超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress   作:シモツキ

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第百二十一話 パーティー、大パニック

「って言うかさー、前回の終わり方ってちょっと前にも同じパターンがあったよねぇ」

『いきなり何!?』

「あっははー!ほら、原作プレイ済みの人としてはシリアスにならざるを得ない終わり方だったでしょ?だから空気の破壊者(シリアスブレイカー)としては見過ごせないんだよねっ!」

 

イストワールさんが犯罪神の事、そして犯罪神を討つ為に必要となる武器の事を話してくれた後、私達は頭を整理する為休む事にした。休んでる余裕があるのか、とも思ったけど、イストワールさんの見立てではまだすぐには完全な状態にならないとの事。

 

「しりあす、ぶれいかー…!?」

「…か、かっこいい…!(きらきら)」

「ほほぅ、このセンスが分かるとは、流石ルウィーの女神候補生。ならば二人にも二つ名を……」

「止めて頂戴」

『えー……』

「二人も残念がらないの…」

 

そういえばネプテューヌの二つ名は聞いた事がなかったのか、ロムちゃんとラムちゃんが少し興奮した様子を見せる。それに命名者であるMAGES.が気分を良くし、二人にも命名しようとするも…それはブランに止められていた。…どちらかといえばブランもMAGES.側な気がするけど…まぁいっか。

 

「…にしても、中々出てこないねぇ……」

「そうね。ネプギア、場所が間違ってるって事はない?」

「ここで合ってる筈です。…筈、なんですけど…」

 

困り気味の笑みを浮かべる鉄拳ちゃんと、クエストの書類を持っているネプギアへ問いかけるアイエフ。質問を受けたネプギアは一度言い切るも、そこから自信無さ気な言葉を続ける。

帰還後は休んで、翌日は早速その武器を取りに…と思っていた私達だけど、今いるのはとある洞窟。かなり厄介なモンスターが住み着いてしまったから退治してほしい、という旨のクエストの目的地がここで……勿論、ここの奥に保管されてるとかではない。

 

「これってあれかな?ワイズマン的な人達がアタシ達より先に始末しちゃったパターン?」

「いや、教会に回ってきたクエストだし、それはないと思うけど…もしそうなら、無駄足になっちゃうね…」

「…無駄足ではないでしょ。少なくとも、ケイ達にとっては」

 

例え撃破済みでも、こうして来る事によって「もういない」と判明する訳だから、厳密に言えば無駄足じゃないけど…それでもここまで足を運んだ身としては、「なら来なくてもよかったじゃん…」と思ってしまうもの。そんな訳で肩を竦めていると…思うところのある顔で、ノワールがそう言った。

 

「…まぁ、そうですわね。これも必要な事とはいえ、何も全員で来る必要はない訳ですし」

「ノワール、ベール…でもそれは……」

「えぇ、分かっていますわ。四人の判断は理解出来ますし、同じ立場ならわたくしもそうしますもの」

「過去の教祖だって、その時の女神を信じていなかった訳じゃないでしょうしね。…その上でって思いは、イリゼだってあるでしょ?」

「…それは、否定出来ない…かな」

 

いつもは私達が目的地へ向かい、教祖の四人は待っているという形だけど、今日は違う。今日はイストワールさん達も動いていて、その目的が武器の回収。そして、何故私達じゃなくイストワールさん達が行ったかといえば……それは、私達に武器の保管場所を知らせない為。

 

(対神決戦兵装…神滅兵装…確かにそれの在り処は、そう易々とは私達に教えられないよね。…その名前の通りなら、犯罪神だけじゃなく…私達にとっても脅威になるんだから)

 

具体的にどのような力があるかまでは聞いていない。でも、イストワールさんがそんな大仰な表現を使うって事はつまり…ゲハバーンは、それ自体が絶大なアドバンテージとなるだけの武器だって事。…今、私達女神は友好的な関係を築いているし、シェア争いだってそれぞれが女神としての『魅力』で勝負してるけど、もしその関係が崩れたら…邪魔となる相手を消す事でシェアを獲得しようとしたら……その時ゲハバーンは、最悪の武器になる。守護女神同士、女神候補生同士で実力がおおよそ均衡しているが為に、武力における一強状態が生まれかねない。…故に、在り処の情報は女神ではなく教祖が代々受け継いでいたんだって、私達は教祖の四人から聞いた。

 

