超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress   作:シモツキ

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第十八話 激突・女神候補生

海岸沿いのダンジョンに立つ、二人の少女。二人共ただ、静かに時間が経つのを待っている。──指定された決闘の、開始時刻を。

 

「…………」

「…………」

 

ここは、私達が…ネプギアとユニが、共闘の末に友達になった場所。そんな場所を決闘の場に選んだのは、ユニだった。こういう場合、決別の為に選んだ…というのが創作物における定番だけど、それは恐らく違う。思い入れがあるから…というのは間違いないだろうけど、少なくともマイナスの感情の下選んだ訳ではないと断言出来る。

 

「……さて、時間だね」

 

時間を確認した私は、ネプギアとユニの中間の辺りに移動する。

 

「これから行うのはネプギアとユニによる決闘。審判は私が務めさせてもらうよ」

『はい』

「それじゃあ、まずはルールの説明。時間制限、範囲制限は無しで、勝利条件は相手に降参宣言をさせるか私が戦闘不能と判断した場合のみ。けど、これは殺し合いの為の勝負じゃないから、私が目的に反すると思ったらその時点で『実力行使』で止めさせてもらう。…簡素だけど、ルールは以上だよ。質問はある?」

 

決闘、と言っても家柄やら何やらが関わっている騎士同士のものではないから、綿密にルールを考えた訳ではない。けど、ルールを増やし過ぎるとややこしいばかりで全力勝負からは離れてしまうから、敢えて簡素なものに留めていた。

私が質問があるか聞いた数秒後、すっ…とネプギアが手を挙げる。

 

「どうぞ、ネプギア」

「はい。範囲制限無しと言いましたけど…見えないところまで移動してしまっても決闘は継続するんですか?」

「するよ。その場合、私は女神化して追随するから」

「なら、アタシからも一つ質問を。決闘中にモンスターの横槍が入った場合も継続ですか?」

「その場合は……」

「わたし達が、モンスターさんの相手をするです」

 

私が具体的な返答をする前に声を上げたコンパ。続けて、アイエフとREDも口を開く。

 

「ノンアクティブモンスターだろうと四天王だろうと、何人たりとも二人の決闘にあやはつけさせないわ」

「その為にアタシ達は来たんだもんね。…あ、勿論見届けるのも目的だよ?」

「皆さん…感謝します」

「わたしからも感謝を…それと、なら人が来てしまった場合はどうするんですか?」

「それは大丈夫。私が話を通してここら辺一帯は進入禁止にしてもらったから」

「進入禁止…よくケイが了承してくれましたね…」

「ケイさんなりに二人の事を考えてくれてるんだよ、教祖だもん」

 

ネプギアの二つ目のものを最後に、質問は打ち止めになった。時間を見れば、丁度開始時間の数十秒前。それを見た私は、まず後ろで待機している三人に目をやって、続いてネプギアとユニを見て…手を掲げる。

 

「言うまでもないだろうけど…双方、女神の覚悟と誇りに恥じぬ様、全身全霊でもって戦う様に。決闘────開始!」

 

掲げられた手が振り下ろされると同時に女神化する二人。その光と共に、決闘は幕を開けた。

 

 

 

 

先手を取ったのは、ユニちゃんだった。早撃ちの様な射撃が、決闘の初撃になった。

 

「ふ……っ!」

 

最初から先手を取られる事を予想していたわたしは左へ空中側転。その動きで射撃を避けながら、上下が完全に逆になった瞬間M.P.B.Lの引き金を引いて、お返しの三点バースト射撃。それをユニちゃんはサイドステップで避けてわたしに照準を合わせ直す。

 

「撃たせないよ、ユニちゃん…!」

 

ユニちゃんが合わせ直しを始めた時点でわたしは地面を蹴り、地面すれすれの高さでユニちゃんへと突進する。

言うまでもなく、遠近両用のM.P.B.Lと射撃専門のX.M.B.で撃ち合ったらわたしが押し切られてしまう。だから、わたしの勝ち筋は……近付く事にある…っ!

