超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress   作:シモツキ

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第百十二話 守護女神の光

戦い方や個々人の得手不得手はあれど、女神は地形を変えてしまえる程の力を有する。地を裂き、海を割り、山を抉る事すら可能な女神は、その実力故に国の守護者として成り立っている。…そんな私達女神が、同じ戦場で、同じ敵と激突するとなれば……その果てで墓場がどんな姿になっているか、本当に計り知れない。

 

「続けて斬り込むわよッ!」

 

ネプテューヌの掛け声に合わせ、私を含めた刀剣使い四人が四方向から犯罪神の直上へと急襲をかける。それを察知した犯罪神は迎撃体勢に入るも、ブランとユニが魔力弾と拡散ビームによる面制圧で行動を阻害。それによって生まれた僅かな時間で肉薄した私達は、ノワールを皮切りに息つく間もない四連斬撃を叩き込んだ。

 

「■■ーッ!!」

「更にここで……きゃあっ!?」

 

殿を務めたのはネプギア。私達と違い遠隔攻撃も主軸に持つネプギアは、斬り裂き離れると同時に射撃も狙うも、最後だった事が災いして犯罪神に身体を掴まれてしまう。…けれどそれで慌てる私達じゃない。

 

「……っ!ネプギアちゃんを…離しなさいなッ!」

「ネプギアちゃんは…」

「やらせないッ!」

 

捕縛された瞬間、待機していたベールが手首へとランスチャージ。続けて膝へとラムちゃんの魔法が撃ち込まれ、掴む腕の力が緩んだ瞬間脱出したネプギアへロムちゃんの支援魔法が入る。そして勿論、その間にも私達他の面子は次の攻撃の体勢へ。

 

「こちとら一度世界を救ってるんだッ!守った世界を潰されてたまるかよッ!」

「仮にそれがなくても、あんたに潰させるつもりはないけどねッ!」

 

次なる攻撃の中心はノワールとブラン。空中にいる二人が勢いの乗せた攻撃を出来るよう私は接近し、敢えて犯罪神の迎撃へと飛び込んでいく。

殴打を避け、魔弾を斬り払い、振り出された蹴撃は精製した盾で防御。力の差があり過ぎて私はサッカーボールの如く蹴り飛ばされてしまうけど…それも想定していた事。

 

「来たわねイリゼ……せー、のッ!」

 

私の飛ばされた先には、大太刀を地面に突き刺し私を待ち構えていたネプテューヌの姿。ネプテューヌがいる事を確認した私は盾を離して、手を伸ばし……腕を掴んで一回転したネプテューヌによって、思い切り投げ飛ばしてもらった。

 

「せぇぇぇぇいッ!」

 

犯罪神とネプテューヌの力に加え、圧縮シェアの解放による加速をかけて急接近。そのまま私は刺突で胴体の中心を狙う。

 

「出来るならばこの攻撃も当てて……」

「■■■■ッ!」

「……って、そこまで上手くはいかないよね…ッ!……でもッ!」

 

まだ私への注意が切れてなかったのか、犯罪神は跳び上がる事で私の刺突を難なく回避。自力以外の力が大きかった分私は上手く方向転換が出来ず、跳んだ犯罪神の下を突っ切るだけに終わったけど……そもそも私の目的は時間稼ぎ。しかも都合の良い事に、犯罪神は空へと回避してくれた。

 

『落ち(なさい・やがれ)、犯罪神ッ!』

 

跳んだ犯罪神の両肩へと、同じく空にいたノワールとブランの得物が直撃。幾ら巨体の犯罪神と言えども空中で女神二人から重い一撃を、受ければただでは済まず、真っ直ぐに下へと落ちていく。そして落下した犯罪神に向けて、遠近入り混じった多彩な攻撃が次々と押し寄せた。

 

「ふふーん!どーよわたしたちのこーげきは!」

「そうこうげき、チャンス…!(ぼこぼこ)」

「それだとここからワンモアみたいになるけどね…油断するんじゃないわよ。この程度で削り切れる訳ないんだから」

 

扇状に広がりながら、私達は着地。今の連撃は勿論、これまでの蓄積で犯罪神にはかなりのダメージを与えられている筈。ユニの推測通り、まだ撃破に至れる程では恐らくない。…そう、思ってはいたけど……

 

「■…■■……■■■■ーーッ!!」

『……うっそぉ…』

 

