超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress   作:シモツキ

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第三十四話 候補生の約束

施設制圧作戦から数日後。その直前にやっとロムちゃんラムちゃんと仲良くなれたわたし達は、ラステイションでの時みたいに一緒に活動をした。…その間ラムちゃんは事ある毎にわたしに対抗心を燃やしてきたり、わたしより目立とうとしてきたけど…一緒に行動してくれてるだけでも最初よりはずっと前進してるよね。

そんな数日の内の、ある夜。わたしは、趣味の時間を堪能していた。

 

「〜〜♪」

 

右手に持っているのは、プラスのドライバー。左手に持ってるのは、ルウィーの最新型携帯端末。はい、わたしは今…絶賛機械弄り中です!

 

「へぇ、ここはこういう構造になってるんだ。この配置は渋くて素敵かも…」

 

取り外しの順番をしっかりと覚えて、ややこしい部分は自分の携帯で撮ったりメモ書きしたりして分解を進めるわたし。こうやって過程を記録するのも楽しいんだよね♪

…因みに、今わたしが手にしている端末は、ルウィーの教会経由で購入した物。ミナさんはタダでくれるって言ったけど…わたしが個人的に欲しい物を経費で買うみたいな事はしたくないもん。

 

「ルウィーの物は魔法技術も使われてると思ったけど…わたしの思い違いだったんだ。ふふっ、またわたし一つ賢くなっちゃった…なんてね」

 

テーブルに並べた分解済みのパーツを見ているだけで楽しくなる。改造プランを考えるだけで、改良した後の性能を想像するだけでわくわくしてきて止まらなくなる。これこそ正にやめられない、止まらない。あーもう、やっぱり機械弄りは最高だよっ!

そんなこんなで数十分。分解作業がひと段落ついて、今度は分解の最中に描いた、頭の中の設計図を元に持ち合わせのパーツを使って改造を……と思ったところで、わたしの借りてる部屋の扉がノックされた。

 

「はいはーい。どちら様ですか?」

 

丁度キリのいいところで来てくれた事にちょっとだけ感謝しつつ、わたしは工具を置いて扉を開けに行く。すると開いた先にいたのは…ロムちゃんとラムちゃんだった。

 

「えっと…こんばんは、ネプギアちゃん…」

「ロムちゃんがわざわざあそびに来てくれたのよ、ありがたがりなさい!」

 

日中にも会った(というか一緒にクエストをしてた)のに、ご丁寧に挨拶をしてくれるロムちゃんと、なんかちょっとお嬢様キャラの取り巻きの一人みたいな台詞を言っているラムちゃん。…二人もキャラブレないよね……。

 

「こんばんは、二人共。それで、わたしに用事?」

「だから、ロムちゃんはあそびに来てやったの。わたしのことば聞いてた?」

「あ、そっか…じゃあ、ラムちゃんは遊んでくれないの?」

「わたし?わたしはロムちゃんのつきそいだもの。…けどまぁ、ネプギアがあそんでほしいならいっしょにあそんであげるけど?」

 

さも普通みたいな感じでかなり偉そうな事を言ってくるラムちゃん。…まだまだわたしがラムちゃんに友達として認められるのは先みたいだなぁ……。

 

「あはは…じゃあ、何して遊ぼっか?」

「んと…ネプギアちゃんはなにしてたの…?」

「わたし?わたしは機械弄りだよ」

「きかい…」

「いじり?」

 

やっていた事をそのまま口にすると、きょとん、とロムちゃんは右に、ラムちゃんは左に首を傾けて不思議そうな声を上げる。しかも丁度左ロムちゃん右ラムちゃんという立ち位置で立っていたから、まるで二人は線対称。……か、可愛い…。

 

「……?ネプギアちゃん…?」

「…あ……こほん。機械弄りはわたしの趣味なの。ほらこれ、ルウィーの携帯端末…って言っても、今はその影も形もないけど…」

「…こわれてる…?(ばらばら)」

「ううん、壊れてバラバラになったんじゃなくて自分で分解したんだ」

「ぶんかいした?…え、じゃあまさかこの中にこれだけ入ってたの!?」

 

