超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress   作:シモツキ

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第三十八話 気付いた事、知らなかった事

「わぁぁ…ユニちゃんユニちゃん!このパンケーキふわふわでとっても美味しいよ!」

 

草原から街中に戻り、自由時間という事で解散してから数十分後。わたしとユニ、それにケイブさんはREDさんに連れられてとある個人経営のお店に来ていた。

 

「こっちのミルクレープも濃厚な甘さで美味しいわ。個人経営でこれは凄いわよね…」

「でしょでしょ?ここはアタシのお気に入りのお店なんだ〜」

 

他国と同じ様に教会周辺しかよく知らなかったわたし達と、元からリーンボックスに居て自由時間と言われても特にする事のなかったケイブさん。そんなわたし達をREDさんは誘ってきて…着いていった先にあったのがこのお店。そんなに広くないし、お客さんも殆どいない店舗だったけど……注文した料理は本当に美味しかった。こういうお店の事を隠れ家的、って言うのかな?

 

「私もこのお店は知らなかったわ…貴女はどうやってここを?」

「大分前の旅の最中にね、偶々お腹が空いていた時にここの前を通ったんだ。それで、お店からする匂いに釣られて入ったのが初めてだったかな」

「大分前…って、それも嫁探しですか?」

「うん、自由奔放嫁探しの旅だよ!」

「…ある意味ほんと特殊な旅ですよね、それこそ今のアタシ達の旅にも匹敵する位の…」

 

もうどこから突っ込むべきなのかよく分からない旅の内容に、わたしとユニちゃんは苦笑い。…REDさんの嫁探しって、現在進行形なんだよね…世界を救う旅のついでに嫁も探す女の子なんて、創作業界全体を通して見てもREDさん位なんじゃ……っていうかまさか、今もメインは嫁探しでわたし達への協力はついでだったりはしないよね?……そ、そんな事ないって断言出来ませんよREDさん…!

 

「…ネプギアどしたの?アタシの顔になんかついてる?」

「あ、い、いえ別に……と言いたいところですが、鼻の頭にパフェのクリーム付いてます…」

「え?あ、ほんとだ…」

 

そういうつもりで見ていた訳じゃないけど、運良く誤魔化せそうだったからそれを伝えるわたし。その後これ以上変に思われないよう視線を移して……今度は、ケイブさんと目が合った。

 

「あ……」

「……?」

「え、えっと…け、ケイブさんって大人っぽいですよね。コーヒー持ってる姿もなんだか格好いいです」

 

ケイブさんが頼んでいたのはチーズケーキとコーヒー。コーヒーは勿論、チーズケーキっていうのもわたし達よりちょっと大人な選択……の様な気がする。わたしにとって『大人っぽい女性』といえばで最初に出てくる女神化したお姉ちゃんとはまたちょっと違う感じだけど…こういう大人っぽさも素敵だなぁ…。

 

「…やっぱり、そういう評価になるのね……」

「…そういう評価…?」

「こっちの話よ。それに、私だっていつも飲み物はコーヒーを選んでる訳じゃないわ」

 

そういいながらもコーヒーを口に運ぶケイブさんは、やっぱり飲み慣れてる様な雰囲気があった。……あ、でも紅茶が好きなベールさんも大人っぽいし、コーヒーだけが大人の飲み物って事もないのかな。

 

「…大人、ねぇ…外見や好みだけで判断しようとしてるんじゃ、ネプギアもまだまだ子供ね」

「む…確かにわたしも子供だけどさ、それを言うならユニちゃんだってそうでしょ?」

「えぇそうね。でもアタシはネプギアよりは大人よ?」

「むむ、わたしの方が大人な部分あるもん」

「どうせそれも背丈とかでしょ?いいわよ別に、身体的特徴の一つや二つ上回られたところで悔しくもなんとも……って、どこ見てんのよ!?胸!今胸見てたわね!?」

「え、えぇっ!?み、見てないよ!?」

 

フォークをひらひらさせながら、余裕の態度をしていたユニちゃんだったけど……いきなりキレた。しかもわたしの視線のせいらしい。…い、いや今ぼんやりユニちゃんを見てただけだよ!?その中で偶々胸元に視線がいったのかもしれないけど…普通同性に、服を着た状態で見られて怒る!?

