超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress   作:シモツキ

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第百九話 決戦への会合

集団としての力は殆ど発揮せず、戦術的な強さもまるで無かった犯罪組織残党。けれどそんな残党も…いや、そんな残党だからこそ、普通の組織なら普通に行う『勝利条件の達成が困難になった際の撤退』をする者は、誰一人としていなかった。…もし、それが一人一人の意思によるものなら、馬鹿だし短絡的だけど根性はある…って思えたかもしれないわね。……一人一人の、意思だったら。

 

「これでここも…制圧完了ッ!」

 

後ろから襲ってきた最後の残党に対し、後方宙返りで逆に背後を取った私は一瞬で無力化。前へ倒れ込む残党を支えて、駆け寄ってきた軍人に処置を任せる。

 

「もう残りの残党は僅かよ!皆、最後まで気張りなさい!」

『はい!』

 

軍人達の気力が籠った返事を背に受け、飛び上がる私。上空で制圧を逃れた残党がいないか確認した後、ユニに連絡を取りつつ残りの残党を制圧する為次の地点へ向かう。

 

「ここまでよく耐えてくれたわ!もう少しで私もそっちに向かえるから、それまで踏ん張って頂戴!」

「お姉ちゃん…こっちだってまだまだいけるわ!お姉ちゃんは焦らず、街中の防衛を第一に考えて!」

「あら、言うわねユニ。だったらそっちに行く時を楽しみにして……」

 

労いも兼ねた言葉をユニにかけると、返ってきたのは言葉通りにまだまだ限界には達していないという気概の声。女神の士気は周りの仲間や国民の士気にも関わる訳で、それにおいてはこの通信だけで一安心する事が出来た。

他でもないユニが街中の防衛を第一にしてと言ったんだから、私も今いる全ての残党を制圧するまで気を抜く訳にはいかない。そう心の中で自らを奮い立たせて、飛行速度を上げようとした……その時。

 

『…………え…?』

 

私とユニは、同時に何かを感じた。明確にこれだ、と言える訳ではない、でも確かに感じる胸のざわつき。女神としての本能が、何かに反応して…無意識に私は、ギョウカイ墓場のある方向を見ていた。

 

「…ね、ねぇお姉ちゃん…今、何か……」

「えぇ…きっとどこかで何かが起こったんだわ。シェア関連の、何かが…」

 

我ながら漠然とした発言だとは思うけど、実際それ位ざっくりとした事しか分からないんだから仕方ない。何かが起こったとは思うけど、それ以上の事はまるで分からない。そんな感覚を姉妹揃って味わう中、通信に新たな人物が入ってきた。

 

「…ノワール、ユニ。朗報と悲報…いや、凶報がたった今入ったよ。かなりショックを受けるだろうから、落ち着いて聞いてほしい」

「ショック?…いいわ、アタシは落ち着いてるから大丈夫」

「私もよ。残党のいる場所に着いたらどこまでしっかり聞けるか分からないから、手短に頼めるかしら?」

「あぁ、それなら心配ないよ。朗報の一つ目は、今操られている残党が全員動きを止めたって事だからね」

「え…ほ、本当なの!?」

 

突然の感覚で一度停止し、ケイの声が聞こえたと同時に加速も再開した私は…その報告を受けて、再びその場に停止した。ケイはこんな時に冗談を言う人じゃないって分かっているけど、それでも私は訊き返してしまう。だって…思わず訊き返してしまう程に、今の報告は喜ばしい事だったから。

 

「気になるなら実際に見てくるといい。各地の報告通りなら、残党は皆操りから解放されている筈さ」

「…そうなの…なら、良かったわ……」

「うん。…でも、どうして急に…?」

「それは恐らく、原因が排除されたからだろうね」

「原因…って事は、もしや……」

「…それが二つ目の朗報だよ。…プラネテューヌから、マジック・ザ・ハードの撃破に成功したとの連絡があった」

『……!』

 

操られた残党が解放されたというだけでも、十分過ぎる程の朗報。そこに加えてマジックの…残った最後の四天王も撃破出来たとなれば、それは大手を振って喜べる程の事。実際私は人目もないし軽く片手でガッツポーズをしたい気持ちになったけど…ユニに対してその旨の返答をしたケイの声は、とてもそれ程の事を告げる人のものとは思えなかった。

 

「…やるじゃない。ネプテューヌも、ネプギアも」

「どっちがどう戦ったのかは…今は、二の次…だよね」

「そうね。……ケイ。その口振りだと、凶報は今の朗報に匹敵、或いはそれ以上のものなんでしょう?」

「…まぁ、ね」

 