携帯端末のカバーとフロントガラスを渡すと、二人はテーブルに並べたパーツとそれとを見比べて目を丸くする。うんうん分かるよ。わたしも機械弄り始めたばかりの頃は同じ様に驚いたもん。

 

「こんなに入ってたんだ…ロムちゃんは知ってた?」

「ううん、知らなかった……もしかして、ゲームもこんなかんじなの…?」

「そうだね。据え置き…テレビに繋いでやるゲームはまたちょっと違うけど、持ち運べるゲームはそこそこ似てるかな」

「これはたしかにすごいけど…これしてて楽しいの?」

「勿論!楽しいだけじゃなくて、ドキドキワクワクだよっ!だって、機械には夢とロマンがあるもん!」

「そ、そう……」

 

ラムちゃんが興味を示してくれたと思ったわたしは、熱のある返答を……したけど若干引かれてしまった。…ま、まだちょっと二人に魅力を語るのは早かったかな……。

そこから暫く見慣れない部品を物珍しそうに持ったりひっくり返したりするロムちゃんとラムちゃんを見守るわたし。部品の並びが崩れちゃったけど…まあいっか。

 

「ほぇぇ…なんか、すごいもの見たきぶん…」

「魔導具は本とか杖とかふくざつじゃないものでつくってるけど、ケータイとかも出来るのかしら…」

「…魔導具?魔導具って…魔法の杖とか?」

「そーよ?ネプギア知らないの?」

 

二人の言葉の中に出てきた『魔導具』というワードにわたしが反応すると、ラムちゃんは少し驚いた様な返答をしてくる。

 

「知らないっていうか…身近にないっていうか…」

「あ……ラムちゃん、前にミナちゃんがルウィーの外じゃあんまり魔法がつかわれてない、って言ってた…」

「そういえばそうだった…わたしたちは持ってるし、いっぱい見たことあるのにね」

「ネプギアちゃんは、魔導具…気になる…?」

「うん。殆ど見た事ないし、気になるかな」

「そっか…じゃあ、待ってて」

「あ…ちょっ、ロムちゃん?ロムちゃーん?……お、おいてかれたわけじゃないんだからね!」

 

わたしが素直に返すと、ロムちゃんはその後すぐたたっと軽快に部屋を出ていってしまった。その結果、ラムちゃんは一人(一応わたしもいるけど)部屋に残される形になって、ロムちゃんの後を慌てて追いかけていく。……い、言ってないどころか思ってもいないのに怒られた…。

そうして待つ事数分。邪魔になるかなと思って工具と分解した携帯端末を片付けていると、再び部屋の扉がノックされる。

 

「……?戻ってくるの分かってるんだからノックしなくてもいいのに…お帰り、ロムちゃんラムちゃん」

「……はぁ?」

「へっ……?」

 

出ていった二人かなと思って声をかけたわたしだったけど……返ってきたのは『何言ってんの?』的ニュアンスが含まれた「はぁ?」という言葉。……はい、人違いです。ロムちゃんラムちゃんじゃなくてユニちゃんでした。

 

「なんでアタシをロムラムと間違えてるのよ…」

「ご、ごめんね。さっきまで二人がいたからつい…」

「ふーん…」

「わたしも再度ノックするのは変だなぁと思ったんだけどね…それで、ユニちゃんはどうしたの?」

「ちょっとね。教会から出て十分位の所にジャンク屋あるの知ってる?」

「え?…ううん、知らないけど…あったの?」

 

ルウィーでもジャンク屋はそこそこ見つけたけど(やっぱりプラネテューヌやラステイションよりは少なかった)、ユニちゃんの言う距離のジャンク屋には覚えがない。そう思ってそのまま返すと…ユニちゃんはやっぱりね、みたいな表情を浮かべた。

