超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress   作:シモツキ

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第五話 三人でクエストを

私が次元移動をしてしまってから、数日が経った。勿論初めは何かと戸惑ったけど、知ってる事柄が何もない訳じゃなく、ルウィーの教会では私を大切なお客として扱ってくれたから、信次元の事を考えるとちょっと寂しくなる点を除けば結構快適な生活をする事が出来た。…でも、慣れると今度は別の意味で居心地が悪くなってくる。

 

「…休暇…とは言えないよねぇ、今回の場合は……」

 

備え付けのTVでドラマの再放送(序盤の話は知らないから微妙に入り込めない)を見ながら、ぼそりと呟く。思っている事をそのまま口にしてしまう私の悪癖が出てしまっていたけど、周りに誰もいないから問題無し。…いや本当はあるけど。この悪癖は早く直したいところだけど。

 

「楽っちゃ楽だけど、断りなしにどっか行っちゃった挙句、その先でも至れり尽くせりは悪い事してる気分になるなぁ……」

 

わざとじゃないとはいえ、自分だけ不当な形で休んでいるというのはどうも居心地が悪い。…仕事してないと落ち着かないとかじゃないよ?居心地悪いのは、こうしてる事で負担が多くなってる人がいるかもって思うからだし。

 

「……うん。やっぱりだらだらしてるのは良くないよ、私」

 

暫くドラマをBGMに考えていた私は、思考を纏めてすっと立つ。TVを消して、廊下に出る。

 

「教会の中の仕事…はどれも皆に気を使わせちゃうかもしれないし、クエストがベターかな。…でも、地図がないと目的地に着かないか…うーん……」

 

どうするか考えながら歩く事数十秒。地図ならブランやディールちゃんエストちゃんに訊くより、受付の職員さんに訊いた方がいいかなと思って正面出入り口のある方へと向かっていると……その道中で、ディールちゃんとエストちゃんに遭遇した。

 

「あ、ディールちゃんにエストちゃん。今からお出かけ?」

「まーね。おねーさんも?」

「私は…まぁ、私もそう言えるかな。その前に地図を借りるか携帯のカメラで撮らせてもらうつもりだけど」

「地図…遠くへ行くんですか?」

「遠くっていうか、クエストに行こうと思ってね」

 

そう言って私が肩を竦めると、二人は一瞬きょとんとした後顔を見合わせる。そして……

 

「へぇ…だったら、わたし達と一緒に行くのはどう?」

「…二人と?」

「はい。わたし達も、今からクエストに行くつもりだったんです」

 

クエストの内容が書かれた書類を出して、その概要を説明してくれるディールちゃん。この次元に飛ばされたというとびきりの偶然に比べたら些細なものだけど、この偶然も凄いもの。エストちゃんもそれは思っていたらしく、ディールちゃんが説明を終えたところで「これは一緒に行けって天啓かもね!わたし達女神だけど」…と言っていた。

 

「…それで、どうします?簡単なクエストではないですし、元々わたし達二人で行く予定だったので、断ってくれても構いませんが…」

「ううん、同行するよ。一人じゃ手続きや道中で手間取りそうだし、どこの誰だか分からない私じゃクエスト受注させてもらえないかもしれないからね」

 

もしギルドのルールが信次元と同じなら、身分を証明出来ない(だって違う次元だもん)私は門前払いされてしまう。…恥ずかしいよね、そんな羽目になったら…。

 

「じゃ、早速行こー!」

「おー!」

「えっ?…おねーさん、今日はハイテンション?」

「あ、いや…こういう反応求められてるのかなって…」

「ふーん…なんか今の子供っぽかったわね」

「それをエストちゃんが言う…?」

 

なんてやり取りを経て、三人パーティーになった私達は出発。二人に着いて行く形で、目的地…討伐対象のモンスターがいる場所へと向かう。

 

「…そういえば、ブランやロムちゃんラムちゃんは誘わなかったの?」

「ブランさんはお仕事が忙しそうだったので…」

「ロムちゃんとラムも『女神の勉強』とかで誘えなかったのよねー。二人なら喜んで同行してくれそうだけど、そしたらミナちゃん怒りそうだし」

「そっか…やっぱり皆はやるべき事やってるんだよね…」

 