ユニも私と同じ考えだったようで、暗にそれを伝えてくる。その言葉に私が同意し話を進めると…ケイは、声のトーンを落としてきた。

大朗報を素直に喜べないような凶報とは、一体何か。……真っ先に思い浮かぶのは、ネプテューヌやネプギアの身に何か…それも、取り返しのつかないレベルの事態が起きたという可能性。…だとしたら、喜べない。喜べる、訳がない。仲間に、妹の大事な友達に、大切な人に何かあったら……。

湧き出した不安から、口の中が乾いていく私。ユニも言葉を発しなくて、そんな中で聞こえた凶報の内容は……

 

「……これは確定情報じゃない。けど、情報が正しいのなら……犯罪神が、復活してしまったみたいだ」

 

──私の予想とは全く違う、けれど確かに朗報の喜びを喰らうだけの重さを持つものだった。

 

 

 

 

ギョウカイ墓場から各国へと進軍をかけていた残党の部隊は、操られていた残党に比べれば集団としての力を持っていた。それは部隊を構成する戦力が、本能に従うモンスターと入力された指令によって動く無人機である為。端から自由意志に従う人とは違うそれ等が、この戦いにおいても普段通りの動きをするのは当然の話。そして、外部からの進軍は…最後の四天王の消滅と同時に、急速にその勢いが衰えていった。

 

「あれ?…モンスター、どっか行ってる…」

「マシーンもなんかへってきたみたいよ!」

 

モンスターは人への攻撃を続ける個体もいたが、多くは周囲を見回した後に一体、或いは群れで思い思いの方向へ散っていく。稼働中の無人機は全て戦列から離れなかったが、まるで打ち止めとなったかのように増援が現れなくなり、一機、また一機とスクラップに変えられていく。

元々優勢となっていた街の外での防衛戦は、それによって一気に勝利へと近付いていく。最早残党の攻勢も、後僅か。……そんな中で、唯一勢いが衰える事なく戦い続ける兵器があった。

 

「じゃあ、後はこれをたおせば…!」

「わたしたちの大しょーり、よねッ!」

 

寸分も狂いのない連携で連続攻撃を仕掛けるロムとラム。対する盗品ラァエルフ、アズラエルは脚部のローラーと全身のスラスターを駆使して回避していく。しかし幾らハードソフト両面で力を引き出されたアズラエルと言えど女神と正面から長時間ぶつかれば無事で済む筈もなく、今も機体の複数ヶ所が火を吹いていた。

 

「でっかいのいく?ロムちゃん!」

「ううん、でっかいのは、もっとすきができてから…!」

「だよね!じゃあ、シーシャ!」

「OK!大剣は抜刀斬りが素早い、ってね!」

 

連撃を凌ぐアズラエルは、その合間に頭部機銃を連射。その背後へ、大剣を背負い柄に手をかけたシーシャが回り込む。つい先程到着した彼女は、アズラエルを視認するや否や戦線に参加し、攻撃を開始した。しかしロムとラムはその様子が明らかに変であるという事、シーシャがアズラエルにまとわりついては範囲魔法を放ち辛いという事から「まちがってシーシャごとカチンコチンにしちゃうかも!」「かも…!」…と彼女達なりに強い口調で独断攻撃を制し、あくまで援護に回ってもらうという形を取っていた。

 

「こちらか…!」

「ちっ…やっぱり硬いわね…!」

 

シーシャの回り込みに気付いたアズナ=ルブは戦斧を使い、彼女が振った大剣を刃で受ける。そのまま戦斧が振るわれた事でシーシャは弾き返されるも、ワンアクション使って彼女を機体から離すのは悪手だった。

 

「すきありぃ!」

「ねらうなら、今…!」

 

展開された魔法陣より噴き出す炎の柱。体積を広げながら襲いかかる火炎を、アズラエルはスラスターを吹かした跳躍で回避するも、回避先へ駆け抜けた光芒には対応出来ずに右腕部を被弾。直撃した地点が爆発を起こしながら、その地点より先が雪原へ落下する。

アズナ=ルブが対応出来なかったのは、炎によってカメラは勿論熱源センサーも目を塞がれた状態となり、上方への回避を予想して光芒を放ったロムの動きが見えなかった為。だが、恐るべきはロムとラムが視界どころかセンサーの欺瞞まで出来るとは知らずに炎の魔法を選んだ事。これが単なる偶然なのか、それとも戦いの名手たる女神の本能がそれを選択させたのか…それは誰にも分からない。

 

