超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress   作:シモツキ

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第百十四話 残りは僅か、されども…

組織が壊滅し、指導者も討たれた犯罪組織残党がそれでもまだ抵抗を続けるのは何故か。

理由があるとすれば、主に三つ。一つはまだ逆転の術がある場合。一つはどれだけ劣勢であろうと諦められない思いがある場合。そしてもう一つは…最早引くに引けないという、ヤケになってしまっている場合。

 

「もう無茶苦茶な力で暴れる事はねぇんだ、一人一人落ち着いて連れてってやれ」

 

少人数で潜伏していた残党が連行される姿を、淡々と眺める。残党は見つかった当初抵抗を行い、今も素直に連れていかれている訳ではないが…操られていた頃に比べれば、それは随分と大人しいものだった。

 

「ホワイトハート様、わざわざこの程度の規模の作戦にご助力下さりありがとうございます」

「気にすんな。今はもう対処に右往左往する状況でもないんだからよ」

「それも女神様達のおかげです。全く、何故こいつ等は女神様の偉大さが分からないのか…」

「世の中そんなもんだ。わたしが出来るのは、そういう奴等でも信仰してくれるように努力する事しかねぇんだよ」

 

やってきた部隊長の顔にも、かなり余裕の色が見られる。…実際、ここにいた残党は弾薬の補充もままならない程追い詰められていて、正直わたしがいなくても完封してしまえるだけの戦力差があった。一時は堂々と街中で演説やら何やらをしていた(その時わたしは捕まってた訳だが)犯罪組織の姿は、もうどこにもない。

 

(…追い詰められた人間は怖い、とは言うが…これじゃ怖いどころか哀れなもんだな……)

 

恐らく各地の残党は犯罪神が討たれた事こそ知らないだろうが、指導者たる四天王が全員倒された事は流石に知っている筈。にも関わらず投降せず、かと言って隠し球や信念も感じられないこの残党はやはりヤケになっていると見て間違いない。可哀想だとは思わねぇし、操られる仲間を知っても尚活動を続けている時点で、もう投降なんざ期待しちゃいなかったが…気分の良いものでもねぇな…。

 

「…戻るとするか」

 

勝ったから嬉しい、負けたから悔しい…みたいな目の前の事だけで一喜一憂出来ないのが、指導者の辛いところ。だがいちいち物思いに耽りゃいいってもんでもない訳で、わたしは思考を切り上げ教会へと戻る。

制圧に助力するのは重要な仕事ではあるが、仕事は他にも色々ある。それに…何はどうあれこうしてまた一歩平和に近付いたんだから、それはそれとして気持ちを切り替えていかなきゃいけないよな。

 

 

 

 

「おねーちゃーん!クエストやってきたよー!」

「みっしょん、こんぷりーと…(えへん)」

 

帰還から数時間後。執務室で仕事を行っていると……勢いよく扉が開かれ、元気一杯のロムとラムが入ってきた。

 

「……部屋に入る時はノックをしなさい、といつも言っているでしょう…」

「はーい。…って、あれ?」

「ミナちゃんと、ガナッシュさん…?」

 

中をよく見ずに入ってきたのか、二人は声を発してから執務室にミナとガナッシュがいる事に気付く。…この様子だと、旅の中でも似たような事しているわね…常識やマナーはもっとしっかり教えないと…。

 

「お疲れ様です、ロム様ラム様。おやつはフィナンシェさんに用意してもらってありますよ」

「ほんと?…あ、でもその前になんのおはなししてるかおしえてー!」

「仕事の話よ、二人が聞いても面白くはないと思うわ」

「でも、気になる…」

 

扉を閉めた二人は、軽快にわたしの仕事机にまで来てもたれかかる。普段は仕事の話なんて興味も持たない二人が、こうして興味津々な様子を見せてくれるのは珍しい事。そんな二人を見たわたしはミナとガナッシュに一度目を合わせ…その後軽く肩を竦めて、二人の言葉に頷いた。

 