「…正に、諸刃の剣ね。と言っても、剣かどうかは分からないけど」

「その場合、使うのは私かイリゼ、ネプテューヌに…後はネプギア、って感じかしら?勿論形状にもよるし、アイテムとして使うと○○の効果が…ってパターンかもしれないけど」

「…………」

「…イリゼ?どうしたんですの?」

「あ、えっと……皆が守護女神戦争(ハード戦争)で使わなくて良かったな、って…」

 

ゲハバーンの形について三人が想像する姿を見て、ふと思った。もしもゲハバーンの存在を知って、それを四人の内誰かが使っていたら、この光景はなかったかもしれない。仮に誰かが誰かを手にかけなかったとしても、今の関係にはなれなかったのかもしれない。……世の中は、偶然の連続。一瞬ごとに様々な『もしも』があって、その中には未来を大きく変えてしまうようなものだって存在する。だからそんなもしもが思い浮かぶ度に、思う。──良かったって。

 

「…全く、イリゼは相変わらずですわねぇ」

「うぇ?な、何…?」

「イリゼのスタンスは時々こっちが恥ずかしくなるわ」

「い、いやあの…ふ、二人共何を……」

「でもまぁ、可愛らしくていいじゃない」

「ちょっ、だからその…優しい目をして頭撫でるのは止めてよぉ……うぅ…」

 

私は訊かれたから答えただけなのに、何故か三方向から頭を撫でられる。ベールはともかくノワールはほんの少し、ブランは明らかに私より背が低いのに、っていうか三人は私の先輩でもなければ姉でもないのに、三人共私を子供扱いしてなでなで、なでなでと……

 

「あー、イリゼさんいいなー」

「おねえちゃん、わたしも…」

「……(いいなぁ……って、はっ…べ、別にそんな事は考えてないんだからっ!)」

「……!?も、もうっ!こんな事されても恥ずかしいだけなんだから止めてよねっ!」

((…和むなぁ……))

 

……そうして気付けばロムちゃんラムちゃんからじーっと、ユニからはちらちらと見られ、しかもその後はパーティー全体が私を見てほっこりとした顔を浮かべていた。…うぅぅ…何なの、もう……。

 

 

 

 

入り口があれば出口がある。…というのは、少し間違っている。だって二つが分かれてるんじゃなくて、入り口兼出口である出入り口というのがあるから。というか、大概は出入り口じゃない方が珍しい。……なんて、重要でも何でもない言葉遊びを私が思い付いたのは…私達が洞窟の行き止まりである、一番奥まで到達したから。

 

「……おかしいわね…」

 

壁に手を当てて、そう呟くケイブ。その言葉に、私達は全員が心の中で同意する。…おかしい、間違いなくおかしい。一番奥まで到達したのに…討伐対象の姿を、誰一人として見ていない。

 

「まさか、本当に誰かがあたし達より先に討伐を…?」

「かもしれないけど、そうじゃないかもしれないにゅ。…どこかに隠し通路があったりは…」

「しそうに、ないね…」

 

旧パーティー組ファルコムが見回し、ブロッコリーが地面を、マベちゃんが端にある岩をそれぞれ探る。壁だったり少し前の道だったりと私達は全員でまだ行っていない場所がないか探してみるけど、隠し通路がなければ直近で戦闘があった形跡もない。

 

「……特定行動をすると、モンスターが出てくる…とか?」

「だとしたら、それは罠だな。そしてその場合、私達はクエストの依頼者に嵌められた事になる」

「そ、そっか…じゃあ今のは無しで……」

 

ゲーム的発想を口にしたネプテューヌに、マジェコンヌさんが突っ込む…というか指摘を行う。…今のは完全にボケ殺しの指摘だけど…ま、まぁ上手い突っ込みしたらそれはそれでマジェコンヌさんらしくないもんね。名前弄り受けた時には思い切り突っ込んでたけど、あれは某カンニングさん的なものだったもんね、うん…。

 

「うぅん、とにかくモンスターがいないんじゃ困ったね…絶望、はしないけど軽く手詰まりだよ…」

「じゃあ、ボクが歌って誘き寄せるとか…」

「え…5pb.さんそんなバジュラネットワークへの干渉みたいな事出来るんですか…?」

「あ…う、ううん。単に普段はないような音を出せば反応するかな、って…」

「で、ですよね…すみません、わたし変な勘違いしちゃって…」

「うーん…なら、一先ず出るのはどう?一度出る事で、何か発見があるかもしれな……ひゃっ…!」

 

