超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress   作:シモツキ

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第百四話 思案のひと時

ギャザリング城の戦いでトリックが討たれて、四天王の残りはマジックだけになった。ネプテューヌ達を助け、犯罪組織を崩壊させたあの日を皮切りに、それまでの下地もあってどんどん風が私達側に吹いてきている。……けど、順風満帆かと言われると…私は首を縦には振れない。

 

「ベール、こっちも制圧完了したよ!」

「えぇ!皆さん、彼等の搬送を頼みますわ!」

 

犯罪組織の残党が隠れ家にしていた洞窟へ突入した私とベール。そこには案の定操られた残党がいて、更には洞窟が二股に分かれていた為、私達は二手に分かれて制圧を行った。そしてベールからの通信により、外で待機していた軍人の皆さんも洞窟内へと入ってくる。

 

「お疲れ様です、イリゼ様!残党の拘束及び搬送任務、これより遂行させて頂きます!」

「はい。無力化したとはいえ相手は常軌を逸した状態、抜かりのないようお願いします」

「了解!」

 

私によって自立能力を失った残党を、軍人さん達が捕縛し外へと運んでいく。ここにいる残党は十数人。ベールの方も同じ程度らしいから、ここへ来ている方達だけで全員運び出せる筈。

 

「……潜んでる敵の気配は無し…うん、私も戻ろう」

 

搬送が始まってから数分後。てきぱきと運んでくれた事によりすぐに洞窟はもぬけの殻となって、私も未発見の敵がいない事を確認した後洞窟の外へと足を向ける。

 

「えぇ、と…ベールは……」

「貴女の後ろにおりますわ」

「あ……」

 

分かれ道になっている所まで戻ったところで声を上げると、狙っていたのか…と思う位にドンピシャなタイミングで、ベールの声が返ってきた。…もし女神化を解いていたら、そこそこ驚いていたかもしれない。

 

「……そっちも、大変だったみたいだね」

「…お互い様ですわ」

 

振り向いた私の隣に来たベールの顔には、べったりとした赤黒い血の痕。でも勿論、それはベールの血ではない。手を中心にこびり付き、白いプロセッサを赤く染める血痕は、全部残党を無力化する上で浴びた返り血。……私も、無力化する上で同じ位の血を浴びてきている。

 

「…顔が強張っていますわよ、イリゼ」

「え……そ、そう…?」

「少なくとも、わたくしにはそう見えますわ」

「…そっか…うん、そうかもね…」

 

自分ではそんなつもりはなかったけど…狙って顔を強張らせるというのも変な話。それに今私が考えていたのは、とても笑顔になれるような事じゃないんだから、強張っていたっておかしくはない。

 

「……けど、国はなくても私は女神。あんまり動揺してる様子は見せないようにしないと…」

「…久し振りに出ましたわね、イリゼの得意技……」

「え?……あぁっ!?わ、私またやってた!?」

「またやっていましたわ」

「うっそぉ…最近直りつつあると思ってたのに…うぅ……」

 

事が事だけにシリアスな思考になっていた私。…でも、そこでアレが…『考えている事をそのまま口に出してしまう』という、私の悪い癖が発動してしまった。この小っ恥ずかしい悪癖が、やる度弄られる私の弱点が、何ともまぁ雰囲気に合わないタイミングで発生してしまった。…こ、ここにいたのがベールだけでよかった…。

 

「いいじゃありませんの、しっかりしてるようでしっかりしてないイリゼらしくて可愛いですわ」

「そんな褒められ方しても嬉しくないよ…っていうかこの格好で可愛いとか最早ある種の狂気だよ…」

「そ、それは確かにそうですわね…早く帰るとしましょうか……」

 

何とも言えない複雑な気持ちになりながら、私達は洞窟を後にする。これから向かうのは、勿論リーンボックスの教会。

 

「…他の皆も、終わった後はお風呂入ってるのかな…」

「だと思いますわよ?汗と同じで引き継がないとはいえ、べったりした感覚は流しておきたいですもの」

「…汗と同じ、か…ちょっと思い出すね……」

「あぁ…ほんとにあの時は危険でしたわ、色んな意味で…」

 

私達は、残党の無力化戦闘を行った後時間がある場合は極力お風呂に入るかシャワーを浴びるようにしている。それは勿論洗い流すのが目的だけど…それと同時に、女性にとっての憩いの一つである入浴によって心を落ち着ける事も狙いにしていて、場合によっては更に入浴後ベールとティータイムに興じていたり…。……え、何を思い出してたのかって?…き、訊かないでよ…分かってるんでしょ……?

