超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress   作:シモツキ

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第百五十三話 決戦の幕開け

前哨戦…と言うには些かトリッキー過ぎる下っ端……もとい、リンダとの戦いをネプギアが(一応)勝利で終わらせ、私達は最深部への進行を再開した。…素で彼女を下っ端呼ばわりしてしまう程、私も皆もそのイメージが定着していたんだけど…戦いが終わって少しした今は、少しだけその認識が……変わっている。

 

「完全に一杯食わされちゃったね。普通に戦えばあたし達の誰と戦っても勝ち目なんてなさそうなのに」

「まったくよ、もー!ぷんぷん!」

「ラムちゃんに、どーい…!(ぷんすか)」

 

最後の攻撃…というか嫌がらせに関する感想や不満が、現在の話題の中心。

酷い臭いを味わったし少なからず時間をロスしてしまったものの、これといった損害を私達は被っていない。でもあんなに勝ち誇った笑い声を上げられてしまえば旧パーティー組のファルコムが言った通り、「一杯食わされた」気分になる訳で…しかも実際私達が勝とうが負けようが彼女は気分の良い思いをするんだから、なんかちょっと癪だって思いが残っている。…でも、この思いも思う壺なんだろうなぁ……そして双子はほんとに怒ってるのかな…。

 

「しかし、彼女はわたくし達が今日突入するなど知らない筈ですわよね?…何日も墓場の中で待機していたのかしら…」

「かもしれないですね。しかもそうなると、ずっとこの中にいながら自分を保ってたって訳で……」

((……あれ?…あの人って…意外と凄い……?))

 

ベールとユニのやり取りの数瞬後、私達は全員が何とも言えない顔で互いに見合う。…ネプギアも彼女の事は評価してるって言ってたけど…多分、それとこれとは違うよね……?

 

「…ま、まぁそれはさておき二度ある事は三度あるって言うし、もしかしたらまた誰か出てきたりするんじゃない?イリゼ、旅の中で他に因縁ある人とかっていた?」

「うーん、いないかな。後ネプテューヌの中のカウンターはゼロじゃなくて1からカウント始まるシステムなの?」

「……?ねぇねぇノワール、イリゼが意味分かんない事言ってるんだけど…」

「それは貴女が一度目ないのに二度ある事は〜…なんて言ったからでしょ…」

「……はっ!そういえばワレチューは去り際にコンパへ碌でもない事言ってたよね!コンパにはアタシがいるんだから、あんな奴になびいちゃ駄目だよ!?」

「え?あ、はいです…」

 

例えもうすぐ最深部に着くとしても、私達は緊張感で黙り込むなんて事はしない。それは黙り込むより、いつも通りのままでいた方が良いコンディションで決戦を迎えられるから……なんてちゃんとした理由はなく、ただ話したいから話してるだけ。良く言えばオンオフの切り替えを徹底している、悪く言えばすぐ和気藹々とした雰囲気に戻そうとするのが、私達パーティー。

 

「…因縁と言えば…まさか、また四天王が復活したりはしませんよね…?」

「それは……ない、とは言い切れないわね…」

 

一頻り冗談や突っ込みが飛び交った後、ぽつりとネプギアが呟いた不穏な言葉。すぐにその発言へブランが反応するも、当然明るい返答なんて出来る訳がない。だって、現に一度復活しているんだから。

 

「ふぇ…じゃあ、してんのうがぜんいんいるかも…しれないの…?」

「そ、そうなの…?おねえちゃん…」

「う……」

「…いや、確かに可能性はゼロではないが、高確率でそうなるという事もないだろう」

 

姉の言葉を聞いて不安そうになったロムちゃんとラムちゃんを見て、しまったという顔になるブラン。けど不味いとは思っても安心させられるような事は言えず……そんな中、不意にマジェコンヌさんが口を開いた。私達が「何故?」という感情を込めて見つめると、マジェコンヌさんは言葉を続ける。

 

