超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress   作:シモツキ

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第十九話 ライバルで、仲間で、友達

「…また、派手にやったよねぇ……」

 

ユニを追うネプギアを見送った私は、視線を空から地面へと移した。そこに転がっているのは二人の決闘の流れ弾を受けて崖から剥離した、岩盤の破片。激戦の結果、地図を書き直す羽目に!…なんてレベルじゃ流石に無いけど、それでも放置するのは不味い状態ではある。

 

「崖崩れは起きないだろうけど…起きた場合、責任は私にくるのかな……」

 

決闘を申し込んだのはネプギアで、場所を選んだのはユニだけど…このパーティーの責任者は誰かという話になると、恐らくそれは私になる。人が下にいる時起きたら本当にヤバいし、注意喚起をしておいてもらわないと…。

 

「イリゼー、決闘はどうなったのー?」

「あ、えーとね…って、あれ?ケイさん?」

「途中からだけど、決闘を見させてもらったよ」

 

後ろからの声に振り返ると、そこには二人と私を追って移動してきた三人の他にケイさんもいた。これには内心少なからず驚く私。だって…ほら、ケイさんって『決闘?ふぅん…結果だけは後で聞こう』とか言いそうなタイプだもん。内容には興味示しそうにない印象あるんだもん。

 

「…あ、イリゼ私達と同じ様な事思ったわね?」

「って事は、皆も思ったんだ…」

「僕だって身内が関わるとなれば気にはするさ、それがユニにとって大きな意味を持つ決闘となれば尚更にね」

「それで、二人はどうしたんです?どこかに飛んで行っちゃったですけど…」

「あぁ、それはね…」

 

距離の関係で見えていなかったらしい四人に私は決闘の結末を説明。動きはまだしも二人の掛け合いは断片的にしか聞こえなかったから、きちんと説明出来たのは流れだけだけど…そもそも四人は断片的どころか全く声が聞こえていなかったという事もあって、流れだけで満足してくれた。

 

「で、ユニを追ってネプギアが飛んでいったってところだよ。決闘としては…まぁ、強いて言うならまだ継続中?」

「二人はそんなつもりないでしょうね…イリゼは追わなくて良かったの?」

「うん。私が行くよりも二人きりにした方が良さそうな気がするからね。……ネプテューヌとノワールも、仲良くなったのは二人きりの時だし」

「……?今何か言ったですか?」

「や、何でもないよ」

 

思い返せば、ネプテューヌとノワールは何度か二人きりで出かける事があった。そしてその度に帰ってきた二人の仲は良い方向に進展していた様な覚えがあるし、偶然にも一度私は二人きりで何をしているのか目にしてしまった事もある。あの時二人は仲睦まじくプリンをあげっこしてたなぁ…。

 

 

…………。

…なんか、胸の中がぐるぐるする……。

 

「……そ、それよりも皆はどうするの?今からじゃ二人を追うのも大変だと思うよ?」

「そうですねぇ…わたしは教会で二人の帰りを待つのが良いと思うです」

「アタシも〜、皆で待っててくれれば二人もほっとすると思うもん」

「…なら、二人が…ユニが戻ってくる前に、一つ頼みたい事がある」

「頼みたい事…また依頼ですか?」

「依頼、か…そうとも、そうでないとも言えるね」

 

いつもどこか含みのある言動を見せるケイさんだけど…今回は普段以上に含みを感じる言い方だった。

顔を見合わせた後、ケイさんに頷く私達。それを受けたケイさんは、真剣そのものの顔で口を開く。

 

「…君達には、ユニを君達の旅に連れて行ってほしい」

「…女神の皆の、ゲイムギョウ界の為にですか?」

「それもある、けど…一番はそれじゃない。ユニ自身の為にだよ」

「…………」

「ユニは女神としての職務を全うしてくれている。けど、僕からは今のユニは負い目と責任感から視野狭窄になっている様に見える。まだまだ成長出来る筈なのに、その可能性を押し留めている様に思える。…それはきっと、彼女が今のままラステイションにいたら変わらない」

