超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress   作:シモツキ

66 / 183
第四十五話 再会は災難の先に

リーンボックスを出てから数刻。来た時は六人だったパーティーは十人となり、遂に端から見ても「ん?なんだあの集団…」みたいな状態になった。…人数的にはわたし達候補生が参加してなかった前のパーティーの方が多いんですけど、ね。

 

「ほぇぇ…じめん、がたがた…」

「どかーん、ってなったかんじよね。ちょっとわたしたち見てくるからー!」

「あ、こら!衝突面は崩れ易いんだから気を付けなさい!…ちょっとアタシ、二人を見てきます!」

 

国境管理局で手続きを待つ最中、リーンボックスとプラネテューヌの大陸衝突面が気になり走っていってしまうロムちゃんとラムちゃん。それにいち早く気付いたユニちゃんは、イリゼさん達に声をかけつつ二人を追いかけていく。その時わたしは荷物をごそごそしてたから……

 

「…ものの数秒で置いてけぼりになっちゃった……」

 

置いてけぼりといってもイリゼさん達は国境管理局の中にいるから、一人ぼっちって訳じゃないけど…ロムちゃんラムちゃんが合流してからは候補生四人で行動する事が多かったから、その三人が突然離れてしまうと何か疎外感みたいなものを感じてしまう。

 

「多分五分もすれば戻ってくると思うけど…どうしよう、わたしも行こうかな…?」

 

ちゃんと行ってくるって言えば、イリゼさん達は怒ったりせず送り出してくれると思う。行く理由が『三人に置いてけぼりにされて疎外感が…』ってのはちょっと恥ずかしいけど、一人でぽつんと待ってるのもそれはそれで嫌だもんね。

そう思って立ち上がったわたし。けれどそこでわたしは見知らぬお爺さんに話しかけられた。

 

「…少し、宜しいですかな?」

「はい?……えと、貴方は…?」

「ただのしがない老人ですわい。ついでに言う事があるならば、遠出の帰りのパープルハート様信者…といったところですな」

「お、お姉ちゃんの信者さん…ですか…」

 

わたしは今、知らない人(しかも異性)にいきなり話しかけられたという状況だけど…お姉ちゃんの信者なら、無視して離れる訳にはいかない。それに、欲情してたり凶器ちらつかせてたりしてる訳でもない人を一纏めに『怪しい人』って片付けるのもあんまり好きじゃないし、用事を聞く位はしてあげようかな。何かあってもここならなんとかなりそうだし。

 

「お姉ちゃんに何か伝えたい事があるんですか?」

「いえ、ただ少し訊いてみたい事があるだけなのです」

「訊いてみたい事?」

「えぇ。こほん…もし命と引き換えに、世界を救えるとしたらどうしますかな?」

「え……?」

 

お姉ちゃんの信者でわたしに話しかけてきたんだから、訊いてみたいというのもお姉ちゃん関連かな…と思っていたけれど、質問はわたしの予想とは全く違うものだった。…命と引き換えに、世界を…命と世界を、天秤にかけるって事……?

 

「例えば、の話です。その答え次第でどうこうする訳でもありませんから、心理テスト感覚で答えて下され」

「し、心理テストとして考えるには内容が重過ぎる気が……でも、そういう事なら…もし、それしか手段がなかったら、きっと……」

「ふむ…流石パープルハート様の妹君、その様な方に守ってもらえる事に感謝致しますぞ」

「い、いえ…それが女神の務めですから…」

「謙遜ならさずですぞ。…では、もう一つ質問を……パープルシスター様。その命というのが自分ではなく、自身の味方をしてくれる人のものならば…どうですか?」

「……それは…」

 

さっきお爺さんは、心理テスト感覚でと言っていた。その後今度は本気で…とは言ってないし、この質問もきっと軽い感じで答えればいいんだろうけど……例え心理テストだったとしても、それは簡単には答えられない。

