超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress   作:シモツキ

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第百二話 残った思い

わたしとロムちゃんのいるばしょに、こわれたてんじょうが落ちてきた。それは魔法やじゅうのこーげきなんかよりもおそくて、いつものわたしたちならひょいっとよけられちゃうくらいのスピードだったけど……今のわたしたちはフルパワーを出したばっかりで、やっとたおせたとあんしんしてたところで、あんしんしてたからすごくびっくりしちゃって……あぶないってわかってたのに、うごけなかった。

どんどん落ちてくるてんじょう。わたしとロムちゃんをよぶおねえちゃんの声。それでにげなきゃって思ったけど、なんだかあぶないのが自分じゃないみたいな気がして、まわりがゆっくりに見えて、それがよくわかんなくて…そのうちにもっとてんじょうは近くなって……そこでやっと、こわくなった。

 

(…あれ…わたし、しんじゃうの……?)

 

これまですっごくつよいてきとたたかうことも、あぶないって思うこともいっぱいあったけど、これまでは身体がしぜんにうごいてた。…でも、今はうごけない。うごけないまま、どんどんどんどんこわくなって……それで…………

 

 

 

 

──気づいたら、トリックがわたしたちの上にいた。

 

「あ……ぇっ、え…?」

「と…トリック……?」

 

トリックがわたしたちの上に来てからすぐに、どすんっ…って音がきこえた。それからトリックがゆれて…落ちてきたてんじょうがトリックに当たったんだって、わたしたちはわかった。

 

「う…ぐっ……無事、か…?」

「…な、なんで…あんた……」

「ロム!ラム!」

「……っ…おねえ、ちゃん…」

 

すごく辛そうな声で、はなしかけてくるトリック。ロムちゃんは口をぱくぱくさせてて、わたしもなんでって言うのがせいいっぱいで、わたしもロムちゃんもぜんぜんいみがわからなくて…そのとき、またおねえちゃんの声がきこえた。

 

「お、おねえちゃん…わ、わたし…と、トリックが……」

「…よかった、無事みたいだな……」

 

座り込んでいるわたしたちを引っぱりあげて、おねえちゃんはぎゅーってしてくれる。こわかったわたしはそうしてくれるのがとってもうれしかったけど…こんらんしてて、うまく気持ちを伝えられない。

 

「…ご、ごめんなさい…おねえちゃん……」

「…それは、すぐに逃げなかった事か?だったら気にすんな、今のはすぐ動かなくても仕方ねぇよ」

「でも…わたしもラムちゃんも…」

「おい…ホワイトハート、よ……」

「…分かってる。ロム、ラム、早く逃げろ」

 

こんどはロムちゃんがはなしてくれて、おねえちゃんはやさしくわたしたちのあたまをなでてくれる。…それから、おねえちゃんはまじめなかおでにげろって言った。…にげろは、さっきもきいたことばで、そのときはいやだって思ったけど…今はちがう。にげなきゃいけないって、わたしたちもわかってるから。……けど、

 

「……トリック…」

「…あ、あの……」

「何を、見ておる…早く、逃げるのだ……」

『で、でも……』

「いいから…行けぇッ!早くッ!!」

『……っ!?』

 

わたしもロムちゃんも、トリックの方を見る。トリックがわたしたちの上に来たのは、わたしたちをなめたかったから?……そんなわけない。トリックがしたのは、してくれたのは…そういうことじゃない。

けれど、トリックはてき。だいっきらいな、気持ち悪いてき。だからわたしたちはこんらんしちゃって、このままにげればいいのかわからなくて……そのしゅんかんに、トリックがきいたことないような大声を出した。トリックはどう見てもしんじゃいそうなのに、それはすごくすごく大きい声で…気づいたらわたしたちは、出口に向かってとんでいた。

 

(なんなのよあいつ…なんで、なんでわたしたちを……てきをたすけたのよ…っ!)