 

「アンタも女なら、女性にとって胸がどれだけ重要な要素なのか分かってるわよね!?それとも何!?嫌がらせなの!?」

「な、なんでそうなるの!?わたしそんなつもりないよ!?ほんとに違うから!」

「くっ、候補生の中で一番発育いいからって調子乗らないでよね!所詮こっちは仮の姿なんだから、女神化すれば……」

「……?」

「…………なんで、なんで萎まなきゃいけないのよ…アタシが一体何をしたって言うのよ…」

「自爆した!?えぇぇ!?な、何その超アクロバティック自爆!?何がしたかったの!?」

「う、うっさい!人は見た目が100パーセント、なんかじゃないのよ!」

「う、うんそうだね…わたしもそう思うよ…」

 

ヤケを起こした様にミルクレープを口に放り込むユニちゃんに、わたしは若干引きながらとにかく首肯する。そしてこの日、わたしは発育の事…特に胸の話題には気を付けようと心に決めた。

そうしてかれこれ数十分。注文した料理は全部食べ終わり、ケイブさんは用事で一旦戻らなきゃいけないという事もあってわたし達はお店を出る。

 

「用事って特命課のお仕事?」

「えぇ。と言っても今からするのは事務関連の仕事だけど」

「あ、特命課にも事務仕事ってあるんですね」

「報告書だとか予算申請だとか、そういうものに過ぎないのだけどね。じゃあ、私は失礼するわ」

「はい、お仕事頑張って下さいね」

 

ケイブさんを見送った後、わたし達もお店の前から移動する。…それにしても、このリーンボックスの落ち着いた感じの街並みはいいなぁ…さっきの話じゃないけど、ここはいるだけでちょっと大人っぽい感じになれそうかも。例えばあそこのお店のテラスなんか……って、あれ…?

 

「……アイエフさん?」

 

視線を向けた先にいたのはなんとアイエフさん。後ろを向いているから顔は見えないけど…髪型と服装は一時間と数十分程前まで一緒にいたアイエフさんと全く同じ。…流石にアイエフさんのコスプレイヤーじゃないよね、流石に。

 

「あ、ほんとだ。アイエフもお茶してたのかな?」

「かもですね。…そういえば、アイエフさんやコンパさんは自由行動の時何してるんだろう…」

「そりゃ……い、言われてみると確かに分からないわね…なんとなくアイエフさんは旅時代の知り合いと会ってたり、コンパさんは特産の調味料仕入れてたりしそうな気はするけど…」

 

お姉ちゃんやイリゼさん達程じゃないけど、私も二人の事はそれなりに知っている……と思っていたけど、こうして考えてみると思い付かない。…わたし、自分で思ってる程二人の事を知らないのかな…っていうか、そういう意味ではイリゼさんも該当するかも…。

 

「……ね、ちょっと後をつけてみない?」

「はぁ?一緒に街を回る、じゃなくて?」

「そうじゃなくて、後をつけてみたいの。ユニちゃんは気にならない?アイエフさんが一人の時何してるか…」

「それは…まぁ、気にはなるけど…」

「そうでしょ?REDさん、勝手な話ですけど…いいですか?」

「もっちろん!っていうか、アタシも気になる!」

「REDさんもですか…じゃ、それでいいわよ。銃器扱ってるお店を見て回るのは別に今じゃなきゃいけない訳でもないし」

 

そういう事で、わたし達はアイエフさんの尾行を開始。といってもわたし達は尾行のイロハなんて知らないから、看板とか電信柱とかに隠れたり(多分身体の一部はみ出てる)、時々思い出した様に忍び足をしてみたりのレトロな追跡スタイルで後を追ってみる。

 

「…な、なんかこういうのドキドキしますね…」

「探偵になった様な気分になるよね。茶色いハンティング帽とコート、それにパイプを用意すればよかったなぁ…」

「そんなガッツリと探偵装備用意してたらアイエフさん見失いますって…っと、お店入ったわね。アタシ達も入る?」

「うーん…折角だから入ってみない?見つかったら戦いになる…って訳じゃないんだから、積極的にいってみようよ」

 

普段わたしは慎重派(お、臆病の間違いじゃありませんよ!?)だけど、偶には大胆に行動してみるのもいいよね。……って、思うのは尾行のドキドキ感に浮ついちゃってるからかな…?