ロムちゃんラムちゃんの事は「へぇ…」と思ったけど、ブランに関しては思った通りの理由。その答えに私が自分の感じていた居心地の悪さを再確認していると…何やらディールちゃんがじーっと私を見ていた。

 

「…えと、何?」

「…もしかしてイリゼさん、自分だけ休むのは…とか思ってます?」

「よく分かったね…うん。こっちの皆は勿論、信次元の皆にもただだらけているのは悪いなと思って…」

「貴女は分かり易いですからね…しかし、信次元の方々の負担を考えているなら、こっちでクエストをしても意味はないのでは…?」

「うっ…痛いところを……」

 

ここでどんなに頑張ったって、利益が生じるのはこっちの次元であって、皆の負担が減る訳じゃない。それは分かってる事だったけど…結局は自分の気を紛らわせてるだけだから、いざ言われると目を逸らしたくなるね……。

 

「まー、悪い事してる訳じゃないんだからいいじゃない。それよりおねーさん、フォーメーションはどうする?」

「フォーメーション?…うーん、取り敢えず私は前衛がいい…っていうか、前衛じゃなきゃ指示出す位しかやる事なくなっちゃうかな」

「なら…ディーちゃん、今日は前衛をおねーさんに任せるってのはどう?わたしもディーちゃんもおねーさんの戦闘スタイルなんてちょっとしか見てないし、強引に合わせるよりはおねーさんに自由に動いてもらって、後ろからわたし達が適宜応援を入れる…って方が上手くいくと思うんだけど」

「確かに…でもそれだとイリゼさんの負担が大きくなるし、わたしよりイリゼさんに訊くべきじゃない?」

「あ、あぁ…私はそれでいいと思うよ?(元気一杯な時は普通だけど…知的な面が出てくると違和感が凄い……)」

 

二人は二人であって、ロムちゃんラムちゃんとは同じだけど違う存在。…そうは思っていても頭のどこかでは二人を同一視してしまっている私もいて、その部分がエストちゃんへ違和感を覚えていた。…でも、成長して性格が変わるのは普通の事だし、私の知るラムちゃんもこうなる可能性はあるよね…。

 

「だったらそれで決定ね!わたしとディーちゃんが任せてあげるんだから、しっかり戦ってよ?」

「戦いなんだから、言われなくたってしっかりするよ」

 

駄弁りつつそんな話もしつつ歩く事数十分。生活圏を出て、地面も木も雪を被った森の近くまで来たところで…瞳を細めたディールちゃんが制止をかけた。

 

「そろそろ…というか、多分向こうに見えるあれが討伐対象の取り巻きです」

「討伐対象そのものは一体、だったよね?」

「はい。ですが見ての通りなので、まずは取り巻きを片付けるのが無難だと思います」

「でも結構遠いし、近付いてくるまで雪合戦でもして身体温めとく?」

「呑気だねエストちゃん…私は森の木を壁にして近付くから、二人はこのままゆっくり近付いてくれる?」

 

エストちゃんからの言葉で前にロムちゃんラムちゃんと雪合戦(というか雪激戦)をやった事を思い出しつつ、環境を見て提案を口にする私。それに二人が頷いてくれた事で最初の動きが決定し、私は軽く微笑んだ後森へと入る。

 

(向こうは気付いてないんだから、接近は冷静に…)

 

素早く、でも極力足音は立てないようにして木の陰から陰へと移る。木々の隙間からディールちゃん達の方を見れば、二人も慎重な足取りで移動中。…決して派手さはない、でも堅実で着実な接近を、私達はモンスターへとかける。そして……

 

「……ここだッ!」

 

遂に私は一跳びで肉薄出来る距離にまで接近。木の陰からもう一度だけ二人の位置を確認して、手元にバスタードソードを取り出して……モンスターの前へと躍り出る。

 

「討伐対象は……って、あれ…?」

 