「…いいわ、気になるなら聞きなさい。今話していたのは、後どの位残党が大型兵器を保有しているだろうか…って話よ」

「おおがたへいき…あの赤いロボットのはなし…?」

「それも話の一つよ。…そう言えば、二人はあの機体と一戦交えたんだったわね」

「あいつってば、おっきいくせにわたしたちの魔法をひょいひょいよけたのよね。ああいうロボットって、みんなあれくらいつよいの?」

「いえ、それはないかと思います。勿論実際に見ていない以上、断定は出来ませんが…お二人の攻撃を凌いで撤退したのであれば、かなり強化した状態且つパイロットもトップエース級だったのでしょう」

 

ラムの言葉にガナッシュが私見を述べる。…考えてみれば、あの機体は過去三度女神と戦って(と言っても、ロムラムシーシャが戦った三度目以外はすぐに離脱してしまった訳だけど)生き残っている存在。あれが標準だったとしたら、同型を主力量産機にしているラステイションの戦力はとんでもない事になるわね…。

 

「ふぅん…それで、これはそのへいきをたおすためのおはなしなの?」

「安全且つ無駄を省いて倒す為の話よ」

「あんぜんかつ、むだをはぶいて…?(きょとん)」

「安全且つ無駄を省いて、というのは軍の方々に関しての事です。犯罪組織の兵器の中心はキラーマシンでしたが、それ等はロム様ラム様にとっては楽に倒せる相手でも、普通の人達だと大変…というのは、分かっていますね?」

 

再び質問を口にする二人に、今度はミナが反応。まずは確認から入り、二人が頷くとミナは言葉を続ける。

 

「お二人やブラン様が同行するのであれば問題はありませんが、そうでない場合キラーマシンの事を考えると、戦力は多くせざるを得ません。しかし、だからと言って毎回多くの戦力、多くの人数に動いてもらうとどうなると思います?」

「どうって…いつもあんぜんになるわね!」

「え、えぇまぁそうなんですが…そうではなくて……」

「…ぐんじんさんが、たいへんになる…?」

「そう、正解ですよロム様。戦力は動かす人数が大きくなればなる程、色んな方面で大変になるもの。だから必要以上の戦力は動かさないようにする、というのが無駄を省くという事。そして戦力を減らしても大丈夫かどうか考える為に、わたし達は今残りの大型兵器の数を推理してるんです」

 

軍を動かす上での費用や具体的過ぎる部分などは説明せず、説明する部分も難解な単語は言い換えで出来る限り回避し、加えて質問を入れる事で二人の理解を深めようとする。そんなミナの説明は、とても二人の事を思っているものだった。…ミナって、西沢家に生まれなければ保育士や先生になってたかもしれないわね。

 

「そうなんだ…それってむずかしそー…」

「うん、むずかしそう…」

「そうね、でも大切な事だから考えているのよ。…二人共、このままここで聞く?」

『…えっと……』

「ふふ、無理する事はないわ。もし二人に手助けしてほしくなったら呼ぶから、二人はおやつを食べてらっしゃい」

「…じゃあ…うん、おねえちゃんたちがんばって…!」

「すいりならわたしたち得意だから、ひつようならちゃんとよんでよね!」

 

自分達で気になると迫った以上、やっぱいいやとは言い辛い。そんな空気を感じ取ったわたしは無理強いをせず、二人におやつを食べに行く事を進めた。多分、ネプギアやユニなら話に参加しようとするだろうけど…それこそ二人にはまだ『難しい』話。今は興味を持ってくれただけでも十分よね。

 

「…って、推理なら得意…?」

「あぁ…ブラン様達の救出の少し前に、お二人は探偵ごっこをしていた事があるんです。で、最終的には四天王発見に多少ながらお二人の推理…というか閃きが関わりまして…」

「そういう事…わたしがいない間に随分と微笑ましい事があったのね」

「単純に微笑ましい、とは言えない事が幾つかありましたけどね…はは……」

 

自信満々で推理を展開する二人を想像してついわたしは頬が緩むも、ミナから返ってきたのは眉を八の字に曲げた苦笑いだった。…それだけで何があったのか大体予想がつく辺り、やっぱり二人は分かり易い。

 

「…話が逸れたわね。ともかく保有数は一割未満、どんなに多く見積もっても二割あるかどうか…で、大丈夫かしら?」

「はい。更に言えば、その残りの兵器も割合としてはプラネテューヌかラステイションに集まっているでしょう。最早ルウィーでパーツの補充は困難でしょうから」

「…と、思わせてルウィーに隠してる可能性は?」

「無いとは言えません。…が、それを言い出したら更にその裏をかいてルウィー以外に…とキリがなくなってしまいます」

「でしょうね。…となれば、下手に保険をかけて大戦力にするより、少数での奇襲に備えて戦力は抑える方が結果的には安全になる可能性が高いか…」

 