…なんて考えながら飛ぶ事数十分。教会上空付近まで来た私達は下降を開始し……

 

「……あら?」

「どうしたの?…って、あれは…エスーシャ?」

 

見覚えのある人影を発見した。…エスーシャが教会に来るなんて珍しい…(私は長くここにいる訳じゃないから、最近あまり来ていなかっただけかもしれないけど)。

 

「よっと。エスーシャ、ベールに用事?」

「うん?…あぁ、君か…その様子だと、日を改めた方がよさそうだね」

「いえ、少々待って頂けるのであれば構いませんわよ?…用事はあの事でしょうし」

「なら、中で待たせてもらうとしようか」

「……?」

 

短いやり取りで二人は意思疎通を交わし、教会の中へと入っていく。…けど、二人の持つ共通認識のない私にとっては何が何だかさっぱり分からない話。そしてベールもエスーシャもその説明もしてくれず……結果私は、ぽかんとしながら一人置いていかれるのだった。

 

 

 

 

操られた残党の制圧と殺さずに行う無力化には、女神の力が必要不可欠。でも恐らくそれは残党側も分かっている筈で、極力殺したくはない私達の心境に付け入ってまた陽動に使ってくるかもしれない。

なら、どうするか。付け入られないよう助けるのを諦める…なんてのは論外。すぐ戻れるようギリギリまで野放しにするというのも、その分国民を危険に晒す事になるからこれも論外。…だから、私やユニだけで何とかしようとするんじゃなくて…力のある人に、動ける組織に補ってもらうのが妥当な策。

 

「送られてきた初期生産分の魔光動力炉は、全基搭載が完了したぜ」

「ありがとうシアン。光学兵器の実戦試験はどんな感じ?」

「そっちはもう少しかかるかな…ノワールとユニが対大型兵器をもっと軍に任せてくれれば、試験もスムーズに進むと思うが……」

「より安全且つ確実に戦う為の試験で危険を背負わせちゃ本末転倒よ。…まぁ、貴女の言う事も最もと言えば最もだけど…」

 

わざわざ教会まで来てくれたシアンを執務室に招き入れ、お茶を飲みつつ報告を聞く。実戦試験なんだから、性能を遺憾無く発揮出来る戦闘じゃなきゃ…って意見は分かるけど……

 

「……シアン、自分が作っている物は人の命を守る為の機械だってのは分かってるわよね?」

「勿論。…機械ってのは、ほんの少しのミスでも人に取り返しのつかない怪我を負わせる事があるんだって、わたしはそこらの技術者よりずっと理解してるつもりさ」

「…そうよね、疑うような事言ってごめんなさい」

「気にすんな、これ位。それよりノワールこそ、一人でも多く助けようと無茶してないだろうな?」

「大丈夫よ、私は無茶する側じゃなくて無茶しようとしてる人を止める側だから」

 

ティーカップ片手にじーっと見てくるシアンに対し、私は肩を竦めながらそう答える。ネプテューヌといいイリゼといい私の周りには即決で無茶しようとする人がいるし、最近はユニもそっち側な気がし始めてるんだから、この私がクールさを失う訳にはいかないのよね。

 

「…うん、まぁ…自信のないトップよりは自信に溢れるトップの方が国民としては安心出来るしな……」

「え?…もしかして、地の文読んだ…?」

「いや、シンプルに雰囲気から伝わってきた…」

「ふ、雰囲気で?…そんな、私は顔や雰囲気には出ないタイプだと思ってたのに…」

 

……と、心の中で頷いていたらシアンに半眼で指摘されてしまった。……シンプルに恥ずかしい…。

 

「…こ、こほん。ともかく私は心配無用よ。それより貴女は社長なんだから、私よりも社員の心配をしてあげなさい。…勿論、自分自身の心配もね」

「分かってるさ、じゃ…わたしはそろそろ戻るとするよ」

 

そう言ってシアンはソファから立つ。私としてはもう少し話していてもよかったけど…そもそもシアンが来たのはMG関連の報告の為。仕事として来ている以上、私はよくてもシアンからすれば引き止められるのは困るかもしれないんだから、素直に見送るのが良い友達ってものよね。

 

「……けど、無茶…か…」

 

ソファから仕事机に戻りながら、ふと私は考える。無茶をする人の代表格はネプテューヌで、ネプテューヌクラスの無茶をする人はそうそういないけど……

 

