超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress   作:シモツキ

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第三十七話 各々の関わり合い

強力なモンスターは、基本的に草原の真っ只中を根城にしてはいない。一口に強力と言っても身体能力が高い、厄介な能力を持っている、配下の群れの規模が凄い…って感じに色々あるけど、何れにせよ強力なモンスターはダンジョン…それも森や洞窟の奥を縄張りの中心にしている事が多い。その理由は諸説あるけど、少なくとも理由なく強力なモンスターが草原や雪原に現れたりはしない訳で、それは逆に言えば強力なモンスターがそういう所にいる時はそこに何か特殊な理由があるんだと言える。例えば、そのモンスターは何者かによってそこに現れるよう仕向けられた…とか、ね。

 

「いました!偽チカさんが言っていたのは、あのモンスターですよね?」

「恐らくそうね、アタシ達に退治してほしい…って言っていたのは」

 

リーンボックス教会に到着してから数時間後。チカさんに疑惑を抱き、イヴォワールさんから彼女が偽物だと聞いた私達は、偽チカさんに頼まれた通りモンスター討伐に出向いていた。

 

「こいつは…確かここら辺に生息するモンスターじゃなかったわね」

「って事は、やっぱりエネミーディスクで呼び出されたモンスターです?」

「断定は出来ないけど、その可能性は高いだろうね」

 

私達が発見したのは、なんとなく鯨っぽい魚類風(鯨は哺乳類なんだっけ?)大型モンスター。見た目魚類だからって水辺にしか生息していない…って事はないけど、アイエフの言う通りこの草原には本来生息していない筈のモンスターがいるんだから、偽物なのはチカさんだけじゃなくこの依頼も…って事になってくる。……まあ、端からこの依頼はあの場で考えたものだろうと思ってたけど。

 

「さ、それじゃあ見つけた事だしさっさと倒しちゃおうよ」

「だね。あんまりゆっくりしてると後の予定が詰まっちゃうし」

 

それぞれ武器を抜き放ち、歩いてモンスターの背後へ。特に作戦会議をしたりはしない。……と、いうよりその必要はない。

 

「…そういえば、あの偽者は嘘ばっかり言ってた訳になるけど…このモンスター関連については真実も語ってたわね」

「それって大した事ない〜…の部分?そーだよね?」

「あぁ…確かにそうですね。確かにアタシ達なら……」

 

外敵の接近に気付いた様に振り向くモンスター。確かにこの類いのモンスターは強いか弱いかで言えば断然強いし、ギルドや軍にとっては面倒な依頼になるんだろうけど…………

 

「──楽勝、ですね!」

 

ユニの放った自信満々な言葉通り、私達の敵ではなかった。嘘だと見抜かれない為に用意したのか、それとも油断させて私達を倒そうと思っていたのかは知らないけど……私達を倒そうってなら、あまりにも戦力不足過ぎたね。

 

 

 

 

「さてと、そろそろかな」

 

先手を取り、そこから出し惜しみ無しの(と言っても女神化だったり魔法使ったりはしなかったけど)猛攻でモンスターを沈めた私達は木陰で人を待っていた。

 

「いやはや、お待たせしてしまいましたかな?」

「あ、噂をすれば…ですね。皆さん、イヴォワールさんが来ましたよ」

 

真っ先に気付いたネプギアが、私達にここで会う約束をしていた人物…イヴォワールさんの到着を教えてくれた。

何故ここで私達とイヴォワールさんが待ち合わせをしていたのか。それは、偽物についての話を私達が聞く為。最初は教会で聞くつもりの私達だったけど…万が一偽チカさんに聞かれてしまったらそれまでしていた気付いていないフリが全て無駄になってしまう、という事で教会から離れたこの場所で聞く事としたのだった。

 

「わ、お爺ちゃん歩いて来たの?」

「お、お爺ちゃん…?…いやまぁ、私ももう随分と歳をとりましたが…」

「ああ見えてこの人元気なのよ?それに無駄に多彩で……って、ん?」

 

チカさんと同様にイヴォワールさんとも初対面で何も知らないREDに対し、アイエフが教えようとしたけど……そこでアイエフが…ではなく私達全員が頭に疑問符を浮かべた。と、いうのも……

 

((…隣にいる女性はどちら様……?))