ユニちゃんに、ロムちゃんに、ラムちゃん。お姉ちゃんや女神の皆さん、わたしと一緒に旅をしてくれる人や教会の皆さん。色んな人が頭に思い浮かぶし、わたしはその内の誰にも死んでほしくない。でも…人や女神も世界の一部だから、世界を救えなかったらその時は自分含めて皆が死んでしまう。つまり……この問いは、初めから世界と天秤にかけられてる『誰か』は必ず死んでしまう…誰かが死ぬ事が前提の問い。

 

(……それが前提なら、考えるまでもない事。何か一つ失うのと、その一つを含めた全部を失うのとなら、比較にすらならない。…だけど…そんなのって…)

 

考えるまでもないけど、それは選べない。だって、そんなの悲し過ぎるから。選んでしまったら、わたしは絶対後悔するから。例え世界を救えても、それでめでたしめでたし…なんて言える訳がない。────でも、それでもやっぱりわたしには、誰かを犠牲にする事を突っぱねられなくて……

 

「……分かりません、その時わたしがどうするか…でも、一つだけ言える事があります」

「…と、言いますと?」

「わたしの尊敬する人は、尊敬する人達は…絶対、どっちも選ばないと思います。選べず終い、って意味じゃなくて…誰も犠牲にしないで世界を救う、第三の選択肢を選ぶって思ってます。……ごめんなさい、質問にちゃんと答えられなくて…」

「お気になさらずとも宜しいのですよ。これは正しさを求めている訳ではない、答えの無い問いなのですから。…さて、老人のくだらない会話に付き合って下さりありがとうございました。儂はそろそろ行くとします」

「あ、はい…あの、一人で大丈夫ですか?」

「これでも足腰は丈夫なのですぞ。それに、女神様の尽力のおかげで多少遠回りにはなりますが、ある程度の安全が保障された道も出来ましたからな。そこを通って帰るとします」

 

そう言ってお爺さんはわたしへ深いお辞儀をして、プラネテューヌ側の出入り口へと歩いていった。言葉通りお爺さんの足取りはしっかりしていて、確かに途中で倒れたりする心配はなさそうに見える。…まぁ、考えてみればこんな場所にいる時点でヨボヨボじゃないのは分かりきった事だけど…。

 

「……にしても、あの質問は何だったんだろう…」

 

人や世界の命運なんて、暇潰しのお喋り…にしてはあまりにも重過ぎる内容で、気軽に、しかも偶々あった初対面(一応お爺さんの方はわたしを知ってた様子だけど)の人に振る話題としては最悪もいいところ。こんな話題を振るなんて……や、やっぱり怪しい人だったのかな…わたし何もされてないけど…。

 

「…………」

 

わたしは結局、答えを出せなかった。お爺さんはあの答えでも満足してくれたみたいだけど、言ったわたし自身は満足出来てない。

お姉ちゃんやイリゼさん達ならきっと選ぶ、第三の選択肢。それは勿論わたしも思い付いたし、実際ユニちゃんと決闘した時はそれに近い言葉を口にした。でも、目の前にいる人や自分の国じゃなくて世界規模での話って認識で、落ち着いた状態で改めて考えたら……自分の意見として第三の選択肢を口にする事が出来なかった。ただの雑談だって分かっていても、その選択肢の重みがわたしにのしかかって言えなかった。

 

(…そう、だよね…第三の選択肢を選ぶって事は、まずそれを発生させる為に時間を費やさなきゃいけなくて、しかも時間をかけたって第三の選択肢が現れる保証もなければ実現出来る保証もない。それにもし、第三の選択肢を追求したばっかりに世界の危機に間に合わず、最小の犠牲で救えた筈の世界を守れなくなったら……その時は、どうしようもない位の責任と後悔が襲ってくるんだから…生半可な覚悟で、それを選べる訳がないんだよね…)

 