 

「まあね、ちらっと覗いてみたけど結構穴場っぽい雰囲気だったわよ。もし時間があったら今度行ってみたらどう?」

「そっか、それじゃあ行ってみようかな。ありがとね、ユニちゃん」

「えぇ。…………」

「…………」

「…………」

「……?」

 

わたしにとっての耳寄り情報を持ってきてくれたユニちゃん。その優しさにわたしは感謝の言葉を告げて、ユニちゃんがそれに頷いてくれて……そこで会話終了。…え、えーと…。

 

(お、おかしいな…なんで会話終わってるんだろう?いや確かに『このジャンク店知ってる?』ってやり取りは済んだけども……って、あれ…?もしかして……)

 

さっさと終わってしまった会話に戸惑うわたしだったけど……一つ思い付く。もしわたしの思い付いた通りなら、こうしてさっさと終わってしまうのも分かるし、ある意味それはとてもシンプルな理由。そう……

 

「……ユニちゃんは、わざわざそれを教える為だけに来てくれたの?」

「えっ……あ、いや、それは…」

「こんな事パーティーで動く時とか偶々鉢合わせた時とかにでも言えばいいのに、それだけで来てくれたの?」

「うっ……そ、そうよ!悪い!?」

「ううん全然、むしろ嬉しいよ?だって、わざわざ時間割いてくれたんでしょ?だったらただ教えてくれるよりずっと嬉しいもん。ほんとにありがとね、ユニちゃん」

「……ど、どう致しまして…」

 

どういう訳か怒ったユニちゃん。対してわたしはユニちゃんの優しさについ笑顔になって、そのまま改めてお礼を言ったら……ユニちゃんはちょっと顔を赤くしながら目を逸らした。……変なの。

それでまた会話が途切れるわたし達。今度こそどうしよう…と思ったわたしだったけど、丁度そこでロムちゃんとラムちゃんが帰ってくる。

 

「お待たせ、ネプギアちゃん…あれ…?」

「あ、ユニ…ユニも魔導具気になるの?」

「魔導具…?」

「えっとね、実はかくかくしかじかで…」

 

さっきのわたしと同じ様な反応をするユニちゃんに、わたしはそれまでしていた事を説明。その間に二人は部屋に入って、両手で抱えていた本や杖、アクセサリーなんかを床に並べていく。

 

「そんな事してたのね…」

「そんな事してたんだ。ねぇ二人共、それって魔導具だよね?ユニちゃんにも見せてくれないかな?」

「アタシは別に気になるとはまだ言ってないんだけど…」

「…気にならないの?」

「気にならないとも言ってないけど?」

「な、なら異を唱えなくたっていいじゃん…それで、いいかな?」

「わたしは、いいよ…?」

「どうせ見せることで減るわけじゃないしわたしもいいわ。それに、ユニにもわたし達がどれだけすごいのか教えるいいきかいにもなるし」

 

と、いう事でユニちゃんも参加決定。ロムちゃんとラムちゃんが並べ終わるのをベットに座って二人で待つ。

 

「えーっと…どうやって教えればいいと思う?」

「…じっさいに、見せる……?」

「あ、そうね。じゃあはい、二人ともちゅーもーく!」

 

顔を見合わせた後、腕輪を持って立ち上がったラムちゃん。それからラムちゃんは窓際まで移動して……窓を全開にする。

 

「ちょっと、なんで開けるのよ」

「なんでって…じゃあ、かべとかテーブルに向かって魔法つかう?」

「あぁ…悪かったわね、今の言葉は忘れて」

 

前言撤回のユニちゃんと、それを聞いてやれやれ…って仕草を見せるラムちゃん。わたしは二人のやり取りを苦笑いしつつ見てたけど…内心こう思った。…ユニちゃんがわたしより先にわたしの疑問と同じ質問してくれてよかったぁ…。

 