そうしてわたしはミナとガナッシュから意見を受け、対残党の方針を詰めていった。とは言っても、わたしが決めるのはあくまで大まかな部分。細かい部分までわたしが決めてしまえば軍の高官は存在意義を失ってしまうし、各員各部隊の力は軍内部の人間の方が詳しく認識しているに決まっているんだから。

 

「…よし。それじゃミナ、決まった事を軍部に通達しておいてもらえる?」

「分かりました。意見が出た場合はわたしでまとめておきますね」

「えぇ。後はあの赤い機体がこちらの予想通りに動いてくれるか、そうでないならどの程度予想を上回ってくるかだけど…」

「少なくとも戦闘能力が予想を超えてくる事はないと思いますよ。ただでさえ整備が難しい鹵獲機に加えてこの劣勢では正規パーツを手に入れるのは困難でしょうし、キラーマシンからの流用で全て賄える訳がありませんから」

「……残党がハルユニットを用意していたら…」

「いや確かに相手は鹵獲機を赤くしたりモノアイにしたりしてますが…残党違いですよそれは……」

 

話の本題が片付き、そのせいかふと魔が差してボケたわたし。するとガナッシュは眼鏡を若干ずり落としながらも、やんわりと突っ込んでくれた。…まぁ普通に考えたらあり得ないけど、もし本当に追加装備があったら…その際はわたしが相手をすればいいだけよね。わたしパーソナルカラー白だし変身(女神化だけど)出来るし神だし。

 

「…ま、これはネタにしても…残党がもうこちらの脅威となる物を何一つ持っていない、と考えるのは早計よ。二人共、それは意識しておいて頂戴」

「分かっていますよ、ホワイトハート様」

「それも軍部には伝えておきますね。それと、ロム様ラム様にも」

 

そう言ってわたしは話を締め括った。今日制圧した残党は打つ手なしという状況だったけど、残る全ての残党も同じとは限らない。勝って兜の緒を締めよ…とは少し違うけれど、高を括って良い事なんてまずない以上、出来る範囲で気を付けておくのは大切なんだから。…それを伝える為にわざとボケたのかって?ふふっ、それは秘密……って今誰か「いや、ブランはそこまで頭回らないでしょ」って思っただろ!あぁ!?誰が脳筋女神だ誰が!

 

「…ブラン様?どうかなさいました?」

「それは秘密」

「秘密…という事は、何かしらはあったと?」

「それは秘密」

「これもですか…っあれ!?これ地の文でも言っていません!?まさかこれは…定められた一言!?」

「それは秘密」

「ですよねっ!だとしたらそう言いますよねっ!」

 

 

 

 

残党制圧を行い、これからの制圧における方針会議をし、日々の雑務もこなして、今日もわたしはしっかりと働いた。大変な仕事も、それが国民の平和と笑顔に繋がっていると思えば頑張れるもの。…けど、そういう思いがあっても疲れるものは疲れる訳で……だからわたしは今、心の癒しに浸っている。

 

「ふぅ…まさか捕まっている間にこんなにも新刊が出るなんて……」

 

自室でコートを脱ぎ、ベットの上で本に囲まれたわたしは吐息を漏らす。この姿をミナやフィナンシェが見ればいい顔はしないだろうし、ロムラムだったら「おねえちゃんはおかたづけしなくていいの?おねえちゃんばっかりずるい!」…とでも言いそうだけど、だからと言ってわたしは片付ける気なんてさらさらない。……勿論、寝る時には片付けるけど。

 

「…けど、逆に言えば読んでも読んでもまだ新刊があるという状態…それはそれで甘美だわ…」

 

読書において最も幸せなのがその巻の山場だとすれば、最も辛いのはその巻の最後…そこから先は次の巻まで待たなきゃいけなくなった瞬間。その巻が面白ければ面白い程、先の気になる終わり方であればある程、その落差から続きを読みたい欲求が大きくなる。発売日当日に買って読むのは、謂わばその耐える期間を最大まで引き延ばす行為だけれど、先を読みたい欲求に駆られた読者はつい手を出してしまう。そんな沼のようなループに嵌まっているわたしにとって、『未読の巻が複数ある』というのはある種夢のような……って、わたしは何を熱く語っているのかしら…。