「くっ……やはり、既に結末は決まったという事か…」

「むーっ、おしい!でも当たったねロムちゃん!」

「次は、こうどうふのーにさせる…!」

「だよね!なら次のこーげきはわたしが……」

「…だが、私とて素直に諦める程物分かりがいい訳ではない…!」

「……!また逃げる気…ッ!?」

 

ここまでに機関砲とロケットランチャーを破壊され、今の攻撃で右腕部も肘から下を失ったアズラエルは、機体各部の細かな損傷も含めて敗色濃厚。それに加えて味方の攻撃も最早終わりかけているとなれば、撤退を選ぶのは当然の考え。……例え撤退とその先に保障が無くとも、彼はまだ諦観の念に駆られてはいないのだから。

 

「すぐにげるってのはほんとみたいね!でも、それなら後ろから……わっ!?」

「な、ナイフ…!?」

「あいつ…ッ!」

 

着地と同時に反転したアズラエルは、スラスター全開でルウィーの街とは逆の方角へ。その動きとシーシャの言葉でロムとラムは即座に追撃を狙うも、その瞬間アズラエルが再び反転しコンバットナイフを投擲した事により魔法の攻撃を阻まれる。更にもう一本のナイフを目眩し目的で真下の雪原へと投げ、衝撃とスラスターの噴射による二重の雪煙で視界を阻んでいく。

そんな中、物怖じもせずに雪煙の中へ身を投じる女性がいた。

 

「妙な仮面を被り始めて、多数の人の信頼を裏切って、そのくせ甘い面を見せたりして……それでまた、真意隠して逃げるつもりだってなら…ッ!」

 

雪煙の中でシーシャは左手を上げ、いつの間にか携えていた銃器を発砲。それによって出来た雪煙内のトンネルでアズラエルの位置を確認し、同じくいつの間にやら引き抜いた単発銃の引き金を引く。

アズラエルへ向けて放たれた弾丸は、狙った位置から多少ズレつつも見事脚部へ着弾。しかし本体が拳銃サイズであった為か、アズラエルはビクともせずに撤退を続ける。

 

「…………」

「これくらいかぜの魔法で!…ってもうあんなににげてる!?ロムちゃん、いそがないと…!」

「ま、待ってラムちゃん…!ミナちゃんから、つうしん…」

 

着弾の数瞬後、突風によって雪煙は取り払われる。続けて突風を発生させた二人が追跡に入ろうとするも、そこでインカムに連絡が入り足…ではなく翼を止める。そして、その通信というのは……ラステイションに入ったものと同じ、朗報と凶報の併存する報告だった。

 

 

 

 

各国での戦闘終了から数時間。情報の確認を行い、最低限の事後処理を終えた私達は、TV電話での緊急会合を開いていた。

 

「もー!消えてくマジックを背景に『ネプギアにトドメを任せられたから、わたしは余力を気にせず貴女との攻防に全力を懸ける事が出来た。…これが、繋がりの力なのよ』とか、『もし貴女がネプギアを侮らなかったら…いえ、例え侮っていなかったとしても、勝っていたのはわたし達よ』とか格好良い台詞言いたかったのにー!」

『…………』

「あ、あはははは…は……」

 

……開口一番ネプテューヌの緊張感ゼロ発言が飛び出してきたけど、これは由々しき事態に対する緊急会合が目的…の筈……。

 

「…ネプギア、マジックの言っていた事について詳しく教えてもらえる?ネプテューヌは積み木か何かで遊んでていいからさ」

「積み木って…わたしそんな子供じゃないよー?」

「だよね?だから真面目なお話しようねネプテューヌ 」

「うっ…しまった、それが狙いだったか…」

 

自ら「子供じゃない」と言わせる事でネプテューヌのボケに枷を嵌める私。ネプテューヌがやられた…という顔をする中、隣のベールと画面の向こうのノワールとブランが小さくサムズアップしていた。……因みに、床やカーペットにぺたんと座って積み木で遊ぶネプテューヌは…ちょっと見てみたかったりも、する。

 

「ええと、じゃあ…わたしが話してもいいよね…?」

「うん。事実に関しては話すのがわたしでもネプギアでも変わりはしないからね」

「それなら、えっと…」

 

初っ端から脱線していた話が本筋に戻り…というか、ここで改めて本題が開始。倒されたマジックは何を言ったのか、それが何を意味するのか…複数人を介した『情報』ではなく、当人の『言葉』を聞いて、私達は考える。

 