「今からふつーの魔法と魔導具をつかった魔法を見せるから、よく見てなさい!まずふつーの魔法!」

 

そう言いながらラムちゃんは左手を窓の外へ。そこから手の平を夜空に向けた数秒後、ラムちゃんの手の平の前の空間からそれなりの規模の衝撃波が放たれる。

 

「…うん、今のが普通の…魔導具無しの魔法って事だね?」

「そうよ。じゃ、次。これが…魔導具ありの魔法よ!」

 

わたしの確認に返答した後、持っていた腕輪を左腕にはめたラムちゃん。それでもう一度手の平を夜空に向けると……今度は先程よりも範囲速度共にスケールアップした衝撃波が駆けていった。その様にラムちゃんはご満悦。

 

「わっ…確かに、無しと有りだと魔法の規模が違う…」

「となると、その腕輪は魔法のブースターってところかしら?」

「そう、これによってゼンリョクの技になったのよ!」

「いやその言い方だと魔導具じゃなくてZパワーリングになるでしょ…でも便利なものね。身に付けるだけでブーストがかかるなら、それこそゲームの装備アイテムみたいじゃない」

「…身に付けるだけじゃ、だめ」

 

ユニちゃんの言葉を受けて、ふるふると首を横に降るロムちゃん。…駄目なんだって、ユニちゃん。

 

「魔導具は、ただ身に付けてもいみないの。えと…魔法こうていにくみこんで、魔導具にないほーされた術式をはんのうさせて…あ、でもその前に、どんな魔導具かたしかめて…それで、えっと…」

『…………』

「……ふぇ…うまく、せつめいできない…」

「えぇっ!?だ、大丈夫だよロムちゃん!今の説明でも伝わってる伝わってる!だよねユニちゃん!?」

「あ、アタシ!?……えーっと…乗り方知らないと役に立たない自転車と同じで、使い方をきちんと理解してなかったりそれを使っての練習をしてなかったりすると、ちゃんと機能を発揮出来ない…って、感じ…?」

「よ、よくわかってるじゃないユニ!ほらロムちゃん、ロムちゃんのせつめーでつたわってたわ!」

 

必死に説明してくれようとしたけど…ロムちゃんは自分の思った様な説明が出来なかったのか涙目に。

それにわたしとラムちゃんは大慌て。咄嗟にわたしはユニちゃんに話を振って、ラムちゃんはユニちゃんの発言を全力でフォロー。その結果、なんとかロムちゃんの説明はちゃんとしてた…という雰囲気にする事に成功した。

 

「つたわって、よかった…でも、今度はもっとせつめい、がんばる…!」

「そ、そうだね。頑張って。……ユニちゃん、グッジョブ」

「よくやったわ、ユニ。…ま、ロムちゃんがせつめーしたんだからつたわってとーぜんだけど」

「アンタ達ねぇ…はぁ、自分にアドリブ力があって良かったわ…」

 

無事ロムちゃんが落ち込むのを回避したわたし達は一安心。それぞれでユニちゃんを労っていると…つんつん、とわたしの脇腹がつつかれる。

 

「ネプギアちゃん、魔導具は…もう一つ、あるの」

「もう一つ、って…別の種類って事?」

「そう。見てて」

 

そう言うロムちゃんの手の上には、綺麗な石が一つ。これも魔導具なんだ…と思ってわたしとユニちゃんがその石を見つめていると、ロムちゃんは不意にぼそぼそと何かを呟いて……それが終わった瞬間、石に光が灯った。

 

「これは……?」

「これはね、光魔法が入ってたの。この光魔法はパワーがないから、おへやでつかってもだいじょーぶ」

「確かに、光の力で攻撃…ってより明かりの代わりになるって感じね。このサイズならポケットにも入るし、明かりとしては便利かも…」

「あと…わたしが持たなくても、光きえないの」

 

ロムちゃんの言う通り、その石はテーブルに置かれても光を発し続けている。…それじゃあ、もしや……

 

