超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress   作:シモツキ

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第百五十四話 光り輝く意思と信頼

ギョウカイ墓場に複数ある出入り口の内、イリゼ達が突入に使った最も地形的に安全な場所。そこでは、今も黄金の第三勢力(ゴールドサァド)とモンスター群による戦闘が続いていた。

 

「ちっ、中への増援を避ける為に出入り口を背にしたはいいが……」

「四人で抑えるには、やっぱりちょっと広過ぎるわよね…ッ!」

 

斬り伏せ、叩き潰し、返り討ちとする中でエスーシャとシーシャは背中を合わせ言葉を交わす。前衛として出入り口から多少離れている二人には四方八方からモンスターが襲いかかり、常に全方位への注意を余儀なくされている。

 

「ケーシャ、左を任せられるかな…ッ!」

「はい、お任せをッ!」

 

半円状に四人と出入り口を取り囲み突進するモンスター群を前衛だけで押し留められる筈もなく、断続的に二人から離れた位置のモンスターがすり抜けていく。

それを処理するのがビーシャとケーシャ。大きく耐久力に長けるモンスターへはビーシャがロケット弾頭を叩き込み、小さく機動力に長けるモンスターはケーシャが二丁のサブマシンガンできっちりと処理。彼女達はモンスターに囲まれる事はほぼなく、その点においては前衛二人より余裕があるが、代わりに二人と違って後ろに待機している味方がいない…即ち取り零す訳にはいかないというプレッシャーがある為、実際の精神的負担は大差ない。

 

「皆、まだ体力は大丈夫!?この状況、これ以上は無理だって思う前に退かなきゃ飲み込まれるわよッ!」

「そうなれば、まあまず命はないでしょうね…!」

「だが、退けは奴等は決戦の邪魔をするかもしれない…!」

「それは、女神に手を貸すヒーローとして見過ごせないのだよっ!」

 

気を抜けば崩れる、気を抜かなくても何かの拍子に崩れかねない彼女達の戦線。それでも四人は臆す事なく、声を上げてモンスターを薙ぎ倒す。…それは偏に、墓場の奥へと向かった友の為。犯罪神の手から次元を救い、平和を取り戻すべく向かった女神とその仲間の為に戦う彼女達の心は、モンスター群程度には到底折れないものだった。

そして長い戦闘の末、四人が耳にしたインカムへと一本の通信が走る。……決戦が始まったという、女神達からの通信が。

 

「遂に始まったか…!」

「神同士の戦い…きっと激しさも相当なものなんでしょうね…!」

 

通信が入った瞬間四人は全員はっとした表情を浮かべ、その後ビーシャとシーシャが声を発する。

四人の戦いは、その決戦が少しでもイリゼ達に有利となるよう行っているもの。故に彼女達へ緊張が走らない訳がない。

 

「…どう、しますか……?」

「もう少しモンスターの数を減らしておきたいところだが…状況次第ではそうもいかないだろうな……」

 

しかしその緊張は、決戦そのものを思っての事だけではない。彼女達は各国ギルドの長であり、当然この後の展開次第ではこの場を離れてそちらの指揮に回る必要がある。しかし何か起きてから、ではなく何か起きる前に戻らなければ指揮に支障が出てしまう可能性も大いにある為、先を見越して離脱しなければならない。

現に教祖の四人は、先程各国教会へと戻っている。四人もどこかのタイミングで同様に離れなければならないとは分かっていたが、少しでもモンスターを減らしておきたいという思いも強く、ならばどうするかという協議を戦闘中に行い……一先ず決戦開始を退くかどうか指標に決定していたのだった。

 

「……退きましょ、皆。後ろ髪引かれる思いはあるけど…あたし達の本来の役目は、ここじゃなくギルドで支部長として協力する事だもの」

「…だな。私はそれで異論ない」

「しかしであれば、その前に……!」

「蹴散らせるだけ、蹴散らしましょう…ッ!」

 

特に決めている訳ではないが、四人の中では何かとまとめ役の立ち位置を担う事が多いシーシャ。そんな彼女だからか三人もシーシャの言葉へ素直に頷き、されどそれならばと出し惜しみ無しの攻撃体勢に移行していく。

 