 

つよいてきに、わたしたちはかった。いつもならそれはうれしいことで、かえったらみんなに「してんのうをたおしたのよ!」ってじまんするつもりだったのに……今はわたしもロムちゃんも、すごくもやもやした気持ちだった。

 

 

 

 

崩落しつつある部屋から脱出した二人の背中が、小さくなっていく。立て続けに起きた想定外の事態で混乱していたらしい二人が、何とかちゃんと逃げられている事に安心したわたしは……トリックに向き直る。

 

「…その状態でよくあんだけの声を出せたもんだな」

「最後の力を、振り絞ったまでだ…それより、何をしておるホワイトハート…まさか、我輩と共に死のうとでも言うのか…?」

「誰がそんな酔狂な事するかよ。わたしは死ぬつもりなんざねぇし、仮に死ぬとしてもテメェとだなんてそれこそ死んでも御免だっての」

「アクク…クク…まあ、そうであろうな……」

 

自嘲じみた笑い声を漏らしながら、トリックは倒れる。崩れ去るように倒れ……身体の一部が、光の粒子に変わり始めた。奴は少なからずダメージを受けていたところにロムとラムの全力攻撃を受け、その状態から更に無理に動き落下する瓦礫を背中に受けたんだから…力尽きたって、何ら不思議じゃない。

イリゼとユニは、それぞれ四天王を看取ったらしい。…だが、わたしにそんなつもりはない。わたしがここに残ったのは、奴に訊きたい事があったから。

 

「……どうして、二人を助けた」

「…それを、訊くか……」

 

表情も声音も緩めずに、トリックに問う。これも策謀の一つなのかと疑う気持ちがある。純粋に「何故?」と思う気持ちもある。とにかく、これは問い質しておかなければならない。……そう、わたしは感じていた。

 

「あの動きが出来て、あんだけ声が出たんなら、逃げる事だって不可能じゃなかっただろ。…狙ってた崩落が起きて、しかも都合よくわたしが確認を中止したんだ。テメェにとっちゃ千載一遇のチャンスだったんじゃねぇのかよ」

「やはり、見抜いておったか…。…確かにその通り…逃げるのであれば、またとない幸運だった…」

「だったら、なんで逃げなかった」

「…言ったであろう、我輩にとっては…幼女こそが、至高であると…」

「至高っつったって、その為に死んじまったら…」

「幼女こそが至高であり、それ以外は瑣末事……それは、我が命とて例外ではない…」

 

そう言ってまた、トリックは笑う。逃げるチャンスだと分かっていながらも、それをみすみす捨ててしまったにも関わらず、後悔なんて欠片もないと言いたげな笑みを浮かべて。

 

「…テメェは筋金入りのロリコンだな」

「幼女が可愛過ぎるのが、いけないのだ…気が済んだのなら、早く行け……でなければ、本当に押し潰されるぞ…?」

 

トリックの身体が粒子となって消えていき、聞こえる声も弱々しくなっていく。それでもトリックの口元から、笑みが消える事はない。

……見栄を張ってるだとか、わたしに取り入ろうとしてるだとか、そうは思わなかった。わたしはトリックが尋常じゃない…それこそロリコンなんて言葉じゃ片付けられない程の信念を持っていると知っている。…だからこそ、わたしはトリックの言葉を疑おうとは思わなかった。

 

 

「……礼は言わねぇからな」

「構わん…どうなろうが…どう思われようが…幼女の、幸せを守れたのなら…それで…満足、だ……」

「……ふん」

 

崩れゆく天井を見つめて呟くトリックに背を向け、わたしは飛翔する。恐らくこの部屋は持って後数分だろう。それよりも前に、トリックは完全消滅するだろう。…それで、この戦いは…奴との戦いは、終了する。

奴は信念に生きていただけだと、純粋な悪人ではないのかもしれないという事は分かった。…だが、それだけだ。奴が満足だってんなら、わたしに何かをする義理はない。所詮奴は、敵なんだからよ。

落下する瓦礫を避け、部屋を脱出するわたし。そのままわたしは飛び、ロムラムと…外の皆と合流する為城を去る。そしてわたしが去る中で一人残ったトリックは、一片残らず光の粒子となり……虚空へと消えていった。

 

 

──あばよ、トリック・ザ・ハード。

 

 

 

 

「……っ!?今の音って…」

「…恐らく、どこかの部屋が崩れたのでしょう……」

 

いーすんを両手で抱えて、いーすんの本を持っているらしい残党…下っ端を追う中で聞こえた、腹部に響く重低音。反射的に声をかけると、いーすんはわたしの目を見て頷いてくる。

 

「ここまで経年劣化で崩れそうな部屋はなかったし…もしや、ブラン達が戦闘で……」

「…かも、しれません」

 

わたしの言葉に、再びいーすんが頷く。自分の両手の中でぺたんと座ってわたしを見上げるいーすんの姿は、正直可愛かったけど…流石に今はそんな事考えている場合じゃない。

もし戦闘であの大部屋が崩れたというなら、それは相当激しい戦いになっているという事。それ程の戦いから戦線離脱してしまった事は心苦しいけど……戦線離脱したのは、怖くなって逃げた訳じゃない。

 

(ここでわたしが戻ったら、いーすんの本を取り返せなくなる。…三人が戦いを引き受けてくれたんだから、わたしも奪還に専念しないと…!)