「…こういう魔法が入ってる魔導具が沢山あれば、誰でも魔法使いみたいになれるの?」

「言うと思ったわ。…けどざんねん、それはむりよ」

「え、無理なの?」

「魔法の入ってる魔導具をつかうのも、おべんきょうがひつよう…(すたでぃー)」

「そうなんだ…まあでも機械だって使い方知らなきゃ動かせないし、そういうものだよね」

 

魔法も魔導具も馴染みのない(治癒魔法は勉強中だけど)わたしは、魔導具をそれこそユニちゃんが言ったみたいに『ゲームの装備アイテム』みたいなものかなと思っていたけど、実際にはそこまで都合の良いものではない…あくまで『道具』なんだって知った。でも、別に落胆なんてしていない。だって……わたしの大好きな機械と同じ様なものなんだもん、落胆よりも新しく生まれた興味の方が勝っちゃうね。

 

「…ロムちゃんとラムちゃんは、魔導具の作り方は知ってる?」

「う……も、もちろん知ってるわよ…」

「…でも、まだ作ったことない…」

「つまり、アンタ達は知識はあるけど技術が足りない、って訳?」

「うぐっ…ふ、ふん!魔導具作るのはむずかしーのよ!」

「そっか……じゃあさ、今度一緒に作ってみない?それも、ただの魔導具じゃなくて機械を魔導具にしてみるの。それが出来たら凄いと思わない?」

 

ラムちゃんは部品物色をしていた時に言った、「携帯も魔導具に出来るのか」という言葉。それがずっとわたしの中では気になっていた。魔法と科学の融合。二人の得意分野と、わたしの得意分野の合体。それが、もしあり得るなら……。

 

「勿論、簡単にはいかないと思うけど…やってみようよ。難しい所は詳しそうな人に聞いたり、わたし達で考えて色々試してみれば、きっと何か出来る…わたしはそう思うな。二人はどう?」

「わたしは…ネプギアちゃんがやりたいなら、わたしもやってみたい…」

「ロムちゃんがそういうなら、わたしも…」

「ふふっ、なら決定だね。後は……」

「……?…まぁ、科学と魔法の両立はMAGES.さんやリーンボックスも研究してるし、不可能な挑戦ではないんじゃない?」

「あーいや、そういう意味で見たんじゃなくて…ユニちゃんも一緒にやらない?」

「…アタシも?」

「うん、だって同じ女神候補生だもん」

 

誘ってみると、ユニちゃんは意外そうな様子。…わたしが声かけないと思ったのかな…?

 

「アタシ、魔法は勿論科学…っていうか工学方面でもそこまで役に立たないわよ?」

「そんなの問題ないよ。わたしだってアマチュアの域だし、どちらの専門でもないからこその視点が必要になるかもしれないもん」

「そういう事なら…分かったわ。協力してあげる」

「それじゃあ、もし完成したらそれはわたし達女神候補生全員の合作って事になるね。楽しみだなぁ」

 

そんなこんなで決まった、工学製品を利用した魔導具作り。わたし達の一番の目的はあくまでお姉ちゃん達の救出と犯罪組織の対処だけど……女神の力は繋がりの力だってお姉ちゃん言ってたもん。こういう形でわたし達がより仲良くなれるなら、それはきっと無駄な事じゃないよね。

 

 

 

 

「皆さん、お世話になりました」

 

ぺこり、と見送りに出てきてくれた人達に(ミナさん一人じゃないよ。ミナさんはいるけど)挨拶を述べるネプギア。ルウィーですべき事を終え、女神一行が活動している事もある程度知ってもらえたと判断した私達は、ルウィーを後にする事を決定した。そして今日は、その当日。

 

「いえそんな、わたし達はロム様ラム様の件でご迷惑もかけましたし、制圧作戦では大いに助けて頂きましたし…礼を言うのであれば、それはこちら側です」

「制圧作戦、ですか…調査に何か進展はありましたか?」

「残念ながら……やはり、あの強襲は施設諸共情報隠蔽を目的としていたんだと思います」

 