爆煙の中から雄叫びを上げて犯罪神が現れた時には、全員揃ってそのタフさに唖然としてしまった。無論、無傷ではないけれど…明らかにぶつけた攻撃と、犯罪神の状態は見合っていなかった。

 

「…これは、長丁場になりそうね……」

「うん。でも、ワレチューの時みたいに無茶苦茶な回復をしてないって事は、短時間で一気に仕留めなきゃいけない訳じゃない…そうだよね?」

「えぇ。それにこれが犯罪神の力だっていうなら、奴は多分……」

 

気持ちを切り替えつつ、武器を軽く振って構え直す。一撃貰えばアウトレベルの攻撃を次々と放つ犯罪神が、これだけのタフさを有しているのは勿論厄介。…でも、私と守護女神の四人はある事を感じていた。そしてネプテューヌが口にしつつあるのも、口振りからしてその事……そう思っていた時、犯罪神が再び吼えた。初めはそれを余程威嚇したいのか…と思った私達だけど、その意味はすぐに判明する。

 

「この気配……モンスター!?」

「まさか、今の咆哮で呼び寄せたと言うんですの…?」

「どこの彩鳥よ犯罪神は…!」

 

剥き出しの敵意が籠った気配を察知した私達。反射的に私が声を上げ、それにノワールとベールが反応する。今認識出来る範囲にいるモンスターは数体だけど……それは『今の時点』に過ぎない。

 

「厄介さが増したな…どうする?先にモンスターを仕留めるか?」

「そうしたいところですけ…どッ!」

「犯罪神はそれを許してくれそうにはないね…ッ!」

 

地面を抉りながら伸びる光芒に、私達は左右に散開。それに合わせるように、現れたモンスターからの攻撃も開始する。

 

「……けど、所詮はモンスター!わたし達にかかれば…!」

「ラムちゃん、わたしたちは…!」

「うん!わかってる!」

 

地を蹴って飛んだ皆は、回避行動をしつつもモンスターへと突進。その姿を見たロムちゃんラムちゃんは攻撃対象を犯罪神に切り替え、同じく私も精製した槍を犯罪神に向けて投げ付ける。

犯罪神を群れの長とするが如く、合わせる形で動くモンスター。呼び寄せられたモンスターの種類はバラバラでありながらも、それがあってか動きには連携する様子が見受けられた。

 

(犯罪神は指揮が出来るようにも、指揮を出してるようにも見えない…って事は、モンスターが本能的に従ってる…?)

 

モンスターの連携が本能によるものだとしたら、長である犯罪神を倒さなければそれを潰す事は出来ない。けど、犯罪神が桁違いに強い以上、真っ先に犯罪神を討つのは困難…というかむしろそちらの方が難しい。……中々、面倒な事をしてくれるよ…!

 

(…けど、裏を返せばモンスターを呼んだというのは犯罪神に余裕がなくなり始めてるって証左。なら、何も慌てる必要はない…!)

 

長剣を両手で握り、遠隔攻撃を避けつつ曲線軌道で犯罪神へ接近。モンスターの対処は皆に任せ、私は犯罪神への攻撃を続行する。…大切なのは、落ち着いて戦う事。勝利への道は、相手が犯罪神だけじゃなくなった今でもまだ見えているんだから。

 

 

 

 

呼び寄せられ、断続的に姿を現わすモンスターを蹴散らしながら、犯罪神と戦闘を続ける。…戦いが始まってからは、既に結構な時間が過ぎていた。

 

「ネプテューヌ!そちらの小道から二体現れましたわ!対応出来まして!?」

「勿論よッ!」

 

突進してきたモンスターに逆袈裟を浴びせ、間髪入れずに蹴り飛ばして溶岩へと落とす。そこから視線を移せば、ベールの言葉通り新たなモンスターの姿。二体の視線の先を確認した私は、行く先を塞ぐように正面へと回り込む。

 

「くっ…段々出てくるモンスターが増えてる…!?」

 

モンスター同士の合流を阻止するべく射撃を行うネプギアは、苦々しげに表情を歪める。ネプギアの言う通り、時間が経つにつれて現れるモンスターの数と頻度は増えつつあった。