モンスターの視線が集まる場所へと出た私は、まずは攻撃せずに群れを見回す。目的は、狙うべき敵の確認。

突然何かが現れたら、人だってモンスターだって驚く。けれどその何かが脅威だと分かれば、モンスターや戦い慣れしている人は本能的に戦闘行動へと移ってしまう。だから敢えて私は攻撃をせず、動揺の隙を使って視線を巡らせた。そしてその結果……見える範囲に討伐対象がいない事に気付く。

 

「いない…?まさか、これは違う群れ…っとと…ッ!」

 

群れが驚く中、今度は逆に私も軽く動揺。でもモンスターだっていつまでも驚いてくれてる筈がなく、私は特に近くにいた数体に飛びかかられた。

 

「この場にいれば、素早く討伐対象だけ倒して終わりにする事も出来たんだけどな…ッ!」

 

後方に跳んで飛びかかりを避けつつ、再度視線を巡らせる。…が、やっぱり私の見間違いという事はなく、群れも交戦状態に入っている以上戦闘はほぼ避けられない。……なら、私も意識を切り替えるだけ…!

最初の攻撃を行ってきた数体を飛び越える形で突っ込んできたモンスターを、バスタードソードの腹で受け止め、跳ね返すように蹴り飛ばす。続けて雪原を蹴り、目の前の群れの真っ只中へ。

 

(ディールちゃんとエストちゃんに…いや、モンスターが気付いてないなら二人へ声をかけない方が良いか……)

 

片手持ちで素早く牽制をかけつつ、隙を見て一体一体きっちりとダメージを与えていく。モンスターが陣形を整えたり、幾つかの小集団に分かれたりしない内に高火力の魔法を叩き込んでほしいものだけど、あの二人はそんな事を言わなくたって状況を理解している筈。…だったら、不意打ちのチャンスを潰すような真似はするべきじゃない。

私は前衛。一口に前衛と言っても役目は様々だけど、今の私はアタッカーであると同時にモンスターの注意を引き付ける役目も担っている。後衛のアタッカーがその火力を存分に発揮する為の、陽動という任務を。

 

「もう少し…テンポを上げていくよ…ッ!」

 

目の前のモンスターの身体を駆け上がるようにしてバク宙をかけ、そこから背後のモンスターへオーバーヘッドキック。振り上げた時点じゃなくて、振り下ろしの中でぶつけたからオーバーヘッドだったかどうかは怪しいけど…まぁそれはどうでもいい事。横回転で身体をずらして着地し、立ち上がる流れのまま回転斬り。…数瞬の間に三回転しているけど、女神の三半規管の前では朝飯前。

バスタードソードを振るって、体術も駆使して、でも時には防御に徹する事で群れを私の周囲に留まらせて、前衛の務めを遂行し続ける。今も二人は攻撃の準備を整え、ベストの瞬間を見定めている筈。強力無比な二人の魔法が、その牙をモンスターへと向けている筈。だから二人が、二人が最高の攻撃をしてくれるその時まで、前衛の役目を…役目、を……

 

(…………って、それにしては…遅くない…?)

 

正確な時間は分からないけど、どんなに少なく見積もっても戦闘開始から数分は経っている。であるならば、二人からの火力支援なり大出力攻撃なりがモンスターを襲っていてもおかしくない。二人程の魔法使いなら、この戦闘で使うレベルの魔法に何十分もの溜め時間を必要にする訳がない。……だったら、今現在まだ一撃も魔法が放たれてない事には…何か理由がある筈。

そう考えた私は柄頭で近くのモンスターを殴り付け、そのモンスターを踏み台にして跳び上がる。跳び上がって、二人がいるであろう方角へと目をやって……そして、私は見た。見て、しまった。

 

 

 

 

「獅子奮迅、って感じだね。イリゼさん」

「だねー。このペースならわたし達いなくても片付いちゃいそうだし。…そうだディーちゃん、キャンディ食べる?」

「あ、うん。ありがとエスちゃん」

「…………」

 

 

「ちょおぉぉおおおおおおいッ!!?」

 