ミナさんの返答は、半ば予想通りとはいえ…やっぱり芳しいものではなかった。

調査というのは勿論あの施設の事。当初は制圧した後他の工場施設や犯罪組織にまつわる情報を回収する計画になっていたけど…赤いMGの攻撃によって施設全体が爆発してしまい、紙媒体も電子データもまとめて回収不能となってしまった。おまけに拘束した施設員の内管理職はイマイチ口を割らず、末端の人に至ってはそもそも碌な情報を持っていなかったという事で人からも情報を得る事が出来なくて、結果として今回の作戦ではただ施設を一つ潰した以上の成果を生み出す事が出来なかった。…まあ、それだけでも意味はあるし、犯罪組織に対する探りや諜報は別の形で前から行われているけど。

……因みに、手書きの地図とカードキーを渡してくれた二人は不起訴となった。その理由は…言うまでもないよね。

 

「今回はしてやられましたが…完璧な情報隠蔽などそう出来るものではありません。それに人はこちらで捕縛出来た訳ですし、調査はこれからも続けていきますよ。…私にとっては、元アヴニール社員という責務もありますからね」

「…ほんと、変わったわよねあんたは。前は本気で私達を始末しようとしてたのに」

「私は変わっていませんよ。今も昔も、敬愛するホワイトハート様の為になる事をしたいだけですから」

「前言撤回、確かに変わってなさそうね…」

 

曇りのない表情のガナッシュさんに、前のガナッシュさんを知ってる面子は苦笑い。……今でこそ苦笑い出来るけど、実際にキラーマシンやら何やらをけしかけられた時は洒落にならなかった…。

と、主に年長組と職員組で会話が進む中、ネプギアとユニはフィナンシェさんの横が気になる様子でちらちらと見ている。そして二人の視線の先にいるのは……

 

『む〜……』

 

ふくれっ面の女神候補生、ロムちゃんとラムちゃんだった。私達は二人がその気になってくれるのなら連れていくつもりだったし、二人もその気になっていたけど……ミナさんを始めとするルウィー教会の人達がストップをかけた。理由としては、まだまだ二人共小さいんだから準備は入念にさせたい…というもの。それは私達にも理解出来る理由で、しかも準備が出来次第私達に合流するという事になったから承諾したけど…当人二人はやっぱり不満みたいだった。

 

「せっかく、ネプギアちゃん達となかよくなれたのに…」

「そーよそーよ、わたしは別にさみしくなんてないけど…女神なのになんにも言うこと聞いてもらえないのはおかしいわよ!ミナちゃんもフィナンシェちゃんもガナッシュも、早くおねえちゃんにかえってきてほしくないの?」

「それは勿論帰ってきてほしいです。けど、ミナ様達はお二人を心配してるんですよ?」

「…いっつも、しんぱいされてばっかり……」

「まあまあ、別に行ってはいけないと言われた訳じゃないんですから…そうですよね?ミナ様」

「そうですよ。それに、いつも魔法勉強の際言っているでしょう?ちゃんとした準備、ちゃんとした順番でなければ強い魔法は使えない…と」

 

不満たらたらな二人をミナさんとフィナンシェさんが嗜めるものの、流石にそれじゃ納得してくれない。そんな二人に困り顔を浮かべていると……そこでネプギアが口を開いた。

 

「…大丈夫だよ、ロムちゃん。確かに少しの間お別れだけど…わたし達は、別の場所に行くんじゃないもん。ただ、わたし達はちょっと先に行くだけ。…ちゃんと待ってるからさ、ちゃあんと準備をして…それで、追いついてきてほしいな」

「ネプギアちゃん…」

「ラムちゃんも、焦っちゃ駄目。お姉ちゃん達を助けるんだから、きちんと準備しなきゃ。……知ってる?ヒーローはね、遅れてやってくるものなんだよ?わたし達が偵察、二人がメインって事だよ?」