そうして入ったお店の中でもわたし達は細心の注意を払い、無事気付かれずに観察する事が出来た。それに安心しつつも同時にちょっと自信のついたわたし達は、その後もお店の中まで尾行を続け、アイエフさんがお店の中でどんなものを見たりどんな人と話したりさてるのかよく分かったんだけど……同時に、段々と雲行きが怪しくなってくるのを感じ始めた。

 

「やっほ、アイエフ。今回も仕事?」

「えぇそうよ、状況が状況だけに私も忙しくてね…リーンボックスでの仕事が終わったら次はラステイションなのよ」

 

ちょっと怪しげな雑貨屋さんに入ったアイエフさんは、馴染みのある様子の店主さんと会話を交わす。それ自体はなんて事ない、アイエフさんの交友関係の広さを表す光景なんだけど……

 

「……また、嘘吐いてるわね…」

「うん……」

 

不可解そうな声音のユニちゃんにわたしは頷く。ここのお店でも、その前のお店でも、その前に街中であった知り合いとも、アイエフさんは嘘を吐いていた。それも、毎回内容を変えた嘘を。

 

(どういう事…?本当の事を言わないのは、犯罪組織に情報漏洩しない為だと思うけど…アイエフさん、積極的に嘘を口にしてる様な……)

 

アイエフさんは嘘ばっかり言う様な人じゃないし、忘れっぽい人でもない。だからこそ、わたしにはアイエフさんが嘘を吐く理由が分からなかった。人には普段見せない裏の顔があるって言うけど…実はアイエフさんがこんな情報の混乱が起きそうな事をする人だった、なんてそんな訳ないよ。確かにちょっとアイエフさんは捻くれてる感じもあるけど…優しいし真面目でわたし達の事を気にかけてくれる人だもん。わたしの知ってるアイエフさんは、こんな事する人じゃ……って、あれ……?

 

 

──()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……もしかして、偽者…?」

「え……?」

「今いるアイエフさんの事だよ。ここにいるのが本物じゃなくて、偽者だったら?それなら、変な事言ってるのも説明つくでしょ?」

「に、偽者って…そんな都合良くいる訳……あるわね…」

「あるね。教祖の偽者が現れたんだもん、アイエフの偽者が現れてもおかしくないよ!」

 

わたしの考えに、ユニちゃんは理解を示してくれて、REDさんも賛成してくれる。

理由は分からないけれど、もし今いるアイエフさんが偽者ならおかしな行動をしてるのも納得出来る。というよりも、偽者じゃなきゃこんな妙な行動をする訳がない。

 

「…ユニちゃん、ラーの鏡とか持ってない?」

「ある訳ないでしょ…そんなのあったら教会に着いた時点で使ってるっての」

「そ、そっか…でも、疑わしいのは事実でしょ?」

「えぇ、そうなると追って正解だったわね。奴が人気のない場所に行ったところで捕まえるわよ」

「う、うん。…あ、でもその前にこの事連絡した方がいいんじゃ…?」

「今はまだ偽者だって確定した訳じゃないし、偽者だったとしても犯罪組織とは無関係の愉快犯かもしれないでしょ。中途半端な情報を教えるのは避けるべきよ」

「分かった、じゃあ……」

 

わたし達は頷き合って、尾行を続ける。それまでは好奇心に駆られた遊び半分の尾行だったけど、これからはそうはいかない。細心の注意を払って、何かあればすぐに戦える心持ちで追いかけなきゃ…。

 

(こんな事になるなんてついてない…それとも、偶然偽者を発見出来るなんてついてる…?)

