超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress   作:シモツキ

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第二十話 出発の裏には不器用が

来た日早々犯罪組織絡みの事件に遭遇したり、思ったより早くネプギアとユニが仲良くなったり、意外な出会いがあったり、決闘をする事になったりしたラステイション滞在も、遂に終わりを迎える事となった。

とはいえあたふたと旅立つ必要もないだろう…という事で、予定日を一日ずらし、旅立つ日の前日を完全なオフとした。で、私達はその日…パッセに訪れた。

 

「宝玉と血晶の件はほんとに助かったよ、ありがとなお前等」

「あれ位いくらだって引き受けるわよ、前からの付き合いなんだし」

「そう言ってくれると嬉しいよ。…と、言ってもあれは半分教会からのお願いな訳だが…」

「そうでしたね。実はわたし、探してる途中にアルマッス開発手伝ってた時の事思い出したです」

「あー、あの時も素材探しを頼んだりしたなぁ…」

「懐かしいねぇ…」

 

パッセの食堂でテーブルを囲んで話す、私達四人。素材探ししていた時もそうだったけど、こうしているとほんとに私達が前の旅の中でラステイションに来た時の事を思い出す。あの時と今じゃ、結構違うなぁ…。

 

「あの時うちはしがない零細企業だったのに、今や中小企業の代表的存在なんだ。ほんと皆には感謝してるよ」

「それを言ったら私とコンパだって教会の職員よ?…我ながら結構な変化だわ」

「私は…立場もそうだけど、あの時は記憶取り戻すのに必死だったなぁ」

「色々変わったよな。これで後はノワールとネプテューヌもいれば、あの時の面子が勢揃いなんだが……って、あ…す、すまん…」

 

言ってしまってから気付いて、済まなそうな表情を浮かべるシアン。私達もそれを責めるつもりはないけど…懐かしい気持ちになってた事もあり、一瞬言葉に詰まってしまう。

そう、前はこの場にネプテューヌとノワールもいた。私達と共に旅をスタートしたネプテューヌと、ラステイションで会って紆余曲折(丁度今回の私達とユニみたいな展開)の末仲間となったノワール。でも二人は今ここではなく、ギョウカイ墓場で監禁状態にある。それは重々承知で、ある意味もう分かりきった事だけど…やっぱり、その話となると少し気持ちが沈んでしまう。こういう時、それこそネプテューヌがいればこの雰囲気をバーンと壊してくれるけど、今その役目をしてくれる人はここには──

 

「嫁の皆、お待たせー!REDちゃん帰って来たよー!」

 

……いた。結構ネプテューヌに近い子が、いた。

 

「お、お帰りなさいです。工場見学はもう終わったんですか?」

「うん、飽きちゃったから先に帰ってきたんだ」

「飽きたって…ま、まぁ興味ない奴にとっちゃ工場なんてそんなものだけど…」

「あーでもでっかい機械はちょっと格好良かったよ?それよりもはしゃぐネプギアと振り回されるユニの方が見てて面白かったけどね」

 

空気を読む、という事を知らないんじゃないかと思う位マイペースを貫く少女、RED。ネプギア&ユニと共に見学しに行っていた彼女は、どうやら二人より先に戻ってきたらしい。

 

「…ムードメーカーとしては優秀なのかな」

「ムードメーカー?アタシの事?」

「うん。……そう言えば、出会った後すぐ緊急事態が発生したせいで、なし崩し的にパーティーメンバー入りしてたけど…REDはこれからも私達に着いてくるつもり?」

「うん」

「あ、随分と簡素な反応を…えと、皆どうしよう…?」

 

私達にとっては慣れっこで『大変だけど…頑張ろう!』位の感覚でいられるけど、一般的に考えれば私達のしてる事は結構な期間の伴う旅。しかも相手にしてるのが犯罪神復活を目論む組織なんだから、ボコボコにされる位ならいい方で、下手すると非人道的行為を受けてしまうかもしれない。それに、どこから情報が漏れるか分からない以上、下手に関係者を増やすのも宜しくない。……と、いう事で取り敢えず私はコンパとアイエフに意見を求めた。

 