「ヒーローはおくれてやってくる……た、たしかにそーゆーことなら慌てるのはダメかも…」

「…二人共、それでいいかな?」

「…うん。ちゃんとじゅんび、する」

「ふ、ふふん。そう言うんなら、少しくらいは待つことにするわ!」

「……凄い、二人を上手く嗜めるなんて…」

 

ずっと不満そうだった二人を上手く丸め込んだネプギアに、ミナさんは目を丸くする。私達は一応パーティーとして行動してる間にネプギアと二人の間が縮まったのを知ってたけど…なんだかんだミナさんはその姿を見た事が無かったらしい。…まあ、教会内でネプギアが二人とやり取りする機会はそんなになかったしね。

 

「…えぇと、話もまとまったみたいなので…私達は行きますね」

「あ…はい、今後も必要とあればルウィー教会は全面的に支援します。お気を付けて」

「ロム様とラム様が合流するのは少し先ですが、その際は宜しくお願いします」

「前の旅でも、皆さんはかなり無茶をしていましたが…本当に無茶な事はしないで下さいね」

「…ネプギアちゃん、待っててね」

「…フィナンシェちゃんも言ったけど、むちゃはしないよーに。それだけよ!」

 

ミナさん達の、ロムちゃんラムちゃんの見送りを受けて私達はルウィー教会を後にする。行き先は……勿論、まだ行っていない最後の大陸。

 

「雪国ともこれでお別れかぁ…もうちょっと雪で遊びたかったな〜」

「REDちゃんはほんとにねぷねぷと同じ位マイペースですねぇ」

「そういうなら貴女一人残ってもいいのよ?」

「あ、それはいいですね。それならロムちゃんとラムちゃんも安心です」

「むむ…酷いよ二人共ー!」

 

コンパとアイエフの二人にからかわれ(コンパはそんなつもりなかったのかもだけど)、ぷくーっと頬を膨らませるRED。その隣を見ると、そこではネプギアとユニがルウィーでの出来事について談笑中。……そう言えば…

 

「…二人共、またちょっと仲良くなった?」

「え……そ、そう見えますか…?」

「私にはそう見えるけど?」

「べ、別に仲良くなったとかそういう事では…」

「へ?…わたしは来る前より仲良くなれてると思ったんだけど…わたしの勘違いだったの…?」

「そ、そうは言ってないでしょ!っていうかこれ位の事で一喜一憂するんじゃないわよ!」

「……ユニちゃんも大分感情の起伏がある様に見えるんだけど…」

「うぐっ……」

「……ふふっ」

 

やっぱりどこかネプテューヌとノワールのやり取りを思い出す二人の会話に、つい笑みを漏らす私。正直、ラステイションへ行ったばかりの頃は前途多難だと思ったけど……この様子なら二人は…いや、候補生組は全員、大を付けられる位の仲良しになれるんじゃないかな。

──そう思うと、候補生達を引っ張る側として安心出来る私だった。

 

「…ほんと、仲良くなったみたいだね」

「はいっ!」

「違いますからっ!」

「……ここはハモるパターンなんじゃないかなぁ…」

 




今回のパロディ解説

・やめられない、止まらない
スナック菓子、かっぱえびせんのキャッチフレーズの事。意識した訳じゃありませんが、ネプギアはスナック感覚で機械を分解したり改造したりしてるかもしれませんね。

・機械弄りは最高だよっ!
ロウきゅーぶ!の代名詞的台詞(ワード)のパロディ。ノワールのコスプレ好きやベールのネトゲ好きもそうですが、ネプギアは何故機械好きになったのか語られてませんね。

・ゼンリョクの技、Zパワーリング
ポケモンシリーズにおける要素とその要素に関わるアイテムの事。…言うまでもないと思いますが、別にラムは特殊なポーズをした後魔法を使った訳じゃありません。

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