぴたりと二人の動きが止まった。

 

「わたし達の推理通りなら、狙われるのは線の動きが大きく変わる所と終わる所。だとしたら…」

「…今かき足したところも…」

「ねらわれるかもしれない、ってこと?」

「う、うん…」

「じゃあいそいで行かなきゃじゃない!ここはどこ!?」

「ルウィーに住んでるラムちゃんがプラネテューヌに住んでるわたしに訊く!?…えぇと、美術館周辺の地図を出して…」

 

昨日と違って情報が揃っているから、わたしはNギアで検索して美術館周辺の地図を映し出す。で、床に広げた地図と画面上の地図を照らし合わせて、書き足した部分に当たる場所を……。

 

「……あれ?…国立図書館…?」

「としょかんなのね!だったら…え、こくりつ?」

「しりつじゃ、ないの…?」

「うん、国立って出てる…これって、わたしの予想が外れたって事なの…?」

 

これまで一連の事件で狙われる物の統一性はなかった(名高い物って共通点はあるけど)けど、狙われた物の所有権は全て民間の人か組織にあった。その法則からいけば国立図書館は狙われる筈が無くて、別の施設を指してるって事になるんだけど…他に狙われそうな施設なんて画面の地図上には一つもない。となると、疑わしくなってくるのはわたし達の推理の方……

 

「……いや、こんなにロゴと似てるんだから推理が間違ってる訳ないよね。もしかしたら、国立図書館に一時的に個人所有の特別な本が置かれてるとかかもしれないし……うん」

「ネプギアちゃん…?」

「…ロムちゃん、ラムちゃん、図書館に行って。ミナさんはわたしが説得するから、二人は先に図書館が襲われてないか確かめてきて!」

 

もしかしたら、やっぱりわたし達の推理が間違ってるのかもしれない。仮に合ってても、図書館を狙うのは美術館の後だから今すぐ行く必要ない…なんて事があるかもしれない。でも、推理が正しかったら…今にも図書館から何かを盗まれそうになってるとしたら…。

お姉ちゃんが、時々言う言葉。いつもは「そんなどっちも、って場合はそうそう無いんじゃないかなぁ…」って思っていたその言葉も、今なら同意出来る。──どうせ後悔するなら、精一杯やって後悔する方がいい。…うん、その通りだよお姉ちゃん。

 

 

 

 

「すいません!ロムちゃんとラムちゃんは来ましたか!?」

「あ、はい。既に中へとお入りになりました。ネプギア様もどうぞ」

「ありがとうございます!」

 

女神化状態で図書館前に着陸したわたしは、待っていてくれた様子の警備員さんに誘導されて中へと入る。二人に言った通り、ミナさんを説得して許可を貰ったわたしは飛んで図書館へと急行していた。

 

「…ほんとに誰もいないんですね」

「今日は休館日ですからね。ロム様とラム様はお二人で捜索中だと思われます。…案内は必要ですか?」

「いえ、大丈夫です。警備員さんは何かあった時アナウンスお願いします」

「分かりました、お任せ下さい」

 

警備員さんと別れ、女神化を解除しつつわたしは二人を探し始める。大声で呼ぶか電話をかけるかをすればすぐ合流出来ると思うけど、犯人がもう潜入してるかもって考えるとそんな場所をバラす様な事は出来ない。…合流場所、決めておけばよかったな…。

 

(相手が人なら、武器を持ってても制圧は出来るだろうから…やっぱり一番気を付けなきゃいけないのはわたし達が見つけられない事…)

 

犯人の外見情報は一切分からないから、見つける前に図書館から出られちゃったらもう捕まえるのは絶望的。でも逆に休館日のおかげで館内にいる人は99%わたし達の探してる犯人だって言えるから、犯人がいるなら出ていってしまう前に見つけられるかどうかが勝負の分かれ目。そう思い、わたしが神経を張り巡らせて館内を進んでいると……脚の携帯ホルダーが振動した。

 

「……電話?もしもし…」

「ネプギアさん、ミナです。図書館には到着しましたか?」

「あ…はい、今館内を探索中です」

 

振動していたのは勿論ホルダーじゃなくてマナーモードにしておいたNギアの方で、電話の相手はミナさんだった。わたしは空いている手を送話口と口元に当てて、出来るだけ通話の声が漏れないように意識する。

 

「そうですか。では、お二人とはまだ合流出来ていないのですか?」

「そうです。…あの、ミナさん…狙われている物の目星は付きましたか?」

「いえ。ですが、探すならば地下の保管庫が有力だと思います」

「地下の保管庫、ですか…?」

「地下の保管庫には、ネプギアさんの予想通り一時的におかれている本や後世に残すべき重要な書物が置かれているんです。もし狙うなら、そちらの本だと思いませんか?」

「確かに…行ってみます」

 