 

イヴォワールさんの隣には、赤い髪を短いツインテールにしている、深い緑の瞳を持った女性の姿が。……ま、まさか…年の差カップル!?…ってそんな訳ないよね、うん。

 

「あぁ…まずは、彼女の説明ですな。彼女は暫く前に設立した教会の新部署、リーンボックス特命課の一員なのです」

「特命係、です?」

「わ、わ!なんか格好いいね特命係!」

「それだとどこかの二人組になってしまうわ…特命係じゃなくて特命課、そして私はケイブよ」

 

天然ボケをかましたコンパとREDに対し、クールに突っ込んだ女性…もといケイブさん。…にしても特命課、ね…リーンボックスでやる事が済んだら、少し調べておこうかな。

 

「宜しくお願いしますね、ケイブさん。…それで、彼女は何故ここに?」

「私は教会でそこそこの立場故、偽者からのマークは無視出来ませんのです。ですので、今後はケイブに皆様の手助けをしてもらおうと思い、連れてきたのです」

「じゃあ、ケイブさんはこれからわたし達に同行してくれるんですか?」

「そういう事よ。女神様程じゃないけど私も戦えるから、少しは期待しておいて」

「可愛い女の子なら戦えなくても大歓迎だよっ!」

「か、可愛い女の子?……まさか私よりずっとその言葉が似合いそうな人にそんな事言われるとは…」

 

REDのハーレム精神は相手が大人っぽい女性でも関係ないらしく(会話の流れ次第でミナさんにもこういう事言ってたんだろうなぁ…)、いつもの調子で口説いて(?)いく。そんな様子に私達とイヴォワールさんは苦笑い、初対面のケイブさんは困った様な顔をしていたけど……なんだろう、今のケイブさんの声にはそれ以外の感情もあった様な気がする…。

 

「RED、話が進まなくなるからそういう発言は後にして頂戴。今は色々聞かなきゃいけないんだから」

「では、本題に入るとしましょう。先程も言いましたが、今教会にいるチカは偽者…それも恐らく犯罪組織の者でしょうな。根拠云々以前に、このご時世にこんな事をするのは犯罪組織位しかありませぬ」

「ですね…いつから偽者に?」

「然程昔ではありませんな。プラネテューヌから皆様が旅に出た事を聞いた時点では間違いなく本物でしたから、すり替わったのはそれ以降かと」

 

私達が旅に出た以降となると、すり替わったのは割と最近という事になる。あの偽チカさんは違和感だらけだし、そうなると教会の職員さんの大半が偽者だって分かってる事になるかな。……考えてみるとそれはかなりカオスな状態だけど…。

 

「それじゃあ、本物のチカさんはどうなってるです?居場所は分かっているんですか?」

「今のところは不明…というのが正直な話。とはいえ全く情報無しという訳でもありませぬぞ」

「だったら、その情報を教えて下さい!わたし達も協力します!」

 

イヴォワールさんが髭を撫でつけながらそう言うと、即座にネプギアは協力を申し出た。私達もその言葉には同意で、こくりと頷いて皆でイヴォワールさんを見たけど……イヴォワールさんは、ゆっくりと首を横に振った。

 

「その申し出には感謝致します。…が、協力は少し待ってもらえませぬかな?」

「ま、待つですか?…わたし達はそれで何か困る訳じゃないですけど…いいんですか?偽者がいるって事は、本物のチカさんは犯罪組織に捕まってるかもしれないんですよ?チカさんの為にも早く助けるべきなんじゃ…」

「チカの為だからこそ、なのです。チカの性格からすれば、ただ助けられるのは大きな負い目を感じてしまうのはほぼ確実。故に私は、少なくとも偽者の目的を暴くまでは助けるべきではないと思っておるのです」

「でも、その間にもし何かあったら…」

「病弱とはいえチカは箱崎本家の人間。教祖となるべく育てられた者は、そう柔ではありませんぞ」

 

チカさんなら大丈夫だという意図の言葉を言い切ったイヴォワールさん。親戚であり私達よりもずっとチカさんの人となりを知っているイヴォワールさんにそう言われてしまえば、私達は不安はあってもそうなのかもしれないと思わざるを得ない。確かに教祖という激務をこなせる人が柔だとは思わないし、立場的にも人質として十分使えるだろうから雑な扱いもされてはいないと思うけど…。

ただ、そうなると気になってくるのは「偽者の目的を暴くまでは」という言葉。という事は、つまり……

 

「まだ目的は判明してない、と?」

「えぇ。演技は雑にも程があるのですが、なかなかどうして彼女は尻尾を出してくれないのです」

「…あの、尻尾も何も本物とすり替わって潜入するなんて、目的は情報を盗み出す事に決まってません?」

「いや、確かに普通ならそうだけど…今回の場合は違うと思うわよ?」

 