 

「はっ、舐めんじゃないわよネプギア!」

 

突撃からの斬り上げは、ユニちゃんが飛翔した事で空振りに終わる。次の瞬間わたしに降り注ぐビームの連打。それをわたしはそのまま駆け抜ける事で避けて、わたしもユニちゃんを追う様に空へと舞い上がる。

 

「さぁ、射撃戦といこうじゃない!」

「そうはさせないッ!」

 

わたしとは逆に、距離を開ける事が勝ち筋のユニちゃんはわたしと正対しながら飛びつつ引き金を引く。それに対してわたしは螺旋を描きながら追蹤し、エネルギーを刀身へと充填させていく。

 

「ほらほら、避けてるだけじゃ勝てないわよ?」

 

ビームと実体弾を織り交ぜた射撃をしてくるユニちゃんに、わたしは反撃したい気持ちをグッと堪える。射撃と射撃の合間にほんの少しだけど隙があって、ユニちゃんの煽りもあって撃ち返したくなるけど…これがわたしの反撃を誘ってるんだって分かってる。功を焦って撃とうとしたところで、本命の射撃を撃ち込まれるんだって分かってる。だって、短い間だけどわたしはユニちゃんと一緒に戦っていたんだから。

 

(もう少し…もう少し我慢……!)

 

エネルギーの充填率が高まった事で光を帯び始めたM.P.B.L。それを身体で隠す様にしつつ飛ぶわたしの顔を、銃弾が掠めたけど……大丈夫。だってもう、充填は完了したから。

 

「……っ!スラッシュウェーブ!」

「ビームの斬撃!?…でも、その程度ッ!」

 

背に隠したM.P.B.Lを逆袈裟で振り抜くと同時に、その延長線上を駆け抜けるビームの刃。それは飛ぶにつれて幅を広げ、ユニちゃんへと襲いかかるけど…それを冷静に見切ったユニちゃんは下への回避行動を取る。その結果ビームの刃はユニちゃんの上を通り過ぎるだけに留まって、視界の端でそれを捉えていたユニちゃんはニヤリと笑みを浮かべる。

この瞬間、ユニちゃんは見切ったと思っていた。でも…ユニちゃんが見切れていたのは、スラッシュウェーブの『一発目』なんだよね。

 

「な……ッ!?」

 

驚くユニちゃんの眼前に迫る、二発目のスラッシュウェーブ。

そう、わたしは溜めていたのは二発分のエネルギーだった。一発分溜まった時点でその分をプールして、その上で刀身に充填していたからすぐには放てなかったけど…そのおかげでユニちゃんの意表を突く事が出来た。

ただ、それでもユニちゃんは身体を捻って避けてくる。……でも、それもまたわたしの予想範囲内。

 

「もらった……ッ!」

 

振り抜いたM.P.B.Lを両手で持つ事で無理矢理銃口を向けて、強引な回避で無理な体勢になっているユニちゃんへフルオート。上手くいけば、これで……!

 

「……ーーッ!まだ、まだぁッ!」

 

光弾がユニちゃんに辿り着く直前、X.M.B.から放たれたビームの柱がそれ等をまとめて飲み込んだ。…今のに、対応してくるんだ……。

 

「…中々、上手い手を取ってくるじゃない…」

「わたしだって、女神候補生だからね」

「…アンタ、覚悟は決まったっていうの?」

「うん。決まったから、わたしはユニちゃんと戦いにきたの」

「…なら、聞かせてよ。昨日の今日で決めたっていう覚悟を」

 

わたしもユニちゃんも、武器を構えたまま言葉を交わす。今はお互い多少の隙はあるけど…それを突いたりはしない。だって、これはわたしとユニちゃんの、覚悟と意地の勝負だから。

一つ、深呼吸。わたしの覚悟はユニちゃんにとって絶対に気に食わない事で、聞いたら怒ると思う。だから、出来る事なら言わずに済ませたい…って思う気持ちも、正直に言えば、ある。けど……それじゃ、わたしは前に進めない。友達にすら覚悟を言えない様じゃ、それこそユニちゃんの言う『甘っちょろい』だけの自分でしかない。だから……

 