目標が見つからない、さぁどうする?…となれば皆が同じ事を考える…とはいかない訳で、取り敢えず何人かが意見を口に。その内新パーティー組のファルコムも意見を言いかけて……その直後、何やら可愛らしい声が聞こえた。

 

「え、今の声…ファルコムさん、ですか…?」

「うっ……そ、それはその…」

「…案外、貴女も可愛い声を出すのね」

「大人のお姉さん的なファルコムの可愛い声…うん、ギャップ萌えだねっ!」

「ちょ、ちょっと出ただけの声なんだからそんなに食い付かないでくれないかな!?君達だっていきなり水滴が身体に落ちてきたら驚く……」

 

パーティーの赤髪メンバー(内一人は別次元の自分)に今の小さな悲鳴を突っつかれ、珍しく顔を赤らめてテンパるファルコム。それからファルコムは弁解をしようとして……固まった。

 

『……?』

「…確か、討伐対象って…スライヌ系のモンスター、だったよね…?」

「あ、はい。書類にもスライヌ系と思われる…って記述がありますけど…」

「……あたしに落ちてきた、水滴…スライム状、なんだけど…」

「それって……まさかッ!?」

 

赤から一転して顔が青くなったファルコムが私達に見せたのは、どろりと地面へ垂れていく液体。それを見た私達も、ファルコム同様一瞬固まって……全員一斉に洞窟の天井を見上げた。

今いる場所はそれなりに高さがあるらしく、元々暗い事もあって天井の姿はよく見えない。けれど、よく見てみれば天井で何かが蠢いている。天井の至る箇所で蠢き、這いずるそれは私達が唖然とする中、突如動きが止まり……次の瞬間、その全てが私達へと降り注いだ。

 

『……──ッ!!』

『……!アイス……』

「止めろロムラム!天井に向けて撃ったら最悪生き埋めになる!」

「で、でも…きゃあぁぁあぁああああっ!」

 

咄嗟に魔法を放とうとした二人を、ブランが制止。それとほぼ同時に私達も飛び退こうとした…というより飛び退いたけど……逃げ切れない。

──べちゃり、ぬるり、ぐにゅん。降り注いだ何か…いや、不定形のスライヌが服や露出している肌に張り付き、そこから服の内側へと入り込んでくる。

 

…………。

 

……はぁああああああっ!?

 

「くっ、この……ひゃんっ…!」

「ちょ、ちょっと!?これってまさかのサービスシーン!?こんなの聞いてな…ぁんっ……!」

「こいつ等、やっぱり討伐対象の……くっ、うぅ……!」

 

肌の上をぬるぬると這いずる不快感と、服や下着の内側を侵略される強烈な羞恥心。加えてひんやりとしたスライヌの身体が被服部位に触れると、温度差でぞくりとした感覚が走って……そんな状況で私達が、冷静に対処なんて出来る訳がない。

 

「こ、こいつら身体にへばり付いて……ひゃあっ!?へ、変なとこ触るな…!」

「気持ち悪いです〜!服の中まで、ぐちゃぐちゃ…ですぅ…」

「あはははは!や、やめっ…そこくすぐられると、弱…ぃ…あははははっ!」

「ブロッコリーにまとわり付くな、にゅ…離れるにゅ……!」

「くっ、なんと卑劣な攻撃…このような、辱め…を……っ!」

 

スライヌの入り方はそれぞれ。私達の感じ方もそれぞれ。でも皆、奇襲と想定外過ぎる攻撃(?)に戸惑って反撃どころじゃない。…そしてそれは、私も同じ。ひっ、袖とか肩口から入ってきて…あぁっ、また一体……!