 

「…これ、ベール辺りは凄い事になってそうね…」

 

長い間拘束されていたのは守護女神の全員が同じ事だけど、サブカルに関してはベールが頭一つ抜けている。当然本に関してならわたしの方が上だけど…ベールの場合、広範囲をそれなり以上に掘り下げているから溜まっている量もわたし以上な筈。…サブカル好きって、お金は勿論時間も結構大切なのよね…。

 

「……まぁ、それはそうとして…」

 

思考に向けていた意識を活字に戻し、先の展開へと思いを馳せる。今この瞬間だけは、わたしは読書好きな一人の少女。物語の動きに引き込まれ、登場人物の活躍に心を踊らせ、その先で起こる出来事を無意識に予想する、特別でもなんでもない普通の……

 

「……?…あ、着信か……」

 

ページを繰ろうとした丁度その瞬間、妙にくぐもった音が部屋のどこかから聞こえてきた。一瞬ロムかラムが部屋に何か悪戯アイテムでも仕掛けたのかと思ったけど…聞こえてくるメロディーは、わたしの携帯の着信音。そこでポールハンガーにかけたコートへ携帯をしまったままだった事にわたしは気付き、ベットから降りて携帯を取りに行く。この時間に電話なんて……割と誰でもかけてきそうね。まだ寝るような時間でもないし。

 

「もしもし、わたしよ」

「その声、もしかしてイーリス王族のリズ…」

「人違いよ、ばいばい」

 

何を思っての電話か分からなかったけど、どうもかけ間違えだったみたいね。通話時間、僅か八秒。…さて、じゃあ読書に戻って……

 

「……もしもし」

「ちょっと、いきなり切るのはないんじゃない!?」

「間違い電話だと思って…」

「それだとアタシが彼女の連絡先知ってる事になるし、声音も疑問形にはならないでしょ…はぁ、ブランちゃんを詐欺師に見立てた冗談だったのに…」

「だと思ったから切ったのよ」

「…容赦ないね、ブランちゃん…」

 

案の定というかなんというか、すぐに再びかかってきた。ここで居留守を使う事も出来たけど…流石にそこまで怒っている訳じゃない。だから少しだけ待った後に通話に出ると…通話の相手、シーシャは概ね予想通りの反応をしていた。

 

「…で、何の用事?」

「用事というか…今日はこれから一仕事あるのよ。だからその前に息抜きをしたくて」

「これからなんて、支部長も大変ね…って、女神を息抜きアイテム扱いなんて貴女は何様のつもり…?」

「え?ブランちゃんの友達様?」

「……友達は普通様を付ける言葉じゃないわ…」

 

直接会ってる訳じゃないとはいえ、「貴女は何?」という問いに対して「貴女の友達」と返されたら、悪い気はしなくても気恥ずかしいもの。そのせいでわたしは調子を狂わされ、返答が少し遅れてしまった。……狙って言ったわね、シーシャ…。

 

「ふふっ、それはそうね。…っとそうだ、ブランちゃん。犯罪神討伐、お疲れ様」

「女神としての務めを果たしたまでよ。この話、周りには?」

「話してないわ。まだ話しちゃいけないんでしょう?」

 

犯罪神撃破に関する情報は、口外を禁じつつも一部の人間へは既に話している。そして、ルウィーのギルドを率いるシーシャは当然その内の一人。

 

「えぇ。安易に話せばそれを知った残りの残党がどう動くか分からないし、封印という行程があるならそれを完遂するまで終わったとは言えないもの」

「流石は女神様、抜かりがないね。…けど、倒した事は事実なんでしょ?だったら少しはブランちゃんも息抜きしなきゃ」

「貴女が電話をかけてこなければ、今もわたしは息抜きをしていたところなんだけど…」

「それは、まぁ…あはははは……」

 