 

緊張しながら尾行する事十数分。アイエフさんはぷらぷらと歩いた後…ふと立ち止まって、その数秒後に路地へと入っていった。わたし達が後を追って路地に入ると、更に奥…裏路地へと歩いていく。

 

「裏路地…闇取引でもするのかな…?」

「さ、さぁ…でも裏路地なんて怪しいにも程がありますね。気を引き締めていこう…」

 

足音で気付かれないよう、今度こそ真面目に忍び足をして(REDさんローラースケートなのに忍び足出来てる…)アイエフさんの行った角を曲がる。そして、その先でわたし達が見たものは…………

 

「え……行き止まり…?」

 

作ろうと思って作った訳じゃない裏路地は、途中で行き止まりにぶつかってしまう事もそこそこあるけど…今回の場合は明らかにおかしい。だって……その行き止まりに、偽者らしきアイエフさんは居なかったんだから。

 

「あ、アイエフが消えた!?」

「そ、そんな馬鹿な…でも、行き止まりなんだからどこかに行ける筈ないし…まさか見逃した…?」

「ここまで分かれ道なんてなかったんだから、それはあり得ないよ…けど、アイエフさんがいないのも事実だし…」

「……はっ!まさかあの偽者のアイエフは瞬間移動の能力者で、ここを曲がった後すぐに瞬間移動しちゃったとか──」

 

 

 

 

「…な訳ないでしょ、何してんのよ」

『わぁぁぁぁぁぁっ!?』

 

突然、それも後ろから聞こえたアイエフさんの声にわたし達は跳び上がる。う、後ろに回り込まれた!?

 

「こ、このアタシの背後に回るなんて…ネプギア、REDさん!この偽者、ただの人間じゃないわよ!」

「は?に、偽者?」

「もしかしたら、アイエフさんの力をコピーしてるのかも!それなら後ろに回り込まれたのも納得いくよ!」

「は?は?」

「むむ、アタシの可愛い嫁候補に化けるなんて…でも同じ顔だから戦うのは気が引けるよー!」

「…あー…うん、過程は謎だけどどういう結論に辿り着いてるのかはよく分かったわ…」

 

わたし達が警戒する最中、偽アイエフさんは何やら一人で喋っている。わたし達が何を言ってるんだか分からない、みたいな事言ってるけど…偽者認定されてはいそうです、って認める偽者なんかいないよね…!

 

「ここはぐっと堪えましょうREDさん。大通りに出られたら大変ですし、ここで一気に…」

「待った待った、私は偽者じゃないわよ。正真正銘、本物よ」

「偽者は皆そう言うわよ!」

「えぇぇ……ま、偽者って思ってるならそりゃ信じてもらえないか…だったら、あの時はえーっと…あんた達、私に本人じゃなきゃ分からない質問してみなさい。それで私がきちんと答えられたら、本物の証明になるでしょ?」

「に、偽者のくせにちゃんとした事言ってる…二人共、本人じゃなきゃ分からない質問って思い付く?」

「そうですね……」

 

REDさんに訊かれて、わたしとユニちゃんは顔を見合わせる。誰でも答えられる様なものじゃなくて、しかもわたし達が合ってるかどうかを自信持って判断出来る質問なんて……。

 

「……よく考えたら、ぴったりなのがあった…」

「ぴったりなの?…あぁ、あれね。それならいいんじゃない?」

「だよね。それじゃあ、質問します」

「えぇ、どうぞ」

 

わたしの言葉に首肯した偽者(の疑惑有りの)アイエフさん。

 

「…アイエフさん、貴女の好きなものはなんですか?」

「好きなもの?…また抽象的な質問ね…そんなの一つ二つじゃないし範囲が広過ぎるから、答えようがないわよ?」

「……っ…やっぱり偽者だった…!」

「はぁ!?なんで今ので偽者になるのよ!?確かに質問に適した回答ではなかったけど、これは質問が悪いでしょ!」

「そんな事ありません!だって、アイエフさんなら…アイエフさんなら……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ベール様、って言う筈ですもん!」

「なぁ……ッ!?」

 

