超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress   作:シモツキ

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第四話 逆襲の庭球

旅に出る事になってから、わたしに残った最後の『大切な人』との再会を目指して歩き出したあの時から、色んな戦いを経験してきた。強い敵も、怖いと思う相手も、沢山いた。でもわたしは生き延びて、乗り越えて、ディーちゃんと再会する事が出来た。それからも戦いを重ねて、今のわたしはここにいる。

なのに、わたしは今……圧倒的な実力の前に、成す術なく蹂躙されていた。

 

「はぁ…はぁ……」

「そん、な……」

 

立っていられず、膝を付く。過負荷で、腕が震える。息も絶え絶えで、脂汗が額を伝う。

圧倒されたのはわたしだけじゃない。わたしと同じように…ううん、わたし達二人がかりでも、その相手には手も足も出なかった。力の差を見せ付けられ、弄ばれ、格の違いを思い知らされた。……戦いにすら、なっていなかった。

 

「ふぅ…まぁ、慣れない勝負でここまで出来たなら大したものだよ。けど……もう少しは骨があると思ったんだけどなぁ…」

 

自陣から離れ、わたし達の前へとやってくる相手。わたし達を見下ろすその人からは、疲労を微塵も感じない。必死に抗っていたわたし達に対し、その人は楽しんでいた。全力の勝負で負けたんじゃない。楽しむだけの余裕がある程度の力にすら……わたし達二人は、敵わない。

 

「…どういう事よ…どうなってるのよ……おねーさん…ッ!」

 

手を握り締めて、力を振り絞って叫ぶ。…そう、相手は…わたし達を蹂躙し、今はつまらなそうにわたし達を見下ろすのは──他でもない、おねーさんだった。

 

 

 

 

事の発端は、ディーちゃんの一言。用事が終わってルウィーへと戻ったところで、ディーちゃんがその提案をした。

 

「…ルウィーの案内?」

「はい。イストワールさんが信次元のイストワールさんを見つけるまで少しかかるようですし、どこに何があるか分かっていた方がイリゼさんも楽かと思いまして」

「それはそうだね。一々ディールちゃん達に着いて来てもらうのも悪いし」

 

ディーちゃんが何を提案したかは今の会話の通りだけど、もうちょっと具体的に言えば、まだ夜まで時間があるから教会周辺だけでも見て回ろう…って事。……因みに、帰りは普通に運んだわ。おねーさんって弄ると面白いけど、別に怒らせたい訳じゃなかったし。

 

「じゃあ、行きます?」

「うん、お願いしようかな」

「任せて下さい。エスちゃんはどうする?興味ないなら先帰っててもいいけど…」

「うーん…じゃ、わたしも行くわ。教会に帰るより着いてった方が面白そうだしね〜」

 

帰ってロムちゃんやラムと遊ぶのも悪くないけど、今ここにはお気に入りの玩具…じゃなくて別次元から来たおねーさんがいるんだから、そっちに着いて行こうと思うのもふつーの話。…で、でもこれはあくまでおねーさんがいるのは期間限定イベントみたいなものだからってだけで、別におねーさんへ特別何かの感情を持ってる訳じゃないんだからねっ!

 

「……エスちゃん、何言ってんの…」

「何って…あれ?ディーちゃんいつの間に読心術覚えたの?」

「読心術っていうか、迷宮で身に付けた地の文読みスキルだけど…」

「へ、へぇ……(ディーちゃん、そんな技術持ってたんだ…)」

 

よく分かんない技術で読者さんへのサービス発言を見抜かれながらも、わたしとディーちゃんでの案内がスタート。…でも、基本真面目なディーちゃんとただ案内するだけじゃつまんないと思うわたしだから……

 

「ここを左に曲がると住宅街なんです。なのであまり来る事はないかと思います」

「でも、狭い道も多いから鬼ごっこには使えるのよね!おねーさん、わたしを捕まえられるかしら!?」

「えっ、ちょっ…ほんとに走り出した!?案内は!?いきなり案内終了するの!?」

 

 

 

 

「右から順に本屋さん、喫茶店、旅行代理店です」

「うん、みたいだね」

「見れば分かるわね」

「……じゃ、後は自分で見てくればいいじゃないですか…」

『えぇぇ!?ヘソ曲げられた!?』

 

 

 

 