「なに、簡単な事だ。四天王を簡単に復活させられるなら、やられた時点で即復活させるだろう?」

「確かにそれはそうだにゅ」

「それに、先日四天王が仕掛けてきた策から犯罪神が完全覚醒に力を注いでいる事がほぼ明白となった。その状態で、余剰の力があるならば……」

「四天王の復活じゃなく、自身の覚醒にリソースを回す筈だ…って訳ね」

 

結論のところで投げかけるような視線を向け、それにアイエフが答えて話を締める。それはマジェコンヌさんの推測でしかなく、絶対と言える訳ではないけど…そうかもしれないと思えるだけの説得力はある。そして仮にどうであろうと今更引き返すなんて事は出来ないんだから、説得力があればそれで十分。

 

「…って事だから、必要以上に不安がる必要はないよ二人共。それに向こうに四天王がいたとしても…こっちにだってこれだけの仲間がいるんだから」

『…イリゼ……』

「……?えっと…皆、何…?」

「…言っている事は間違いなく良いが…それは本来、マジェコンヌが言う筈の言葉ではないのか…?」

「うっ…た、確かに……」

 

にこり、と微笑んでロムちゃんラムちゃんへそう言った私。私としては二人を安心させたくて、また単純に思った事を口に出しただけの事だったけど、何やら何人かから変な目で見られてしまう。それを何だろうと思って訊くと…MAGES.から半眼で突っ込まれてしまった。……ぐうの音も出ない。

 

「ふっ…何、気にするな。私は気にしていないぞ、イリゼ」

「も、申し訳ないです……」

 

仕方ない奴だ…みたいにマジェコンヌさんは笑って許してくれるけど、それがまた私としては頭が上がらないというか、ちょっと子供扱いされてる感じもあるというかで、何とも気落ちしてしまう。…自業自得だけど……。

 

「ふふっ、決戦前にパーティーのお約束を見られるなんて縁起がいいね」

「お、お約束って…鉄拳ちゃんは一体何を……」

「はは、確かにイリゼのしっかりしてるようでしっかりしてない姿が出るのはお約束だね」

「そんな爽やかな感じに言わないで!?っていうかそんなのお約束じゃないから!だよねぇ皆!」

『ううん』

「オールノー!?オールイエスじゃなくてオールノー!?う、うぅぅ……そんなの認めたくないっ!」

 

普段はあまり誰かを弄ったりボケたりしない、パーティーの良心ポジである鉄拳ちゃんと新パーティーのファルコムに弄られ(弄ったつもりはないかもだけど。特に鉄拳ちゃんは)、しかもその弄りに全員が乗って全会一致という酷過ぎる展開になってしまう。

穏やかさとはかけ離れた場所なのに、最終決戦は目前だというのに、あろう事か私アウェー。あんまりにも酷いものだから、なんか最終的にはピンクの球形メカみたいな事を言ってしまった。

 

「ぐすん、酷いや…私が恥ずかしいって思う事をお約束扱いするなんて…私を辱める事をお約束と呼ぶなんて……」

「辱めるって…でもイリゼは、このパーティー好きでしょ?」

「それは……そう、だけど…」

「だってさ。って訳で皆!今後もイリゼはこんな感じに弄ってこーっ!」

『おーーっ!』

「よーしっ!だったら私は犯罪神の側に付こうかなぁッ!?」

 

……なんか、ほんとにこれから何しに行くのか分からなくなってきそうな私達パーティー。これなら緊張で体調崩す事はまず無さそうだけど、流石にこれはちょっといけない気がする。私なんて爆弾発言しながらバスタードソード振るおうとしてるし(全員が弄る側だったから止めてくれる人がいなくて、私も本気で斬るつもりはないからどうしたものか困ってるんだけど…)、物語の大詰めにやる事としては大いに間違えている気がしてならない。

けどそれも、いつまでも続く訳じゃない。それこそ状況が、私達を現実へも引き戻す。

 

「……っと、皆。決戦の時間がやってきたみたいよ」

 

逃げる皆を追っかけ回していたところ、不意にケイブが足を止めて表情を引き締める。…理由は簡単。今到達したのが、後は角を曲がれば最深部という場所だから。

 