「わたしだ、予定通りに事を進めてくれ。わたしもすぐにそちらへ戻る」

「これより作戦は……あ、うん、そんな感じ。多分それ位かかるから、準備はそっちで……ごほん!そのようにしてくれ給え!」

 

それと同時に四人はギルドへ連絡。墓場前より戻る事を伝え、どこから突破するか選定すべく目を走らせる。

これから自分達の戦場は、個人ではなくギルドの長としてのものになる。この場を完全に開けてしまう事になる。…が、それでも友と同じ目的の為に戦う事には変わらない。そう思って彼女達は切り上げの全力を放とうとし……その瞬間、四人へほぼ同時にギルドからの返答が入った。

 

『え……?』

 

予想だにしなかった職員の言葉に、一瞬四人の足が止まってしまう。即座に我に返って彼女達は戦闘に戻るが、表情に浮かぶ驚きはまだ消えていない。

──必要な指揮はそこから出してくれればいい。出来る限りこちらは自分達で何とかするから、支部長には思うままに戦ってほしい。…それが各国からの、四人への言葉だった。

 

「…はは、驚いた…まさかこんな事を言ってもらえるとはね……」

「皆さん……」

 

四人の抱いた驚きは、次第に感銘へと変わっていく。自分がどれだけ職員達から思われ、支部長として認められていたのかが伝わるその言葉が、四人の心を充足感で満たしていく。そして浮かべる……自然な笑み。

 

「ふ、ふふふ……どうやら皆、返答は同じなようだな!」

「えぇ、退くつもりだったけど…逆にエールを受けたんじゃ、支部長として退く訳にはいかないわ」

「私、応えたいです…いえ、応えます。職員の皆さんの、ご厚意に」

「彼等の思いなんて、興味ない……なんて発言には、それこそ興味ないね…!」

 

シーシャとエスーシャは大きく跳んで後退し、四人はモンスター群を前に並び立つ。乾坤一擲の為に貯めていた力を一度解き、それを全身に張り巡らせる。

自分達は友の為に、やれる事をやろうとした。そんな自分達へ、職員が出来る事をしてくれようとしている。ならば、自分達の思いも職員の思いも正しかったのだと証明する事こそが、職員達への最大の恩返し。……その思いを胸に、四人は駆ける。

 

「お見せしようではないか…ヒーローの、力をッ!ラウンドショットッ!」

 

大地を蹴って跳び上がり、空から眼下のモンスター群へ弾頭を撃ち込むビーシャ。反動でビーシャは大きく身体を揺さぶられるも、逆にそれを利用し迎撃の回避と滞空時間の延長を両立。着地後も長大なバズーカを巧みに操り、近付くモンスターへは素早い蹴りも交える事でモンスターを圧倒する。

 

「この残弾数なら……バレットアプローチ!…そしてッ!」

 

後衛だけが自分の出来る戦いではない。そう言わんばかりに機敏な動きでモンスターの間をすり抜け、すれ違いざまにケーシャは急所への射撃をヒットさせていく。背後からモンスターが襲いかかった瞬間に弾が切れ、一見すればピンチな状況に彼女は陥るも、眉一つ動かさずにケーシャは振り向きながら手脚を絡め、一瞬の間に首をへし折り地へと沈めた。

 

「片っ端からKOしてやろうじゃないの!龍昇拳ッ!」

 

鋭く、重く、力と技術が高次元で組み合わさったシーシャの打撃。無駄打ち無しの拳は一発一発がモンスターへめり込み、激しい音を立てる蹴撃はその全てがモンスターを打った方向へ押し曲げる。薙ぎ倒していく彼女の前に大柄のモンスターが現れ、その体格で押し潰そうとしてきたが……天へ昇るかのようなアッパーの前では無力だった。

 

「その悪しき力諸共、我が剣の錆となるがいい…!ヴレイヴァー!」

 

両断。その文字の通りにエスーシャの剣が、モンスターの身体を二つに変える。それなりの業物ではあっても何か特殊な力がある訳ではないその剣がいとも容易く斬り裂いたのは、それだけの力をエスーシャが持っている事の証明。巧みな踏み込みと間合いの確保で芯に捉えた斬撃を放ち続け、反撃すらも刃でモンスター諸共無に帰してしまう。

 

((全身全霊、全力を尽くして……ここは守り抜く…ッ!))