女神化してない私は重力に引かれ、群れの中へと落下する。敵意剥き出しなモンスターは私が降ってくるや否や全方位から私を引き裂きにかかってくるけど……今は、それどころじゃない。

 

「ちょっとッ!?何まったり見てくれちゃってんの!?何飴玉口に放り込んでんの!?今は戦闘中なんですが!?」

『あ、バレた…』

「ば、バレた!?まさかの故意!?君達後衛担当ですよねぇッ!?」

 

邪魔するモンスターをもうめっちゃくちゃな動きで押し返しながら、私は想定外過ぎる事をしていた二人へ突っ込む…というか叫ぶ。な、何を考えてんの二人は!?正気!?正気でアレやってんの!?

 

「っていうか、応援は!?適宜応援を入れるって言ったよね!?」

「あー、うん。……じゃあ、こほん」

「…………(きりっ)」

「おねーさん、ふぁいとっ!」

「イリゼさん、頑張って下さい…!」

「応援って…そっち!?サポートじゃなくてエールの方だったの!?」

 

二人で左右対象なポーズを取って応援してくれる二人は、見る分には可愛い……けど、この状況じゃ可愛いなぁなんてとても思えない。そんな心境になる訳がない。

 

「うぅぅ…!なら今までのはいいよ!良くないけどいい!だから今から即刻戦闘に参加してよッ!」

「えー…でもわたしモノクロ写真を撮るのに忙しくて…」

「わたしも監督生(プリフェクト)のお仕事が……」

「それ違う人じゃん!確かに片や魔法使いだったり片や性格も近かったり、何より二人組だったりでそんな感じはするけど、それ二人ではないからねッ!」

 

戦闘の真っ最中で、パーティーメンバーが戦ってる中で、一体何をふざけてるのか。これはもう「全くぅ、二人共お茶目さんなんだから〜」…とかの域じゃない。こ、この……性悪姉妹めっ!

 

「ならいいよもう!私一人で片付けるから二人は兎でも追いかけてればいいじゃん!ディールちゃんとエストちゃんの馬鹿ぁッ!」

 

その叫びを最後に私は二人の方を見るのを止め、『前衛』から『単独戦闘』へと意識を切り替える。ここまでは引き付ける事も意識していたけど、一人で戦うならその必要もない。…というか、討伐対象がいないんだから負担との兼ね合いを考えれば殲滅しない事だって十分選択肢に入る。…二人の事は嫌いじゃないけど…終わったら怒るよもう!怒ってやるんだからっ!

 

「ほら退いてッ!逃げるなら追わないから…っていうか、親玉はどこ行ったのッ!?」

 

前方への跳躍と同時にバスタードソードを突き出し、更に掌底を叩き込んで追撃としつつ反動で引き抜く。暫く雑な戦闘をしていたせいで何ヶ所か擦り傷切り傷が出来ちゃったけど、動きに支障がないなら問題無し。

結構頭に来ていた私は、少々声を荒くしながら戦闘を続ける。すると次第に群れは動き始め、一部が森の中へと入っていく。今さっき「逃げるなら追わない」とは言ったものの……森の中となると話は別。

 

(あっちじゃ逃げたのか攻撃の機会伺う為に隠れたのかが分からない…森からは引っ張り出さないと…!)

 

すぐ側にいるモンスターへの攻撃を止め、踵を返して森へ向かった集団を追う私。引っ張り出す上での具体的な策はないけれど、それを考えていたらそれこそ見失って判別出来なくなってしまう。だったら多少勢い任せだったとしても、捕捉出来てる内に追った方がいい。

そう考えた私の判断は、多分間違っていなかった。でも、この時の私は少々運が悪く……そして、注意を払う為の冷静さに欠けていた。

 

「──んな……ッ!?」

 

森の中へと飛び込んだ私は、その瞬間に群れのどの個体よりも大きいモンスター…討伐対象を発見した。でも、その討伐対象がいたのは……私の目の前。

 

(保護色……ッ!?)