「…また一層と濃密になってるわね……」

「…凄い…女神じゃないわたしでも、気配とは別の何かを感じる…これが、犯罪神のシェア……?」

 

ノワールは真面目そうに、サイバーコネクトツーはそれに加えて怪訝さも含んだ表情を浮かべて呟く。

信次元全域に、負のシェアの気配が増していた。墓場の中は、明らかに不味い密度だと入った瞬間に感じた。そして今感じているのは…異常とまで言える程の、負の空気。空間そのものが汚染されているかのような、そんな状態。流石に負のシェアの柱内部よりはマシだけど……あれと同レベルだったとしたら、多分もう勝とうが負けようが信次元に酷い被害が出ていると思う。

 

「…最終確認、しておく?」

「そうですわね。今更五分十分遅くなったところで何か変わる訳でもないですし、確認しておくべき事は確認しておいた方が良いですわ」

 

くるりと私達全員を見渡すように振り向いたマベちゃんの言葉に、ベールが首肯。私達は輪になって、確認事項を話そうとする。…ん、だけど……

 

「……確認する事って、あるかな?」

『…うーん……』

 

頬に人差し指を当てながら首を傾げたREDに、これと言った回答を返せない私達。確認する事なんてないよ!…とは言わないものの、突入前の確認ですら簡素なものだったんだから、実際のところREDの指摘は間違っていない。

 

「…取り敢えず、皆の作戦をめいれいさせろからいのちだいじににしておく?」

「取り敢えず、わたし達はそんな仕様で戦ってないわ。…命を大事に、って点はその通りだと思うけど」

「あ…じゃあ…うちあげ?…をどこでするかっておはなしは?前みたいにやるのよね?」

「う、うん…するかもしれないけど、それは今じゃなくてもいいんじゃないかな……」

 

うちのパーティーの三大元気っ娘二人(残り一人はRED)によるズレた発言を、ブランとネプギアがそれぞれ突っ込み&訂正。で、その後パーティーは沈黙状態に。……うん、これはほんとに確認する事ないのかも…。

 

「…この状況、どうするんだにゅ?」

「ま、まぁ確認しなくちゃいけない事はない…って事でいいんじゃないかな?確認する点がないってのはつまり、準備万端という事なんだからさ」

「ですね。それに世の中、案外抜け落ちがあるどころかほぼ何もなくなった状態でも何とかなりますし!」

 

いやいやそれはないでしょう…と旧パーティー組ファルコムの発言に私達は思うも、新パーティー組ファルコムがそれに力強く同意する。…経験則なんだろうけど…ファルコムは逞しいね……。

…とまぁ、結局またぐだぐだした雰囲気になってしまったものの、今度はそれじゃ不味いって皆分かってる。だから、皆で視線を交わして頷き合い……

 

「……それじゃ、行こうか皆」

 

ネプテューヌの言葉を合図に、私達は歩き出した。武器を携え、私や女神の皆は女神化して、最後の角である場所へ向かう。そして私達は角を曲がり……最深部へと、到達した。

 

『……え…?』

 

最深部へと踏み入れた私達が目にしたのは、結晶の様な、柱の様な、けれど固体ではないように見える闇色の何か。その不思議な存在に対して全員が同じ反応を取り、どうすべきか各々考えようとして……次の瞬間、それに亀裂の様な線が走り出す。

 

「……ッ!気を付けて下さい!何か来ます!」

 

M.P.B.Lを構えつつそうネプギアが言い放ち、言われるまでもないとばかりに私達は散開。何が起きてもおかしくないから警戒し、でも何が起きるか分からないからこそ下手に攻撃したりはしない。

 

(あれは明らかに負のシェアの塊…まさか、爆発でもするの…?)