「…そういう事、ですか」

 

あぁなんだ、そういう事だったんだ。…と、私は合点がいく。要は『ユニにユニ自身の輝きを取り戻してほしい』という事。教祖の中で一番女神をどう思っているか分からないケイさんだけど…仕事上の関係でしかない、とは思ってないんだね、やっぱり。……でも、一つ思うのは…

 

「…ケイさん自身では、どうにもならないんですか?」

「僕も結局は国民の一人。…僕では、役者不足さ」

「…本当に、それが理由ですか?」

「…そう訊く、という事はもう分かっているんだろうに…」

「まぁ…そうですね」

 

ほんの少しだけ拗ねた様な顔をするケイさんを見て、私は自分の考えてる通りなのだと確信する。…確かに、言えば何でも伝わる訳じゃないし、言う事自体楽じゃない事もあるけど……ほんと、ラステイションの首脳陣は不器用だよね。

 

「…それで、答えは?」

「……元々私達はユニに協力してもらう為に来たんです。無理矢理ふん縛って連れてく事は出来ませんが…出来る限り説得はします。その上で着いてきてくれると言うなら…喜んで、連れて行きます」

「…感謝するよ」

 

こうして、ネプギアがユニと合流した頃、私達は一つのやり取りを交わしていたのだった。

 

 

 

 

わたしがユニちゃんを追って飛び上がったのは、ユニちゃんが飛んでいった後すぐだったけど…追い付く事が出来たのは、ユニちゃんが着地してからだった。それ程までに、この時のユニちゃんのスピードは凄まじかった。

 

「はぁ…はぁ…全力で決闘した後に、これはキツいよユニちゃん…」

 

追い続ける事十数分。ユニちゃんは景色の良さそうな高台へと降り立った。着地して、女神化を解除して、背もたれのないベンチに座った。

その後を追う様に着地しようとするわたし。でも…どうしたらいいんだろう?反射的に追ってきたわたしだけど、何をするとか何か言うとか考えていた訳じゃない。そんな状態で、わたしは一体何を……

 

「……ううん、そんな事気にしてたってしょうがないよね」

 

わたしはごちゃごちゃ考えてユニちゃんを追ってきた訳じゃない。ただ追いかけなきゃいけないと思って、放っておけなくて追いかけてきた。…なら、考えるより動かなきゃ。

 

「……よし」

 

着地して女神化解除。お姉ちゃんなら元気良く話しかけたり後ろから抱きついたりして一気に相手を乗せるんだろうけど…流石にそれはわたしには出来ない。という事でゆっくり後ろに回って…

 

「……ユニちゃん」

 

まずは、名前を呼んだ。まずはここから、だよね。

 

「…追ってきたの?」

「うん。…隣、座っていいかな?」

「…勝手にしたら?」

 

許可をもらったわたしはユニちゃんの隣に座る。そこから気取られない程度にユニちゃんの方を向いたら…普通の表情をしていた。怒ってたり、不愉快そうにしてるんじゃないかと思ってたけど…そんな様子は一切なかった。

 

「…………」

「…………」

 

ユニちゃんが話も聞いてくれない程の状態じゃなかった事は助かったけど……いざ何か話そうという段階になると、言葉が出てこない。…というかこんな時はどんな話をすれば良いのか分からない。うぅ、考えるより動かなきゃとか思ったのは誰!?そのおかげでわたしは早速困った事になっちゃったよ!……なんてふざけてる場合じゃないよぉ…。

 

「……アンタが普通に撃ってても、アタシ負けてたとは思ってないから」

「へ……?」

「最後の一撃よ、最後の」

「あ、あぁ……」

 

わたしがむぅぅ…と心の中で思い悩んでいたら、ユニちゃんはぷいとそっぽを向きながらそんな事を言った。それはわたしの考えている事とはあまりにもかけ離れていたから、つい……

 

「…ユニちゃんって、意地っ張りだよね」

「は、はぁ!?なんでそうなるのよ!?」

 