普段はクールで大人なアイエフさんだけど、実はベールさんの事が大好きなのはわたしもユニちゃんもよく知ってる事。でも、目の前にいるアイエフさんはそれを答えられなかった。答えられず、ただ顔を真っ赤にして口をぱくぱくさせるだけ。やっぱり、このアイエフさんは……って、うん?……あれ…

 

「……もしかして、本物…?」

「だ…だからそう言ってるでしょ!っていうか、な、何なのよその質問は!」

「だ、だってアイエフさんが言えって…」

「その選択はおかしいでしょって事よ!質問内容もおかしいし、それならそれで好きな人、って言いなさいよね!」

「……好きなもの、じゃ駄目でした?」

「駄目に決まってるでしょ!もの、なんて…ってもしやものって『者』の事!?わ、分かり辛っ!それならそれで漢字表記しなさいよ!」

「め、メタいですアイエフさん…」

 

烈火の如く怒るアイエフさんに、わたしは思わず後退り。……こ、この鋭い突っ込みも、アイエフさんである証明…。

 

「突っ込みで判断されるって、私はどこのアイドル親衛隊長よ!」

「地の文まで!?お、落ち着いて下さいアイエフさ「誰のせいで怒ってると思ってるのよッ!」ですよねっ!ごめんなさいっ!」

 

場を収めよう、とか反省した、とかじゃなく、単純にわたしはビビって頭を下げてしまった。しかもそれに続く様に、ユニちゃんとREDさんもぺこりとアイエフさんへと頭を下げる。わたしは見えないから理由は分からないけど…あ、アイエフさんに凄まれたのかな…。

 

「ったく…人の後をつけるだけでも失礼だってのに、偽者だと思った上辱めてくるなんて…流石に殴ろうかしら…」

「うっ…すいません、勘弁して下さい……」

「勘弁してほしかったら反省する事ね。……で、あんた達は何で私の後をつけて、偽者認定するに至ったのよ?」

「あ、えっと……」

 

最初から尾行がバレたら怒られるかなぁ…とは思っていたけれど、理由自体は別に隠す事でもなかったから包み隠さず答えるわたし。その間アイエフさんは黙って聞いていて……話終わると、一つ頷いて言った。

 

「…それ、尾行せずとも直接訊けばいいじゃない」

「言われてみると、確かに…」

「あのねぇ……ま、気持ちは分かるけどね。尾行って良い意味でドキドキするし」

「分かってもらえてよかったです…それでその、質問が…」

「あぁ、私が行く先々で嘘吐いてた事?」

「はい。アタシ達、それを不審に思った事が偽者認定のきっかけで…」

「そうだったのね。うーん…ま、見られちゃったし仕方ないわよね。…あれは噂を作ってたのよ」

『噂?』

 

わたし達三人は、噂を作ってた…という回答に揃って首を傾げる。それって…ど、どういう事?

 

「私達が陸路で旅をしてる理由は知ってるわよね?」

「えと、犯罪組織に気取られない為…でしたよね?」

「そうよ。でも考えてみて、私達は各国でシェア回復に努めてるのよ?目立つ行動をしてる…というか、シェア回復と旅の事を知ってもらう為に自ら目立ってるのに、気取られないも何もあると思う?」

「…そっか、陸路で移動しててもアタシ達の事はバレバレになっちゃうね」

「だから、嘘情報の噂を作ってたのよ。世間話をする体なら変に思われないし、色んな場所で話していればそのうち犯罪組織員の耳にも届くでしょ?それで犯罪組織が私達の動向を察知出来なくなれば御の字だし、嘘情報の通りに動いた時には私達は別の場所…って寸法よ。……あ、因みに話してた相手には後々嘘だったって伝えるわよ?」

 

その言葉を聞いて、わたし達はやっと納得がいった。アイエフさんが嘘を吐いていたのは本当だったけど、その対象は話してる相手じゃなくてその場にいる不特定多数の人だったなんて…でも、それってつまり……

 