「ふふん、ここは魔導具店!けどわたしやディーちゃんからすれば物足りないアイテムも多いけどね!」

「え、エスちゃん…お店の前でそういう事言うのは営業妨害だからね…?」

「へぇ……あっ、無いと思ってた白い本あった!」

『あった!?あの本凄いアイテムだと思いきや、まさかの市販品だったオチ!?』

「……ごめん、今の嘘…」

 

……ちゃ、ちゃんと案内出来たのかしら…おねーさんもおねーさんで時々ボケを挟んできたし…。

 

「…案内って、案外難しいわね…」

「エストちゃんは案内以外のところへ力入れてたのが原因じゃないかな…」

 

そんなこんなでわたし達がやってきたのはある複合アミューズメント施設。…って言っても、目的地にしてた訳じゃなくて、歩いていった先がここだっただけだけどね。

 

「アミューズメント施設、かぁ…二人もこういう所来たりするの?」

「わたしはあんまり…」

「わたしも同じかなー。興味ない訳じゃないけど」

「そうなんだ。……じゃ、ちょっと寄ってかない?」

 

施設の壁面看板を暫し眺めていたおねーさんは、振り返って提案を口に。今言った通りわたしは興味ゼロではないけど…入る事は考えてなかったから、わたしとディーちゃんは顔を見合わせる。

 

「…どうしよっか、ディーちゃん」

「案内はノルマじゃないから、入るのは問題ないと思うけど…イリゼさん、お金は大丈夫ですか?」

「それは問題無い…って、よく考えたら通貨が違う可能性あるよね…しかもさらに考えたら、交流がほぼ不可能な場所で信次元の通貨使うのはあんまり宜しくない気も……」

「そんなの気にしなくって大丈夫よ!最悪『請求はお姉ちゃんに!』って言えば何とかなるし!」

「ならないよ!?ならないし、姉として流石にそのマインドは看過出来ないよ!?」

 

折角の機会に小難しい事(…普通に、何事もなく成長出来たらわたしもそういう勉強してたのかな……)を考え始めたおねーさんを差し置いて、施設へ走るわたし。ディーちゃんもディーちゃんで何故か姉としての意識に駆られていて、わたし一人が先行する形に。

で、受け付けを済ませた(宣伝になるからって事で無料クーポンを貰えたわ)わたし達が、もう何をするか決めているらしいおねーさんの後に続いていくと…到着したのはテニスエリア。

 

「……?テニスしたかったんですか?」

「うん、私実はテニス得意なんだ。二人はルール知ってる?」

「えぇ、まぁざっくりとは…」

「って事は、あんまり経験もないんだよね?…なら、二人まとめてかかっておいで」

「む……」

 

ラケットとボールを手にしたおねーさんが浮かべているのは、不敵な笑み。…二人まとめて、って……

 

「…おねーさん、それはわたし達への挑発なのかしら?」

「ふふっ、まぁそう言ってもいいかもね。…で、どうする?一対一が良いならそれでもいいし、そもそもテニス以外をやりたいなら考えるけど」

「……自信満々じゃん、おねーさん」

 

おねーさんが強い人なのは間違いないし、女神の力がスポーツでも活用出来るのも間違いない。でも、これまでおねーさんはその力をひけらかす事なんてしなかったから、見るからに自信のある様子を見せられると…何だか挑戦状を叩き付けられたみたいな気分になる。

 

「…エスちゃん、これ受けるつもり?」

「勿論。こんな事言われて、わたしが黙ってると思う?」

「もう、エスちゃんったら……けど、もしイリゼさんがわたし達の力を軽んじてるなら…それは、訂正してもらわなきゃいけないよね?」

「あはっ♪そうこなくっちゃ!」

 

横から声をかけてきたディーちゃんに言葉を返すと、ディーちゃんもまた不敵な笑みに。ふふっ、ディーちゃんもおねーさんも勝負に乗り気なんて、楽しくなってきたじゃない!