足音を立てない様に気を付けながら、わたしは地下への階段を見つけて降りていく。その間も通話は続けて、わたしとミナさんはお互いに情報を共有。……因みに、わたしはミナさんを説得してって表現したけど…実際には早々に「もうロムちゃんラムちゃんは襲撃される前提で行っちゃったので、適切な対応取らないと混乱が起きますよ?」と脅し紛いの切り札を切って強引に認めさせただけだった。…今は盗難阻止を優先してくれてるからか普段通りの口調だけど…帰ったらわたし、お説教されるんだろうなぁ…。

 

(…というか、もしこれで見当違いだったら、わたしミナさんの本気モードで叱られるんじゃ……ど、どうしよう…やらなきゃよかったかも…)

「ロム様ラム様は周りの事気にせず高火力魔法を使い兼ねませんので、もし戦闘になった際は気を付けるよう口添えを……ネプギアさん?」

「ひゃいっ!ご、ごめんなさい!」

「……はい…?」

「あっ…な、なんでもないです。分かりました…」

 

あの黒いオーラを纏ったミナさんに叱られるのを想像して怖くなってきたわたしは、つい名前を呼ばれただけなのに謝ってしまった。…一刻を争うからってあんな事言った、ちょっと前のわたしを本気で叱りたい。というか今の内に謝っておいた方がいいんじゃないのかな?…うん、そうだよそうだよね。よし、ここで一つしっかりと謝って……

 

「……へっ?」

「……?…どうしましたか?」

「…今、何か重い物が倒れた様な音がしました…」

 

少し離れた場所から聞こえた、ドスン…という音。可能性の上では老朽化した本棚や机が勝手に倒れた…っていうのも無くはないけど、ぶつかったとか何とかで誰かが倒したと考えるのが現実的。で、今この図書館の中に居そうな人といえば、ロムちゃんとラムちゃん、それに犯人位しかいない。

ごくり、と唾を飲み込んで音のした方へと向かうわたし。慎重に、というミナさんの声を聞きながら、わたしはゆっくりと音のした方…微かに埃の舞っている方へと近付いていく。その次の瞬間────

 

 

 

 

 

 

『きゃぁぁああああああああああッ!!』

 

──耳をつんざく様な悲鳴が、聞こえてきた。それは、わたしにとって聞き慣れた…ついさっきまで聞いていた、双子の声。

 

「なっ……何ですか今の悲鳴は!?今の、ロムとラムの声ですよね!?二人に何かあったんですか!?」

「……ッ!」

 

受話口から聞こえる、慌てふためいたミナさんの声。その声は確かにわたしへ届いていたけど……わたしに言葉を返す余裕は無かった。ロムちゃんとラムちゃんが襲われたって思ったわたしには、落ち着いて言葉を返すだけの心の余裕が無かった。

 

「ロムちゃんッ!ラムちゃんッ!」

 

反射的に女神化し、床を蹴って一気に悲鳴の下へと飛び込むわたし。舞っている埃の濃度が一番高い所で素早く着地して、二人の名前を叫びながらその通路の先へと目を凝らす。それによって見えてきたのは…三つの影だった。

 

「ひゃっ…ゃ、いやぁ……!」

「は、はなしてっ!はなしなさいよぉッ!」

「アクククク、なぁに心配する事はない。静かに待っていれば、すぐ終わるぞ二人共」

 

二つは、ロムちゃんとラムちゃんの姿。赤くて太い、触手みたいな何かに絡め取られて恐怖の声を上げている二人の姿。そして、もう一つの姿は……二人に触手…ではなく舌を伸ばす、黄色の巨体──そう、四天王の一角の姿だった。




今回のパロディ解説

・ブリキ屋
プリキュアシリーズのパロディ。前話で使ったパロディの事なので、前話を読んで頂けたのなら解説不要なのですが…この話単体で読んだ方への配慮という事で、一つ。

・某SOS団
涼宮ハルヒシリーズにおいて登場する部活の事。作中で指しているのはアニメのEDのダンスの事です。ダンスEDの先駆けの一つかなとは思いますが、実際どうなのでしょう。

・某雇用被雇用関係の夫婦
逃げるは恥だが役に立つにおける、主人公達の関係の事。ダンスEDの先駆けかどうかはともかく、確実にこのドラマのED(通称恋ダンス)は大きな影響を持っているでしょう。

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