超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress   作:シモツキ

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第百二十話 神滅兵装

確かにあの時、犯罪神を倒した。ネプテューヌ達が手応えを誤認する訳がないし、消滅していく様も確認した。間違いなく、犯罪神は撃破されていた。…筈、なのに……

 

「…どういう、事……?」

 

──収束した負のシェアエナジーは、一つの形へ……ギョウカイ墓場に漂うシェアが生温く感じる程の、負の力を放つ存在へと変貌した。

 

「あれは…何……?」

「モンスター…じゃ、ないよね…?」

 

犯罪神の胴体に生える、或いは融合するようにして位置していた部位らしき身体に、負のシェアの女神と化したマジェコンヌさんが纏っていたのと酷似した翼。異形そのものだった犯罪神に比べれば随分と生命らしさのある存在に皆が目を奪われる中、旧パーティー組のファルコムと鉄拳ちゃんが呟く。…私達全員が思っていた事を、代弁するように。

 

「馬鹿な…奴は……」

「……っ!何が起こったのかは分かりませんけれど、今は話している場合ではありませんわ!もし感じた通りならば、この存在は──」

 

私達の中でも一際目を見開いているマジェコンヌさんが声を震わせ、ベールが我に返って檄を飛ばした…その瞬間だった。奴のすぐ近くにいた四人の内の一人……ネプテューヌが、吹き飛ばされたのは。

 

「……──ッ!お姉ちゃんッ!」

『……ッ!』

 

弾かれたようにネプギアが女神化し、吹き飛ばされたネプテューヌの方へ。それとほぼ同時に私も女神化し、全員が散開して臨戦態勢に。

ネプテューヌを吹き飛ばした奴は、振り切ったように右腕を広げており、その手には柄の両端に刃を備えた一本の武器。ネプテューヌを攻撃したのは、それと見て間違いない。

 

「三人共、いくよッ!」

『(はい・うん)ッ!』

「いきなり現れて名乗りもせず攻撃なんて……」

「舐めた真似してくれんじゃねぇかッ!」

 

地を蹴り突撃する私と、表情に驚きを残しつつも武器を敵へと向けて飛び上がる女神候補生の三人。ネプテューヌを除いた守護女神の三人も三方向から同時に斬り込んで、戦闘が開始される。

 

「お姉ちゃん!大丈夫!?」

「…ネプギア…えぇ、大丈夫よ…。背中は打ったけど…攻撃自体は、何とか防御したから」

「良かった……」

 

垂直飛びで三人の攻撃を避けた敵は、剣の斬っ先の片側を三人の方へ。そこへ私が仕掛けて斬り結んだところで、ネプテューヌとネプギアの声が聞こえてくる。…ほんとに、良かった……。

 

「貴方は、何者なの…ッ!?」

「…………」

 

刃同士でせめぎ合いながらぶつけた問いに、返答はない。次の瞬間放たれたユニの射撃は私を振り払いつつ避け、続くロムちゃんラムちゃんの魔法も敵は機敏な動きで避けていく。

 

「にがさない……!」

「すばしっこくうごく相手も、もうなれっこなんだから!」

「貴女達はそのまま追い立てて下さいましッ!わたくし達四人ではたき落としますわッ!」

「いいえ、わたし達五人よッ!」

 

偏差攻撃で追う二人へ、ベールが指示。そこから私達が四手に別れようとしたところで、戦列にネプテューヌが復帰した。それと時を同じくして後方から放たれる射撃に性質の違う物が混じり、ネプギアも援護に参加した事を理解する。

飛び回り、時に弾丸や魔法を斬り払う敵へ候補生の四人が撃ち込み続け、私達が距離を詰めていく。敵の速度も動きも相当なものであるけど…手も足も出ないレベルではないし、物量ならばこっちが圧倒的に有利。そしてベールの目論見通り、ノワールとベールが敵の頭上を取る。

 