気遣ったつもりが逆に自分の首を絞める結果となってしまったシーシャは、言い淀んだ末に乾いた笑いを漏らす。ふっ、これでさっきの借りを返せたわね。

それからわたしとシーシャは、数分程取り止めのない会話を続けた。読書の邪魔をされる形にはなったけど、別にシーシャとの会話は不愉快じゃないし、時間ならまだたっぷりある。だって、犯罪神はもう倒せたのだから。

 

「ふぅ、やっぱりブランちゃんと話すのは楽しいわ」

「それはどうも。わたしもシーシャがちゃん付けを止めてくれると嬉しいわ」

「…ブランちゃん、人には譲れないものがあるのよ」

「どんだけ貴女にとってちゃん付けは重要なのよ…はぁ……」

 

今日も今日とてシーシャはわたしにちゃん付けをする。何がそんなにシーシャを駆り立てるのかさっぱり分からないけど、何度言ってもシーシャはちゃん付けを止めようとしない。…これは言って何とかなるレベルじゃなさそうね…諦めるのは癪だから、わたしも止めろと言い続けるけど。

 

「あー…ほんとに良い息抜きになったよブランちゃん。うん、やっぱりブランちゃんはこうでなくっちゃ」

「貴女にどうこう言われなくても、わたしはそう簡単には変わらないわ」

「だろうね。…ほんとに、変わらない事は大切だよ。良い形であろうと悪い形であろうと、変化が影響を及ぼすのは本人だけじゃないんだから」

「……シーシャ…?」

 

何がスイッチになったのか、それともシーシャの中では最初から考えていたのか、ふと彼女の声音が落ち着いたものに変わる。その声は、シーシャの表情から笑みが消えたのが分かる程のもので、同時にどこか暗い決意を決めているかのようで……

 

「……貴女、さっき仕事って言っていたわよね?その仕事って、ギルドのものなの…?」

「うーん…まぁ、ギルド絡みではあるかな。…ギルドの長として、現支部長として、やらなきゃいけない事よ」

「……っ…シーシャ、まさか貴女…!」

「…ごめんね、ブランちゃん。でも大丈夫、アタシは……アタシの道を踏み外すつもりも、ブランちゃんの顔に泥を塗るような事も、絶対にしないから」

「待てシーシャ!それは……くそっ、切りやがった…!」

 

通話はわたしの言葉を待つ事なく切られ、耳元から聞こえてくるのは通話が切れた際の無機質な音だけ。…シーシャの声音、シーシャの発言、そしてシーシャの立場……それが示す事なんて、一つしか思い付かない。

 

「…アズナ=ルブ…もしシーシャに何かあったら、テメェに責任取ってもらうからな…ッ!」

 

かけてあるコートをひっ掴み、駆けるように廊下へと出る。そのまま外へと向かおうとし……そこで様々な情報が、突然わたしの頭の中を駆け巡った。

身元を隠せていない仮面を被ったアズナ=ルブ。犯罪組織の人を操る能力。アンチシェアクリスタルを使った、対シェアエナジー器具を作れるだけの技術力。そして赤い機体の、純粋な敵意による動きとは思えない行動。バラバラだったそれ等の情報は、不意に繋がり一本の線に……

 

「……いや、今はゆっくり考えてる場合じゃねぇ。今一番大切なのは…!」

 

すれ違ったフィナンシェへ最低限の事だけを伝え、わたしは外へ。出た瞬間に女神化し、ルウィーの夜空へ舞い上がる。……ただ偏に、手遅れとならない事を願いながら。




今回のパロディ解説

・ハルユニット、残党違い
機動戦士ガンダムUCに登場するMS、シナンジュの巨大外装及び組織、ネオジオン残党の事。単なるネタですが、仮にあってもサイコフレーム未搭載機では扱えませんね。

・パーソナルカラー白だし〜〜神だし
上記と同じく機動戦士ガンダムUCに登場するMS、ユニコーンガンダムの事。静かなブランがユニコーンモードならキレてるブランはデストロイモード…ですかね?

・定められた一言
生徒会の一存シリーズ内のラジオ企画における、コーナーの一つの事。それは秘密(とテンション上がってきたー!)だけで会話を成立させるなんて、本当に凄い技術ですよね。

・イーリス王族のリズ
ファイヤーエムブレムシリーズの登場キャラ、リズの事。武器が同じなのは勿論として、電話(声しか分からない状態)なら本当に間違えててもおかしくはないでしょう。

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