 

「ねぇねぇおねーさん。折角やるなら、何かを賭ける方が面白いと思わない?」

「賭け?罰ゲームとかならいいけど、お金賭けるのは遊びの域超えるから賛同出来ないよ?」

「わたしが言ってるのは罰ゲームの方。で、賭けるのは定番の『負けた方は勝った方の言う事を一つ聞く』でどう?」

「言う事、ね…私は構わないよ。ディールちゃんは?」

「良識のない要求は無し、って事ならわたしもそれでいいかと」

 

ラケットを持ってびゅんびゅん振りながら、勝負をより楽しくする為のスパイスを投下。ディーちゃんが要求へのセーフティーをかけてきたけど…ま、ディーちゃんならそう言うわよね。

 

「さて、じゃあ…始めよっか。ディールちゃん、エストちゃん」

「はい。…そう言えば、戦うのはお互いの事を全く知らなかった時以来でしたね」

「わたしは昨日戦ったばっかりだけど、昨日は中断したも同然だし…その続きといこうじゃない、おねーさん!」

 

びしっとラケットを突き付けるわたしと、クールに…でも瞳に闘志を燃やして構えるディーちゃん。そしておねーさんは何やら嬉しそうな顔でわたし達を見据えて……勝負は始まった。

 

 

……それからすぐに、おねーさんの真価を目の当たりにするとも知らず…。

 

 

 

 

…と、そんな事があって今に至る。…振り返ってみると、勝負前のわたし達ってフラグ立ててた感あるわね…。

 

「うぅ…もーっ!おねーさんチート使ったでしょ!それか名字が羽咲だったりするでしょ!」

「いや使ってないし羽咲でもないよ。これバトミントンじゃないし」

 

テニスコートに仰向けになって、わたしは叫ぶ。だって、どこに打っても簡単に返してくるのよ?どんどん上書きしてるが如く動きが変わっていったのよ?……明らかに雰囲気が普段のおねーさんじゃなかった…。

 

「ここまで得意なら、もっとちゃんと言って下さいよ…」

「だってあんまり言ったら自慢してるみたいになっちゃうし…二人が乗ってくれなきゃ困るもん」

「悪どいです、イリゼさん…」

「あれ、忘れてたの?ディールちゃん。私…悪どい時は結構悪どいんだよ?」

 

ラケットを自分の肩に引っ掛けたおねーさんは、それはもう満足気な笑顔。しかも今言ったのは、プラネタワーに行く時ディーちゃんがおねーさんに言ったのとほぼ同じ言葉。…って事は、やっぱり……

 

((これが、プラネタワーで言ってた『お返し』……!?))

 

あの時は言ったっきりでわたしもディーちゃんも忘れかけていたけど、まさかこんなところでたっぷりお返しされるなんて…しかも全くわたし達に気付かせないなんて……おねーさん怖っ!おねーさんがじゃなくて、わたし達がちょっとおねーさんを軽んじてたかも…。

 

「…で、どうする?私はまだまだいけるんだけど…なッ!」

『…………』

 

わたし達の表情を楽しんでいた(気がする)おねーさんは、ボールを軽く上に投げてラケットで一閃。物凄い勢いで打ち出されたボールは壁に直撃し、跳ね返った末にわたしとディーちゃんのすぐ近くへと転がってくる。……どうしよう、おねーさん完全に変なスイッチ入っちゃってる…。

 

(…エスちゃんがイリゼさんにストレス溜めさせるから……)

(む、ディーちゃんだってふざけてたじゃん…)

(ま、まぁそれはそうだけど…降参する…?)

(それは嫌!)

(…だよね…じゃあ、女神化…?)

(…したら流石にズルい気がする…勝ってもなんかモヤモヤしそうだし…)

 

座り込んだディーちゃんとわたしでアイコンタクト。このままやったって勝ち目ないのは明白だけど、命がかかってる訳でもないのに簡単に降参するのは嫌だし、女神化しちゃったらもうその時点で『真っ当にやったら勝てない』って認めるみたいだからそれも嫌。…実は途中からわたしもディーちゃんも身体強化の魔法使ってたから、既にグレーゾーンではあるけど…。

 

「…………」

「…………」

「……もしや二人、会議してる?」

「…バレました?」

「この距離で私無視して見つめ合ってたら、ね。…遊びなんだから、そこまで意地にならなくてもいいんだよ?こんな事で二人との中に水を差したくはないし」

「…別にー?わたし達は意地になんて……」

「…ふふふ、何をやってもらおうかなぁ…二人は小さくて可愛いし、それに沿った方面の事が良いかなぁ…それか逆に、似合わない大人っぽい事をしてもらうのも面白いかも……」

((…や、ヤバい人の目をしてるうぅぅぅぅぅぅ!))