「そうね……能力的には大丈夫じゃない?ワレチュー…だっけ?…への蹴りは結構いい動きだったし」

「わたしも賑やかになるのは賛成ですぅ」

「ふーむ…あ、でもそもそもの話、REDは私達関係なく旅してたんだっけ?」

「嫁探しの旅してたよ?」

「嫁探し…どこから突っ込んだらいいのか分からない旅してたんだな…」

「……ねぇイリゼ、今思ったんだけど…この子、むしろこのまま一人で旅させた方が危ないんじゃ…?」

「た、確かに……」

 

きょとーんとしてるREDに対し、私とアイエフは目を合わせて軽く冷や汗をかく。…この子どう見ても一人旅させたら不安だよね。悪い人とか犯罪組織にほいほい着いてっちゃいそうな気がすっごくするよね?……保護の目的も含めて、加入してもらった方が私達の精神衛生上宜しいのかもしれない…。

 

「…RED、これからもパーティーメンバーとして宜しく頼むね」

「もっちろん!嫁候補達の為ならアタシ頑張っちゃうよ!」

 

──という事で、正式にREDがパーティーに加入する事となった。ここまで特殊な理由で入るのは、REDが始めてだと思う。……あ、一応言っとくけど、別にREDがお荷物だったりはしないからね?身体能力は勿論、ボケと突っ込みの比率が偏ってる現メンバーにおいて、REDは期待大の存在だからね?

その後も暫く雑談を続ける私達。その内ネプギアとユニが帰ってきて(ネプギアは遊園地に行ってきた子供の様な、ユニは子供に色々せがまれた後の保護者の様な表情をしていた)、私達は夕食をとる事にした。

 

「なぁ、前も言ったがうちの食堂なんかでいいのか?うちは高級料亭なんかじゃないぞ?」

「シアンさん、ご飯は皆で一緒に食べるのが一番美味しいんです。だから高級料亭よりここの方が美味しく食べられるですよ」

「ですね。それにわたし、高級そうな所はちょっと物怖じしちゃいますから…」

「女神がそれじゃ不味いでしょネプギア…」

 

シアンさんのお母さんが作ってくれた料理を、長テーブルを囲んで食べる。誇張なしに言えば、確かに食堂の料理は所謂大衆向けのものだけど…実際のところ、私達は高級料理より大衆料理の方が慣れているし、個人的には一人で高いもの食べるのと皆でインスタント食べるのなら後者の方がいいと思っている。まぁつまりなんだって言うと…パッセの食堂で食べるのは楽しいよね、って事。

そうしている内にパッセの従業員さんもやってきて、REDとそこそこ従業員さんとも(ノワールに着いてく形で)面識があったユニが仲介役となる事により、食堂はいつの間にか宴会状態に。

 

「ひゅー、いつもは俺等ばっかりの食堂が今日は随分と華々しいじゃねぇっすか社長!」

「一応言っておくが、大事なお客なんだから失礼な事はしないでくれよ?」

「そーそー、皆アタシの嫁候補なんだから手を出さないでよね?」

「ちぇー…あ、なら社長ならいいのか?」

「おう、その場合取り敢えず俺に殴られるところから始めるんだぞ?」

「前社長!?凄ぇタイミングで来たっすね!?」

「それはさておき、工場見学どうでした?」

「最高でした!64のこうじょうけんがく位よかったです!」

『その工場はダンジョン的な所なのに!?』

 

……こんな感じで、大賑わいの夕食だった。…ネプテューヌ達を奪還した頃には別次元組の皆も合流出来てるだろうし、その時は皆で宴会っぽい事やってみたいな。あの時の打ち上げみたいに、ね。

 

 

 

 

「ケイ、ちょっと邪魔するわよ」

 

皆より一足先に教会へと帰ったアタシ。…と言っても別に、雰囲気が嫌になった訳じゃない。単に用事が…ケイと二人で話したい事があったから、先に帰らせてもらっただけ。

 

「邪魔をするなら帰ってくれないかな?」

「なら帰る…って、え……まさかの吉本新喜劇…?」

「…僕が開口一番ボケに走ると思うかい?」

「そ、そうよね…」

 

一瞬嘘でしょ!?…と思ったけど、偶然みたいだった。…ケイが開口一番ボケに走る性格になったら、アタシどころか教会中に衝撃が走るわね…。

 

「こほん…で、そんな反応するって事は忙しいの?」

「勿論。君が暫く不在になる関係で、教会を取り仕切る身として色々決め直さなきゃいけないからね」

「うっ…わ、悪いわね…」

「同行には当初から賛成なんだ、気にする事はないよ」

 