「もらったわッ!」

「落ち…なさいなッ!」

 

二人の攻撃をそれぞれの刃で受けるも、衝撃は殺せず勢いよく地面へ落ちる敵。そこへ広がっていたパーティーの皆による遠隔波状攻撃が叩き込まれ、地面激突によって巻き上がった土煙が一瞬晴れるも、すぐに波状攻撃でより大きく濃密な土煙が敵の姿を飲み込んでしまう。

 

「…やっぱり助かるわね。味方が多いと」

「だね。…にしても、この力…やっぱり犯罪神の……」

 

空中で構え直し、土煙を見やりつつもネプテューヌと言葉を交わす。

疑問はある。私が勘違いしている可能性もゼロじゃない。…でも、あの敵から感じるのは…やっぱり犯罪神の力。異形の時よりずっと濃い…でも同時に洗練された、どこか澄んだ雰囲気さえも感じさせる、負のシェアの神としての……

 

『……っ…!』

 

土煙を吹き飛ばす、闇色の柱。その後四散した柱から姿を現す、負のシェアの神。その形相に焦りや弱った様子は…微塵もない。

 

「……足りぬ…」

「……!ゆ、ユニ今しゃべった!?」

「喋ってないわよ!?アタシあんな声してないから!」

「じゃあ、やっぱり今のは……」

 

そして聞こえた、「足りぬ」という言葉。驚いた様子でラムちゃんがユニに訊くけど、勿論そうじゃない。足りぬと言ったのは、ネプギアの考えている通りの相手。

ラムちゃん程じゃなくても、私達は全員がこれまで何も発しなかった…犯罪神であるならば、これまでは言語能力自体がないように思われていた奴の言葉に、驚いている。驚いていて……そこから更に、驚かされる。

 

「──皆さんッ!逃げて下さいッ!全力で撤退するんですッ!」

『いぃ……っ!?』

 

一瞬インカムのボリューム機能が壊れたのか、それとも音波攻撃でも受けたのか。…そう思う程に大音量の声が、インカムから耳へと叩き付けられた。

 

「あぅぅぅ…!お耳、きーんってするよぉ……!」

「す、すみません!ですがそれどころではないんです!撤退出来る状況にありますか!?」

「え、あ…は、はい。撤退出来ない事はないですけど…いーすん、さん…?」

 

声の主はイストワールさん。ロムちゃんの言葉にイストワールさんは謝るものの、慌てた様子は変わらぬまま。

 

「お、落ち着いていーすん。撤退って…今のところわたし達は劣勢じゃないわ。そんなに慌てる程の相手なら、全員がいる今の内に……」

「冷静さに欠けてるのは百も承知で、その上で言ってるんです!奴が蘇ってしまった以上…ここで皆さんを失えば、信次元は終わりなんですッ!」

 

切羽詰まった声音のイストワールさんに対し、私達の殆どは怪訝さを覚える。何故なら目の前の敵に優勢…とまでは言わずとも、勝ち目はあるんじゃないかと感じていたから。…だけど、イストワールさんは言った。ここで皆さんを失えば、と。いつだって私達…特に守護女神と女神候補生の八人を失えば、国や信次元にとって大きな痛手となるのは変わらないのに、わざわざ今口にしたのは……それだけの理由があるって事。

 

「…イストワールの言う通りだ。策も無しにこのまま奴と戦い続けるのは得策ではない…!」

「マジェコンヌまで…イストワール、貴女の思い違いという事はないのですわね?」

「ありません!」

「す、凄ぇ圧だな…だったら仕方ねぇ。ここは一時退くぞ!」

「殿は私達が務めるわ!イストワールの言った通りにならないよう、急いで戻るわよ!」

 

世界の記録者であるイストワールさんと、過去にも犯罪神と対峙し一度は近しい存在となったマジェコンヌさん。その二人が狼狽え、切羽詰まった雰囲気で撤退を勧めるのなら…それは敵の脅威を示す上で、十分な要素となる。