一問一答の最中、ずっと気になっていたと言いたげな様子でユニは意見を述べたけど…それに異を唱えたのはアイエフ。続いてアイエフは私に視線を送ってきたから、それに私は頷いて反論への同意を示す。

 

「…違うんですか?」

「セオリー…って訳じゃないけど、素早く必要な情報だけを確実に盗み出すっていうのがスパイ行為の定石だもの。特に成りすましなんてスパイだってバレやすいんだから、何日も留まってる時点でその線は消えるわ」

「いやでも、バレない事に味を占めて…実際はバレバレですけど…情報を引き出し続けようとか、そもそも長期的に潜入するつもりだったとかの可能性もあるのでは?」

「さっきも言ったけど、スパイは利益より確実性を重視するべきなんだから、それはないと思うわよ。後者についても…そうね、確かに無くはないけどそのつもりならスパイよりも職員の買収や脅迫で寝返らせる方が安定するし、あんなバレバレの奴を長期的にスパイさせておくのは現実的じゃないと思うわ」

「そうですか……アタシもまだまだ無知ですね、アイエフさんありがとうございます」

「ま、仕事柄そっち方面は自然と詳しくなるからね。…油断してるとラステイションの機密情報、プラネテューヌに筒抜けになるわよ?」

「わ、笑えない冗談は止めて下さい…」

 

口角を少し上げ、腕を組みながら中々に際どいジョークを口にするアイエフにユニはタジタジ。……因みに、この話にはここにいる面子の約半数程が着いていけてなかった。私も特務監査官になってなかったら着いていけなかったかも…。

 

「こほん。アイエフさんの言う通り、恐らく偽者は単なるスパイではないのでしょうな。それ故に警戒はしつつも敢えて泳がせ、上手く奴を起点に犯罪組織へと打撃を与える事を画策中…というのが今の我々の状況ですぞ」

「…分かりました。そういう事ならば、一先ず私達は私達の目的を進めようと思います。…皆、それでいいよね?」

「アタシはいいと思います。チカさんの事は心配ですが…来たばかりのアタシ達がちょっとどうこうするだけで何とかなるならもう教会が解決してる筈ですしね」

「わたしはやっぱり心配ですけど…時が来たら、ちゃんと助けるんですよね?」

「勿論です。…その時は、パープルシスター様達も手助けして頂けますかな?」

「当たり前です。その時は任せて下さい!」

 

ネプギアが胸を軽く叩きながら断言した事で、私達の密談は終了した。今後教会はこれまで通り目を光らせ、私達は治安維持や女神の信仰の回復を行いつつ、リーンボックスでの犯罪組織の動向を調べるという事で決まり、イヴォワールさんは教会へと戻っていく。

 

「…それで、貴女達はこれからどうするの?」

「あ、はい。えっと、これまでは教祖さんと同じ女神候補生に協力を申し出ていたんですけど…」

「教祖は本物が不在、女神候補生はそもそも存在しないから予定が無くなった…と?」

「…ですよね?」

 

くるり、と振り返ったネプギアに私は首肯。…ネプギア、今回は言われるまでもなく申し出を担当するつもりだったんだ…候補生はほんと成長が早いなぁ…。

 

「それじゃあ、今日はどうするの?パトロール?」

「ううん、今回も到着初日って事で休みにしようかなと思ってる。ケイブさんは私達にやっておいてほしい事…とかあります?」

「特にはないわ。それと、立場的には貴女の方が上なのだから敬語は不要よ。…といいつつ私も貴女に敬語を使っていないのだけど…」

「そう?じゃあそうさせてもらうね、ケイブ」

 

無理に予定を作る事もない…と意見が一致した事で、今日の残り時間は自由行動で決定。とはいえこんな草原にいたってやれる事なんて殆どないから私達は皆で街に戻り、改めて解散する。恐らくネプギアとユニ、REDは街巡り、ケイブは教会に帰還かネプギア達に同行、コンパとアイエフは目的を持って散策…ってところかな。私もどっかで軽く息抜きをした後、目的を果たしにいかないと……。

 

 

 

 

色んな意味で子供っぽさが拭いきれないビーシャ、普通っぽいけど何か違和感のあるケーシャ、大人っぽいけどその割に態度の軽いシーシャ。黄金の第三勢力(ゴールドサァド)のメンバーは皆ちょっと変わってて、良くも悪くも責任のある立場らしくない。……けれど、リーンボックスのギルド支部長…もう一人の黄金の第三勢力(ゴールドサァド)は、変わってるという意味では同じでも…そのベクトルは、三人とは明らかに違う様な気がする。