そう、わたしにとっては重過ぎるその選択肢。それを、わたしの尊敬する人達ははっきりと口にする事が出来る。多分、一人一人その言葉に対する捉え方や覚悟は違うんだと思うけど、どの人も言葉の重みに負けないだけの強い思いがあるから言えてるんだってわたしは思う。

 

(今は、まだ言えないけど…いつかはわたしも、自信を持って言える様になりたいな)

 

それがいつになるかは分からないけど、もしかしたらわたしが思ってる以上に困難な事かもしれないけど、それでもわたしは目指したい。だって、わたしは女神候補生なんだから。憧れの人に追い付ける様に頑張らなきゃ、候補生じゃないもんね。

そうして数分後。ユニちゃん達が戻ってきたところで手続きも終わって、わたし達は国境管理局を後にした。

 

 

 

 

私達は舗装された道を通る事も時々あるけど、基本は安全が保障されてない最短ルートを選んでいる。それは単純に最短ルートだから…っていうのもあるけど、犯罪組織構成員に見つかってしまう事を回避する(きちんと舗装された道は一応の安全が確保されてる分、少ないけど人の通りもある)為でもある。折角偽情報を流して行き先を撹乱してるんだから、実際の移動中に見つかる訳にはいかないんだよね。

 

「5pb.、歩き疲れてたりはしない?」

「あ…うん、大丈夫だよ」

「貴女案外体力あるのね。元々部署が部署のケイブはともかく、シンガーもスタミナ関係には気を付けてるの?」

「それは、えっと…大衆の前で何曲も歌って、場合によってはギターも弾いてってなると、それなりにスタミナがないとやっていけないからかな…」

 

ケイブに気遣われていた5pb.だけど、彼女の言う通り辛そうだったり無理をしてたりする様子はない。……というか、それよりも…

 

「…ほんと、ステージの上ではあれだけはきはきしてたのに、実は人見知りだったなんてね…」

「う…す、スイッチが入れば平気、なの…でもどうしても普段は駄目で…」

「あー、スイッチっていうのは分かるよ?私も偶に大衆の面前に出たりするし。…それで、敬語が取れたのは多少なりとも緊張が解れたって解釈で…」

「う、うん。それで合って…ます」

「それは良かっ……どっち!?今合ってると間違ってるが混在してたよね!?どっちなの!?」

 

内容的には肯定され、口調的には否定されてしまった。…なんという高等テク、これが狙ったボケだったとしたら即うちのパーティーにおけるボケ&突っ込み最前線で活躍出来る人材だよ5pb.……。

 

「…そういえば、イリゼちゃんも前より誰かと打ち解けるのが早くなったですね」

「そう?……って、それもしや敬語とかさん付けな事?」

「はいです。何か理由があるんですか?」

「理由っていうか……やっと人との距離感を掴める様になった、的な…?」

「遅っ!ここにきてやっとなの!?イリゼあんた遅くない!?」

「い、いや違うの!距離感を掴める様にっていうか、もっと単純な…そう!相手がフレンドリーにきてるのに暫く敬語さん付けのままとかそっちの方が相手には失礼だって思うようになったの!…ってこれもこれでなんか違う!違うよ!」

「違うよ!って…なんで今私怒られたのよ…落ち着きなさいイリゼ…」

 

自分自身としては、それなりに理由があったつもりだったけど……いざ訊かれたら、自分でもよく分からなくなってしまった。…で、ご覧の通りテンパりイリゼちゃんの完成です。笑ってやって下さい。

…………。

 

……ごめんなさい嘘です、やっぱり誰か慰めて…。

 

「イリゼって、偶に突然余裕を無くすよね。何かの発作かな?」

「ほっさ…?…イリゼさん、びょうきなの…?(しんぱい)」

「や、止めてあげなさいロム…イリゼさん、アタシ達は気にしてませんからね?」

「そういうフォローはむしろ辛いよユニ……」

「んもう、おねえちゃんのなかまのくせになさけないわね。ほら、水いっぱいあるわよ?」

「わー凄い…って私は赤ちゃんか!そんなの知ってるよ!さっきからずっと見えてたよ!…うぅ……」

 