撤退する。そう決めた私達は、すぐさま行動を開始した。私と守護女神の四人は注意を引く為突撃し、候補生の四人は射程ギリギリまで下がって私達へ火力支援。他の皆は来た道を戻る事に専念。それぞれに最適な行動を選んで、それに全力を注ぐ。

 

「皆も退がるだけの余力は残しておかなきゃ駄目よ!」

「分かってる!ここでの時間稼ぎはもう何度もやってるんだから!」

 

あまり無理には踏み込まず、攻撃を当てる事より五人で攻撃を絶やさない事を意識しながら攻め込む。犯罪神と思われる敵は、剣で私達の攻撃を受け流すようにして凌ぎながら、包囲や集中砲火を避ける為か飛び回る。扱いが容易ではない武器で巧みに防ぎ、私達自身時間稼ぎを目的としているとはいえ九対一の状況下でありながら擦り傷以上のダメージを負わないその技量は、本当に化け物そのものだった時とは対極……って、あれ…?

 

(…さっきから、全然攻撃をしてこない……?)

 

私の攻撃を紙一重で避け、そこから反撃はせず横をすり抜けていく姿にふと気付く。元々この戦闘は向こうから仕掛けてきた事で始まったにも関わらず、某TCGばりにずっと私達のターン状態。女神九人が連携攻撃をかけているんだから、当然といえば当然だけど…何というか、これは攻撃出来ないんじゃなくて、向こうも……

 

「そろそろお姉ちゃん達も引いてッ!アンタ達!弾幕張るわよ!」

「めん、せーあつ…!」

「ネプギア、だんまくうすいわ!何やってんのよ!」

「こ、これでも精一杯やってるよ…!」

 

鋭い声が届いた次の瞬間、後方からの射撃と遠隔魔法の密度が一気に増す。…これは…撃たれたくなかったらすぐに下がってって訳ね……私達が下がらざるを得ない状況を作る事で、先んじて『無理してでも候補生組が離脱するまで時間を稼ぐ』って選択肢を潰すなんて…やるじゃん、ユニ。

 

「貴方の妹、中々大胆な事をしますわね…!」

「計算された上での大胆さは、賢明な判断って言うのよ!…とはいえ、やってくれるじゃない…!」

 

攻撃の合間を縫うように飛びながら、数秒の逡巡。ユニの考えに乗って退くか、四人の安全を最優先にして留まるか。戦場特有の研ぎ澄まされた思考の中で、出来うる限りの可能性を考えて……私達は、反転した。攻撃を完全に中断して、最高速度で後退する。

 

「…けど、置き土産位は…させてもらうよッ!」

 

個としての戦闘能力では私達の方が上でも、近距離戦主体の私達と遠距離戦主体のネプギア達なら、私達が先に後退を開始するのが合理的。その判断の下、私達はある程度の距離まで下がって…そこで一瞬だけ振り返った。振り返りざまにそれぞれが出来る遠隔攻撃を撃ち込んで、それから四人の横を駆けていく。

 

「このまま、もう少し…!」

「ネプギアもそろそろ行って!その後はロムとラムも!」

「い、いいのユニちゃん!?」

「いいも何も、一番有効射程が長いのはアタシなんだから、こういう事は任せなさいッ!」

「…なら、下がってくれなきゃわたし戻ってくるからね!」

「わたしも!」

「わたし、も…!」

「…ったく…分かったからさっさと行きなさいっての!三人が下がればアタシも下がれるんだから!」

 

後ろから聞こえる、候補生四人のやり取り。今や私達にも劣らない繋がりの深さを得た、四人の選択。欠片も想定していなかった出来事への驚きや、現れた存在に対する疑問が頭の多くを占める中……そんな四人の姿もほんのりと心に留まりながら、私達はギョウカイ墓場から離脱するのだった。