 

モンスターの体毛は、雪と同じ白。注意力散漫だった私は伏せて虎視眈々と待ち構えていた討伐対象を認識する事が出来ず、今この瞬間モンスターの目の前へと飛び込んでしまった。

この時同時に、私はモンスターが逃げるでも隠れるでもなく、戻ってきた群れの主の下へ私を誘き出そうとしてたのだと気付いた。…けど、時既に遅し。咄嗟に私は脚を地面に突き立てブレーキをかけるも、その時にはもうがばりと口を開いた討伐対象が私へ向かって飛びかかってきていて……

 

 

 

 

──その口へと、杭の様な氷塊が突き刺さった。

 

「ふぅ…大丈夫?おねーさん」

「あ…エスト、ちゃん……」

 

氷塊が突き刺さった直後に、私は空へと連れ去られる。でも、私を連れ去ったのはモンスターではなく女神化したエストちゃん。女神化状態のエストちゃんを見るのは初めてだったけど…表情と声音から、この人がエストちゃんだって事はすぐに分かった。

 

「もー、駄目よおねーさん。もっとクールに戦わないと」

「……クールじゃないのは誰のせいだと…?」

「…まぁ、そうよねー。……後でディーちゃんと一緒にごめんなさいするから、今はこれで勘弁してくれる?」

 

大きく討伐対象と群れから離れた位置まで私を運んだエストちゃん(またお姫様抱っこだった…こっち来てからもう三回目…)は、流石にちょっと申し訳なさそうな顔をしながら私へ蜂蜜キャンディをくれた。それから先程放たれたものと同様の魔法で群れに牽制をかけているディールちゃんの方をちらりと見ると、彼女は私に視線を戻してふふんと笑う。

 

「それと、お詫びじゃないけどわたしとエストちゃんの力を特等席で見せてあげるわ!後で感想も聞くから、ちゃーんと見ててよね!」

 

それだけ言ってエストちゃんは飛び上がり、討伐対象へと向かっていく。……特等席、か…。

 

「…なら、もうちょっと特別感のある場所に降ろしてほしかったかな…」

 

降ろされたのは特別でも何でもない雪原で、見ててと言われてもその相手はさっきまでまともに戦ってもくれなかった二人。…でも、私は女神化した二人の動きをつい見つめてしまった。

 

「エスちゃん、まとめて叩くよ…!」

「もっちろんッ!」

 

ディールちゃんが斬り込んで、エストちゃんが後を追いつつ魔法で援護。討伐対象へはエストちゃんが追撃をかけ、ディールちゃんは引きつつ遠隔攻撃で討伐対象の退路を塞ぐ。

阿吽の呼吸とでも言うべき、二人の連携。それは正しくロムちゃんラムちゃんのそれで……だけど、それだけじゃない。

 

(…この連携は…どこか、私達とも同じ……)

 

ロムちゃんとラムちゃんがするのは、連携を前提とした動きでの連携。けど今の二人からは、私やネプテューヌ達守護女神組のする連携…個々の動きが組み合わさった結果の連携という雰囲気も感じられる。どちらも長所短所があって、加えて言えば二人のは二つの複合型とでも称するべきものだけど…何れにせよ、二人の連携は見てて惚れ惚れするものだった。

 

「……困ったな…こんな凄いもの見せられたら、私の怒りが削がれちゃうじゃん…」

 

…全く、大したものだよ。そんな思いを抱きながら、気付けば私は肩を竦めていた。

 

 

 

 

……因みにその後…

 

「そういえば、さっきと逆の立場だなぁ…」

「…………」

「…さっき貰った飴食べながら見よう…かな…ってモンスター!?」

「…………」

「…あ、アルラウネの…雪原タイプ…?……が、飴玉見てる…?」

「…………」

「…虫じゃないけど、甘いもの欲しいのかな…?…じゃあ、頂き物だけど…食べる?」

「……ガブッ」

「わぁあぁぁぁぁッ!?て、手ごと食べられたあぁぁぁぁぁぁッ!!?」

 

……なーんて事がありました。でも即撃破したから手は無事でした。…うん、疲れてるね私……。

 

 

 

 

二人が討伐対象を撃破し、それから謝罪と怪我の治癒を私へしてくれて、私達は街へと戻ってきた。

 