 

どれだけ倒そうと、元の物量の前では多勢に無勢は変わらない。汚染モンスターは四人と言えど一撃での粉砕は出来ず、戦えば戦う程に無茶な戦いである事を思い知らされる。

だが、それがどうした。そう四人は心の中で吠え、遥か後方で戦う仲間の戦場への横槍はさせまいと戦い続ける。──人の長でも女神でもない、たった四人で戦う少女達……だが彼女達の掲げる意思は、黄金色に輝いていた。

 

 

 

 

開戦の号砲は、犯罪神の放つ負のシェアの烈風だった。それをわたし達が正面から力でねじ伏せて……戦いが始まった。

 

「援護します、ベールさん!」

「頼みますわ、ネプギアちゃん!」

 

猛スピードで舞い上がり、空からランスチャージをかけようとするベールさんを援護すべく、わたしは側面から正面に回る軌道を描いてM.P.B.Lを連射。直前に仕掛けて今は後退中のユニちゃん、イリゼさん、ブランさんに追撃しようとしていた犯罪神は、余裕綽々でわたしの射撃を防いで……でも止まったその一瞬で、ベールさんが空から飛来する。

 

「はああああああッ!」

「……ふんッ!」

 

わたしだったらまず受け止めようとは思わない、強烈な突撃。けれど犯罪神は振り上げた双刃刀で受け止め、数瞬のせめぎ合いの後ベールさんを押し返す。……けど、お姉ちゃん達が犯罪神に反撃のチャンスを与えない。

 

「ノワールさんッ!」

「えぇ、思いっ切り放ちなさいッ!」

「ロムちゃん、合わせるわよッ!」

「は、はい…っ!」

 

右側からラムちゃんとノワールさん、左側からお姉ちゃんとロムちゃんが鋭い弧を描いて犯罪神を強襲。ロムちゃんは横に広がる無数の魔力弾、ラムちゃんはその数倍の大きさを持つ数発の魔力球をお姉ちゃん達に先行させ、二組の連携で攻め立てる。

犯罪神が前回戦った時より強いのは、戦いが始まる前から感じていた。だからわたし達が選んだのは、連携による波状攻撃。複数人での絶え間ない攻撃を仕掛け続ける事で、余裕のある内に少しでも削ろうというのがわたし達の作戦。

 

「甘い……!」

 

二種類の魔法をギリギリまで引き付け、その上で跳躍による回避を行う犯罪神。そこへほんの僅かにズラしたタイミングて肉薄したお姉ちゃんとノワールさんが得物を振るうけど、それが逆に災いし、二人は犯罪神の回転斬りで纏めて迎撃されてしまう。

一対一なら四天王が相手でも互角以上に戦えるお姉ちゃん達でも、犯罪神には一人であしらわれる。勿論今は被害を抑えて削る事を優先してるから、勝負を決めるつもりならまた違うんだろうけど……それでもその強さを目の当たりにすると、ゾッとする。もしこれだけ強い犯罪神が、墓場を出て世界の破壊を始めていたら、どうなっていたんだろうって。

 

(……いや、まだそれは防げた訳じゃない。わたし達が負けたら、その瞬間からきっと犯罪神は破壊を始める。わたし達の大切な国が、信次元が…壊されちゃう…!)

 

負けた時の事を思うと、背筋にぞくりと寒気が走る。でも同時に、勝たなきゃって使命感も一層強くなる。

 

「甘ぇってんなら…ッ!」

「より強く攻めるまでの事…ッ!」

 

唸りを上げて空を切る、三つの戦斧。一つはブランさんの投擲した大型の斧で、二つはイリゼさんの投げ放った片手持ちの斧。それは三つ共イリゼさんの作り出した、即席の武装。

 

(……っ!いきます…ッ!)