「……それで、最後は犯罪神を心から崇拝しているみたいな言葉を言って…マジックは消えたんです」

「そうですのね…その言葉だけなら、負け惜しみに出任せを言っただけとも考えられますけど…」

「今回の戦闘を始めとする不可解な部分が、全部負のシェア集めの手段だったってなら一応の説明が付くわね…」

「それに、わたし達があのタイミングで何かを…それも全員が感じたとなれば、出任せの可能性は低いわ」

 

ネプギアの言葉を聞き終えると、守護女神の三人がマジックの言葉の真偽に関する推測を口にしていく。…誰も、断定の意見は言っていない。本当だと考えるにしても、ハッタリだったと考えるにしても、確証が持てるだけの証拠はないから。……けど、三人共…いや、今これに参加している全員が分かってる。きっと犯罪神は、本当に復活してしまったんだろうって。

 

「…わたしたち、負けなの…?」

「そ、そんなことないわよ!…ないのよね…?」

「それは……き、きっとまだ手がある筈よ。そうでしょ?お姉ちゃん…」

 

傍観者ではなく、守護者として四天王を倒したユニ達も今は少し不安そうな表情に。口には出さなかったけど、ネプギアだってそれは同じ筈。…でも、それは違う。まだ、その段階じゃない。

 

「大丈夫よ、ユニ。手、っていうか解決への道はまだ残ってるわ」

「今はあくまで『復活前に再封印を施す』という、数時間前までのベストな選択肢が選べなくなっただけよ。まだまだ諦めるような状況じゃない」

「そうそう、それにここで諦めた場合、ルートが例のバッドエンドに確定しちゃうようなものだからね!」

『……!?』

 

自分達の妹を勇気付けるノワールとブラン。その流れに乗ってネプテューヌも雰囲気を盛り上げようとするも……その瞬間、空気が凍り付いた。

 

「……あ…ごめん、ちょっと今のは内容的に笑えない冗談だったかも…」

「わ、笑えないっていうか…色んな意味で洒落にならないよそれは……」

 

滑った、だとか不謹慎、だとかのレベルではない、ある種の『禁忌』に触れてしまったかのような空気の冷たさ。…理由は、まぁ…原作ユーザーならお分かりの通りっていうか、今の段階で暗にそのルートに行く事を否定するのは酷いネタバレっていうか……うん、そういう私の地の文も大概だね…。

 

「…そういえばわたし、フラグっぽいサブイベ見てきた気が……」

「止めて!?そのルート化に信憑性持たせようとするのは止めて!?わたしが振ったネタではあるけどノーサンキューだから!」

「…超シリアスルートすらギャグパートに組み込むとは…ネプテューヌのボケスキルは時々本当に凄いと思いますわ…」

「ありがとう!でも今はそんな評価要らなかったよ!?」

 

偶々なのか、空気を変えようとしたのか、それともそれすらネプテューヌのボケスキルなのか…ともかくネプギアとベールの発言&ネプテューヌの突っ込みによって、凍り付いていた雰囲気は無事解凍された。

 

「うぅ、最近わたし皆で集まってると毎回突っ込みやらされてる気がする…」

「貴女の場合はいつも身から出た錆じゃない。そうじゃなくても突っ込みやらされてる側の身にもなってみなさいよね」

「え?…てっきりわたしはノワールが突っ込み大好きっ娘だから突っ込んでるのかと…」

「そんな訳ないでしょうが!てか何よ突っ込み大好きっ娘って!縄跳び大好き少年並みに意味不明なんだけど!?」

「ノワール、真面目な話の最中なんだから脱線は程々にしなさい」

「うっ…そ、そうよね…ごめんブラン……って、これ私が悪いの!?」

「乗った側も悪いわ」

「うぐ、それは確かにそうだけど…タイミングに凄く悪意を感じるわ……」

 

凍てついた雰囲気の揺り戻しなのか、寒さに一番大切があるであろうブランもボケに参加。……恐らく犯罪神が復活してるって状況で何ふざけてるんだ、って言われたら返す言葉がないけど…私達だって別に、能天気な訳じゃない。むしろ事の重大さが分かっているからこそ、普段と同じように振る舞う事に努めている。…女神だって、慌てたり不安になりそうだったりする事はあるんだから。

 

「あー、こほん。そろそろ一番大事な部分に触れるべきじゃない?」

「それもそうですわね。ネプギアちゃん達からすれば、これからどうするか…は気になってしょうがない事でしょうし」

「…ネプギア、気になる?」

「そ、それは勿論…」

 

