超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress   作:シモツキ

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第八十八話 焦りの結果

早朝、プラネテューヌの軍事基地の内の一つ。そこでわたしは、偵察の結果いる事が確定した犯罪組織残党を制圧、拘束する為に編成された部隊の前に立っていた。

 

「皆、朝から集まってくれてありがとう。眠くて大変だったりはしないかしら?」

「いえ、パープルハート様の為ならどんなに早かろうと、何徹だろうと望むところです!」

「ふふっ、流石は我が剣であり盾であるプラネテューヌの軍人ね。頼もしい軍人がこんなにいてくれて、わたしは嬉しいわ」

 

整列した軍人達の前に立つわたしは女神の姿。これから行うのは軍事行動で、わたしと国の名の下執行する正義の鉄槌だもの。こちらの姿を取らないでどうするんだ、って話よ。

 

「これから制圧する相手は犯罪組織。今こそ残党なものの、多くの罪を犯し、国家の崩壊までも狙った非道な組織が相手なのだから、躊躇う必要はないわ」

『はい!』

「…けれど、怒りのままに虐殺するのは正義からかけ離れた行動よ。夜ではなく、朝に作戦を行うのもそれが理由。日中に、卑怯な策を用いず完全制圧する事によって犯罪組織残党にも、国民にも貴方達の正しさを証明するのだと、よく心に留めておいて頂戴」

 

これから作戦に参加する人達を鼓舞する為に、わたしは弁舌を振るう。我ながら歯の浮くような台詞だけど…戦いに酔える女神や、良くも悪くも戦いに慣れているパーティーメンバーと違って、ここにいる人達の中には人を相手に戦う経験をあまりしていない人だっている筈。そういう人達が怖気付いたり精神的に追い詰められたりしないようにするには、こういう言葉も必要なのよね。

 

「…とはいえ、モンスターや大型兵器の相手をするのはわたしとギルド支部長。貴方達の役目は逃走するであろう残党を拘束する事だから、戦いについてはそこまで気負わなくても大丈夫よ」

「はっ!我々全員、一人残らず捕縛し任務を完遂させる所存です!」

「その意気よ。わたし達は貴方達が拘束に専念出来るよう全力を尽くすわ。だから貴方達も潔白な行動に努める事、拘束に専念する事…そして何より自分と仲間の命を大切にする事を心掛けなさい!」

『了解っ!』

 

わたしが台から降り、軍人達もそれを合図に移動を開始する。軍が残党に気付かれないようにしつつ包囲網を形成し、機を見てわたしとビーシャが仕掛けるというのが今回の作戦内容。よってこの作戦において軍人にかかる危険性は、わたし達が如何にモンスターと兵器を引き付け、撃破する事が出来るかどうかにかかっていると言っても過言じゃない。

 

「ふぅ、士気は十分そうね…」

「お疲れ様、ねぷねぷ」

「ありがとうビーシャ。でも頑張らなきゃいけないのはこれからよ」

 

台から少し離れたところで駆け寄ってくるビーシャ。最初ビーシャは慣れない軍の集まりだからか居心地が悪そうだったけど…こっちもそれで気が滅入ってる、とかはなさそうね。

 

「…やっぱりねぷねぷって、女神化すると見た目も性格も格好良くなるよね…」

「あら、それは普段のわたしが格好悪いって言いたいのかしら?」

「格好悪いとは言わないけど…あんまり格好良くもないと思う」

「よ、容赦無いわね…まぁいいわよ。普段のわたしは別にそういう系じゃないし…」

 

格好良いなんて、女神を抜けばあいちゃんや新パーティー組のファルコムなんかにこそ似合う言葉なんだから、人間の姿のわたしが格好良くなくたって別にいい。そういう話をするならば可愛い系な筈だもの。…えぇ、わたしは何にも気にしてないわよ?