 

軽く握った手を口元に当てて呟くおねーさんは、危ない人の顔だった。もし次元の狭間で会った時にこの顔をしていたら、見なかった事にしてるかもしれない。

 

「…おねーさん、もしかして知らぬ間に違う人と入れ替わった…?」

「それか、ネガティブエネルギーが溜まりつつあるとか…」

「え、ネガティブエネルギー?…負のシェアエナジーみたいなもの?」

 

ほんとに同じ人とは思えないような変わりように、わたしとディーちゃんは声に出して会議続行。でも、わたしの別人云々も大概だけど、まさかネガティブエネルギーが溜まりつつあるなんて……

 

『……あるかもしれない…』

「いや何が?ネガティブエネルギーってのもそうだけど、何の話してるの?」

 

ふっとわたし達の頭に嫌な予感がよぎる。ディーちゃんの時やわたしの時と違って、今回おねーさんがいるのは普通の別次元。原初の女神?…の複製体らしいからわたし達とはちょっと性質の違う女神かもしれないし、わたし達よりずっと溜まり易い体質だったとしてもおかしくない。それに、おねーさんは信次元からここに飛ばされてきたって言ってたけど……事故の様な形で来た以上、『記憶に障害が起こる次元に一度飛ばされて、暫く放浪した末にここへ来た』って可能性もゼロじゃない。…もし、わたしの想像した通りだったら…今のおねーさんを、見て見ぬ振りなんて出来ない。

 

「…エスちゃん、やるよ」

「うん。今のおねーさんは止めないと…」

「え、っと…ディールちゃん?エストちゃん…?」

 

手放していたラケットを握って、立ち上がる。ボールを拾って、深呼吸して、おねーさんに自陣へ戻るようジェスチャー。戻ったおねーさんが構えたところでディーちゃんと一度目を合わせて、強化の魔法を身体に巡らせる。

 

「ここからが、本当の勝負です…!」

「そう簡単には負けてあげないんだからねッ!」

 

そう言い放って、ボールを宙へ放る。遊びだとか、実力差だとか、そんなのはどうでもいい。目の前でよくない方向へ進みつつある人がいて、それが友達なら、何とかしたいって思うのは当然だもの。出来るかどうかじゃなくてやる…なんか当初の目的とは大分変わっちゃってるけど、そんなの些末事!

そんな思いを力に変えて、わたし達は再開を……

 

「やぁぁっ!」

「ふふん、甘いよッ!」

「くっ、ぅ……っ!」

「ほらほら、まだいけるよねッ!」

「……ッ!ここなら…!」

「ふっ……残像だよ」

『残像!?』

「後、ボールもね」

『えぇぇぇぇぇぇっ!?』

 

……した数分後、またわたし達は冒頭のシーンみたいになっていた。…まぁ、作戦も逆転の手段も無しにただ再開したんだからこうなるのも当然と言えば当然だけどねっ!

 

「…むぅ…今の心境が逆転フラグになると思ったのに……」

「ねぇ、さっきから二人は何を言ってるの?」

「何か要素が足りないのかも…」

「ねぇってば。内緒話なら別に構わないけど、こうもあからさまにハブられるとシンプルに傷付くよ?日に二度も無視とか私泣きたくなっちゃうよ?」

 

おねーさんの謎パワーを分かっていた分さっきよりは疲労してないけど、それでもこんなの続けてたらほんとに体力が持たない。…やっぱり、女神化をするしかないの…?でも、女神化してないおねーさん相手に女神化&本気なんてぶつけたら、怪我させちゃう可能性もあるし…どうしたら、わたし達はどうしたら……

 

「──ディールちゃん!」

「エスト、ちゃん…!」

『え……?』

 

──そんな時、二人の声が聞こえた。驚いて、まさかと思って、わたし達が出入り口の方へと振り向くと…そこにはこちらへ駆け寄ってくるロムちゃんとラムの姿。

 

「ふ、二人共…どうして…?」

「どうしてって、帰ってこないからへんだなー、って思って…」

「お外出て待ってたら、違うとこ行ったよって教えてくれた人がいて…」

「だから色んな人に話聞いて追っかけたら…」

「ここについたの…(ごーる)」

「それで着けるって…二人は時々凄い行動力見せるわよね…」

 