こんな事を言ってしまった。でもこれはユニちゃんにも問題あるよね、うん。

 

「だって、わたしそんな事考えてなかったもん。っていうか、普通に撃ってたらわたしの方が不利なんて当たり前だし」

「うっ…な、ならいいわよ…」

「…意地っ張りっていう認識が?」

「な訳ないでしょ!」

 

思った通りの反応をしてくれて、ちょっと笑ってしまうわたし。…そう言えば、こうして『狙って弄る』事が出来るのは、ユニちゃんが初めてかも……。

 

「…何笑ってんのよ……」

「あ、ううん。ただ、やっぱりユニちゃんと友達になれてよかったなぁって」

「どうして今の流れでそうなるのよ…ほんとネプギアってよく分からない奴ね…」

「そうかな?わたしでよく分からないなら、お姉ちゃん達の事はもっとよく分からないと思うけど…」

「アタシと同じ立場だからこそ、よ」

 

アタシと同じ立場。ユニちゃんの言ったその言葉を、わたしは心の中で反芻する。

候補生で、お姉ちゃんに憧れてて、周りは年上ばっかりで、少し前にはギョウカイ墓場から逃げ去るしか無かったわたし達。確かにここまで同じ立場なのに、わたしとユニちゃんは性格が全然違う。…ほんとに不思議だよね。ロムちゃんラムちゃんだってこれには当てはまるし。

 

「…その、さ…わたし、ユニちゃんに一つお礼を言わなきゃいけない事があったんだ」

「お礼?」

「わたしの覚悟、あれってユニちゃんがわたしにああ言ってくれたから…正面からぶつかってくれたから、決める事が出来たの。だから、これはユニちゃんのおかげなんだ」

「…あの後、一人でじっくり考えたの?」

 

二人、ベンチで景色を眺めながら話す。人と話す時は相手の目を見て話しましょう…とは言うけれど、こうやって同じものを見ながら話すのも悪くないんだね。

 

「じっくり考えた、っていうかじっくりまとめたんだ。これまでにも自分の事考える機会があって、昨日言った通りユニちゃんの戦いも見て、わたしの中でも色々出来てたから。で、それ等を繋げて一つにするタイミングをくれたのが…ユニちゃんだよ」

「そ、なら…アタシは敵に塩を送っちゃった訳ね…」

「て、敵って…」

「そういう諺なんだから仕方ないでしょ。はぁ、あんな事言わなきゃアタシが名実共に勝ててたのなら、ほんとに惜しい事したわ。あーあ、前に会った時はおどおどしてて『負ける気がしない』と思ってたし、今回教会で会った時も『アタシの方が上だ』って思ってたのに、最後には助けられるなんて…あーもう、ほんと……」

 

 

「……悔しい、悔しいよ…っ…」

 

しれっとこれまでわたしを下に見てた事をカミングアウトしたユニちゃん。流石にこれは苦笑いしながら流せるレベルじゃないなぁ…と思って、言い返してやろうと思ったら……ぽたり、とユニちゃんのスカートに水滴が落ちた。

それだけじゃない。肩が震えて、声もちょっと震えて、頬に水の線が出来ていた。──ユニちゃんは、涙を零していた。

 

「…ユニ、ちゃん……?」

「ごめん、ネプギア…少しだけ、一人にして……」

 

俯き、二の腕まである指ぬき手袋で涙を拭うユニちゃん。ユニちゃんの、友達の涙を見たわたしは一瞬どうしていいか分からなくて、言われた通りその場から離れようとして……思い留まる。

お姉ちゃんはわたしが不安になっている時、いつも一緒にいてくれた。わたしに言葉をかけて、安心させてくれた。イリゼさんはわたしが泣いちゃった時、真剣に言葉を受け止めて、手を差し伸べてくれた。だったら、わたしも……

 

──いや、違う。それもあるけど、それも理由になるけど…違う。そうじゃない。だって、わたしが思い留まったのは、そういう憧れや尊敬からじゃなくて……ユニちゃんに泣いてほしくないから、ユニちゃんの力になりたいからだから。