 

「……えと、もしかしてねぷねぷ気にしてる…?」

「し、してないわよ!断じてしてないんだから!」

「そ、そっか…それで、ねぷねぷは作戦終わるまでずっとその格好してるの?」

「あ、いやそんな事はないわ。今は先に話しかけられたからこの姿をしていただけで…出番が来るまではこっちの姿だよ」

 

そう言いながらわたしは女神化解除。今は早朝だけど、気付かれないように包囲網を作るとなると時間がかかるからね。

 

「…これってさ、包囲網作ってる間に逃げられちゃったりしないかな?」

「それについては偵察の結果、そこそこの人数がいる様子だから大丈夫って事になったよ」

「そうなんだ…じゃあ、落ち着いて準備が出来るね」

 

人数が沢山いると、移動に時間がかかっちゃう…っていうのは皆も避難訓練とかで分かってるよね?それは軍事行動でもやっぱり同じで、動きをバレたくない場合は慎重に動く事となるから更に行軍は遅くなる。対してこっちは総人数こそそれなりだけど、包囲網は少数部隊を広範囲展開する事で形成するから移動速度で圧倒的に上回っているからこそ、慌てなくても準備は間に合う……って、いーすんが言ってたよ?…あ、別にわたしは何にも思い付かなかった訳じゃないからね?わたしがどうこう考えるより先に説明してくれただけだもん。

 

「…あ、ところでねぷねぷ朝ご飯食べた?」

「うん、こんぱ特製のおにぎり食べたんだ〜」

「へぇ…わたしご飯用意出来なかったし、言えば携帯食料とか貰えるかな…?」

「ふふーん、そう思ってビーシャの分のおにぎりも持ってきたよ!そう思ったのはわたしじゃなくてこんぱだけどね!」

「おー!流石コンパだね!今度お礼言っておこっと」

 

わたし達が繰り広げるのは、全体的に固い雰囲気のある基地の中とは思えないゆるゆるな会話。でも女神のわたしと支部長のビーシャが緊張してたら皆も不安になっちゃうからね。これは周りへのリラックス効果もあるんだよ、うん。

それからわたし達は暫く待機。定期的にくる包囲網の新着情報から開始時間を予想しつつ、それぞれ武器の点検をしたり軽く身体を動かしたりしてその時を待つ。そして……

 

「女神様、包囲網の形成が八割を超えました」

「オッケー、それじゃ…わたし達も出るわよ、ビーシャ」

「ふっ…悪いがここからはわたしに任せてもらおうか!」

 

報告を受けて再度女神化したわたしと、視線が向いていない間に仮面を装着したビーシャ…もといプレスト仮面。超小型インカムの電源を入れ、ブレスト仮面を連れて飛翔する。

 

『ご武運を!』

「えぇ!各隊にわたしが出たからって焦らず、しっかり包囲網を構築しなさいと伝えておいて頂戴!」

 

司令部の軍人達から敬礼で見送られ、わたし達は残党のいる地点へ向かいつつも高度を上げていく。それは、見上げられたとしてもわたしやプレスト仮面の存在を残党側に目視されないようにする為の行為。

 

「…もう地上への狙い撃ちは出来ない、か…」

「大丈夫よ、攻撃するのは降下してからだもの。あ、でも出来そうなら降下中に撃ってくれても構わないわよ?」

「急降下しながらバズーカの反動に耐えられると?」

「女神の力を舐めちゃいけないわ。ブラン程じゃないけど、わたしだってそれ位なら許容範囲よ」

「ふふ、頼もしい言葉だ…」

 

捕縛担当の部隊に必要とされているのが確実に逃がさない正確性だとするならば、わたし達に必要とされているのは敵を引き付け迅速に倒す戦闘力と機動性。その観点で言えば、相手に気付かれる前から炸裂弾頭による空爆が出来るというのは必要とされている力と非常に合致していて、プレスト仮面が出来るというならわたしとしても大助かりというところ。…けどわたしはこんぱを散々酔わせた事があるし、飛び方には気を付けておかないと…。

 

(…出来れば、早々に諦めて投降してほしいものね……)

 

人同士の戦いなら正規軍であるこちらの方が確実に有利とはいえ、無傷で全員捕縛出来るレベルの戦力差がある訳ではない。それに…犯罪組織所属でも人は人。例えそれがわたしの国民に牙を剥いた過去があった人達だったとしても、わたし達守護女神に心の傷を作った組織の人間だったとしても、出来るならば死んでほしくない。

 

「……プレスト仮面、自分の命より優先しろとは言わないし、貴女の武器が範囲攻撃前提である事は百も承知よ。だから無理なお願いだというのは分かっているけど、出来れば……」

「残党が爆風に巻き込まれる事のないよう戦ってくれ、だろう?」

「え……貴女まさか、心奏のセンスを…?」

「君ならそう言うだろうと思っただけだが…何を言っているのだ?」

「あ…こ、こほん。……なら、お願い出来る?」

「…わたしとて無益な殺生は好まない。よって、任せるといい!」

 