傷心の私へ投げかけられたのは、温かな態度ではなく言葉のリンチだった。皆悪気はない…というか少なからず心配してくれてたり慰めようとしてくれてたりはしたけど、言葉選びのせいで完全に追撃だよそれは……。

そんなこんなで私はちょっぴりしょんぼりモード。歩きながらぼんやりと海岸線を眺めていると(別にラムちゃんに言われて気になった訳じゃない…)、ネプギアが隣にやってくる。

 

「その…元気出して下さい、イリゼさん」

「うん…そのうち出てくるだろうから、それまで待ってて…」

「り、リポップみたいなシステムなんですね、イリゼさんの元気……えっと、ラムちゃんの言葉じゃないですけど、海とか山とか見ると気分が晴れるって言いますよ?」

「それは、まぁ…でも即元気になれる訳でもないから…」

「流れ着いた物見るのもいいかもですよ?ほら、流木に貝殻、海藻になんと人まで海岸線に落ちてるじゃないですか」

「手紙の入った瓶でも落ちてたら面白そう……ん?」

「それはちょっとロマンチック……あれ?」

「…………」

「…………」

 

 

 

 

『……人!?』

 

目を剥いた状態で裏返った声を上げた私とネプギア。突然私達が素っ頓狂な声を上げたものだから、皆私達を変な目で見てきたけど…それどころじゃないよ!

 

「い、イリゼさん!人って海産物でしたっけ!?」

「な訳ないでしょ!あれは絶対溺れたか何かでここに流れついた人だよ!」

「あんた達、砂浜眺めて何叫んで…って、あれまさか人…?」

 

私達に遅れる形で皆も倒れている人に気付き始める。そして数秒の後、視線を交えた私達はその人の所へと走っていった。その理由は勿論、助ける為。

……が、その人の所に到着し、上半身を起き上がらせたところで私達は愕然とする。

 

『え……ファルコム(さん)!?』

 

倒れていたのは赤いショートカットの髪を持つ女性。近寄った時点で何か引っかかりは感じていたけど、顔を見たらやはりその人はファルコム…それもラステイション滞在中に出会った、大人の方の彼女だった。偶々別次元組の一人と同一人物である人と旅の中で出会って、しかもその人は偶々私達の欲しかった情報を持ってて、おまけに暫くした後その人が倒れているのを偶々私達が見つけるって…一体どんな偶然なの!?これ確率的には天文学的数字になるよね!?…って、今はそんな事気にしてる場合じゃない…。

 

「と、取り敢えず脈と呼吸…コンパ、脈拍確認してくれる?」

「勿論です!イリゼちゃんはファルコムさんの体勢をそのままにしておいて下さいです!」

「うん、呼吸は…良かった、ちゃんとしてる…」

「脈拍も大丈夫です、でもかなり身体が冷えちゃってるです…」

「だね、早くなんとかしてあげないと…」

 

呼吸と脈が確認出来たから、既に絶命してた…という最悪の事態は回避出来たけど、このまま放っておいたらファルコムの状態が悪化するのは間違いない。そう考えて私は皆に目を向ける。

 

「こういう時は…多分まず水だよね、誰か水ある?」

「こういう時は王子さまのキスじゃないの?」

「王子様はいないしファルコムは白雪姫じゃないよ…水とか水分とかない?」

「ごめんなさい、さっき持ってきた物は飲んでしまってないわ…」

「お水…あ……こ、これで足りる…?」

「う、うん…足りる足りない以前に、ロムちゃんが手に汲んできてくれたのは海水だよね…出来れば塩分濃度の濃い水分は避けたいかな…」

「うーん……ねぇ、もうただの砂糖水もどきになってるこれでも大丈夫かな?」

「ほう、炭酸抜きコーラですか…えぇいもそうそれでいいよ、飲ませてあげて!」

「任せて!見知らぬ女の子でもピンチならアタシが助けなきゃね!」

 