 

「ユニちゃんは…ユニちゃんは負けてなんかいないよっ!」

「……っ…ネプギア…」

「そんな事思う必要ないよ!ユニちゃんだって言ったじゃん、負けてたとは思ってないって!」

「それは、そう…だけど…アタシは、アタシも本当は……」

「わたし凄いと思ったもん!ユニちゃんの覚悟、認めないとは言ったけど…勝てないとも思ったもん!それに…ユニちゃんは、この決闘手を抜いてくれてたでしょ…?」

「……気付いて、たの…?」

「途中から、ね。だって、わたしあまりにも近接格闘出来過ぎてたもん」

 

初めは気付かなかった…というか気付きようが無かったけど、崖にぶつけられた辺りからわたしはユニちゃんが本気であっても手抜き一切無しではない事に気付いた。

X.M.B.は長砲身の大型火器。対してM.P.B.Lは遠近両用で、火器としては短砲身にカテゴライズされる。だからユニちゃんは射程距離において大いに上回ってる訳で、それを活かしてわたしが攻撃出来ない距離から一方的に撃つとか暫く逃げに徹した後に隠れて狙撃に移行するとかが勝率の高い戦い方だった筈。なのにユニちゃんは殆どずっとわたしの攻撃可能範囲…具体的には射撃の届く範囲に留まっていたし、最後の方は近接格闘も何とか出来る距離に入る事も多々あった。距離を取る事がユニちゃんにとっての定石なのに、それをしなかったって事は…打てる手を尽くした、とは言えないよね。

 

「……あれは別に、手を抜いていた訳じゃないわよ。確かに、ガンナーがあの距離で戦うのは変だけど」

「じゃあ、どうしてなの?」

「それで勝っても意味ないじゃない。殺し合いだってなら、そりゃ距離取るけど…これは決闘で、アタシはアンタの実力も覚悟も全部受け止めた上で勝ちたかった。ただ、そんだけよ」

「…それ、結構格好良いと思うな」

「お世辞なら要らないわよ」

「お世辞じゃないよ。さっきも言ったでしょ?わたしユニちゃんの事凄いと思ってるって」

「……なら、アタシだってそうよ」

 

言葉を続けよう…と思った瞬間、わたしの言葉はユニちゃんに遮られる。

それに驚いてきょとんとするわたし。気になってユニちゃんの顔を覗き込むと……ユニちゃんは、不思議な表情をしていた。

 

「…ネプギア、言ったでしょ?アタシの覚悟も自己満足じゃないのかって。……その通りよ、アタシ自身さえも誤魔化してたけど、その通りなのよ。…そういう意味じゃ、同じ自己満足でもアタシより多くのものを守ろうと思えたネプギアは…ほんとに、凄いと思ったわ」

「…そんな事ないよ。わたし昨日の夜、職員さんに聞いたよ?わたし達がギョウカイ墓場から逃げ帰った後、ユニちゃんはすぐ女神として頑張ってたって。わたしはあの後暫くお仕事なんて手がつかなかったのに……多分、ユニちゃんはわたしより経験を積んでるんだよ。その分の差が、覚悟に影響してるんだよ、きっと」

「経験、ね……経験で上回ってるのに決闘でほぼ互角って、アタシはネプギアより才能ないのかしら…」

「そ、それは…あれだよ、イリゼさんの有無だよ」

「イリゼさんの有無?」

 

わたしとしては励ますつもりで言ったのに、何故かユニちゃんにはネガティヴに受け取られてしまった。なのでわたしは慌てて軌道修正を図る。

 

「う、うん。わたし旅に出る直前から、イリゼさんに実戦の知識教えてもらったり、訓練つけてもらったりしてるの。…ユニちゃんって、ノワールさんにそういう事してもらってた?」