ぐっ、と左手でサムズアップを見せてくれたプレスト仮面は……本当に頼もしい笑みを浮かべている。見た目も精神も普段のわたしと変わらないプレスト仮面が、ギルドの支部長という大役を担って今日も犯罪組織の取り締まりに協力してくれている…そんな人と友達でいられる事が、わたしは素直に嬉しかった。

そうして飛ぶ事十数分。わたし達は残党がいる地点……の遥か上空に到着する。

 

「ここか…ふむ、全く見えないな」

「わたしだって地上にいる人なんか見えないわ。降下ポイントは分かるけどね」

「…包囲網は?」

「今さっき後約十分だって通信がきたわ。数分程度なら完成前に仕掛けても恐らく間に合うから…後数分で降下するわよ、プレスト仮面」

 

時間的余裕はあるとはいえ、万が一を考えれば早めに動くに越した事はないし、プレスト仮面の精神衛生的にも超上空で抱えられているだけ…という状況を長引かせるのは良くない筈。そういう観点からわたしは完成より少し早めに降下する事を決定し、プレスト仮面もそれに首肯してくれた。

風でツインテ三つ編み(…って言えばいいのかしら、わたしの髪型…)が乱舞する中、静かにその時を待つ。淡々と、一秒一秒変わりなく進む時間を感じて待つ。そして一瞬風の勢いが弱まった時……わたしは閉じていた目を開く。

 

「プレスト仮面、準備はいい?」

「無論だ!」

「なら…全部隊に通達、これより制圧作戦を開始よ!貴方達はわたしの加護に守られているわ。だから安心して、誇りを持って……任務を遂行しなさいッ!」

 

高らかに宣言を響かせ、わたしは降下を開始。獲物を定めた猛禽類の様に鋭く、一直線にポイントへと急降下をかける。

 

「くっ…このGはまるで、カタパルトから射出される兵器のようだ…!」

「これでも抑えてるの…よッ!」

 

瞬く間に大きくなっていく大地。次第に見えてくる木々の形。一切速度を落とさないままわたしは降下を続け……遂に人の姿が見えた時、翼を広げて上下逆となっていた身体を一気に持ち上げる。

 

「プレスト仮面ッ!」

「プレスト仮面、目標を空爆するッ!」

 

砲身を肩にかけ、地上に向かって弾頭を放つプレスト仮面。当然反動は全てわたしに伝わってくるものの、それをわたしは翼と脚、それにプロセッサの浮遊ユニットをフル活用する事で姿勢を制御し降下を続行。突然空より飛来した炸裂弾頭に慌てふためく残党の中央へと着地する。

 

「わたしは女神パープルハートよ!貴方達は既に包囲されているわ!武器を捨てて投降しなさい!」

 

見栄を切りながら降り立ったわたし達。着地の数瞬前にプレスト仮面を離していたわたしは、即座に大太刀を抜いて地面に突き立てる。

これで投降してくれれば御の字。してくれなくても士気が下がれば相対的に軍人達の身の危険性は低下する。…けれど……

 

「ちっ、折角ここまで来たってのに…!」

「誰が女神なんかの言葉をきくもんですか!」

「女神を人質に出来りゃ一発逆転だ!やっちまうぞ!」

 

……わたしの言葉に返って来たのは、剥き出しの敵意だった。

分かっていた。犯罪組織が崩壊してから、取り締まりを逃れた人の一部は残党に合流せずに出頭してきたから。出頭が選択肢に入るだけの状況があって、出頭するには十分な時間もあって、それでも尚犯罪組織として活動しているのなら…その人達の心に、投降の意思なんて欠片もないんだと。……それ程までに今の社会を、わたし達の統治する世界を嫌っているのかと思うと…悲しさ、それに情けなさが胸をざわつかせる。

 

(……っ…だとしても、ここはもう戦場よ。意識を切り替えなさい、わたし…!)