紆余曲折の末、やっと出てきたのは緩くなった酸抜けコーラ。ほんとは水とかお茶とかが良かったけど…なんかこの調子だとベストな水分が出てくるまでにかなり時間がかかりそうだったから、ここは妥協。…ファルコムにとってはREDと間接キスする事になるけど…うん、間接キスならセーフだよファルコム。私だってそれ位の事は…それ位の、事は…それ、位の……

 

「…あぁぅ……」

「わわっ!?い、イリゼちゃんどうしたですか!?」

「ぼ、ボクが初対面の人と話す時と互角かそれ以上レベルで顔が赤くなってる…」

「ふぇっ!?な、何でもないよ!うん何でもない!一作目第四十二話の事思い出してただけだから!」

『何故にこのタイミングで!?』

「つ、追求しないで!お願いだから追求しないでぇ!」

 

間接キスからとあるキスを思い出してしまって、その瞬間に物凄く恥ずかしくなってしまって……結果、本日二度目のテンパりイリゼちゃん。正直ファルコムの肩を持っていなかったら、冗談抜きに某人見知りアイドルの如く穴掘って埋まろうとしてたと思う。

完全に取り乱してしまった私と、「え、いや…本当にイリゼ大丈夫…?」みたいな感じで手の止まった皆。色々インパクトが強過ぎたせいか誰一人として気を取り直す事が中々出来なくて、お互いだんまりの時間が────

 

「……っ…」

「あ…目を覚ましたみたいだよ!…ボクは面識のない人だけど…」

 

誰も雰囲気を変えられない中、一気に流れを変えたのは……他でもないファルコムだった。

 

 

 

 

「まさか、こんな形で君達と再会するなんてね…助けてくれた事を心から感謝するよ」

「気にしないで下さい。倒れてる人を見て見ぬ振りは出来ませんし、アタシ達には情報提供してもらった借りもありますからね」

 

ファルコムが目を覚ましてから数分後。私達は意識を取り戻したファルコムを連れて近くの木陰へと移動した。…熱中症とか脱水症状ではないから、日光を避ける必要はないんだけどね。

 

「偶々知ってた情報と命じゃ、君達が大損だよ。だからこの恩は必ず返させてもらうよ」

「だからいいって。…あ、カイロとか毛布とかは足りてる?カイロならもう少し余ってるわよ?」

 

アイエフの言葉に首を振り、もう十分だと伝えるファルコム。意識は戻っても当然体温は下がったままだから、私達は砂浜から運んだ後に毛布とルウィーで使い残したカイロを渡して、ファルコムに暖をとってもらった。…流石にこの段までくれば、私も大分落ち着いている。

 

「…それにしても、前に会った時より大分人数が増えてるね」

「わたしたちはルウィーの女神候補生なのよ、知ってるでしょ?」

「一応、ね。女神候補生が勢揃いなんて、何か重要な事でもしているのかな?」

「ちょっとね。…ファルコムこそどうしてあんな所にいたの?誰かに襲われた、とか?」

 

私達の知るファルコムは手練れで、目の前にいるファルコムからも戦い慣れてる様子を感じるから、そう簡単にやられるとは思えないけど…砂浜に流れ着くなんて、余程の事が無ければあり得ない。だから、場合によっては厄介事…それこそ犯罪組織が絡んでいるかもしれないと思った私はファルコムに問いかけてみたけど…返ってきたのは意外な答えだった。

 

「あぁ……ちょっと、ジンクスにね…」

「ジンクス?……え、まさかGN-X…?」

「えーっと…残念だけど違うよネプギア……そんな馬鹿なと思うかもしれないけど、あたしは『旅先で毎回船が難破する』ってジンクス持ちでね…今回も局地的な嵐に襲われてこうなった…んだと思う。途中で意識が飛んじゃったから、断言は出来ないんだけどね」