 

「失礼するよ、エスーシャ」

 

ギルド職員の案内を受け、支部長室へと入る私。皆と別れ、多少ながら寄り道をした後リーンボックスのギルドへと訪れた私は、それまでの例に漏れず支部長への面会を行おうとしていた。理由は…もう大分前に語ってるしいいよね。

 

「イリゼか…リーンボックスにはいつ来たんだ?」

「ここ周辺についたのは今日だよ。ギルドへは着いたその足で…って訳じゃないけど」

 

支部長へ入ると、支部長…エスーシャは、椅子に深く腰掛け透明な液体の入ったワイングラスを手に携えていた。そんなそこはかとなく品性っぽいものを感じるエスーシャだけど……あの液体、まさかただの水じゃないよね…?

 

「そうか。まあ、わたしには関係ないね」

「そんな事はないよ。…頼み事があるんだけど、いいかな?」

「興味ないね」

「えぇー……」

 

眉一つ動かさず言い放った、『興味ないね』の一言。…これが、エスーシャの口癖であり自身の態度を如実に表す言葉。ちょっと洒落た言い方をすればキラーフレーズというやつ。……分かる?今から私はこういうキャラの人と話さなきゃいけないんだよ…?悪意的な人間じゃない事は分かってるけど、それでもこんな癖のある人と話す私の心境、お分かり頂けます…?

 

「そんな事言わずに聞いてよ。別に聞いた以上同意以外は認めない!…なんて事は言わないからさ」

「それでも興味ないね」

「酷い…シンプルに酷い……」

「…………」

「…………」

「……何故話さない?」

「…へ……?」

「興味はない。…が、聞かないとも言っていないんだ。聞かせたいなら話せばいいじゃないか」

「あ、あーそういう事ね……うわ面倒臭っ!一応聞いてくれる意思あるにも関わらずだったとしたら尚更厄介だよ!?」

「…よくそれを本人の前で言えるな……」

「あ……こ、こほん…」

 

まさかの取りつく島はあったという展開に、ついエスーシャの事を気にせず突っ込んでしまった。すると興味無さげなエスーシャも目の前で悪口言われたからか、若干だけど眉間にシワを寄せる…という外見で分かる感情の変化を見せてきた。…でもうん、これに関しては私悪くないよね。エスーシャの性格と態度に非があるよね。私は悪くないもん。

…というやり取りを経て、リーンボックスでの協力を求めた私。ラステイションやルウィーの時と同様先に話が通っていたおかげで説明はすんなりと終わり、後はエスーシャの返答を待つだけになった。

 

「…って、事なんだけど…お願い、出来るかな…?」

「…………」

 

時には世界を滅ぼさんとする敵と戦い、時には多数の人の前で立ち振る舞う事もある私にとって、緊張はもう慣れっこだったけど……今回はちょっとそうもいかなかった。…いやだって、興味ないねって早々に言われたんだもん。最初から取り合う気なさそうな人相手にお願いしてるんだもん、緊張感から軽く不安を感じる事だってあるよ…。

そうして待つ事数秒。私の言葉を聞いたエスーシャはグラスを執務用の机に置いて…こくり、と頷いた。

 

「…分かった。君達に有益なクエストが出てくるかどうかは運任せだが…もしあれば、その時は優先的に回す事を約束するよ」

「…いいの?」

「いいからそう言ったんだ。それに、わたしにも目的がある」

「目的…?」

「君に話す様な事じゃない。けれど、その目的の為には現状が快くなく、だからわたしは現状打破に動く君達に協力する…そういう事さ」

「そ、そう…でもそれなら助かるよ。ありがとねエスーシャ」

 

エスーシャが一体何を目的にしているのかはまるで分からないけど…それを話すかどうかは本人次第で、話してくれなかったからって文句を言う筋合いはない。そもそも私のお願いは聞き入れてくれたんだから、それでいいよね。

 

「…じゃ、私の用事はもう済んだけど…雑談なんかに興味は?」

「ないね」

「だと思った…なら私は帰るよ。それじゃあまた────」

「エスーシャ!見る価値はありそうな書物を見つけたよ!」

「へっ……?」

 

案の定無駄なお喋りをする気は無しのエスーシャに私は帰る事を告げ、出入り口に向かった……んだけど、私が扉に手をかける直前に扉は開かれた。そして、開かれた扉から部屋に入ってきたのは……

 

「……す、スライヌ…?」

 

首から下はスーツを身に付けた、服の上からでも分かる位に体格の良い男性。でも、首から上は…………スライヌだった。顔がスライヌ、というより首から上にスライヌが乗っかっていた。

 

…………。

 

…………。

 

……?