「──わたしは、誰であろうと助けるよ。だって、それが女神だもん。わたしが目指すのは『守護』女神だもん。…これが、わたしの覚悟だよ」

「そう…なら、」

 

 

 

 

「────アタシは、アンタを否定するッ!」

 

空気が爆ぜる様な音と共に、ユニちゃんは一直線にわたしへと突撃してきた。これにはわたしも予想外で、カウンターの動きを取らずに後ろに下がる。

 

「どんなに崇高な理想でも、どれだけ温かな言葉でも、それを実現出来なきゃ意味はない!夢を語るだけじゃ、女神は務まらないのよッ!」

「でも、だからってわたしは妥協出来ない!わたしには、それが正しいとは思えないよッ!」

 

近距離からの散弾を、わたしは真下にスライドしながらM.P.B.Lを横にして防御。流石にM.P.B.Lを持つ手までは防御出来ないけど…わたしは既に散弾の範囲端まで移動済み。その上で当たる数発程度ならプロセッサが耐えきってくれる。むしろ怖いのは、それよりも追撃。

 

「アンタにとっては正しくないかもしれないけど、それはアンタにとってでしかないじゃない!国民は、守るべき人は無理な理想を掲げる事を肯定してくれるって言うの!?それがアンタの自己満足なんかじゃないって断言出来る訳!?」

「それは…分からないし出来ないよ!出来ないけど…それはユニちゃんもじゃないの!?守るものの取捨選択をして、零れ落ちた人に対しては諦めてって言うの!?わたしにはそっちの方が、仕方ないからって自己満足してる様に思えるけど、それは違うの!?」

 

中距離と近距離の間、ギリギリ近接格闘を仕掛けられない位置取りでビームを乱射するユニちゃん。それに対抗してわたしも連射で迎え撃つけど…同じ戦い方をするとなると、どうしても武器性能の差で押されてしまう。だけど、この状況なら一瞬でもチャンスがあれば接近戦に持ち込める…!

 

「……っ…そんな事言ってないじゃない!確かにアタシは敵であれば人でも撃つつもりだけど、守るべき人まで取捨選択したりはしないわよ!無茶だろうが何だろうが、守るべき人は守るに決まってるじゃない!」

「それって、わたしと何か違うの!?守るべき人は無茶でも守るって、一度線引きするかどうかの違いだけで、『皆守りたい』って事には変わらないんじゃないの!?」

「その線引きがアタシには…アタシ達候補生には必要なのよ!ネプギアだって、分かってるんでしょ!?アタシ達には出来ない事が沢山あるって!知ってるでしょ!?お姉ちゃん達だって、頑張って頑張って必死になってやっと世界を救う事が出来たんだって!守りたいって本気で思ってるなら、尚更きちんと現実を見なさいよッ!」

「現実?…見えてるよ、わたしにも見えてる!」

「……ッ、アンタのどこが…!」

「──仲間がいるもんッ!わたしには、わたしに手を貸してくれる人達がいるんだよッ!」

 

何回もの撃ち合いの末、遂に見つけた僅かな隙。そこへわたしは捻り込む様に踏み込んで一閃。後一寸足りなくて、M.P.B.Lの刃はユニちゃんの腹部プロセッサを斬り裂くだけに留まったけど…それでも、攻撃を届かせる事が出来た。遠距離以上が主戦場のユニちゃん相手に、銃撃じゃなくて剣撃を当てる事が出来た。

 

「イリゼさんが、コンパさんが、アイエフさんが、REDさんが、いーすんさんがいる!皆力を貸してくれてる!…ううん違う、わたしを助けてくれてるのはこの人達だけじゃない!」

「それと現実に、何の関係が……」

「ユニちゃんも、その一人だよッ!」

 

わたしの一撃を受けた瞬間、ユニちゃんは大きく後方へ飛んだ。それと同時にX.M.B.の砲身が可変し、内側から光が漏れ出す。

 

「……ッ!エスクマルチブラスター!」

「……っ!マルチプルビームランチャー!」

 