「……じゃあ、アイエフさんは…わたし達が遊んでる間も仕事をしてた、って事ですか…?」

「…まぁ、そうなるわね」

「それって、イリゼさんやコンパさんもなんですか?」

「そうね。私と同じ事してる訳じゃないけど…役目があるって意味じゃ同じよ」

「…すいません、わたし達そんな事も知らずに遊んでて…」

「あー…知らないのは仕方ないわよ、言ってなかったんだもの」

 

知らぬ間に頑張ってくれていた、と分かったわたし達は意気消沈。アイエフさんはフォローしてくれるけど、ならいっか…と思える程わたしは単純じゃない。

 

「…教えてもらえなかったのは、アタシ達が実力不足だからですか?」

「違う違う。貴女達は戦闘でメインになるし、女神としてのプレッシャーもあるだろうから休みの時はゆっくり休んでほしいって私達が思ったのよ。イリゼはまぁ…立場が特殊だから別として。それに……やるにしたって、二人は自国以外に世間話の出来る知り合いはそんなにいないでしょ?」

「だったら、アタシは?アタシはなんで?」

「REDも理由は色々あるけど…敢えて言うなら、上手く嘘を吐けそうにないからよ。同じ理由でコンパも噂作りとは別の役目を担当してるから、気にする事はないわ」

「でも……」

「私達がそれでいいと思ってやってるんだからいいのよ。…私達にはシェア回復のメインも、強力な敵とのメインも、大局を動かす事も出来ない。それを私達の代わりに、貴女達女神二人はやってくれてるんだから、お互い様よ。私は自分には出来ない事を貴女達に任せてるんだから、その代わりにこういう事は任せなさい。…仲間なんだから」

 

そう言ってアイエフさんは、ぽふり…とわたしとユニちゃんの頭に手を置いてくれた。それを受けて、わたしは少し心が軽くなった様に感じる。…仲間なんだから、か……それは分かってた筈なのに、わたしもアイエフさんや皆さんを仲間だと思ってたのに、自分が『任せる』って考えに至れてなかったんだ……仲間って、難しいな…。

 

「…二人共、分かってくれた?」

「……無理してる訳じゃ、ないんですよね…?」

「当たり前よ。っていうか、私としては知り合いに会いに行くついでに役目もこなしてるって感じなんだから、無理も何もないわ。…それよりは、負い目を感じられる事の方が辛いわね」

「……っ…で、ですよね…あの!だったら…これからもわたし達、やれる事を頑張りますので…こういう事は宜しくお願いします!」

「えぇ、お願いされたわ。…じゃ、そろそろ出るとしましょ。こんな裏路地にいたってつまらないもの」

「はーい……って待って!アタシは頭にぽふっ、ってやってくれないの!?」

「あんたは大人なんだから我慢しなさい。それとも何?歳下扱いされたいの?」

「むー…アイエフの意地悪っ!」

「はいはい、ほら早く行くわよ」

 

こうして、今日わたし達はアイエフさんが何をしているかを知った。アイエフさん曰くイリゼさんやコンパさんもそれぞれ何かしてるらしいし、やっぱりその間わたし達は遊んでたり趣味に興じてたりしてたって事になるけど…わたしは、それは気にしないでおこうって決めた。だって、それは皆さんの好意だから。好意を無下にするなんてしたくないし、無理を言って同じ事をしようとしたってあの時みたいに足手まといになっちゃうんだから、出来ない事や必要ない事は我が儘を言ってやるよりも……わたしにしか出来ない事、皆さんに任されてる事を頑張る方がずっといい筈だもんね。




今回のパロディ解説

・人は見た目が100パーセント
漫画及びそのメディアミックス作品のタイトル、人は見た目が100パーセントの事。こう言いつつも、ユニはどう見ても美少女ですよね。胸だって別に貧乳ではないですし。

・ラーの鏡
ドラゴンクエストシリーズに登場するアイテムの一つの事。…そう言えば、化けてる訳ではない原作各作品の偽女神にこれ使ったらどうなるのでしょう?

・アイドル親衛隊長
銀魂のメインキャラ、志村新八の事。一応この台詞の直前の突っ込みで判断…というのと合わせれば、パロディとして成り立つと思います。…成り立ちますよね?

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