(ケイといいケーシャといい、無茶…っていうか頑張り過ぎちゃう人が多いのよね、私の周りって)

 

人によって個人差があるし、頑張り過ぎててもあんまり無理してるようには見えない場合もあったりするけど、オーバーワークは身体の為になる筈がない。だからそういう人には誰かが無理するなって、必要以上に背負わなくてもいいんだって言ってあげなきゃいけないし、そういう配慮をしてあげるのも女神の務め。女神が守るのは、何も身体だけじゃないんだもの。

 

「…視察とか様子見って名目で、労いに行ってあげるのも良いかもしれないわね。それで大変そうならこっちで調整してあげて、手の回りそうにない部分は私が……」

 

置いたままにしていたペンを頬に当て、頭の中で頑張り過ぎちゃってそうな人をピックアップしていく私。その人達になんて声をかければ肩の力を抜いてくれるか想像して、心配にならないようフォローの用意もして…なんて色々考えていく内に、さっきのシアンの言葉が頭をよぎった。──一人でも多く助けようと無茶してないだろうな?…って言葉が。

 

「…無茶してる人を助ける為に自分が無茶なんてしたら、皆に気を遣わせちゃうわよね…シアンの忠告はしっかり受け止めておかなきゃ…」

 

戦闘ならともかく、こういう対人関係絡みの無茶は意外と気付き難いものだし、私にとっては無茶じゃなくても周りの目には無茶だと映ってしまうかもしれない。…これをシアンに言われなきゃ気付かなかったかもだなんて、私もまだまだね。

 

「…女神としてじゃなく、友達や知人として気にかける…相手によってはそっちの方がいいかもしれないわね。お互いの為にも」

 

私達は残党に対し、後一歩で王手をかけられる状態にまでもうきている。でも犯罪神の完全復活を阻止するまでは油断出来ず、もしかすると残党側はまだ起死回生の手段を残しているかもしれない。だからこそ、女神はいつでも十全の力を発揮出来る状態でいなきゃいけない……そうよね、皆。

 

 

 

 

イストワールからアズナ=ルブへの容疑を聞いて以降、わたしは勾留中及び処分を下した後の元犯罪組織構成員から、彼女が見た仮面の男の情報を収集していた。希望的観測を極力廃して、務めて冷静に。

 

「…………」

 

情報を得ていく中で分かったのは、例の強奪MGのパイロットがその男である事と、その男は犯罪組織の中でもかなり自由に立ち回れる立場であった事。戦術眼や判断力の高さを買われ、指揮や参謀を任された事もあったらしい。そして何より……聞いた構成員の中にも、彼からルウィーの前支部長を連想した人間が何人かいた。

 

(…100%そうだと決まった訳じゃない。でも、現実的に考えれば……)

「何か悩み事かにゅ?」

「と、いうより考え事のようだな」

「あ……」

 

わたしがあまり気分の良くない思考に沈み込みかけている中、それを遮るような声が聞こえてきた。……でも、わたしはそれに不満を抱いたりしない。だって…今は休憩がてら、ルウィーに来てくれているMAGES.、マベちゃん、ブロッコリーの三人とお菓子を摘んでいる最中だったんだから。

 

「…もしかして、わたし達の事忘れてた?」

「……ごめんなさい、その通りよ…」

「やはりか…」

「気にするなにゅ。それならそれでブランの分まで食べるだけだにゅ」

「え?……あ、いつの間にか思った以上に減ってる…」

 

空腹ではないとはいえ、折角のお菓子を食べ損なうのは正直惜しい。それにわたしが呼びかけて来てもらったのに、その当人が心ここに在らずじゃ失礼というもの。…我ながら休憩中に相応しくない態度を取ってしまったわね…。

 

「…で、何を考えていたの?」

「…仕事の事よ」

「またざっくりした返答だね…犯罪組織絡み?」

「そんなところ」

「普段以上に素っ気ない反応だにゅ」

「あぁ。となれば、考えているのは余程の事なのだろう」

「…………」

 

安直に他言出来ないから考えていた事は極力分からないようにしたのに…とんとん拍子で推理されてしまった。……別次元組は基本頭が回るのが厄介ね…普段は頼もしいけど。

 

「…あまり深く詮索しないで頂戴。皆の協力が必要だと思ったら、その時はちゃんと話すから」

「別に詮索しようとしていた訳じゃないにゅ。ブロッコリーはちょっと訊いてみただけだにゅ」

「わたしも同じくだよ」

「…待て、立て続けに二人がそう言うと私が詮索していたみたいになるだろうが……」

「別に問い詰めていた訳じゃないんだけどね…」

 