「すみません。こちらのクエスト、ただ今達成してきました」

 

受付でディールちゃんが報告を行い、それを職員さんが特に驚く様子もなく手続きを行う。…元々ディールちゃんはしっかりしてるけど、こうして事務的なやり取りをしてるとそのしっかりさが尚引き立つなぁ。

 

「お待たせしました、イリゼさん」

「ううん、然程待ってもいないから大丈夫だよ」

「ディーちゃん、わたしは?わたしはー?」

「もうちょっとここで待っててね、エスちゃんだけ」

「わたしまだ待たされるの!?わたし『だけ』何か待つの!?」

 

…ディールちゃんが妹弄りを挟んで、それから外へと向かう私達。……と、そこで私達…というか二人はギルドにいた人達に話しかけられていた。

 

「二人共、今日もクエストしてきたのね。偉いわ〜」

「いえ、お仕事ですので」

「二人は強いもんなぁ。けど、大変じゃなかったのかい?」

「えぇ、中々骨の折れるクエストで…でも一人ではなかったので、何とかなりました」

「そうなのね。あ、これ皆で食べて」

「あぁ、どうもありがとうございます。後で頂きますね」

 

二人はルウィーの人達にも認知されてるみたいで(テニスの時ロムちゃんラムちゃんがそれらしき話をしてたけど)、二人を中心に和やかな雰囲気が広がっていく。……けど…皆さん、お分かり頂けただろうか…。今返答を行っていたのは、全てディールちゃんという訳ではなく、ディールちゃん、エストちゃん、ディールちゃんの順番だった事を……エストちゃんが、敬語を使っていた事を…。

 

(え、エストちゃんって…一般の方相手にはこういう言動するんだ……)

 

…と、私がエストちゃんに対して本日二度目の新発見をしていると、周りの方々の視線は私の方へ。

 

「ところで、君は?」

「あ…えぇと、私は……」

「彼女はわたし達の友人なんです。遠い場所に住んでいるんですけど、数日前からこちらに来てまして」

「クエストも彼女と行ったんです。中々強いんですよ?」

「へぇ…エストちゃんに強いと言われるなんて、貴女凄いのね」

「い、いえ。…良い雰囲気ですね、ここは」

「当たり前さ。こんなに小さい子がしっかり頑張ってるんだから、俺達だって活力持って生活するに決まってるじゃないか」

 

訊かれた私はどう説明したものかと一瞬困ったものの、二人のフォローで違和感を抱かれる事なく切り抜ける事が出来た。…この質問は今後もされる可能性あるし、今ディールちゃんが考えた設定は覚えておかないと…。

 

「では、わたし達はそろそろ帰りますね」

「皆さんもクエストの際はお気を付けて」

 

それからディールちゃんエストちゃんは頭を下げ、私もそれに続いてギルドを後にする。さっき貰ったお菓子はといえば…勿論、まだ開封せずに抱えたまま。

ここへ来てから数日経って、私は二人と共にクエストを行った。これは居心地の悪さと申し訳なさを解消する為のもので、三人でクエストを行った事自体が想定してなかった事だけど……その中で私は、二人の新たな一面やルウィーの人達との関係を知った。だから、私は思った。ここにいつまでもいる訳にはいかないけど……こうして普段は会えない友達の色んな面を知る事が出来るのは、嬉しいなって。




今回のパロディ解説

・モノクロ写真を〜〜
色づく世界の明日からの主人公、月白瞳美の事。声優ネタその一ですね。彼女はラムと違って大人しい(ロムちゃん風)ですが、連想した方も多いのではないでしょうか。

監督生(プリフェクト)
寄宿学校のジュリエットのヒロインの一人、王手李亞及び作中に出てくる役職の事。声優ネタその二。こちらは性格もロムに似ていますが、姉ではなく妹なんですよね。

・ゴートゥーワー
アニマエールの主人公、鳩谷こはねが初期に言い間違えていた言葉の一つの事。応援という事でアニマエールが出てきました。意味は…まぁ、戦闘中ですもんね。

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