 

中々どうして下っ端は逃げ足が速く、また何度も角を曲がるせいで上手くスピードが出せず、わたしは後一歩の所で彼女を捕まえられていない。…でも、長い直線に入るか外に出ればこっちのもの。ブランは行けって言ってくれたんだから、わたしは奪還を第一に考えなきゃ。

 

「はぁ、はぁ…し、しぶといんだよお前は……ッ!」

「わたしは追うわよ、貴女からいーすんの大切なものを取り返すまではねッ!」

 

後ろを見て、わたしが諦めていない事を認識した下っ端は、息を切らしながら悪態を吐く。この時彼女との距離は数メートル。今なら一気に…と一瞬思ったわたしだけど、すぐに下っ端が右折したせいでまた僅かに手が届かない。

近付いて、後一歩で逃して、また近付いて……彼女自身が「振り切ってからじゃないと外出てもすぐ捕まる」と思っているのか捕まえ易い場所に出てくれず、時間ばかりが過ぎていく。…と、思いきや……

 

「…こ、ここを曲がって…………あ」

「……?……あ…」

 

角に手を引っ掛け曲がる下っ端。即座にわたしも曲がって追おうとするも、そこには途中で立ち止まった彼女の姿。その彼女の先に目をやると……廊下は途切れていて、突き当たりには扉が一つあるだけだった。

 

「……行き止まり?」

「…に、見えますね……(・▽・;)」

「…………」

「行き止まりよね?扉も外じゃなくて何かしらの部屋に繋がってるだけよね?」

「…………」

「…貴女、もしかして…闇雲に走った結果、墓穴を掘った……」

「う、うるせェ!あぁそうだよその通りだよ!んな事確認しなくたって一目瞭然だろうがッ!」

 

わたしが突発的な好奇心で問い詰めてみると、下っ端は顔を赤くして怒号を口に。更に振り向いた事でわたしの口元がひくひくしていた事に気付いたのか、更に顔が赤くなっていく。…こ、小物感凄いわね…後弄られキャラとしての適性もあるんじゃないかしら…。

 

「くっそ、こんな事ならあいつ等と一緒に逃げるべきだった…」

「あいつ等?…あぁ、他の残党の事?その人達は貴女が自分と別れて逃げろって指示したんじゃない。案外仲間思いなのね」

「ち、違ェよ!あん時は足手纏いになると思っただけだ!」

「ふぅん、まぁそういう事にしておいてあげるわ。…本を返しなさい」

 

四天王に比べればよっぽどとっつき易い彼女の性格に少し気が緩んでしまったものの、すぐにわたしは表情を引き締める。

 

「ぐっ…そんな事を言われても、アタイは……」

「あら、素直に渡す気はないと?」

「誰がそんな事するかよ!ふ、ふん!だったらこいつがどうなってもいいのかよ!」

 

焦りと迷いの混じったような表情を浮かべた末に、懐からいーすんの本を取り出した下っ端。けどその口振りに、観念した雰囲気は感じられない。むしろ……

 

「……それは、わたしを脅そうとしているのかしら?」

「それ以外に何かあるとでも思うのかよ…」

 

本を掲げ、下っ端はわたしを睨み付けてくる。一応確認こそしたけど…脅しだというのは、訊くまでもない。

いーすんは大部屋で、本は真の本体と言うべきもの…と言っていた。それが言葉通りの意味なら、わたしは今いーすんを人質にされているも同然。…けど、わたしは動じない。こうなる可能性は考えていたし……何より、わたしには乗り切るだけの算段があるから。

 

「…なら、やってみればいいじゃない」

「…へ……?」

「聞こえなかった?やってみたら、って言ったのよ」

「…な、何のつもりだよ…言っとくけどな、アタイはやるって言ったら本当にやる……」

「えぇ、やってみなさい。…貴女が何かする前に、貴女の頭が胴体から離れていなければ、ね」

「……ッ!」

 