 

「おや?お客さんがいたのかい?」

「ご覧の通りだ。ノック位はしてくれないかヌマン」

「そうよヌマン。貴方が突然目の前に現れたせいで、この子目が点になっちゃってるじゃない」

「へっ……?…も、もう一人…?」

 

ちょっと…いや大分訳の分からない存在に私が固まっていたら…その人(?)の後ろからもう一人(もう一匹?)現れた。しかも今度は女性。……って言っても、首から上は最初の人と殆ど変わらないけど…。

 

「…あら?この子、見た事あると思ったらもう一人の女神ちゃんじゃない。ふふっ、私はスライヌレディよ、宜しくね」

「そしてオイラはスライヌマン!趣味は筋トレさ!」

「あ、は、はい。私はイリゼです、宜しくお願いします。……っていやいや、いやいやいやいや…え、エスーシャ…このペコポン人スーツを着たケロン人みたいな二人は何…?」

 

全然理解が追いついていないところで自己紹介をされた私は、動揺し過ぎて逆にシンプルな返答をしてしまった。…こ、この人達はなんなの!?モンスターなの!?スライヌなの!?

 

「彼はヌマン、彼女はレディさ」

「な、名前じゃないよ!名前はもう聞いたよ!…何者なの…?」

「あぁ…気にしなくていい、二人共人間だ」

「人間なの!?……そ、そうなんですか…?」

「あぁそうさ。オイラもレディもれっきとした人間ヌラ」

「この格好は…まあ、個性と思って頂戴」

(こ、個性!?気にしなくていい!?語尾にヌラ!?……ここはアウターゾーンか何かなの!?)

 

意味が分からず説明を求めた結果…余計意味が分からなくなってしまった。女神も十分に特異な存在だとは思うけど……なんかもう、目の前の光景はそれとは段違いな気がする。そんな二人と冷静に接してるエスーシャも含め、本当に訳が分からなかった。

 

「……それにしても、君は…」

「な、なんですか…?」

「……!イリゼ、君とは仲良くなれそうだよ!あぁそうさ、オイラの腹直筋もそう言っている!」

「は、はい!?」

「だからヌマン、イリゼちゃんが驚いちゃってるでしょ?…でもそうね、確かに彼女とは仲良くなれそうな気がするわ」

「ひゃい!?な、何故に!?何故にですか!?」

 

にこにことそんな事を言ってくれる二人だけど……今の私には混乱しか感じられない。普段なら、誰かと仲良くなれるのは私にとってほんとに嬉しい事だけど……

 

(流石にこんな妙ちきりんな二人と説明も無しに仲良くなるのは怖いよ!どうして仲良くなれそうなのか全く分からないよ!そしてどうして腹直筋は出てきたの!?ねぇ!?……って、あれ……?)

 

…………。

……もしや…。

 

「…私、ライヌちゃんってスライヌを飼ってるんですけど…もしかして、それですか…?」

「あ、そうだったのね。それは知らなかったけど…それなら貴女から仲良くなれそうな雰囲気を感じるのも合点がいくわ」

「ライヌ、か…ふっ、いい名前だヌラ!」

「あ、あぁやっぱりですか……って、知らなかったの!?知らずに言ってたんですか!?」

「……イリゼ、二人は別に悪人じゃない。もし君にその気があるなら、仲良くすればいいさ」

「あ、うん……じゃないよ!?このタイミングで締めになりそうな事言う!?天然か!」

 

……やっぱり、訳が分からなかった。理解をしようとすればする程疑問が増えてしまった。…こんなに早く私の精神的キャパシティが削られるのは久し振りだよ……。

 

 

 

 

…という事で、新たに知り合いが三人増えた私だった。




今回のパロディ解説

・特命係
ドラマ相棒シリーズに登場する、警察内の組織の一つの事。現実にはドラマ内で出てくる様な特命係というものはないらしいですね。…まあ架空感満載の部署ですが。

・ペコポン人スーツ、ケロン人
ケロロ軍曹シリーズに登場するアイテム及び人種(?)の事。原作と違い、ある理由でスーツを着てるヌマンとレディの見た目はこんな感じかな…と私は思っております。

・アウターゾーン
漫画アウターゾーン内に登場する世界の事。原作ではいつの間にかモンスタータイプの人種というのが出てきましたが…普通なら今回のイリゼみたいな反応になるでしょう。

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