幾らわたし達が見た目的に認識され易いからって、街の人からの情報だけでここまで辿り着くのは凄過ぎる。……と、わたし達が呆れ混じりの驚きを抱いていると…二人はおねーさんの方へと振り返る。

 

「でしょ?…それより、あんたよあんた!よくも二人をいじめてくれたわね!」

「やっぱり、悪い女神…!」

「はい!?い、いやいやいや違うよ!?私は二人とテニスしてただけ…ってあれ!?この展開前にもあった気が……」

「今度こそかちんこちんにしてやるわっ!」

「わぁぁ!?す、ストップラムちゃん!氷魔法使うのはストップ!」

 

杖を取り出しおねーさんを氷漬けにしようとしたラムを、ディーちゃんが慌てて止めさせる。…因みにその時ロムちゃんが「わたしも、ダメ…?」って顔をしてたから、アイコンタクトで駄目だって教えてあげた。

 

「ど、どうしてストップなの?…まさか、あいつに脅されて……」

「そ、そうじゃなくて…ほんとにテニスしてただけなの。なんか謎の力を発揮されてこうなってるけど、別に襲われた訳じゃないから…」

「…じゃあ、わたし達…役に立てない……?」

「それは…うーん、どうかしら…」

「……あ、ならわたし達も一緒にテニスしてあげるわ!」

『え?』

 

ディーちゃんの言葉でラムは誤解だったと分かってくれたみたいだけど、今度は何故か一緒にやるという話に。しかもロムちゃんはと言えば、こっちもこっちでやる気な様子。

 

「あ、あのね二人共。気持ちは嬉しいけど、二人が入ったら四対一っていう流石にアレな状態に…」

「それは、大丈夫」

『大丈夫…?』

「わたしとラムちゃんは、二人で一つ。ディールちゃんとエストちゃんも、二人で一つ。だから…わたし達は、四人で二つ(ぐっ)」

「あぁ、それなら!…とはならないわよ……」

「いや、いいよ?」

「……いいの?」

 

まさかのダブルスどころかフォース(?)を提案してくるロムちゃんに、わたしは辟易とするも…なんとおねーさんがこれに許可を出してきた。そしてその結果……

 

「ふふーん!わたし達四人なら、怖いものなんてないもんね!」

「ラムちゃんと、ディールちゃんと、エストちゃんとなら…負けない…!」

「…な、なんか凄い事になっちゃったね…でも、ここまできたらもう…やれるだけやってみるしかない…!」

「そ、そうね…よし。…おねーさん、おねーさんがいいって言ったんだから…最後まで付き合ってよねっ!」

 

前はわたしとラム、後ろはディーちゃんとロムちゃんという、普通のテニスならあり得ないフォーメーションに。これで勝っても最早「まぁ、そりゃそうよね…」という反応しか出来そうにないけど、二人の思いを無下にはしたくないし、何としても止めたいって思いは変わらない。だから…わたし達の、わたし達四人の絆で……この思いを、貫く──!

 

 

 

 

……えっと、後日談というか…今回のオチ。その日の夜の事。

 

「…………」

「…………」

「……?ディール、エスト…それは?」

「…罰ゲームです……」

「ちょっと、色々あったの……」

「そ、そう…大変ね…」

 

 

 

 

「……テニスコートに四人なんて、人数多過ぎて逆に動き辛いに決まってるわよね…」

「うん…もっと早く気付くべきだったよね……」

「…………」

「…………」

「……メイトとペットボトルの水って、寂しい夕飯だね…」

「懐かしいご飯だよ…はは……」

 

──皆が普通の夕飯を食べる中、バランス栄養食と水を口にするわたしとディーちゃんだった。……おねーさんのセンスは、よく分からない…。




今回のパロディ解説

・羽咲
はねバド!の主人公、羽咲綾乃の事。作中でも言ってますが、彼女はテニスではなくバトミントンですね。一応テニスボールを弾き返すシーンはありましたが。

・「ふっ……残像だよ」
幽☆遊☆白書の登場キャラの一人、飛影の名台詞の一つのパロディ。何故イリゼがそんなにテニスが得意なのか。それは一応ちゃんとした理由があるのです。

・後日談というか……今回のオチ
〈物語〉シリーズの各エピローグパートで出てくる文章のパロディ。なんかこう書くとイリゼが怪異で強化されたっぽくなりますが、勿論そんな事はありません。

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