わたしとユニちゃん、同時に発砲。それぞれの砲から放たれた大出力のシェアエナジービームが空中で激突し、周囲に拡散しながら爆発を起こす。火器としての性能はこっちの方が下で、実際射程を始め色々な面で負けてはいるけど…射程圏内での照射ビームの火力ならM.P.B.Lも負けてはいない。

エネルギーの激突によって大きな反動が生まれて、わたしは右手を起点に軽く仰け反ってしまう。それをわたしは身体の力を抜く事で流し、爆煙が霧散した瞬間に仕掛けてくるだろうユニちゃんへ対応する為に構え直しを……

 

 

 

 

 

 

 

 

「何なのよ、何なのよアンタはッ!!」

「なぁ──ッ!?」

 

爆煙を蹴散らす様に中心から現れたのは…ユニちゃん。爆煙を切り裂いたのは弾丸でもビームでもなく、ユニちゃん本人だった。

ユニちゃんは突っ切るや否や、わたしを捕捉して突進をかけてくる。それがただの銃撃ならともかく、意思を持ちわたしとも大差ない大きさの相手となると虚を突かれた状態じゃ流石に避けられない。咄嗟に腕を交差させて防御はしたものの、わたしはそのまま崖まで押し切られてしまった。

 

「かはっ……」

「皆が助けてくれる?アタシもその一人?はっ、ほんとにアンタは甘いわね!それって結局、他人任せじゃない!」

「違うよ…そうじゃ、ないよ…!」

「違わないわよッ!他人ありきなんでしょ!?そうなんでしょ!?」

「……っ…だったら、ユニちゃんはわたしが大変な時、助けてくれないの…?」

「そ、それは……」

 

わたしを崖に叩きつけて以降続いたユニちゃんの殴打は、わたしがその問いをぶつけた瞬間止まった。それを見逃すわたしじゃない。

それまで防御の為に交差させてた腕を解放してユニちゃんを突き飛ばすわたし。そこから即座に崖を蹴って放ったパンチは、空中で姿勢を直したユニちゃんの膝蹴りとぶつかり合う。ぶつかり合って……止まる。

 

「嘘…蹴りを止められた……?」

「パンチやキックも、技術次第で威力や精度が変わるものなんだよ、ユニちゃん」

「そんな事…言われなくても分かってるわよッ!」

 

X.M.B.を振るってユニちゃんは殴りつけてくる。それをわたしは後退して避け、近距離から射撃。光弾と一緒に、ユニちゃんへ言葉も投げかける。

 

「ユニちゃん、ユニちゃんは強いよ。もしかしたら、わたしより強いのかもしれない…でも、やっぱりユニちゃんは間違ってるよ!」

「だから、それは…」

「──無理、してるじゃんッ!」

 

発砲しながら突撃。旋回しながら斬り払い。攻撃の合間を突いた飛び蹴り。わたし達は崖に沿う形で、二重螺旋を描く様に肉薄と離脱を繰り返して刃と弾丸を、言葉をぶつけ合う。

 

「わたしには分かるよ!ユニちゃんは無理してるって!」

「してたら…無理してたらなんだってのよ!女神は皆自然体でいるべきだっての!?」

「そうは言わないよ!でも…ユニちゃんだって、助けてくれる人がいるでしょ!?なんで…なんで頼らないの!?」

「頼ってるわよ!ケイにもシアンさんにも、アタシは沢山…」

「なら、もう少し余裕を持ったっていいじゃん!完璧にならなくたっていいじゃん!」

「意味が分からないわよ!女神なのに半端でいいっての!?」

「そうだよ!だってお姉ちゃんもイリゼさんもそうだから!」

「は、はぁ!?」

 

本当に意味が分からない、と言わんばかりに素っ頓狂な声を上げるユニちゃん。そこへわたしは言葉を続ける。

 

「お姉ちゃんはいざという時凄く頼りになるけど、普段から凄く頼りになるって訳じゃない!イリゼさんはいつも気遣いしてくれるけど、時々気遣いの方向性がズレてたりする!きっとノワールさんもベールさんもブランさんもそうだよ!ユニちゃんのお姉ちゃんはそうじゃないの!?」