今回の会合で一番大事な部分は、当然犯罪神が復活したとしてそれにどう対処するか。これを話さなきゃ何の為の会合だってなるし、それに関して決めなきゃいけない事だってある。……でも、根本的な部分はとてもシンプル。確認の必要はあっても、話し合う必要は皆無と言ってもいい程単純な事。そしてそれを守護女神の四人も分かっているから…画面越しに、目を合わせる。

 

「犯罪神は、強大な敵。生半可な考えや覚悟で戦おうものならどうなるか分からないわ」

「けれど、強大な敵はこれまでにもいて、その様な敵をわたくし達は倒してきましたわ」

「人や国を守るのも、悪を討つのも、犯罪神に対抗するのも私達の役目」

「だから、わたし達のやる事は一つ。……これまで通り、皆で力を合わせて犯罪神を倒しちゃうよ!」

 

……敵が現れたのなら、倒せばいい。ただ、それだけの事なんだよね。それが、守護者として、今を愛する者として選ぶ、至極単純な答えなんだから。

 

「…アタシ達も、守護女神を目指すならこれ位の精神力を持たなきゃね」

「うん、わたしも…今のおねえちゃんたちみたいに、なりたい…」

「だいじょーぶ。わたしたちだって成長してるんだから」

「わたし達にだって、この戦いで役に立てる事はある筈。だからわたし達女神候補生も、頑張ろう…!」

 

女神に追い縋るだけの力を持つ四天王を生み出し、使役する存在犯罪神。その強さは計り知れなくて、その影響力もモンスターなんかとは比べ物にならない筈で、だからこそその犯罪神が復活する前に再封印出来ればベストだった。それが叶わなくなったのは残念だし、私達女神の落ち度と言えるのかもしれないけど……私達の士気は、低くない。低くないどころか倒せるって、信次元を守れるって心から信じている。…なら、きっと大丈夫だって、私は思う。

 

「さて、となれば次はチカ達の話がどうなったかですけれど…」

「それは今し方終わりましたわ、お姉様」

 

ふっと雰囲気が緩み、ベールが別の場所で会合中の教祖組の事を口にすると、正にそのタイミングで教祖の四人…そして何故か一緒にいる新旧パーティーメンバーの姿がモニターに映る。

 

「そちらも話が終わったようですね」

「えぇ。結論は…」

「ふふっ、顔を見れば分かりますよ(^o^)」

 

ミナさんの言葉にブランが(同じ国にいるけど今は画面越し)返そうとすると、イストワールさんが微笑みながらそう言った。…イストワールさんの場合は顔じゃなくて顔文字を見れば分かるけど…今の人数で話逸れると戻るまで物凄く時間かかりそうだから、言わないでおこうかな。

 

「じゃあ、そちらはどうなったんですか?というか何故イストワールさん達の話に皆が…?」

「それはですね、あるお願いを皆さんにしていたんです( ̄^ ̄)」

『(お願い・おねがい)…?』

 

この状況で教祖の皆さんがパーティーの皆に頼むお願い、それもわざわざ私達とは別の場所で行った話とは何か。それが気になり全員でハモる中、イストワールさんは一度目を瞑って真剣な表情を浮かべる。

 

「…犯罪神は、早急に対処すべき相手。しかし皆さんは今日の戦闘で、心身の疲労を抱えてしまっている…そうですね?」

「それはまぁ…お姉ちゃんは怪我もそこそこしちゃってますし…わたしもちょっと背中が痛かったり…」

「分かっています。だから、皆さんには二つのお願いをしました。まず一つ目は、犯罪神復活に関する真偽及び犯罪神の状態の確認。そして、二つ目は……」

 

 

 

 

「──犯罪神が侵攻の素振りを見せた場合における、皆さんが万全の状態になるまでの時間稼ぎです」

『え……?』

 

パーティーメンバーの皆は全員能力も人柄も信頼出来る人達で、これまでも色々なお願いや協力を頼んできた。正直、普通の人には出来ないような無茶なお願いもしてきたと思う。でも、今イストワールさんの言った言葉は…教祖の皆さんがしたお願いは……私達の全員が、一瞬言葉を失う程のものだった。




今回のパロディ解説

・「〜〜大剣は抜刀斬りが素早い、ってね!」
モンスターハンターシリーズにおける、大剣の性質の一つのパロディ。シーシャ、というかゴールドサァドは元ネタが幅広いからか武器も色々あるんですよね。

・縄跳び大好き少年
お笑いコンビ、にゃんこスターのネタにおけるスーパー3助さんのキャラクターの一つの事。…まぁ、実際にはどっちもいると思いますけどね。あり得ない事ではないですし。

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