冷ややかな瞳で、わたしはそう言い放つ。……これは、ハッタリじゃない。実際にやるかどうかはともかくとして、この距離で人を止めきってはいない人間が相手なら…対象が瞬きをするよりも速く首を刎ねる自信が、わたしにはある。そしてわたしがそう言った瞬間、下っ端は言葉を詰まらせた。

大太刀は抜かず、いーすんを抱えたまま一歩前に出る。ビクリと下っ端が肩を震わせる姿を見てから、更に一歩前へ出る。そうしてわたしが三歩目を踏み出そうとした瞬間……

 

「…おいパープルハート、パープルシスターってのはお前の妹だよな…」

「えぇ、そうね」

「だったらアイツに言っとけ、アタイはテメェが大嫌いだってな。それと……」

「それと?」

「……お…覚えてやがれぇぇぇぇッ!」

「逃げた!?でも、そこへ逃げたって状況は変わらな……きゃっ!?」

 

意味深な伝言を口にしたと思いきや下っ端は反転し、どこぞのロケットなマフィアやドロボーにンを足した一味並みに慣れた感じで捨て台詞を吐きつつ、奥の部屋へと逃げ出した。…けど、部屋に入ったって別の廊下がある訳がない。立て籠もるにしても鍵をかける余裕があるとは思えないし、仮にあってもそれならそれで扉を破ればいいだけの話。

…そう、無意識に少し油断していたのがいけなかった。意味のない行為だと内心で思っていたからこそ……追って入った途端に飛んできた物体に対し、わたしは思わず悲鳴を上げてしまった。

 

「これは…いーすんの本!?や、やってくれたわね!」

「ルウィーで部屋に入った途端飛んでくる本…な、何かデジャヴが……( ̄д ̄;)」

「デジャヴ?こんな滅多に無いような出来事が前にも──」

 

顔に当たる寸前で本をキャッチするわたしと、なんとも気になる発言をするいーすん。……次の瞬間、ガラスの割れるけたたましい音が響いた。

 

『な……ッ!?』

 

驚いたわたし達が音のした方向へと目をやると、そこには豪快に破られた窓が一つ。そして、本来あるべき筈の下っ端の姿が、この部屋にはない。…だとすれば、導き出される答えは一つ。

 

「こ、ここは一階じゃないのよ!?なんて無茶を…!」

 

幾ら逃げる為とはいえ、ガラスを突き破って投身なんて普通じゃない。……思い返せばわたしも同じくルウィーで一度やってはいるけど…とにかく、下っ端がそんな大胆な手段を取ってくるとは思わなかった。

 

(…けど、いーすんの本は取り返す事が出来た。後はこのまま彼女も捕まえる事が出来れば……)

 

他の残党や四天王とのやり取りを見る限り、彼女は下っ端と言われつつも実際にはそこそこの立場にいる様子。だったら出来る限り捕まえておきたいし、操られる可能性を考えれば捕まえる事こそが彼女の保護にも繋がる筈。そう考えたわたしは一飛びで窓際まで移動し、彼女の後を追うように外へと飛び出し……

 

「え……っ?わぁぁぁぁぁぁっ!?」

「へっ?…ね、ネプギ……」

『あうっ!!』

 

外へ出た瞬間聞こえた慌ただしい声。その声に反応して上を見ると、そこにいたのは物凄い勢いで降下してくるネプギアで、しかもネプギアはわたしのほぼ直上にいて…………対処を考えるよりも早く、わたしとネプギアの頭が大事故を起こす。

 

「う、うぅぅ…あ、頭が……」

「わ、割れるように痛いぃ……」

「……お、お二人共…大丈夫、ですか…?(;゚Д゚)」

『全然大丈夫じゃない(です)……』

 

わたしとネプギアは頭を押さえ、転げ回りたい程の痛みを必死に耐える。…こ、これ…普通の人なら頭が落とした生卵みたいになるんじゃないかって位に痛い……。

 

「……って、痛がってる場合じゃないわ!早く下っ端を追わないと…」

「あ!そ、そうだよお姉ちゃん!今わたし下っ端が飛び降りて逃げる姿を見かけて……」

「…………」

「…………」

「……下っ端は…?」

「…い、いないね……」

 

外部からの頭痛に姉妹仲良く悩まされる事数十秒。自分がそれぞれ激突する直前まで考えていた事を思い出したわたし達は、城を背にして周辺を見回すけれど……どこにも下っ端の姿はない。…と、いう事はつまり……