 

 

 

 

ギョウカイ墓場を脱し、先に離脱したメンバーと(ネプギア達とは墓場内部で)合流した私達は、インカムでイストワールさん達と状況確認を行いつつプラネタワーへと帰還した。…被害といえばネプテューヌが背中を打った位で、重傷を負った人は誰もいない。

 

「たっだいまー!……あれ?わたしたちが住んでるのはここじゃないけど、ただいまで合ってるのかな?」

「んと…ここから行ったんだから、ただいまでいいと思う…」

 

プラネタワーに入って最初の会話は、ロムちゃんとラムちゃんのゆるふわやり取り。ギョウカイ墓場での事態を考えれば、緊張感がないとも言えるけど…少々重めの雰囲気となっていた今のパーティーにとっては、良い清涼剤になってくれたと思う。

 

「お帰りなさい、皆さん。無事で何よりです…ε-(´∀`*)」

「ふふん、言われた通り全力で見逃してきたからね!褒めて褒めて〜」

「はい。よく戻ってきてくれましたね、ネプテューヌさん\(^-^ )」

「あ、うん…色んなボケ仕込んだのに、全部スルーされた……」

 

迎えてくれるイストワールさん達教祖の皆さんと、突っ込みがなくて複雑そうにしているネプテューヌ。…一応補足しておくなら、ネプテューヌが求めてた突っ込みは「いや別に褒める程の事では…というかそんな事言ってませんし、どちらかと言うと見逃された側ですし、そもそもそれ違う人の発言じゃないですか…」…って感じかな。

 

「…イストワール。安心するのは分かるけど、今はそれより話さなきゃいけない事があるんだろう?」

「…っと、そうでした…流石にここで話す訳にはいきませんし、皆さんこちらへ( ̄^ ̄)」

 

ケイさんから指摘を受けたイストワールさんは、ケイさんの言う「話さなきゃいけない事」を思い出して移動を開始。私達も後に続く形で、場所を会議室へと移す。

 

「お姉様、お怪我はありませんか?何か具合が悪かったりは…」

「見ての通り、調子はいつも通りですわよ?」

「三人共、何ともないみたいですね…良かった……」

「心配性ね。わたし達が大丈夫なのは、通信で分かっていた事でしょう?」

 

移動の最中、チカさんとミナさんはそれぞれベールとブラン、ロムちゃんラムちゃんを気にかける言葉を発した。ケイさんは普段通りクールだけど、ノワールとユニを視界に入れる為か少し二人の後ろを歩いている。…多分それは、私達が戻る間にイストワールさんから説明を聞いたから。……やっぱり、奴がそれだけの存在なのは間違いないんだ…。

 

「…お疲れのところ申し訳ありませんが、これから話すのは重要な事です。ですので皆さん、真剣に聞いていて下さい」

「…だって、ネプテューヌ」

「らしいわよ、ネプテューヌ」

「との事ですわ、ネプテューヌ」

「真剣にね、ネプテューヌ」

「うっ…わ、わたしだって本当に真面目にしなきゃいけない時は、ふざけず聞くって……」

 

会議室へ到着し、各々席に着いた私達。そこでイストワールさんから「真剣に」と言われ、私と守護女神の三人は揃ってネプテューヌの方へと目をやった。……正直言うとネプテューヌが必要なら真面目な態度取る事は知ってたし、その上で釘を刺した辺り実はネプテューヌじゃなくて私達四人がふざけてるっていうのは…否定できなかったり……。

 

「…ロムちゃん、わたしがねそうになったらおこしてね」

「うん。…ネプギアちゃん、わたしがねそうになったら……」

「あ、うん。起こしてあげるね」

「……では、話しましょうか。ギョウカイ墓場で起こったのは…そして現れたのは、何だったのかを」

 

座った私達を見回して、静かにイストワールさんが口を開く。その声音で、私達全員も真剣な顔付きへと変わる。

 