 

「くすぐったい、よぉ…!そんな所に入ってきちゃダメぇぇ……!」

「…ぁ、くっ…引っ張り出したいのに…どんどん、入っていって……!」

「やぁぁ……ぴりぴり、するよぉ…!」

「わ、わたしも…おねえちゃぁん……!」

「ぴりぴり…?……ふ、ぅっ…って、まさか…ッ!」

 

襲われているのは、勿論候補生の皆だって同じ。顔を真っ赤にしてもがく四人の姿を見ると、反射的に助けなきゃという思いになるけど…動けば動く程スライヌは身体にまとわり付いていって、好転どころか状態は悪化してしまう。…それに、ロムちゃんはぴりぴりすると言った。もしそれが、身体に張り付かれた事によるものだとしたら……このスライヌの体液は、身体を麻痺させる類いの可能性が高い。

 

「不味い、ですわ…このまま、では…っ!」

「手の平に、滑り込んでっ…これじゃダガーも持てな…う、ぁっ……!」

「痛いのは、何とかなるけど…こういうのは無理ぃぃ…!」

 

地面に落ちたスライヌは脚から登ってきて、胸やお腹、果ては下腹部にまで侵攻されて、いよいよ私もひりつくような感じを覚え始める。このままいけば動けなくなる。この場で動けなくなれば、スライヌへの対抗手段も完全になくなる。そして何より……お、女の子として…これ以上されたら終わりだよぉおおおおおおっ!!

 

(何とかしなきゃ、何とかしなきゃ…!身体に張り付かれたままじゃまともに攻撃も出来ないから、まずは引き剥がさなきゃ駄目で…でもそんなの、女神化して圧縮シェアの爆発を受ける位しか手がないし、少しでも圧縮率を間違えたら私が動けなくなっちゃう…!どうしようどうしようどうしよう…………って、あれ…?…これ、って……)

 

頭に落ちたスライヌが鎖骨の辺りまで滑ってきて、そこから服の中に潜り込んで谷間を伝う中、ふとデジャヴのようなものを感じる。同じ経験をした事はないけど、これに凄くよく似た体験はした事があるって、そう身体は反応している。…そうだ、これは……

 

「ぐ、ぅ…この私が、スライヌにしてやられるなど…っ!」

「ほんとにこれは、不味い…ね…こうなったらいっそ、多少の怪我…はっ、…覚悟、でッ……!」

「待って、皆…!抵抗しないで……身体の力を、抜いて…っ!」

 

耐える事は解決にならない。そう考えた皆は歯を食い縛って、私同様自傷覚悟の攻撃をかけようとする。だから、私は声を張って……抵抗を止めるよう、皆へと叫んだ。

 

「て、抵抗を…止める……!?」

「ふ、くぁ……どうして、そんな…!」

「それが、一番だから…!そうすれば、スライヌ…はぁぁ……!」

 

私の言葉に目を白黒させながら訊き返してくる、5pb.と旧パーティー組ファルコム。二人が訊き返す気持ちは分かるし、皆も同じ事を思っている筈。…でも、お願い…私を信じて……!

 

「……っ、う…はぁ、ん…っ!」

「…イリゼちゃん…イリゼちゃんが…きゃ、ぅっ…そう言い切るって、事は……」

「それだけの、根拠が…あるの、だな…?」

「そういう、事っ…そうすれば、スライヌは下に滑って…いって……、──っ!」

 

抵抗を、動きを止めた事で這われる感覚がより分かるようになって、身を捩りたくて堪らない程のもどかしさに苛まれる。それでも耐えて、脱力を維持して……次の瞬間、ずるりとスライヌが身体から滑り落ち始めた。

ゆっくりと、でも止まる事なく私の身体を伝って下へと落ちていくスライヌ。胸元からお腹、腰、太腿と下がり、下に行くに連れてスライヌ同士が合流し、一まとまりになって膝を通過。そして足首を覆い、地面に着くかどうかとなった時……私は耐えていた思いを一気に爆発させる。

 

「こッ、のぉぉぉぉッ!」

 

回し蹴りの要領で思い切り足を回転させ、足に集まったスライヌを振り払う私。スライヌは不定形の液体状だったが為に私の足首周りに到達した時点では半ば融合していて、その結果質量の増加にも繋がり洞窟の壁へと吹っ飛んでいく。

 

「はぁ、はぁ……こういう事だから!だから皆も…!」

「は、はい…!対処法さえ、分かれば…アタシ達だって…!」

「ここからが、逆転のターンだよ…っ!」

 

百聞は一見にしかず。どんな理論理屈よりも、実際にやってみせるのが一番。それが何より説得力があって、同時に希望になるんだから。

そうして私を見ていてくれた皆も、抵抗を止めスライヌを滑らせる。スライヌは服の中に入って以降は敢えて自らは動かない事により、私達の動きを利用してまとわり付いていたからこそ、対象が動かなければ物理法則に従って落ちていく。勿論それならそれでスライヌも動こうとするんだろうけど…別の個体と融合してしまえば、それもすぐには出来なくなる。…融合の結果どうなるかはちょっと不安だったけど…その賭けに私は……いいや、私達は勝った。