 

「…逃げ、られた……?」

「…た、多分……」

 

顔を見合わせるわたし達。続いてわたし達はいつの間にか本に乗っていたいーすんとも顔を見合わせて……いーすんが首を横に振った瞬間、大いに落ち込むのだった。…み、見失った理由が情けな過ぎる……。

 

「ごめんなさいネプギア…わたしが不注意だったから…」

「謝るのはわたしの方だよお姉ちゃん…わたしが城に沿って下降してたから…」

「き、気を落とさないで下さいお二人共。ほ、ほら!自分で言うのも変ですが、無事人質は救出出来たんですから!o(^o^;)o」

「……!そ、そうだった!無事だったんですねいーすんさん!…よかったぁ……」

「…はい、ご心配をおかけしました」

 

自身を本ごと抱き寄せるネプギアに、いーすんは穏やかな微笑みを見せる。…その姿を見て、やっとわたしも実感した。わたし達の大切な仲間を、取り返す事が出来たんだって。

 

「お姉ちゃんも無事でよかった…わたし、心配したんだよ?通信妨害でお姉ちゃん達と連絡が途絶えちゃったから…」

「それはわたし達だってそうよ。もしも外で何か起きてたら……って、あら?ネプギアはどうしてここに?まさか下っ端が窓突き破る姿が見えて、そこからこの短時間で降下してきたの?」

「あ、ううん。それはね……」

 

わたしでも出来ないような芸当をしてきたのかとわたしが驚いていると、ネプギアはそれを否定し教えてくれる。つい先程ロムちゃんとラムちゃんが城を脱出してきて、中の事情を伝えてくれた事を。それを受けたイリゼとノワールが城内に突入し、ネプギアとベールも降下を開始した事を。その最中でネプギアは下っ端を見つけて、降下の結果わたしと激突してしまった事を。

 

「…そう、トリックは倒せたのね……」

「うん、ブランさんも無事みたいだし作戦は大成功だよ」

「なら良かったわ。逃げた残党も何割かは軍が見つけて捕縛してくれるでしょうし……っと、そういえば…」

「……?」

「…ネプギア、貴女あの下っ端と因縁があったりするの?彼女は貴女を大嫌いだって言ってたけど…」

「え?……それは…」

 

朗らかに笑うネプギアを見て、わたしも安心感から笑みを零す。…けど、わたしが彼女からの伝言を伝えた瞬間、ネプギアは何か思うところがあるかのように表情を曇らせてしまった。いーすんなら何か知ってるか…と思ってわたしは視線を送るものの、いーすんもそれには心当たりがない様子。

 

「…あの人…やっぱり、あの事を……」

「…ネプギア、下っ端を探してみる?」

「う、ううん。それよりまずは皆と合流しなきゃでしょ?」

「まぁ、それはそうだけど…それでいいのね?」

「…うん、それでいい」

 

ネプギアの様子はとても気にしてないようには見えない。…けど、ネプギアはそれでいいと言った。思い当たる節がない表情でもなく、気にしないようにしてる表情でもなく、何かしら考えた上だと分かる表情でいいと言った。……なら、事情を知らないわたしが無理強いするべきじゃない。姉は妹を助ける存在ではあっても、自分の考えを押し付ける存在じゃないのだから。

外へ出た事で正常になったインカムを使い、わたしは皆へいーすんの救出成功を伝える。すると真っ先に聞こえてきたのはイリゼの声。それにわたしとネプギア、いーすんの三人は苦笑を浮かべて……それからわたし達は、ギャザリング城を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

──こうして、ギャザリング城での戦いが、リーンボックスでの戦闘を始めとする四天王トリックとの戦いが終わった。また一歩、わたし達は犯罪神への勝利に近付いた。…けど、この戦いは……様々な人の心に、何かを残す戦いでもあるのだった。




今回のパロディ解説

・どこぞのロケットなマフィア
ポケットモンスターシリーズに登場する敵組織、ロケット団(のトリオ)の事。下っ端は吹っ飛んだのではなく窓を突き破っていきました、勿論やな感じとも言っていません。

・ドロボーにンを足した一味
タイムボカンシリーズに登場する組織、ドロンボー一味の事。この後下っ端はお仕置きを…受けないでしょう。そもそも直属の上司は消滅してしまいましたし。

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