 

真っ先に放たれた銃弾を引き抜いた大太刀で斬り伏せ、続く四方からの射撃を大きく跳んで回避する。エネミーディスクからモンスターが呼び出され、待機状態だったキラーマシンのカメラアイに光が灯る。…そう、ここは既に戦場となった。話し合いだけで解決する段階を超えてしまったのなら、後はもう無力化するか戦いながら言葉を投げかけるかしかない。

 

「まずはわたしが引き付けるわ!貴女はわたしの手の届かないところをお願いッ!」

「心得たッ!」

 

エクスブレイドを大型モンスターへ放ち、起動シーケンス中のキラーマシンのカメラアイへと大太刀を投擲し、近付いてきたモンスターに飛び膝蹴りを叩き込む。わたし達の攻撃目標はモンスターと兵器とはいえ、こちらがある程度圧倒しなければ残党も撤退を選んでくれる訳がない。つまり最低でも数分は残党の相手もしなければいけない訳で…この戦いは、決して気を抜いてなんていられない。

わたしは激しく、縦横無尽に動き回る。残党に『勝てない』と思わせる為に。プレスト仮面へと攻撃が集中しない為に。

 

「はぁぁぁぁっ!」

 

体術で小型、中型のモンスターをねじ伏せ、不用意に近付いてきた残党の武器を破壊し、キラーマシンの砲撃を避けて跳躍。先程頭部を貫いたキラーマシンの胸部へと降り立ち、大太刀を引き抜きつつも背後へ回り込んで射撃を防ぐ盾に。

 

「投降する気がないのなら、退きなさいッ!自分達に勝ち目はないと、その身を斬られなければ分からないのかしらッ!」

 

キラーマシンの背後から飛び上がり、残党へ大太刀の斬っ先を向けて叫ぶ。女神としての役目を果たし、国民とゲイムギョウ界の安全を守るのだという思いを胸に。

 

 

 

 

「想定よりもモンスターの数が多いわね…!」

 

作戦開始から数十分。それなりに早い段階で残党は撤退し、作戦は第二段階に移行したものの、何処かへエネミーディスクを置いていったのか中々モンスターの数が減らなかった。

 

「……けどッ!」

 

飛びかかってきたモンスターを敢えて峰側で受け、別のモンスターへと打ち返す。例えモンスターの増援が途切れなくても、殲滅ではなく残党拘束まで足止めを続ける事が出来れば作戦成功。それが達成されれば後は慎重に戦いつつディスクを探して壊せばいいという状況が、わたしの心に余裕を持たせてくれていた。

 

「プレスト仮面、まだ大丈夫!?」

「案ずるな、この程度…造作もないッ!」

 

それに、今ここにはプレスト仮面がいる。作戦開始直後こそ残党が巻き込まれる可能性のあった範囲攻撃も、いなくなった今では対多数戦における強力な武器。ブレスト仮面自身の身体能力も相まって、わたしの負担を大きく和らげてくれていた。

そのプレスト仮面が、覇気の衰えない声で言葉を返してくれる。それはとても心強くて……でもすぐに、わたしは違和感を感じる。

 

「いける、いけるぞ!これだけのモンスターを相手にしても、わたしは戦える!勝てる!」

(あれ……?)

 

次々と弾頭を放ちながら突進するプレスト仮面。闘志を燃やすその雄姿は頼もしいけれど…やはりおかしい。高威力広範囲と引き換えに反動が大きく、連射性に欠けるバズーカは本来距離を取り、一発一発しっかり撃つべき武装の筈で、普段のプレスト仮面もそうして戦っていた。今の様な戦い方をするのはそれこそ強敵にトドメを刺す時位のもので、まだ敵の数がそれなりに残る今すべき動きじゃない。

 

(…何か、焦ってる……?)

 

勝ちを急いでいるような、気持ちが先行し過ぎているような。おかしいという意識でプレスト仮面を見ると、彼女からはそんな雰囲気が感じられた。……でも、この戦いは作戦上勝ちを急ぐ必要も、気持ちが舞い上がるような大一番でもない。

 

「プレスト仮面、前に出過ぎよ!前衛はわたしに任せて下がって!」

「大丈夫!わたしは戦えるから…モンスターなんかに負けたりはしないから!」

「……っ!?ビーシャ…?」

 

背の低さを活かして大型四足歩行モンスターの懐へと潜り込んだプレスト仮面は、その勢いのまま強烈なアッパーカット。続けてアッパーカットで露わとなった喉元へと近距離射撃を叩き込む。爆風がモンスターの下で巻き起こる中更に爆発音が響き……人の何倍もの体積を持つモンスターが、呻きを上げながら地に突っ伏した。

 

「やっぱり、わたしは…わたしはもう……」

 