どうして増えつつあるのか。…それは言うまでもなく、近くにいるモンスターより遠くにいるモンスターの方が数が多く、遠ければ遠い程辿り着くまでに時間がかかるから。そして、どこまで犯罪神の影響が及んでいるかは分からないけど…恐らくこれからも、数と頻度は増え続ける。

 

(…モンスターが増えて乱戦になれば、不利なのはこっち。それに、ここで乱戦だなんて……)

 

動きからして犯罪神はモンスターの身を案じているようには見えないのだから、乱戦になればモンスター諸共消し炭にされる可能性が跳ね上がるし、単純に敵が増えるだけでもこちらは不利になる。…何より、ギョウカイ墓場で、強大な敵をネプギア達と共に相手しながら、同時にモンスターの処理もだなんて状況が続けば……わたし達四人は、いつトラウマに駆られてもおかしくない。

 

「…………」

 

この戦いは、信次元を守る為の決戦。わたし達が勝てば未来が守られて、わたし達が負ければあった筈の未来が滅亡へと向かってしまう。当代の守護女神であるわたし達の勝利は、いつかくる次代の守護女神に信次元を繋ぐ事になって、敗北はこれまで信次元を繋いできた歴代の守護女神の思いを途絶えさせてしまう事になる。……そう、これは守護女神としての戦い。…なら、わたしは…わたし達は……

 

「……ノワール、ベール、ブラン」

「……?何よネプテューヌ」

 

 

 

 

「──犯罪神は、わたし達で倒すわよ」

 

犯罪神を倒し、世界を守って……守護女神の使命を、宿命を果たす。

 

 

 

 

最深部の全域に広がりつつあったモンスターは、外縁部へと押しやられた。わたし達四人の使命感を受け入れてくれたイリゼとネプギア達の奮戦で、中心付近はわたし達と犯罪神だけになった。…それはまるで、決戦の為の場のように。

 

「…ネプテューヌって、ちゃらんぽらんの癖に守護女神としての使命感には真摯よね」

「普段の仕事にももっと使命感を持っていれば、シェア率も向上するでしょうに」

「ま、それも分かっちゃいるんだろ。わたし達と同じだけの経験は積んでるんだからよ」

「…普通こういう時って、もっとシリアスな事言わない?…別にいいけど」

 

言葉を交わしながら、わたし達は犯罪神と正対する位置で並び立つ。それまで暴れ回っていた犯罪神は、何か感じ取ったように動き回るのを止め、唸りながらわたし達を凝視している。

 

「…イリゼ達にゃ、感謝しなきゃならねぇな」

「ですわね。大部分を引き付けるどころか、完全に押し留めてくれるとは…」

「でも、今のまま数が増えれば必ず限界がくる。…それまでに倒す事が、引き受けてくれた皆への誠意よね」

 

押しやったと言っても、それは中心付近に向かおうとするモンスターを五人が片っ端から撃ち漏らしなく撃破する事で、何とか維持してくれている状態。そんな大変な事を皆は引き受けてくれているんだから、わたし達もそれに見合うだけの事をしなきゃいけない。

守護女神としての思いは、わたし達の胸の中にある。万全の状態は、こんぱ達のおかげで作れた。横槍なく戦える状況をイリゼ達が用意してくれた。ならばもう、やる事は一つ。犯罪神を倒して……勝利を掴むのみッ!

 

「見せてあげるわ、犯罪神。わたし達の力を…守護女神の真価をッ!」

 

翼を広げ、四人同時に地面を蹴る。その瞬間放たれた光芒に対し、ノワールが前へ。

 

「打ち破ってやろうじゃない、その攻撃をッ!」

 

射線上を見境なく飲み込んでいく闇色の光芒と、トルネードソードを展開したノワールの大剣が激突する。正のシェアエナジーと負のシェアエナジーが激突による対消滅で激しい光を放つ中、柄を両手で握ったノワールは気合いと共に大剣を振り抜き……両断する。

 

「わたし達の思い……」

「篤と味わいやがれッ!」

 

視界が開けると同時にノワールの左右をすり抜けたわたしとブランは、犯罪神へと肉薄。振るわれた二対の腕を風に吹かれる木の葉の如く滑らかに避け、肩口から斬り落とすように得物を振るう。そして刃が根元まで沈み込んだところで……叫ぶ。

 

『ベール!今(よ・だ)ッ!』

「穿ち……ますわッ!」

 