少したじろぐMAGES.と、それを見て「してやったり」みたいな顔をしているマベちゃん&ブロッコリー。そしてわたしは、そんな三人のやり取りをお菓子片手に眺めていた。

 

「くっ、こんな何気ないやり取りの中で嵌められるとは…まさか二人は、私に差し向けられたストラトフォーのエージェント……」

『だと思う(かにゅ)?』

「…むぅ……」

「楽しそうね…。…少し、助言…というかアドバイスをしてもらいたいのだけど、いいかしら?」

「……?何に関する事だにゅ?」

「さっき考えていた事よ」

 

三人が雑談(二人によるMAGES.弄り?)をする中、わたしはシーシャの事を考えていた。…それは、アズナ=ルブの件を真っ先に伝えるべき相手の一人が彼女だから。

シーシャはアズナ=ルブを信用している。アズナ=ルブの方もシーシャを自分の後任として推薦する位には実力を認めているんだから、もしシーシャがこの情報を聞いたらきっと彼女は驚くと思う。何だかんだしっかりしてる彼女なら、現支部長としてするべき事を考えてくれると思うけど…それでもやっぱり、伝える事へは躊躇いがある。でも伝えないという訳にもいかなくて……

 

「…皆は、伝え辛い事を誰かに伝える時、どうやって伝えてる?」

 

…わたしはそんな、少し子供っぽい質問を口にした。それに皆は少し驚いて……けど、わたしが真面目に訊いているのだとすぐに察してくれた。

 

「どう、か…上手い事相手に気付いてもらえるのならそれが一番楽だが…」

「そう上手くはいかない事の方が多いもんね。…うーん…前置きとか流れとかはともかくとして、結局は正直に伝えるしかないんじゃない?」

「…小細工しても意味ない、って事?」

「ブロッコリーもそう思うにゅ。心配なら伝え辛い部分を口にした後フォローを入れるのはどうだにゅ?」

「そう、ね……」

 

数秒考えて、順番に答えてくれる三人。三人ともあんまり自信のなさそうな顔ではあったけど……それでもわたしは、聞きたい答えが聞けたと思った。

 

「…うん、ありがとう皆。参考になったわ」

「そう?当たり前の事しか言ってない気がするけど…」

「問題ないわ、わたしが思っていたのと同じような答えだったから」

『……?』

 

返答に不思議そうな顔を三人が浮かべる中、わたしは残り僅かとなったお菓子の一つを口に放る。

元々わたしも、正直に話すしかないかも…と思っていた。だからこそ、三人も同意見だと分かって『安心』が出来た。…長い物には巻かれろ…じゃないけど、同意してくれる人や同意見の人がいるというのは、自分の考えに対する自信に繋がるものよね。

 

「さて、いい感じに休憩も出来たしわたしは少し出掛けてくるわ」

「なら、私も出掛けるとしよう」

「ブロッコリーは書庫にお邪魔させてもらうにゅ」

「何かあったらすぐに言ってね。その為にわたし達は滞在してるんだから」

「えぇ、その時は頼りにさせてもらうわね」

 

それぞれに立って、雑談を終えたわたし達は個々の活動へ分かれていく。わたしが出掛ける先というのは…勿論、ルウィーのギルド。…シーシャにとってわたしが伝える話は、まず好ましいものじゃない。でも、後回しにしても解決しないどころか状況が悪くなってしまう事もあり得るんだから、きちんと伝えて一緒に対策を考えなきゃいけない。……それが、女神として…彼女の友達としてするべき事だから。

 

 

 

 

「うーん……」

 

手を組んで、もう座椅子と一種と言ってもいいんじゃないかって位大きいクッションに座って…呟く。

 

「…あれ?お姉ちゃん、これ第八十七話だっけ?」

「お、メタ発言にも慣れてきたねネプギア」

「ふふっ、これ位出来なきゃお姉ちゃんとイリゼさんに主人公として見劣っちゃうからね。…で、今日は何を考えてるの?」

「何も考えてないよ?」

「あ、そうだったんだ」

「…………」

「…………」

「……え、突っ込まないの!?突っ込んでくれないの!?」

「えぇっ!?」

 

順調にネプギアがわたしっぽく成長してる事に気分が良くなったわたしは、微笑みながらボケを追加。さてネプギアはなんて反応してくれるかなぁ、と思いながら待っていると……まさかの何も突っ込んでくれなかった。