晴れていく煙の中心に立つプレスト仮面は…いつしか素の性格に戻っていた。何かに解き放たれたような、感涙の篭った彼女の声。……でも、その時彼女は気付いていなかった。煙に紛れて近付く、一体のモンスターに。

 

「ビーシャっ!前ッ!」

「え……?きゃっ…!」

 

咄嗟にわたしは声を発するも、間に合わない。小さなそのモンスターはビーシャの顔へと飛びかかり……けれど幸か不幸か驚いたビーシャが尻餅を付いた事によって、モンスターの爪は鼻先を掠めるだけに留まった。

目の前のモンスターを一刀の元に斬り倒し、一気にビーシャの側へと飛ぶわたし。大袈裟に大太刀を振るってモンスターを牽制しつつ、横目でビーシャに声をかける。

 

「ビーシャ、無事!?」

「あ……う、うん。…じゃなくて、案ずる事はないぞ、パープルハートよ!」

「ならいいわ。作戦は順調に進んでるんだから、焦らず落ち着いて戦いを……あら?」

 

演技を再開する余裕があるなら大丈夫だろうと、わたしは大太刀を構え直す。……と、その時気付いた。立ち上がったプレスト仮面の顔に仮面がなく、ビーシャの状態に戻ってしまっている事に。

 

「何かな?」

「何かな…ってほら、仮面取れてるわよ?」

「…………え…?」

「さっき掠めた攻撃が仮面に当たったのよ、きっと。…っと、大丈夫。わたしは顔を見てないわ。わたしが見たのは落ちた仮面だけで、プレスト仮面の正体には気付いていない。だから……」

「……あ…あぁ…あぁぁぁぁぁああぁぁッ!!?」

「ビーシャ…ッ!?」

 

ビーシャ=プレスト仮面、を隠そうとする彼女を気遣い、わたしは気付いてない体の言葉を投げかける。そのわたしの言葉をさえぎったのは……ビーシャの絶叫だった。その声で只事ではないと感じ取ったわたしは、すぐさま振り向く。そして見たのは…青ざめた顔で震えるビーシャの姿。

 

「ど、どうしたのビーシャ!?何かあったの!?それとも攻撃を受けてたの!?」

「わ、わた…わたし……ひぃっ!!」

「び、ビーシャ落ち着いて!何に怯えているの!?貴女に一体何が……」

「い、いや……嫌ぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁっ!!」

「な……っ!?」

 

バズーカを落とし、肩を抱き、怯え震えるビーシャ。みるみるうちに涙の溜まっていくビーシャの瞳が何かを捉えた時……彼女は、悲鳴を上げながら駆け出した。…それはまるで、何かから逃げるように。

 

「待ってビーシャ!武器も無しにそんな事するのは無謀……」

「■■ーー!」

「ちっ…こんな時に……ッ!」

 

慌ててわたしはビーシャを追おうとするも、そのわたしの進路上へキラーマシンのビームが駆け抜ける。それはわたしではなく、ビーシャを狙って放たれた砲撃が外れた結果だったものの…それを知らないわたしにとってはビーシャを追う事に対する妨害としか思えなかった。

ビームに突っ込まないよう急ブレーキをかける中、わたしは考える。このままビーシャを追うべきか、モンスターと兵器の撃破を優先するべきか。どちらも二の次には出来ない事で、簡単には選べなくて……結局選ぶ前に、わたしは前者の選択肢を潰されてしまった。ビーシャがいなくなった事で孤立したわたしは囲まれ、撃破を選ぶしかなくなってしまった。

 

「……ッ!ビーシャ!ビーシャぁぁぁぁっ!」

 

出し惜しみなしの全力でモンスターと兵器を斬り裂きながら、わたしは叫ぶ。一体どうしちゃったのよ…ビーシャ……っ!




今回のパロディ解説

・心奏のセンス
七星のスバルの作中ゲーム、ユニオン及びリユニオン内のシステムの一つの事。心を読む系の能力は色々ありますが…この時一番最初に思い付いたのがこれでした。

・「ブレスト仮面、目標を空爆するッ!」
機動戦士ガンダム00において、プトレマイオスチームのガンダムマイスターが発する台詞の一つのパロディ。ビーシャはこれの駆逐verを原作で言ってますね。

・「いける、いけるぞ!〜〜勝てる!」
コードギアス 反逆のルルーシュ主人公、ルルーシュ・ランペルージの名台詞の一つのパロディ。この時のビーシャはルルーシュばりに気分が高揚していた、という事です。

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