空気が爆ぜるような音と共に、矢の如く猛突進をかけるベール。突進の素振りが見えた時点で犯罪神は回避行動を取ろうとするも、それは得物を突き刺したままのわたしとブランで強引に押し留める。圧倒的パワーを持つ犯罪神を二人で押し留める事なんて、困難極まりない事ではあったけど……ベールの速さの前では、一瞬耐えられればそれで十分だった。

 

「■■■■ッ!?」

「はぁぁぁぁぁぁッ!」

 

大槍が突き刺さったのは、胴体の中央にある、上半身だけの獣人の様な部位のすぐ側。穂先どころか柄も半分以上押し込まれた大槍をベールは手放し、後退した瞬間…飛び上がっていたノワールが、空中で回転と同時に突き出た柄へと踵落としを叩き込む。突き刺さった状態の大槍に、そんな衝撃が入ればどうなるかなんて…言うまでもない。

 

「まだまだッ!」

「終わりじゃねぇぞッ!」

 

痛がる余裕など与えないとばかりにわたしとブランは得物を引き抜き、削り取るように刃をぶつけながら後ろへと回り込む。そうして後方に移動したわたし達二人と、大槍を回収し後ろへ跳んだノワール達とで、犯罪神越しに視線を交わらせる。

 

「やるわよ、皆ッ!」

 

再び地を蹴って、四人で一斉に犯罪神を強襲。得物を振り上げて、狙う先を見据えて、犯罪神へと斬りかかる。

完璧にタイミングを合わせた、四人同時攻撃。……が、それは予想外の形で防がれた。

 

「■ーーッ!!」

『な……ッ!?』

『ぐっ……!』

 

わたし達が振り抜く刹那、大小様々な石飛礫が下からわたし達へと襲いかかる。…それは、その場で犯罪神が地面を踏み込んだ事で発生した、割れた地面の欠片だった。

所詮は石飛礫で、しかも副次的に発生した攻撃。痛くはあってもその殆どが致命傷になるようなレベルではなく、わたし達は攻撃を続行しようとする。でも、石飛礫で動きの鈍った僅かな間に犯罪神は身体を捻っており…結果、四人纏めて犯罪神の裏拳を浴びてしまった。

 

「……っ…まだ、まだよッ!」

「この程度で止まる程、わたくし達は…柔ではありませんわッ!」

 

弾き飛ばされながらも声を上げるノワールとベール。その声が届いたわたし達は歯を食い縛り、脚を空へ向けて振り抜く事で一回転。それと同時に翼を広げる事で一気に姿勢を立て直し、再度犯罪神へと突撃をかける。……そう、わたし達はこの程度じゃ止まらない。

 

「これは無理でも無茶でもない、ただ全力を尽くしているだけよッ!そうよね、皆!」

『(えぇ・おう)ッ!』

 

今度こそ四人での同時攻撃を放ち、そのままの流れで上空へ。追い縋る光芒と光弾をわたしの32式エクスブレイドとベールのシレッドスピアーで打ち払い、射出させたノワールのトルネードソードとブランのゲフェーアリヒシュテルンが犯罪神の身体を叩く。

これまで九人がかりでも攻め切れなかった犯罪神に、今は四人で戦っている。でもそれは犯罪神が弱ってきている訳でも、ましてやさっきまで手を抜いていた訳でもない。

わたし達は、戦い方を変えていた。失敗しても、攻めが甘くなっても誰かしらがフォローに入れる防御的な戦法から、常に狙った通りの結果を、理想通りの攻撃を出し続ける事を前提とした超攻撃的戦法に。当然それは危ない戦法で、一歩間違えば先程の裏拳と同じような…いや、それ以上の攻撃を受けてしまう事になる。……けど、今言ったでしょう?わたし達は、ただ全力を尽くしているだけだって。

 

「毎度毎度復活しては倒される気持ちを聞いてみたいと思ってたが…」

「まともに話せないのであれば、それも叶いませんわねッ!」

「いいじゃない、止むに止まれぬ事情なんてあったらこっちだって後味が悪くなるんだものッ!」

 

四方に分かれ、絶え間ない連撃を仕掛けていく。何度も打撃や負のシェアによる攻撃が当たりかけて、何度か跳ね飛ばされるか叩き付けられるかするけれど、その次の瞬間には攻撃に戻る。それはある意味で、操られていた残党達の様に。