「それは…知識はそれなりに教えてもらったけど、訓練はあんまり無かったわね…」

「でしょ?付け焼き刃でもやっぱり実戦形式で教えてもらったりするのは結構変わると思うんだ。それにそもそも一人で鍛錬するより誰かに指導してもらう方が効率いい筈だし」

「なら、良いけど…」

「……ユニちゃんも、教えてもらうのはどうかな?」

 

ユニちゃんも落ち着いてきたみたいで、気付けば涙は止まっていた。それに気付いたわたしは一安心して…同時に、一つの思いが心の中に浮かんだ。その思いを届けたくて、わたしは話を切り出す。

 

「わたしが訓練つけてもらってるのはわたしの要望…って事もあるけど、イリゼさん自身もお姉ちゃん達を助ける為にわたし達候補生には強くなってほしい、って考えてる面もあるらしいんだ。だからユニちゃんを突っぱねる事はないと思うよ?」

「それはありがたいけど…そんないつまでもラステイションにいる訳じゃないでしょ?」

「うん。だからさ…ユニちゃん、わたし達と一緒に来てよ」

 

ベンチからとんっ、と勢いを付けて立ち上がったわたしは、ユニちゃんの前へ立つ。

わたしは、ユニちゃんに着いてきてほしい。ラステイションの来た時からそう思っていたけど、今はその時よりずっと強くそう思っている。

 

「一緒に来て、って…あの時言ったでしょ、アタシには出来ないって」

「国の事なら大丈夫だよ。プラネテューヌだって今女神不在だし」

「それはそうだけど…アタシ、ラステイション守るので精一杯だし…」

「なにかあったらわたしが協力する、って事でも駄目?」

「協力……だ、駄目よ駄目!そもそもうちにいる間だけって約束でしょ?」

「むー……」

 

取りつく島もない…程ではないけど、中々うんと言ってくれないユニちゃん。でも、ここで引いたら着いて来てくれないよね…よーし!

 

「ねぇユニちゃん、着いて来てくれればイリゼさんの他にも色々な人から学べると思うよ?というか逆に着いて来なかったら、わたしとの差広がっちゃうかもよ?」

「ちょっと、なんでアタシが負けてる前提なのよ…」

「じゃあわたしが負けてるって事なら着いて来てくれる?」

「いや意味分からないから」

「分かるよ!ユニちゃんなら分かる!」

「何が…?」

「何かがだよ!えーい、ならお菓子あげるから着いて来て!」

「誘拐犯か!アタシを幼児だとでも思ってんの!?」

「あ、なら座布団の方が良かった?」

「座布団?……って笑点か!別に年齢層上げろとは言ってないわよ!」

「なら何がいいの!?わたしにあげられるものなんて、後はわたし自身位しかないよ!?」

「ぶ……ッ!?な、なな何言ってんのよ!?馬鹿じゃないの!?後あげられるもののレパートリーおかしくない!?」

「もう!ユニちゃんの分からず屋!」

「アンタの言ってる事が無茶苦茶なだけだからね!?」

「むー!だったらユニちゃん出番無くなっても知らないからね!?既に原作と違うエピソードちょいちょい入ってるんだから、今後もどうなるか分からないんだからね!」

「脅しが斜め上過ぎる!ほんとどうしたのよネプギア!」

「はぁ…はぁ…ここまで言っても駄目なんて…」

「ぜぇ…ぜぇ…アンタ必死過ぎておかしくなってるわよ…」

「…………」

「…………」

 

 

「……ふふっ、楽しいねユニちゃん」

「楽しいって……まぁ、そうね」

 

若干息を切らしながら、笑い合う。我ながら馬鹿馬鹿しい事を言ったけど、頭おかしい感じになっちゃったけど……楽しかった。友達とこうして話せるのが、凄く凄く楽しかった。……だからこそ、わたしはユニちゃんに着いて来てほしいと思う。明日も明後日も明々後日も、こうして仲良くお喋りしたいと思う。

 