「まず、女神の皆さんは薄々感じていたと思いますが…現れたのは、犯罪神です。それは間違いありません」

「やっぱり、そうなんですか…。…でも、あの時は確かにお姉ちゃん達が、犯罪神を…」

「えぇ、犯罪神は一度ネプテューヌさん達によって倒されました。それも間違いありません」

 

奴は、犯罪神。…その言葉にどきりとはしたけど、予想はしていたからそこまで強い驚きはない。それより気になるのは、イストワールさんの言葉から感じる食い違い。あの時倒して、そこから今日までで復活、或いは再誕した…と考えれば二つの言葉は成り立つけど、それはそれで「そんな馬鹿な…」という思いが生まれてくる。そしてイストワールさんもその事は分かっているみたいで、話を続ける。

 

「…条件は不明で、事例も多くはありません。…が、これまでにもあったんです。今回の様に、犯罪神が別の姿となる事は」

「別のすがた…あ、もしかして!」

「フォルム、チェンジ…?」

「…いいえ、能力の傾向が変わるというより、真の力を解放するというべきですね。敢えて言うなら…そう、今の奴は真・犯罪神です」

 

顔を見合わせ、それから目を輝かせて口を開いたロムちゃんとラムちゃん。けれどイストワールさんは首を横に振って、今の奴…犯罪神がより高位の存在となったのだと断言する。

高位…確かにあの犯罪神からは、私達が倒した犯罪神より深く強大な力を感じた。でも、そうだとしても……

 

「…あの犯罪神が、真の姿だとして……それはどれ程脅威度に差があるんですか?」

「それは、わたしも思ったわ。あの犯罪神も強い事は間違いないけど、貴女やマジェコンヌの反応には今もまだ違和感があるもの」

「だよね。一撃の重さなら前の犯罪神の方が上だったし、やっぱりパワーとタフさ重視の姿か、スピードと技術重視の姿かって違いじゃないの?」

「…そう感じたのであれば、恐らく犯罪神はまだ完全な覚醒をしていないのでしょう。完全復活に時間がかかっていたように、今は不完全な状態なのかと」

「不完全……あ…」

 

……私達は、二人があそこまでの反応をした事に納得が出来ていなかった。だけどその理由についてはイストワールさんが推測を口にしてくれて、その中で出た『不完全』という言葉に私は…ううん、私達ははっとする。何故なら犯罪神自身が、先程の戦いの中で「足りぬ」と言っていたから。足りぬというのは即ち負のシェア…それか時間の事で、足りていないから不完全で本来の力も発揮出来なかったんじゃないかって。

 

「思い当たる節が、あるんですね。…もし犯罪神が完全覚醒してしまえば、その力は計り知れません。可能性で言えば、それこそ……」

「…あの時の私と同等…或いはそれ以上、という事か」

 

言葉の途中でイストワールさんはマジェコンヌさんへと視線を向け、言葉を継ぐ形でマジェコンヌさんが答え……その答えに、あの時のマジェコンヌさんと戦った私達はごくりと唾を飲み込む。…あの戦いは、私達が全滅してた可能性だってゼロじゃないんだから。

一層高まった緊張感に、数秒の沈黙が訪れる。そんな中で、口を開いたのはベール。

 

「…ならば、わたくし達は退くべきではなかったのでは?最悪の事態を考えれば、災いの芽は早い内に摘んでおくのが定石ではなくて?」

「…そうですね。しかし…はっきり言えば、今の皆さんでは勝てたとしても、一時的に行動不能にするのが限界だと思います」

「それは、今の私達には打つ手がないって事?」

「そうは言いません。言いませんが…」

『……?』

「……今のまま完全撃破を狙うならば、皆さんの内誰かが…いえ、何人かが正のシェアの塊として自爆を仕掛け、その身を犠牲に正負の対消滅を図るか、シェアの一極集中を図る必要があります」