だけど、わたし達と残党には、決定的な違いがある。この戦いは、この決断は、誰に決められたでもない、わたし達の意思だから。守護女神としての心が、わたし達にそうさせているのだから。

 

(この思いは、折れはしないわ。貴方が歴史の中で何度でも蘇るように、わたし達の思いも潰えたりはしない。…それを、その目に見せてあげようじゃない)

 

戦闘が長引けばその分疲労するのは当たり前の事で、疲労すれば次第に動きも鈍くなる。でも今は、疲労を感じない。感じないどころか、動きはどんどん鋭く、正確になっていく。ユニミテスとの決戦でも、マジェコンヌとの最後の勝負の時でも、ネプギア達と皆に全てを託した戦いでも湧き出たこの感覚が、わたし達の身体を動かす。思いに突き動かされるわたし達を、更に加速させていく。

 

「ノワール!」

「ベール!」

「ブラン!」

「ネプテューヌ!」

 

たった一言名前を呼ぶだけで、意思を伝えられる。たった一言名前を呼ばれるだけで、意図が伝わってくる。……もうこの時、抱いていた可能性は確信へと変わっていた。恐らく勝てるという可能性が……絶対勝てるという、確認に。

 

「全てを…出し切るッ!」

 

絡み合い離れるような複雑な軌道を描いて、犯罪神へと四人で肉薄。一斉に放たれた何本もの光芒を紙一重で避け、四本の足へとすれ違いざまに斬撃を放つ。…すると、それまで何度攻撃を受けようとビクともしなかった犯罪神が、遂にここで大きくぐらついた。……それは、これまで蓄積させてきた攻撃の成果。そして駆け抜けたわたし達が振り抜き、更なる攻撃を狙おうとした瞬間…………

 

「天舞伍式・葵ッ!」

 

幾つもの武器が、続けて正のシェアの光を放つ何条もの光芒が、犯罪神へと殺到した。圧倒的なまでの掃射が犯罪神を飲み込んでいく中、凛々しくも猛々しい声が墓場へと響く。

 

「未来を築くは思いの光!その光を導く事こそ女神の使命!故に……その意思を持って、犯罪神を討てッ!守護女神ッ!」

『……──ッ!』

 

爆音の中でも響き渡るイリゼの声。その声を受けて、わたし達は飛ぶ。五人の猛攻によって大きな隙を見せた犯罪神目掛けて、全身全霊の全てをかける。

 

「これで終わりよ犯罪神!亡霊は暗闇へと帰るがいいわ!いくわよ皆ッ!」

 

 

 

 

 

 

『ガーディアンフォースッ!!』

 

黒と緑の軌跡を描いて左右へ回り込んだノワールとベールが、凄まじいまでの連撃をかける。たった一本の剣と槍が何十本にも見える程の乱舞を二人は放ち、犯罪神の身体を斬り裂き消し飛ばしていく。

それだけでも犯罪神を討伐してしまいそうな攻撃の中、ブランが戦斧を携え舞い上がる。素早く鋭く空へと駆け上がり、自身が光とならんばかりの勢いで下降し、持てる力の全てを斬撃として犯罪神へと叩き込む。

ノワールとベールに左右から、ブランに頂点から斬り裂かれた犯罪神。その犯罪神へと、わたしは残る力の全てを注いで迫る。この攻撃が失敗したらとか、これで倒しきれなかったらだとか、そういう不安は微塵もない。何度も読み返した本の結末を見るように、自分で作り上げた物語を確認するように、わたしはこの戦いの決着が分かっていた。だから、わたしはその分かりきった決着をなぞるように……大太刀を、振り抜いた。




今回のパロディ解説

・「そうこうげき、チャンス〜〜」、ワンモア
ペルソナシリーズにおける、戦闘中のシステムの一つのパロディ。ペルソナ5風に言うなら、この時はノワールとブランのカットインが入っていたでしょう。

・彩鳥
モンスターハンターシリーズに登場するモンスターの一つ、クルペッコの事。一応言いますが、犯罪神は別に鳴き真似をしてモンスターを呼び寄せた訳ではありません。

・「〜〜亡霊は、暗闇へと帰るがいいわ!〜〜」
機動戦士ガンダムUCの主人公、バナージ・リンクスの名台詞の一つのパロディ。これは原作小説のみで言っている台詞なので、そうなの?と思う人がいるかもしれませんね。

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