 

線が広がるそれを、神経を張り詰めた状態で警戒し続ける私達。その私達の目の前で、線同士が繋がり網の様になって……開くように、大気へ溶けるように、負のシェアの塊は崩壊した。──そしてその中から現れる、負のシェアを担いし悪意の神。

 

「…はっ、どこぞの裏ボスみたいな登場の仕方するじゃない」

「心の闇そのものという意味では、実際似てるのかもね…」

 

口角を軽く上げ、いつも通りの調子でノワールは見やる。それに対するマベちゃんの反応も割と普通だけど…内心では余裕綽々って訳じゃない事位は、考えなくたって分かる。もし余裕綽々なら、少し私にも分けてもらいたい。

 

「……来たか、女神」

「えぇ、来たわ。前回やり損ねた、貴方の封印をする為にね」

 

ゆっくりと降下し、地表すれすれで浮遊状態になった犯罪神は口を開く。それにネプテューヌは、大太刀の斬っ先を向けて答える。

 

「封印、か……そうか、またか…また貴様達が、他でもない女神が、我を封印すると言うか」

「他でもねぇ女神だから、テメェを封印するんだよ。テメェとしちゃ、やっと復活出来たって思いなんだろうが…信次元を滅ぼすつもりなら、わたし達はそれを許さねぇ」

「…であろうな。だが…愚かしいものだ」

「あら、わたくし達では貴方に勝てないとでも?」

 

流暢に話す犯罪神に、不完全さや未覚醒さは感じられない。完全覚醒状態かどうかはまだ分からないけど…恐らくそれは、これからの戦いには何の支障もないという証左。

それもあってか、犯罪神の言葉へベールが問う。愚かしいの意味を、犯罪神へと問い質す。

 

「我が言っているのは、そんな次元の話ではない。勝ち負けなど、所詮は根源のもたらす結果に過ぎない」

「根源…何が言いたいんですか、貴方は……」

「ならば逆に問おう。何故我がここにいるのだ。何故我は、顕現しているのだ」

「はぁ?そんなの、アンタが復活を目論んだから……」

「いいや違う。我がいるのは偏に、破滅を望む者がいるからだ。大陸に、この次元に…世界に」

 

勿体つける犯罪神へネプギアは怪訝な顔で、ユニは呆れた顔でそれぞれ反応。対する犯罪神は眉一つ、表情一つ動かさずに……言った。

 

「怒り、憎しみ、後悔、嫉妬……あらゆる負の感情が行き着く先は即ち破滅。悪感情は己を滅ぼし、己を滅ぼすだけの思いは負のシェアとなって世界を滅ぼす。広く果てしない世界にとって、一人一人の負のシェアなど誤差の範囲だが……それが寄り集まり、増幅し合った結果が我だ」

「ふん。人々の意思が、世界の意思が貴様を望んだとでも言いたげな口振りだな」

「言いたいのではなく、それが真実だ。…それは、貴様が誰よりも分かっているだろう?第二の犯罪神へ到達しかけていた、貴様ならば」

「…………」

 

淡々と話す犯罪神の声音からは、感情というものが読み取れない。犯罪神は負のシェアの集合体とでも言うべき存在なのに、私達女神の対極にして同種の存在である筈なのに、負の感情を語る口からはなんの悪感情も伝わってこない。

自らの理屈を振りかざす犯罪神を切り捨てるように、マジェコンヌさんは言う。けれど返しの言葉が、マジェコンヌさんへと突き刺さる。

 

「我も女神も、思いなくして自然に生まれるものではない。強く大きな思いが束ねられ、シェアが現実へと作用するだけの力を持って、そこで初めて我や女神という『結果』が生まれる。そして我は、世界の望む悪意と破滅に従いこの身を形作った…ただそれだけの事だ」

「むむむ…むつかしーこと言ったって、わたしたちにはわかってるんだから!」

「はんざいしんが、わるいやつなのは…わたしたち、知ってるもん…!(こくこく)」

「悪い、か…確かに破滅を望まぬ者にとってはそうだろう。だが、破滅を望む者にとってはどうだ。その者にとっては、貴様達女神こそ悪なのではないのか?」

 

語り続ける犯罪神を、別方向から…もっと単純に、純粋な言葉で否定したロムちゃんとラムちゃん。けれどそれも犯罪神には響かず、その視線は私達女神以外の仲間へと向かう。

 