 

「うぅ、ボケたつもりだったのに流された…」

「ご、ごめんねお姉ちゃん…わたしボケてる訳じゃないものだと思って…」

「そっか…ってそれわたしが素で何も考えてないのにうーんとか言っちゃう人だって言ってるようなものだよ!?おふざけ的なボケじゃなくて、違う意味でのボケが起こってる人の場合だよ!?ちょっ、ネプギアはわたしを何だとおもってるの!?」

「えと…憧れのお姉ちゃん…?」

「ズルい!その返しはズルい!…いつの間にそんな強かになったのネプギア…」

 

戦いにおいて駆け引きの技術っていうのは必要なもので、その技術もわたしはネプギアに習得しておいてほしいと思っている。…でも、出来ればわたしとのやり取りの中では使ってほしくなかったよ…多分ネプギアの事だから無自覚にやっちゃっただけだと思うけど…こういうちょっと天然な部分も可愛いけど……。

 

「…よ、よく分からないけど…ほんとにごめんね…」

「ううん、わたしのボケが招いた事だから気にしないで…」

「う、うん…それでお姉ちゃん、ほんとは何を考えてたの?」

「…それはね、マジックのしてきそうな事だよ」

 

ちょっと微妙な空気になった後、改めてネプギアは何を考えていたのか訊いてくる。ここでまた同じネタをする事も出来たけど…なんかクドくなりそうだったから、わたしは普通に返す事にした。

 

「マジックのしてきそうな事…?」

「うん。わたしはギョウカイ墓場でマジックと戦ったでしょ?だからその時聞いた事、感じた事から考えれば次の動きが分かるかな〜って」

「そっかぁ…じゃあ、何か思い付いた?」

「勿論!…って言いたいところだけど、流石に行動までは分からないんだよね…マジックは犯罪神の狂信者って感じだから、何をしてきたっておかしくはないと思うけど…」

 

他の四天王は多かれ少なかれ自分の目的があるっぽい様子だったけど…マジックだけは、犯罪神の復活以外に眼中がないようだった。読者さん的には本作シリーズにおける狂信者といえば前のガナッシュだと思うけど…あれとは別パターンって感じかなぁ。犯罪神が自分の全て!犯罪神絶対、それ以外不要!…的な。

 

「…まぁ、だから今は警戒とか残党の鎮圧とかを地道に進めるしかない…ってのが結論かな」

「…大丈夫だよ、それでも。きっとわたし達なら大丈夫」

「……それって、根拠は?」

「うーん…今出来る事に希望を持つのと、出来ない事で不安になるのとだったら、希望を持つ方が良いと思ったから…じゃ、駄目?」

「…ふふっ、ネプギアも格好良い事言うようになったね」

「そうかな?…だとしたらそれは、皆のおかげだよ」

 

そう言ったネプギアは、にっこりと微笑んだ。……ネプギア達が助けに来てくれたあの日から、わたしは何度もネプギアの成長した姿を見てきた。それは強さだったり、経験だったり、覚悟だったり色々だけど…やっぱり一番感じるのは、心の成長。

 

「うんうん。それじゃあネプギア、次にマジックと対面した時はわたし達で…皆で勝とうね!」

「うん!頑張ろうね、お姉ちゃん!」

 

にぱーっと二人で笑い合うわたし達。まだまだ教えてあげなきゃって思う事は色々あるけど、今もネプギアはちゃんと女神を出来てるって…そう思うわたしだった。

 

 

 

 

 

 

「……なーんて明るい感じで終わったのに、次の話でいきなり暗い展開だったり鬱展開になってたりしたらびっくりだよね!」

「え!?な、なるの!?次回そうなの!?」

「さぁ?」

「さ、さぁって…だ、大丈夫ですからね!?いきなりそんなどん底に落ちるような事はないですから、皆さん安心して下さいね!……多分!」

 

……という訳で、久し振りにオチ的ギャグで終わる第百四話だった。じゃあ皆、次の話もお楽しみにね〜!

 




今回のパロディ解説

・ストラトフォー
Steins;Gate 0に登場する組織の一つのパロディ。言っているのがMAGES.なので、パロディというか元ネタのネタ…と言うべきかもです。どちらにせよパロディですが。

・犯罪神絶対、それ以外不要
カードファイト‼︎ヴァンガードシリーズに登場する組織、フーファイターの作中初期方針のパロディ。本作のマジックは、ほんとにそんな感じとして書いております。

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