 

「随分と、好き勝手してくれたじゃねぇか…ッ!」

「えいえいえーいっ!あっ、剥がせたですぅ!」

「こ、こんな羽目になるなんて…ロムちゃん、ラムちゃん、大丈夫…?」

「う、うん…でも、すごく気持ちわるかった…(うるうる)」

「わ、わたしも……(ぐすん)」

((ら、ラム(ちゃん)まで語尾に擬音が付いてる……))

 

一人、また一人と辱め紛いのスライヌの罠から脱し、洞窟の隅へと蹴っ飛ばしていく。罠から逃れたメンバーは私含めて安堵と疲労の混じった表情を浮かべ、された事に対してがっくりと肩を落とす。そんな中、最後の一人も引き剥がす事に成功して……私達は全員、スライヌの罠に打ち勝った。

 

「助かったぁ…忍びとして色んなものに耐える訓練もしてきたけど、これは流石に辛かったよ…」

「正に搦め手、だったね…でも、どうしてイリゼさんは対処法を…?」

「あー…それはね…」

 

下手なモンスターの攻撃よりずっと厄介だった。そんな声がちらほら出てくる中、旧パーティーのファルコムが遂にその質問を口に。やはり、と言うべきか皆もそれは気になっていたらしく、皆の視線が私に集中。

対処法が分かったのは、当然理由がある。でもそれは恥ずかしい…とまでは言わずとも、あんまり胸を張って言えるようなものではなくて…だから肩を竦め、頬をかきつつ私は言った。

 

「ほら、私の所にはライヌちゃんっているでしょ?そのライヌちゃんもね、動揺したり突然衝撃を受けたりするとあいつ等に近い状態になる事があって…で、抱えてる時にそんな状態になると……」

「服の中に入り込んでしまい、今と同じような状況になる…という訳ですのね」

『あー……』

 

皆が発した納得の声に、私はもう一度肩を竦めて苦笑い。平たく言えば偶然似た経験をしたというだけで、偶々なんだから誇れる訳がない。…まぁそれでも、窮地を脱する糸口になったんだからいいんだけどさ。

 

「世の中、どこで何が役に立つか分からないものね…特命課の経験も、全く違うところで活きたりするのかしら…」

「うんうん。とにかくイリゼさんありがとぉ〜」

「これ位お礼には及ばないよ。…にしても、私達が誰も気付けないなんて…ずっと前からここで獲物を待っていたのかな…」

「可能性はあるだろうな。……さて」

 

あわや全滅という危機を回避した事で、僅かな間パーティー内に流れるほっとした空気。…でも、危機は回避しても敵はまだ存命な訳で……マジェコンヌさんの「さて」という言葉を引き金に、私達は逃げようとするスライヌ群へと目を向ける。

 

「貴様達の行いは、生きる為の狩りだったのだろう。それを否定するつもりは毛頭ない。だが……」

『…………』

「…その狩りによって受けた分の屈辱は、きっちりと清算させてもらおうか……」

 

得物を抜き、本気となったパーティーフルメンバーのプレッシャーで固まるスライヌ群へと躙り寄る私達。そしてこの日、クエストは達成され……同時に女の怒りに触れたスライヌ達は、熾烈なる逆襲でもって灰塵と化すのであった。




今回のパロディ解説

・ワイズマン
ラストピリオド -終わりなき螺旋の物語-に登場する三人組の事。昔から主人公達の目的を邪魔する三人組、というのはいますし、ここは色んなパロディが出来そうですね。

・アイテムとして使うと○○の効果が
ドラゴンクエストシリーズにおいて、一部の装備がアイテムとしても使えるシステムの事。ゲハバーンにそういう効果があるかは…すぐに判明します。

・某カンニングさん
お笑いコンビ、カンニングの竹山隆範さんの事。カンニングさんだと相方の中島忠幸さんも該当しますが…キレ突っ込みといえば竹山さんの方ですよね。

・バジュラネットワーク
マクロスFrontierに登場する生命体、バジュラの有するネットワーク(意思疎通能力)の事。その場合、5pb.は自身か母親がV型感染症だったという事になってしまいますね。

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