ケイはアタシが部屋に入ってきた時一度顔を上げただけで、それからはずっと書類仕事をしながら言葉に応答している。それは、アタシが知る限りで最も仕事人間であるケイの有り様を正に表している様な姿だった。

……だからこそ、アタシは気になっている。普段から教祖としての、仕事人間としての面以外を殆ど見せないケイが、アタシが不在になる事に心から賛成しているのかどうかが。

 

「…それは、教祖としてでしょ?ケイ個人としてはどう思ってるのよ」

「愚問だね。僕は教祖となるべく育てられ、今までずっと教祖として生きてきた人間だ。僕の考えと教祖としての考えは、イコールと言っても過言じゃないのさ、ユニ」

「…本当に?本気でそう思ってる?」

「…僕の言葉は信じるに値しないのかい?」

 

そう言われたアタシは言葉に詰まる。…信じるに値しない、とは思ってない。でもそう返したら『ならこれ以上の会話は必要ないね』と打ち切られてしまうだろうし、それに……ケイにとってアタシは信じるに値しているのかどうか、少し不安だから。

 

「…ケイはさ、お姉ちゃんを信じてる?」

「守護女神を信用していない人間が教祖になれるとは思わないね」

「だから…はぁ、まあいいわ。どっちにしろお姉ちゃんとケイが信用し合ってるって事は確認出来たし」

「確認出来た…?」

「アタシ、前にお姉ちゃんに訊いたのよ。お姉ちゃんは世界の為とはいえ国を空ける事に不安はなかったのかって。…そしたら、なんて返したと思う?」

「…………」

「…信頼してる人がラステイションには沢山いるから不安はない、って言ったのよ。で、その時最初に出た名前が…ケイ、貴女の名前よ」

 

あの時のお姉ちゃんの目は、今でも覚えている。その時まだアタシは存在してすらいなかったから、名前が挙がる可能性は最初からゼロだった訳だけど(というか挙がったらむしろ怖いし)…それでもアタシが羨ましいと思ってしまう程、その目からはケイへの信用と信頼に満ち溢れていた。

 

「あのお姉ちゃんに真っ先に挙げられるなんて凄いわねケイ。で、ケイもケイでお姉ちゃんを信じてるから、変に焦ったりせず確実に救出する道を選んでる。…全く、妹として…同じラステイションの女神として、両方が羨ましいわ」

「…僕が君を信用していない、とでも?」

「信用してるなら、本当に思ってる事話してよ」

「…君も強情だね」

「それに関しては環境の問題かもね」

「……はぁ…分かった、ユニ…」

 

溜め息の後、顔を上げて椅子から立ち上がるケイ。あぁ、やっぱり本心は別にあるんじゃない…と思ったアタシは佇まいを正し、ケイの本心と向き合う心積もりを……

 

「さ、出て行ってくれ」

「……は?」

 

…してたのに、部屋から追い出されそうになっていた。肩を押されていた。

 

「ちょ、ちょっと…今のって話すノリでしょ!?」

「さあね、僕にはそんなつもりはないよ」

「いやありなさいよ!っていうか力強い力強い!逆ゼロ・グラヴィティみたいになってるから!」

 

照れ隠しとかネタとかそういうレベルではない力で追いやられるアタシ。女神化すれば対抗するのなんて簡単だけど…押し返したところでなんの意味もない。というか、無理矢理押し返してケイの執務室に居座っても気まずいだけだし…。

なんて思っているうちに廊下に出され、扉を閉められてしまった。

 

「嘘でしょ…あーもう、なんなのよケイ……」

 

閉められた扉を前にアタシは肩を落とす。ケイが素直に話してくれるとは最初から思ってなかったけど、まさかここまでとは…。…仕方ないわね、もう諦めて荷物の確認でも……

 

「──僕にとってノワールは、ただの国の長じゃない」

 

扉越しに、声が聞こえた。扉越しでありながら、はっきりと聞こえる声が、ケイの声が聞こえた。

 

「え……け、ケイ…?」

「無論、僕もノワールも仕事をなあなあの関係で進めるつもりはないから、あくまで守護女神と教祖として接しているし、それに不満はない」

「ケイ……?」

「…でも、僕とノワールは長い付き合いなんだ。僕が教祖になる前からの、ね」

 