「…大したものだ。この我を前に、心を闇へ落とす事なく意思ある瞳を持ち続けるとは」

「当たり前よ。私達はあんたの言う破滅なんか望んでないし、皆と一緒に勝つつもりなんだから」

「犯罪神さん、貴方の言う事は大間違いじゃないのかもですけど…わたし達は、そうだとは思ってないです!」

「さて、どうだろうな……貴様達とて、一度や二度負の感情に心を惑わされた事もあるだろう?それが負のシェアになっていないと、断言出来るか?女神の肩を持ちつつも、その心で我の復活を助長した可能性を、ゼロだと言い切れるのか?」

『それは……』

 

…誰も、犯罪神の言葉に言い返せない。皆はちゃんとしている人だからこそ、犯罪神の言葉に口籠ってしまう。

それは、卑怯な言い方だった。負の感情を抱くというのは生きる上で避けられない…ある意味自然な事。その自然な事を引き合いに出した上で、個人では確認のしようがない「思いがシェアになっているか否か」を問いに使って、さも自分の考えが正しいかのような空気を作り出している。本当はシェアになってない可能性もあるのに、「答えようのない」を「答えられない」にすり替えている。

 

「…これが現実だ。貴様達にここまで着いてくる者ですら、世界の滅びを担う一旦である可能性を否定出来ない。……故に、断言しよう。我が蘇り、我によって世界が滅びるのではなく…滅びに向かう事を決めた世界が、我という実行力を生み出したのだと」

 

犯罪神は、そうして言葉を締め括った。それが世界の望みなのだと、選ばれたのは滅びの道だと、言い切った。だから、私は……犯罪神の主張が事が分かった私は…………

 

 

 

 

 

 

「──言いたい事はそれだけか、犯罪神」

 

真正面から、真っ向から、真っ直ぐに…犯罪神の言葉を跳ね返す。

 

「…理解出来ないと言うか」

「あぁ、残念ながら私には貴様の言葉など、貴様の戯言など理解出来ない。理解するつもりもない。そして…その程度の戯言で、我等女神が貴様へ向ける刃を降ろすとでも?」

 

…理解出来ない。そう私は言った。それは嘘じゃない。だって、犯罪神の言葉は間違っているから。何を言いたいかは理解出来ても、その理屈に正当さは微塵も感じない。

女神はその程度で世界の守護を止めたりしない。私はそうも言った。これは皆に確認した訳じゃないけど……確認するまでもない事。

 

「致命的に間違っていますわね。確かに、悪意は身を滅ぼす事がありますわ。人を呪わば穴二つという言葉もありますわ。けれどそれはそれこそ結果的な事。そうなってしまった、とそれを望んだ、では明確な違いがありますの。ですから……人々が望んで破滅を呼んでいるなどという侮辱は、止めてもらいましょうか」

 

ベールが犯罪神を否定する。人の思いを曲解するなと。信次元に住まう人の思いを、悪く言うのは許さないと。

 

「テメェは言ったな。破滅を望まぬ者にとってはって。…自分で分かってんならそういう人間の事を、そういう奴等の思いを無視するんじゃねぇよ。破滅が総意みたいに語るんじゃねぇよ。…まぁ、仮にテメェが無視しようがわたし達は無視しねぇし、無視なんてしねぇからわたし達はここにいるんだがな」

 

ブランが犯罪神を否定する。犯罪神が負の思いを叶えようとするように、自分達女神は正の思いを叶えるのだと。

 

「滅ぼす事しか考えてない貴方には分からないでしょうけど、この次元には未来を望む人、未来へ願いを持つ人が沢山いるの。貴方がどう考えようと貴方の勝手だし、本気で破滅を願う人も少しはいるでしょうね。けど…だからって前を見て歩く人の未来を奪っていい権利にはならないし……そんなふざけた事、この私が許さないわ」

 

ノワールが犯罪神を否定する。未来へ進もうとする人達を守る為に、自分達女神が存在するのだと。

 