『……っ!』

 

一度目を伏せ、それから私達女神を見てイストワールさんは言った。その言葉に、私達は言葉を失う。

その身を犠牲に対消滅?…そんなの出来る訳がない。出来るけど…私がさせない。例えイストワールさんの言葉であろうと、例え皆がそれを望んだとしても…そんな事は絶対にさせない。私の命を懸けてでも、それは私が否定する。

シェアの一極集中?…それはつまり、女神としての信念を、生き様を捨てるという事。シェア争いの結果一極集中したなら仕方ないけど、故意に集中させるというなら…信仰してくれる人を騙し、裏切る行為に他ならない。…そんな事をする位なら、皆はきっと自分を犠牲にする事を選ぶ。だから私は……どっちも選べない。

 

『…………』

「…皆さんの言いたい事は分かります。それに、前者はともかく…後者は一極集中が完了するより先に犯罪神が完全覚醒してしまうでしょう」

「…なら、再び私が犯罪神の力をこの身に宿そう。そうすれば、今のまま倒す手段も……」

「それは駄目だよマジェコンヌ。そんなのマジェコンヌが良くても、わたしが嫌。わたしが嫌だし…イリゼが命懸けで助けたその命を軽んじてるなら、幾らマジェコンヌが皆の為を思っていても…わたしは許さない」

「……っ…。…すまない、ネプテューヌ。軽率な発言だった…」

 

神妙な面持ちのままのイストワールさんに、マジェコンヌはある提案をした。…それは過去にも行った事で、マジェコンヌさんの人生を狂わせる原因となってしまった事。……だけどそれは、誰よりも早くネプテューヌが否定した。否定してくれた。マジェコンヌさんの事を思って。私の事を思って。…そしてマジェコンヌさんも、複雑そうな顔をしながらも…言葉を撤回した。

 

「…で、いーすん。それならわたし達はどうしたらいいの?いーすんがすぐ倒してきてって言わないって事は、それとは別の手段があるんだよね?」

「…よく、分かりましたね」

「そりゃ分かるよ。いーすんはプラネテューヌの教祖で、わたしはプラネテューヌの守護女神なんだから。……それで、その手段って?」

 

重い…というより暗くなってしまった雰囲気を払拭するように、軽い調子で別の手段を訊くネプテューヌ。するとネプテューヌの予想は当たっていたみたいで、イストワールさんはゆっくりと頷く。それからイストワールは教祖の三人へと目をやって、三人の首肯を確認して……今日一番の真剣な顔を浮かべた。

 

「……真の姿となった犯罪神にすら決定打を与え、勝利する事の出来る武器があります。これまで真の犯罪神には、その武器をもって信次元を守ってきました。それは、対犯罪神……いえ、対神決戦兵装、或いは神滅兵装でも称するべきもの。そして、その武器は……」

 

 

 

 

「──ゲハバーンと、呼ばれています」




今回のパロディ解説

・某TCG、ずっと私達のターン
遊戯王OCG及び、原作での展開の一つの事。バーサーカーソウルが元ネタではない(諸説ある)らしいですね。…と、豆知識(?)を入れてみました。

・「〜〜だんまくうすいわ!何やってるのよ!」
ガンダムシリーズ(宇宙世紀)の登場キャラの一人、ブライト・ノアの代名詞的台詞の一つのパロディ。この台詞を言ってる訳ですし、ネプギアは左側にいたのかもですね。

・全力で見逃して
コードギアス 反逆のルルーシュの主人公、ルルーシュ・ランペルージ(ヴィ・ブリタニア)の名台詞の一つのパロディ。…まぁ、倒してませんしある意味間違ってませんね。

・フォルム、チェンジ
ポケットモンスターシリーズにおいて、一部のポケモンが持つ能力の事(勿論本来は句読点無し)。犯罪神、ノーマルフォルムとネオフォルム…という感じでしょうかね。

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