淡々と話すケイ。アタシの声は聞こえている筈なのに、まるでアタシがいないかの様に言葉を続けている。でも、その不可解な言葉を聞いているうちに、気付く。

 

(……これは独り言だ、君に話している訳じゃない…って事ね。…ほんと、強情なんだから)

 

中々面倒な事をしてる…と思うけど、気持ちは分かる。アタシだって、正直面と向かって本心を告げるのは好きじゃないから。

 

「……素直に言えば、僕が助けに行きたい位だ。僕だって戦えるんだから、国の維持より救出をしたいと思っている。……けれど、所詮僕は人間だ。それに、僕が教祖の職務をおざなりにする事を、ノワールは絶対に望まない。仮に助けられても、ラステイションが犯罪組織の侵略を許してしまったら、ノワールは自らが長い間国を離れる事となった自分を責めるだろう。……僕では助けられないんだ。それは、ノワールを苦しめるだけだから」

「…………」

「…だから、頼む…ユニ、僕の代わりに……ノワールを、助けてほしい…っ」

 

ケイの話は…独り言は、それが最後だった。独り言、というか定なだけあってケイは普段よりずっと饒舌で、ケイの感情的な部分を目にした(正確には耳にした)のは、これが初めてだと思う。

内に秘める思いだとか、お姉ちゃんへの感情だとか、色々感じるところはあったけど……アタシは、最後の一言が聞けただけで十分だった。

 

「…任せなさい、ケイ。アタシは旅の中でもっと強くなって、見聞を広げて…お姉ちゃんを助けられるだけの力を付けてくるわ。だから…その間、ラステイションの事は頼むわね」

 

背を預けていた扉から離れて、執務室の前からも離れる。アタシの最後の言葉の返答は聞いていないけど…聞く必要なんてない。だって…あのケイの言葉で、ケイもアタシの事を信じてるって分かったから。

 

 

 

 

遂に、ラステイションを立つ時が来た。と言ってももうラステイションには何度も来ていて、それと同じ回数立ってもいるんだから、もう慣れたものだけど…それは私や旅に慣れている面子の話。ネプギアとユニにとっては、そうじゃないみたいだった。

 

「ほ、ほんとに後は頼むわねケイ」

「分かっている。君も女神なんだ、もう少ししゃきっとしてくれ」

「え、えぇ……」

「そ、そうだよユニちゃん。えと…お世話になります!…あ、逆だった…」

「アンタもしっかりしなさいよ…」

 

なんだか余裕のない二人を苦笑いしながら眺める私達。ケイさんも流石に呆れ気味の表情を浮かべて…その後、ふっと真面目な顔に変わる。

 

「…そうだ、ラステイションを去る前に一つ伝えておかなきゃいけない事がある。…例のキラーマシンの事で進展情報があった」

 

それを聞いた瞬間、苦笑いしていた私達も表情が真面目なものへと変わった。

本来ならもう一部の研究組織で厳重に保管されている数機を除いて存在していない筈のキラーマシン。それは私が監査で実際に確かめたんだから間違いない。なのに、あの時襲撃者の部隊にはキラーマシンがいた。ならもうそれは、何かしらの非合法が存在してるとしか思えない。

 

「…生産元が分かったんですか?」

「いや、元アヴニール社長のサンジュに協力してもらったが、彼の情報網でも手がかりは見つからなかったよ」

「…それって、進展って言えるですか…?」

「これだけなら言えないね。…けどこれは逆に言えば、彼とは別派閥の人間が関わっている可能性が高いという事さ。そして恐らく、生産工場はラステイションの外にある」

「ラステイションの、外…」

「僕の推測では、アヴニールの国営化の時にそれを許容出来なかった派閥が離脱、その後潜伏していた後に襲撃者…恐らくは犯罪組織に協力を申し出たんだろう。…アヴニールの技術力はラステイションでも有数のものだ、油断はしないように」

 

ケイさんの忠告に私達は首肯する。今でこそ対キラーマシンのノウハウが出来上がってるけど、状況や目的次第では女神をもヒヤリとさせられるキラーマシンシリーズを、アヴニールの兵器を軽んじられる筈がない。犯罪組織と協力してる可能性もある以上、それは尚更だった。

 