 

わたしの位置からは投げるお二人の姿も見えて、お二人からもわたしが見えていて、投擲と同時にわたしはアイコンタクトを受け取った。合わせて攻撃してほしい、というお二人からの意思を。

半ば反射的に地を蹴って、一直線に犯罪神へと突進。M.P.B.Lの刀身にビームを纏わせて、戦斧と挟撃する形へと持っていく。

自分でも驚く位、絶妙なタイミングで動く事が出来た。普通の相手なら、絶対にどれかは当たると確信出来る程の、イリゼさん達との連携。……それでも、犯罪神の表情は変わらない。

 

「…次はこちらか」

「く……ッ!…でもッ!」

 

振り出された刃の軌道から飛翔する闇色の斬撃が放たれ、戦斧を全て叩き落とす。犯罪神はその動きのまま振り返り、わたしの袈裟懸けに双刃刀を打ち合わせてくる。…犯罪神は眉一つ動かさないのに、対するわたしは動揺が表情に出てしまう。

今のタイミングですら対応されるのか。…それが、わたしの抱いた動揺の正体。だけどだからってたじろいたりはしないし……それならそれで、やれる事はある。

 

「これで……ッ!」

 

普通に斬り結んでいたら、ベールさんの様に跳ね返される事が目に見えている。それが分かっているからわたしは展開しているビームの出力を上げつつも、刀身からビームを解放。エネルギー供給がされたまま制御から離れたビームは全方位へと拡散し、目眩しには十分な光を放つ。

 

 

「今よ二人共ッ!」

『うん……ッ!』

 

近接戦の間合いで閃光が起きれば、まず防ぐ事なんて出来る訳がない。そしてわたしが横に飛び退いた瞬間、ユニちゃん、ロムちゃん、ラムちゃんがそれぞれビームと魔力を照射。更にそこへお姉ちゃん達の遠隔攻撃が追従し、わたしも距離を開けたところで照射に参加。女神全員による怒涛の遠隔攻撃が犯罪神のいた地点を中心に爆発を起こして、爆煙が周囲に巻き起こる。

 

「…さて、ここまでは狙った通りに進みましたけど……」

 

構え直しながら、わたし達は地上と空中に分かれて待機。警戒心はそのままに、犯罪神の姿が視認出来るようになるのを待つ。

……そんな時だった。こういう時つい言いたくなっちゃう、言ってしまいがちな文言だけど…絶対に言っちゃいけない、ある系統の言葉が出てきたのは。

 

「どう、なったかな……」

「ふっふーん、わたしたちみんなでこれだけやったのよ!これならダメージどころか、たおせちゃってるかもしれないわね!」

『……!?』

「……へ?…な、何……?」

 

びくり、と肩を震わせるや否やラムちゃんへと視線を集中させるわたし達。ラムちゃんは意味が分からず驚いているけど……今ラムちゃんが言ったのは、間違いなく『倒せてないフラグ』。これは冗談なんか許されない大切な最終決戦だけど…それでもざわりとわたし達の中を、嫌な予感が駆け巡る。

元々これで仕留めるつもりだった訳じゃない。最初からこれで倒せるとは思っていない。でも……嫌な予感に対する回答は、わたし達の予想を超えるものだった。

 

『な……ッ!?』

 

立ち昇る煙を突き破って現れる、鋭い影。咄嗟にわたし達は反応し、その影へ攻撃しようとするけど……その影は、一つじゃなかった。一つどころか、二つ、三つ、四つ……ううん、それ以上。

 

(この、動きは……ッ!)

 

その影は犯罪神ではなく、刃を彷彿とさせる犯罪神の羽根。それ等はわたし達が撃ち落とす為の攻撃を当てるより早く四方八方へと飛び回り始め、その先端から光芒がわたし達へと襲いかかる。

わたしは回避し、羽根に向かって反撃の射撃。けれど羽根は素早く、更には次々と攻撃が撃ち込まれる事で、わたしは全然狙いを定められない。

 

「ちっ、同じ翼をしてるからまさかとは思ったけど……」

「やっぱテメェも使ってくる訳か…ッ!」

 

羽根が空を乱舞しわたし達の包囲を掻き乱す中、薄くなった煙の中から空へと犯罪神が現れ昇る。回避と斬り払いでビームを凌ぐノワールさんとブランさんが視線を向けた犯罪神の翼は、半数以上の羽根が無くなっている。…けど、すぐにわたしは理解する。羽根を遠隔操作端末として射出したところで、然程犯罪神の機動力が落ちたりはしないんだって。