「こんぱもあいちゃんも、ここにいる皆は誰一人として破滅を願ってなんかいない。負の感情を抱く事は皆だってあると思うし、わたし達女神だって逃れられない。でも、それ以上に何かが大切だって、誰かが好きだって思いがあるから、皆強く生きているのよ。そういう人達が数え切れない程いるって事を…今から貴方に教えてあげるわ」

 

ネプテューヌが犯罪神を否定する。悪意に負けない位この世に存在する善意の暖かさを、自らの手で示そうと。

 

「…これがお姉ちゃん達の…守護女神の意思よ犯罪神。そしてその思いは、アタシ達女神候補生も同じ事。アンタが何を言おうと…アタシ達のする事、アタシ達が願う事は変わらないわ」

「がんばってねって、言ってくれる人がいるの。かえってきてねって、思ってくれる人がいるの。だから、わたしたちは…負けない、よ」

「よーくわかったわ。わたしがむつかしーって思ったのは、あんたがおばかすぎて伝わらなかっただけだって。…おしえてあげる。ルウィーの…ううん、みんなの思いを」

「わたし達は貴方を倒します。憎しみではなく、世界を…皆を守る為に。もし破滅を望んでいる人がいるなら、わたし達は証明します。わたし達に力をくれる善意は、温かくて優しいものなんだって」

 

女神候補生の皆が、守護女神の皆へ並び立つ。姉とか妹とか、守護とか候補生だとかは関係ない。私達は皆誰かの思いを受けて、誰かに願いを託されて、今ここにいる。そして、犯罪組織が広がる信次元で善意も悪意も見てきた女神候補生の皆だからこそ……その言葉には、深く重い響きがある。

 

「…誰かの為、女神はいつもその思いを胸に我と相対する。されど虚しい事だな。他者の為に身を削り、戦いに身を置き続けても尚、幾度となく我は復活してきた。幾度となく、負の思いは我を蘇らせる程に至った。…その上でも、貴様達は戦うというか」

「当然だ。それと、勘違いしないでもらおうか。確かに、誰かの為は私達女神の原動力だが……同時に自分の願いもこの胸に抱いて、私達はここにいる」

 

虚しいのは、むしろ滅びの為の存在として生み出される犯罪神の方ではないのか。憐れむ訳ではないけど、ふっとそんな思いが心をよぎった。だけどそんな思いがあろうと、私達のやる事は一つ。皆の思いに応える為、皆との日々をこれからも続ける為、大切な人達と、大切な人達が守りたいものを守る為……私は犯罪神を、ここで倒して封印する。

 

「…滅びという永遠の眠りにつこうとする世界を自らの意思で否定し、道を正さんとするか。ならば見せてもらおう。その思いを掲げる女神の力を。その願いを果たすだけの力が、あるのかどうかを」

「良いだろう、ならばその目で見るといい。そして……世界が眠りに向かうというなら、希望を担いし私達はただ伝えるだけだ。──目覚めよ、世界…と」

 

言うべき事は言った。お互い言葉は尽くした。であれば後は、戦い雌雄を決するのみ。

そして、希望と絶望、善意と悪意、正の感情と負の感情……そのどちらが世界の明日を選ぶかの決戦が、幕を開ける。




今回のパロディ解説

・オールイエス
デュエル・マスターズのクロスギアの一つ、至宝・オールイエスのパロディ。多色とはいえコスト2であの性能は凄いですよね。…と、デュエリスト視点で言ってみました。

・ピンクの球形メカ
機動戦士ガンダムSEEDシリーズに登場する機械、ハロの事。大元は1stガンダムのハロなので、オマージュのパロディですね。ハロのパロ……あ、何でもありません。

・めいれいさせろ、いのちだいじに
ドラゴンクエストシリーズにおける、作戦コマンドの二つ事。ゲーム的に言うならば、ネプテューヌシリーズは全てめいれいさせろ、ですね。

・「〜〜──目覚めよ、世界…と」
カードファイト‼︎ヴァンガードシリーズのユニットの一つ、ハーモニクス・メサイア(G3)のフレーバーテキストのパロディ。これが時事ネタだと分かる人はおりますか?

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