『……あー…』

「え、何その『それがあったか』みたいな反応!?」

 

RED、ケイブ、5pb.は驚きながらも同情的な視線をファルコムに向けていたけど…別次元組のファルコムを知ってる私達は、驚きより納得が先行していた(ロムちゃんとラムちゃんはジンクスとか難破がよく分からなかったのかきょとんとしてた)。…そういえばあのファルコムもそういうジンクスがあるって言ってたっけ…どの次元でも難儀なジンクス持ってるんだね…。

 

「あ、あはは…でもそれじゃ、荷物も殆ど流れちゃったって事ですよね?だ、大丈夫なんですか?」

「心配ご無用だよ、幸か不幸か毎回最低限の荷物は残るし、ジンクスを見越して今じゃ最低限の物しか持たないようにしてるからね」

「た、逞しいです…」

「けど、残るのはほんとに最低限だからね…暫くは困窮生活かな…よいしょ」

「え……ファルコムどこへ?」

「取り敢えずは食料確保かな。多少だけど体力回復出来たし、日の出てる内にやれる事をしておこうと思ってね」

 

そう言ってファルコムは毛布を下ろし、ファルコムと一緒に私達が運んだ荷物をまとめ始める。この散々な事態にあってもすぐ立ち直ってる辺り、確かに逞しいというか慣れ過ぎというかだけど……うーん。

 

「…この人、かわいそう…」

「だよね…イリゼさん、わたしこのままファルコムさんと別れるのは嫌です」

「ボクも、これでお終いは心苦しいかな…」

「私も同感だよ。だから……ねぇファルコム、一つ提案があるんだけど…」

「提案?」

「うん、ここでの再会も何かの縁だし…私達のパーティーに入らない?私達もこのままじゃ後味悪いし、ファルコムにとってもそっちの方が色々楽でしょ?」

「それは……君達に迷惑だったりは…?」

 

驚いた様な表情でそう訊いてくるファルコムに、私達は肩を竦めながら笑みを見せる。ファルコムなら……いや、誰だってこうして見せれば言わずとも分かるよね。…そんな事は、なにもないって。

ファルコムは私達の反応を見て、少し考える様な顔を見せた。そして数秒後、頭をかいた後に申し訳なさそうな…でも、晴れやかな笑顔で、

 

「……うん。それじゃあ…今日からあたし、ファルコムは君達にお世話になるとするよ。皆、宜しく頼むね」

 

───こうして、ひょんな事から出会ったもう一人のファルコムと私達は、ひょんな事から再会をして……共に旅をする仲間になったのだった。

 

 

 

 

「……それで、なんだけど…何か食べられるものあるかな?…実はその、かなり今空腹で…」

「あ、カロリーなメイトならあるよ?」

「あ、ありがとう……もしかしてこれ、携帯してるのかい?」

「うん。前に書庫で本を読む筈が謎の迷宮に転移させられちゃった事があって、その時この系統の食料には助けられたからね」

「そ、そうなんだ…お互いトンデモな経験してるね……」




今回のパロディ解説

・白雪姫
童話白雪姫の事。最早この作品は常識レベルで皆知ってて、創作でも伏せ字にされたりはあんまりされませんが…これも作品なんですから、パロディに該当しますよね?

・ほう、炭酸抜きコーラですか
グラップラー刃牙の登場人物の一人(モブキャラ?)が発した台詞の事。砂糖水でもやっぱり喉乾いてしまいますよね、最も喉潤す為に水分を飲ませてる訳じゃないですが。

・某人見知りアイドル
アイドルマスターシリーズの登場人物の一人、萩原雪歩の事。普段はしっかりしてるけど、時々全然しっかりしてない子…イリゼはそんな感じの女の子(女神)です。

・GN-X
機動戦士ガンダム00シリーズに登場するMSの一つの事。GN-Xだからジンクスというのは中々粋ですね。勿論信次元にGN-Xも擬似太陽炉も存在していたりはしません。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。