 

「反撃が来るわよ、皆……ッ!」

 

そうお姉ちゃんが口にしたのとほぼ同時に、犯罪神が動き出す。真っ先に狙われたのはイリゼさんで、羽根で退路を塞ぎつつ物凄い速度で肉薄していく。その瞬間援護の選択肢がわたしの頭に浮かぶけど…わたしもそれが出来る程の余裕がない。

 

「こ、の……ッ!」

 

迫られたイリゼさんが選んだのは、長剣を双刃刀に叩き付ける事による攻撃逸らし。逸らされた犯罪神は即座に次の攻撃を…すると思いきや、速度を落とさず今度はユニちゃんへと向かっていく。突進からの斬撃をユニちゃんは避け切れず、胸元を軽く斬られるけど……またも犯罪神は追撃しない。

わたし達の連携を断ち切ったのに、その後も犯罪神は一撃離脱を続けている。最初その意味をわたしは分からなかったものの、次第に意図が読めてきた。…恐らくこれは、わたし達を少しずつ追い詰める為の攻撃。

 

(仲間なんか一人もいないのに、わたし達から奪った攻撃権を維持し続けるなんて……)

 

遠隔操作された羽根による攻撃は、対応に意識を割けば十分回避も防御も出来る。でもそれじゃ、防戦状態は変わらない。犯罪神に狙われれば、軽傷だけど受けてしまう。かといって無理に反撃しようとすれば、きっと遠隔攻撃を避け切れない。

……強い。本当に本当に、犯罪神は強い。まだお互い大きなダメージは負ってないけど、わたしと犯罪神じゃ格が違うとこの状況に思い知らされる。…だけど、まだまだ万策尽きてなんかいない。まだ諦めるには……程遠いッ!

 

「……今だッ!避けよ、ネプギアッ!」

「……──ッ!」

 

その瞬間、後方から聞こえたマジェコンヌさんの声。凛としたその声に弾かれるようにわたしが真下へ下降すると、わたしの上を多彩な武器が、魔法やエネルギー攻撃が駆け抜けていく。それ等は犯罪神や、飛び回る羽根へと襲いかかり……ほんの一瞬だけど、わたし達は犯罪神の連撃から解放された。

これまで皆さんは、一切戦闘に参加していなかった。自分達は普通に戦っても力になれないからって、ただ一瞬の為だけに、わたし達が真に助力を求めた時最高の援護をする為に、今までずっと戦いを見定めていた。……一瞬しか力になってくれない?…それは違う。一瞬が、刹那よりも短い時間が勝負を分ける事もある本気の戦いにおいて、最高のタイミングで一瞬を作ってくれる皆さんの存在は……一体どれだけ頼もしい事か。

 

「この一瞬は……無駄にしないッ!」

 

防御の為犯罪神が止まり、羽根の動きも鈍ったその一瞬で、お姉ちゃん達は背中合わせで一ヶ所に集まる。そしてイリゼさんの声を合図にトップスピードで散開し……羽根への反撃を開始した。指先や微妙な顔の向きにすら無駄のない挙動で攻撃を避け、追い縋り、追われる者から追う者へと変わっていく。…わたし達女神候補生には真似出来ない芸当を、犯罪神に見せ付ける。

わたしは諦めていない。お姉ちゃん達だって、諦めていない。勝とうという思いは……微塵も揺らいでなんかいない。

 

「皆!わたし達も続くよッ!」

 

攻撃を阻む羽根が追い立てられ、開いた空間を通ってわたし達四人は犯罪神への攻撃を再開。声と視線だけで連携を組み直して、四人で犯罪神に向かっていく。──犯罪神にはない、仲間との信頼を力に変えて。




今回のパロディ解説

・龍昇拳
ストリートファイターシリーズに登場する、リュウを始めとするキャラの使う技の一つのパロディ。これは原作からあるネタ(スキル)ですが…最早説明不要ですね。

・──人の長でも女神でも〜〜だが〜〜
カードファイト‼︎ヴァンガードシリーズのユニットの一つ、メサイアニック・ロードブラスター(G4)のフレーバーテキストのパロディ。新ではなく旧の方ですよ。

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