「それは…そうかもしれないけど、お姉ちゃんは完璧であろうとしてるわ!イリゼさんやネプテューヌさんだって、駄目なところを放置してる訳じゃないでしょ!?」

「だからだよ!だからお姉ちゃん達はきっと仲間になったんだよ!一人で完璧になるのは無理だから、皆で協力する事で、助け合う事でなろうとしてるんだよ!わたしが憧れてるのは、そういう人達だよ!ユニちゃんが憧れてるのは無理に一人で全部やろうとする女神なの!?」

 

二人の射撃が崖を叩いて砂埃が起こる。それもまた、射撃とわたし達の飛行による風圧で吹き飛んでいく。

気付けば、プロセッサはボロボロになっていた。これまではなんとか有効打を避けられていたけど、もう耐えられるとは思わない。それに、仮にプロセッサが無事でもそろそろ体力や集中力がそろそろ尽きてしまう。だから──勝負を決めるなら、今しかない……ッ!

 

「そうかもしれない…だとしても、アタシは強くなるって決めたのよ!だって今ラステイションの女神は、アタシしかいないんだから!お姉ちゃんを助ける為にも、お姉ちゃんが帰って来られる場所を守る為にも…アタシはネプギアの覚悟は認められない!」

「わたしも強くなるって決めた!だけどわたしにはわたしの力になってくれる人がいるから、その人達と一緒に強くなるって、助け合うって決めたから!その為にわたしも、皆の力になれる存在になるって決めたから!だから…わたしはユニちゃんの覚悟を認めない!」

「……ーーッ!ネプギアぁぁぁぁああああああああッ!!」

「……ーーッ!ユニちゃぁぁぁぁああああああんッ!!」

 

最後の突撃。お互いに至近距離から撃ったビームが互いの頬を掠め、その光と共にわたし達は交錯する。

すれ違ったその瞬間に、ユニちゃんも勝負を決めようとしているのが分かった。さっきの照射ビームの激突といい、わたしとユニちゃんは性格は違うけど…やっぱり気は合う様な気がする。だから、わたしは思う。今すぐには無理だけど、いつかはユニちゃんにもわたしの思いを分かってもらえるって。いつかはわたしもユニちゃんの気持ちを分かる様になるって。それにさ、ユニちゃん…わたしは、今でもユニちゃんを友達だと思ってるよ。

わたしは真上にいるユニちゃんへ、ユニちゃんは真下にいるわたしへ最後の一撃を込めた武器を向ける。照準を合わせ、引き金に指をかける。さぁユニちゃん、これで決めるよ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

────その瞬間、わたしの目に崖から剥がれ落ちた岩盤の一部が映った。

 

 

 

 

二条のビームが、両者の得物から駆け抜けた。ユニの放ったビームはネプギアのM.P.B.Lに直撃して弾き飛ばし、ネプギアの放ったビームはユニの頭上を越えていった。

武器への直撃を受けたネプギアはその衝撃で落下。その勢いを殺しきれずに地面に激突してしまう。それに対するユニは…追撃も追随もせず、ただその場に止まっていた。

 

「痛た…女神じゃなきゃ大怪我してたかも……」

「…………」

「M.P.B.Lは飛んでいっちゃったし、この状況じゃ動く前に撃たれちゃうね…そうでしょ?ユニちゃん…」

「アンタ……」

「悔しいけど…仕方ないね。うん…イリゼさん、わたし降参します」

 

残念そうな表情を浮かべ、ネプギアはそう言う。女神化して追従していた私は、ネプギアのその言葉を聞いて降り立つ。

 

「…降参で、いいんだね?」

「はい。本当に、ユニちゃんは強いですから」

 

その言葉にどんな意図があれ、降参宣言したらそれで勝敗を決するとルールに付けた以上、審判である私はそれを遂行するだけ。だから、私は言う。

 

「……分かった。ならこの決闘、勝者はユ──」

「…何でよッ!」

 

言いかけた言葉は、ユニによって遮られた。黙っていれば自分の勝ちが決定するにも関わらず、ユニは遮った。

武器を離し、地上に降り立ったユニはネプギアの胸ぐらを掴んで立たせる。その顔は、納得出来ないと叫び出しそうな表情だった。

 