「…わたし、ユニちゃんと一緒に強くなりたい。ユニちゃんと一緒に、憧れる女神像へと近付きたい。まだわたし達は半人前だけど…二人であれば、きっと一人前になれるよ。二人でならお姉ちゃん達にも負けない気がするし、二人でいればいつかは二人共一人前になれる気がするの。…勝手な思いでごめんね。でも、これがわたしの本心なの。だから…一緒に来てよ、ユニちゃん」

 

もう、言える事は全部言った。気持ちは全て話した。それでも駄目だ、って言われたらもうわたしはどうしようもないし、友達としてユニちゃんの気持ちを尊重するべきだと思う。後はもうユニちゃん次第。それがどんな結果でも、わたしはそれを受け入れなきゃ。

ただ、ユニちゃんを見つめるわたし。ユニちゃんも頭を上げて、わたしを見ている。そして、そうして……

 

 

 

 

「……はぁ、分かったわよ。ネプギアの気持ちはよーく分かったわ」

「じゃ、じゃあ……!」

「但し、これはあくまでアンタの為よ。今の言葉を要約すると、ネプギアにはアタシが必要で、どーしても着いて来てほしいって事でしょ?」

「うん!その通りだよ!」

「うっ…そ、そこは多少なりとも反論しなさいよ……」

 

すとん、とわたしと同じ様に立ったユニちゃんは、高台の先まで歩いて行って、手すりに手をかける。手をかけて、わたしの方へ振り向く。

 

「…アタシ、負けないから。先に一人前になるのはアタシだから。覚えておきなさいネプギア。アンタは…アタシのライバルよ」

「…勿論だよユニちゃん、わたしだって負けないから。でも…ライバルだけど、同時に友達でしょ?」

「それは……そうね。えぇそう。友達よ、それも大事な…ね」

「ユニちゃん…ユニちゃん大好きっ!」

「わぁぁっ!?ちょ、ネプギア!?」

 

感極まったわたしはユニちゃんに抱きついて、そのままほっぺに頬擦りまでしてしまう。あ、ユニちゃんのほっぺ柔らかくて気持ちいいなぁ…。

 

「えへへ…ユニちゃ〜ん♪」

「は、離れなさいよ気持ち悪い!後ここ高台だから!アタシバランス悪くなってるから!」

「ユニちゃんがいてくれるなら百人力だよ。むしろハンドレッドパワーだよ〜」

「なんで新しい力手に入れてるのよ…!っていやほんと危ないから!アタシかなり手すりから外に出てるから!」

「あ、そうだユニちゃん。今度わたしパッセに見学に行くんだけど、ユニちゃんもどう?」

「い、行く!行くから離して!離して離れて!いよいよシャレにならないレベルだから、大分アタシ空が見える体勢になってるからぁ!…………あ」

「へ?」

 

 

 

 

 

 

 

「落ちてる!落ちてるよユニちゃん!わぁぁぁぁぁぁっ!」

「それはアンタのせいでしょうがぁぁぁぁああああああああッ!!」

 

決闘して、思いをぶつけ合って、話もして……わたし達は、全力で相手の事を知った。自分の思いを打ち明けた。それは、普通の人が普通にする交友関係ではないと思うけど…わたしとユニちゃんは女神候補生だから、そういう形でもいいと思う。…ううん、例えどういう形でも…こうしてまた仲良くなれたのなら、より深い関係になれたのなら、わたしはそれで大満足。やっぱりわたしとユニちゃんは、いい友達になれるんだなぁ…と思うわたしだった。

────な、なんか最後にヤバい事になってる感じだけど、気にしないでね!わたし達次回でも普通に登場するから、いつも通りのオチだと思って下さいねっ!




今回のパロディ解説

・笑点
日曜夜(夕方)の長寿番組の事。もしネプテューヌシリーズメンバーで大喜利をやったらどうなるか。それは恐らく、OI第一話みたいな感じになるでしょう。

・ハンドレッドパワー
TIGER&BUNNYに登場する能力(NEXT)の一つの事。百人力でハンドレッドパワー…という事ですね。シンプルですが分かり易くてなんだかいい感じだと思います。

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