「…じゃ、そろそろ行くとしましょ」

「そうだね。皆、忘れ物はない?」

「大丈夫です、ジャンクパーツも珍しい電子機材も抜かりはありません」

「そ、そう…じゃあ行こうか「あーっ!お土産買うの忘れてた!途中で寄り道していい?」…はいはい…お世話になりました、ケイさん」

「もしアヴニールの事で何か分かったら、連絡するです」

「あぁ。……ユニの事を頼むよ、君達」

「ケイさん…はい、ユニちゃんは任せて下さい!」

「イリゼさん達ならともかく、ネプギアがそれ言う?」

「あはは…これから一緒に頑張ろうね」

「…えぇ、頑張りましょ」

 

そうして、私達は賑やかにラステイション教会を去る。教会の協力と、ユニの同行の約束の両方を取り付ける事が出来たラステイションでの行動は上々。襲撃の件を始め、不安要素も多少はあるけど…それはそれ、これはこれ。パーティーとしての雰囲気は全く悪くないんだから、この調子のまま進めていきたいと思う私だった。さて…あのケイさんに頼むと言われた訳だし、女神の先輩としてユニの事もしっかりと導いていかなきゃ、ね。

 

 

 

 

「…その派閥というのは、恐らく私の関係してた派閥ですよ」

 

イリゼ達が教会を後にしてから数分。教会内に戻ろうとしたケイにかけられた、不意の言葉。その言葉の主は…一人の少女だった。

 

「……君か。…心臓に悪い事をしてくれるね」

「すいません、出来ればユニさん達に気付かれたくなかったので」

「…流石は虎の子の傭兵…いや、厳密には暗殺者だったかい?」

「どちらでも構いませんよ。どちらにせよ、訓練終了時点で路頭に迷ってたんですから」

 

現れたのは黄金の第三勢力(ゴールドサァド)の一角、ケーシャ。普段通りの言動を見せるケイも、内心彼女の登場にはかなり驚いている。…それ程までに、ケーシャの気配を殺す技術は卓越したものであった。

 

「…どうして、ユニさんには協力を申し出て、私には申し出てくれなかったんでしょうか」

「君の実力を知らないだけだと僕は思うね」

「そうでしょうか?これでも私、支部長ですよ?…どうしてノワールさんを助ける為の旅なのに、私じゃなくて、敗走したユニさんなんでしょうか…」

 

純粋に疑問を抱いている様な…それと同時に何か深い闇の様なものを感じる、ケーシャの言葉。全く、僕は人の感情を意識して納得させるのが得意ではないというのに…と心の中で嘆息しつつ、それにケイは答える。

 

「僕に教祖としての役目があるように、君にも支部長としての役目がある。きっと、彼女達はそれを気にしてくれたんだろうね。…君は、ノワールが後押ししてくれた支部長としての役目を、放り出す気かい?」

「そ、そんな事ありません!…そうですよね、支部長の仕事はノワールさんが私を信じて、私に期待して、私に頼ってくれた職務。…ごめんなさいケイさん、私そんな単純な事にも気付かないなんて…」

「…これ位は構わないさ」

「私、ギルドに戻りますね。…あ、でもノワールさん絡みの情報があれば、私に教えて下さいね。ノワールさんの為に死力を尽くすのが、ノワールさんに助けてもらった私のすべき事ですから」

 

大事な事に気付いた、と言わんばかりの様子で教会前から去るケーシャと、それを見送った後に今度こそ教会内に戻るケイ。彼女は自らの仕事に戻りつつ、思う。自分も含め、何故ラステイションの重役はこうも拗らせてしまっているのだろうか、と。

 

 

────感謝と友情の思いを拗らせた少女と、少女を助けた不器用な女神の間ですれ違いが起こるのは、これから暫く先の話である。




今回のパロディ解説

・64のこうじょうけんがく
星のカービィ64に収録されているBGMの一つのパロディ。あのステージ(ブルブルスター)は当然危険な訳ですが、ネプギアにとってはパラダイスなのかもですね。

・「邪魔を〜〜かな?」「なら〜〜吉本新喜劇?」
吉本新喜劇におけるお約束ネタの一つのパロディ。ラステイションメンバーでお笑い劇をやったらどうなるか。…うん、まぁ…イタい感じになるのは確実でしょう。

・逆ゼロ・グラヴィティ
伝説的歌手、マイケル・ジャクソンさんの代表的パフォーマンスの一つのパロディ。それっぽいだけであって、ほんとにマイケルさんレベルで斜めになってたりはしません。

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