「な、何でって…ここから逆転は無理だから…」

「そうじゃない!どうして射撃を外したかって訊いてんのよ!アタシには分かるわ、あれは外れたんじゃなくて外したんだって!」

「…そっか、やっぱりユニちゃんには分かるよね…でも、深い理由なんてないよ?」

「深い理由なんてない?…アタシを、落石から助けたってのに?」

「え……?…それも、気付いてたの…?」

「射撃が外れた瞬間岩が弾ける様な音がして小石が飛んできたら誰だって分かるわよ!」

 

そう、ネプギアの射撃は外れていたけど…当たらなかった訳じゃなかった。反射的に私が破壊するより前(審判としてその行為は宜しくないと思うけど)に、ネプギアの射撃がユニへと迫る岩を四散させていた。…けれど、ユニはその確証を得られても…否、得られたからこそ余計に吠える。

 

「これは真剣勝負なのよ!アタシは全力で戦ってたのよ!その上で負けるなら、悔しくても認めるって思ってたのよ!なのに、なのにアンタは…こんな勝ち方、したって欠片も嬉しくないッ!」

「そっか…ごめんねユニちゃん。でも…わたし嫌だよ。わたしも勝ちたかったけど、それよりずっとユニちゃんが酷い怪我する方が嫌だよ。だってユニちゃんは、わたしの初めての友達だもん」

「……っ…どうして、どうしてアンタは…ネプギアは、そんなに他人の事を思うのよ…他人の事を思えるのよ…!」

「…それは、上手く言葉に出来ないかな…でもね、それはわたしだけじゃないよ?」

「…イリゼさんやネプテューヌさんでもそうした、って言いたいの?」

「ううん、違う。ユニちゃんはさっき、わたしが大変な時助けてくれないのって訊いたら言葉に詰まったでしょ?それって、助けないなんて事はないって事でしょ?…わたしを助けてくれるユニちゃんだもん。そのユニちゃんを助けるのは、当然の事だよ」

「……──ッ!」

「あっ…ゆ、ユニちゃん…ユニちゃん!?」

 

ネプギアの言葉を聞いた瞬間、ユニはビクリ…と震えて、飛び去ってしまった。ネプギアを離し、この場から離れてしまった。

それを、ネプギアは追おうとする。……けど、

 

「…あ、あのイリゼさん!決闘を放棄しちゃう形になりますけど…ユニちゃんを、追ってもいいですか…?」

 

……なんて質問を私にしてきた。全く、この子はもう…。

 

「あのねネプギア、そういうのは間違ってるよ」

「え…ま、間違ってる…?」

「うん、間違いも間違い、大間違いだよ。……いいですか、じゃなくて…追ってきます、でしょ?」

「……!は…はい!わたし、ユニちゃんを追いかけてきます!」

 

一息で飛び上がったネプギアは、ユニの飛んでいった方向へと加速する。

こうして、二人の決闘は終わった。有耶無耶になる形で、終わってしまった。……でもきっと、これはこれで悪い終わり方じゃない…そう、飛んでいくネプギアの背を見ながら私は思った。




今回のパロディ解説

・「〜〜アタシは、アンタを否定するッ!」
デート・ア・ライブの主人公、五河士道の台詞の一つのパロディ。これだけだと一巻のパロディに見えますが、否定なので正確には六巻のパロディだったりします。

・「〜〜何なのよ、アンタはッ!!」
機動戦士ガンダムSEED Destinyの主人公の一人、シン・アスカの名台詞の一つのパロディ。ユニはなにかとガンダムパロが多いですよね。ビームのSEもそうですし。

・「……ーーッ!ネプギアぁぁぁぁああああああああッ!!」
「……ーーッ!ユニちゃぁぁぁぁああああああんッ!!」
所謂掛け合いのパロディ。ガンダムSEEDのキラとアスラン、ガンダムAGEのアセムとゼハート、マクロス30のリオンとロッド等、結構この類いの掛け合いは多いですね。

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