『受付の足柄だけど、タ級とル級、それとヲ級が来たわよ』
小会議室にその連絡がいく少し前。受付をしている那智と足柄の元に三人の深海棲艦が訪れる。訪れたのは戦艦のル級とタ級、空母ヲ級の三名。其々艤装をしておらず、服装も、ル級は黒のレディーススーツ。タ級は白のツーピース。ヲ級はフリルのついたワンピースに淡いピンク色のカーディガンといった出立で、端から見たら深海棲艦とは別の意味で目立つ。
「足柄、受付いいかしら」
受付をしている足柄に話しかけるル級。
「ん?ル級じゃないか、どうした?お前が事前連絡なしで来るなんて」
受付窓口の横から顔を出す那智、今日は那智と足柄の二人が受付を担当していた。
「ちょっとね、長門と武蔵は居るかしら?」
ル級は流暢な日本語で目的の艦娘がいるか聞いた。
「居るわよ、もしかして婦人艦関係?取り敢えずIDカードをだして入館書類にサインをしてちょうだい」
そう言ってル級に書類を渡す足柄、ル級達三人も足柄にIDカードを渡す。ここと関わりを持つ一部の深海棲艦はこの鎮守府に入る為の自分のIDを所持している。足柄は受け取ったカードを那智に渡すと那智はカードをスキャンしていく。
「いつも思うけど、この入館手続き面倒よね」
ル級は書類にサインしながら手続きの面倒くささに文句をつける。
「ならいい加減こっちに来ればいいじゃないか。何人かはもうこっちに移ってるぞ」
スキャンが終わったカードを足柄に渡しながら那智が口を挟んだ。
「そうね、多分近いうちにそっちに移ることになると思うわ」
三人分のサインを書いた書類を足柄に渡しながら答えるル級。
「おっ、漸くか。しかしル級、お前いつもスーツで苦しくないか?」
「その言葉そっくりあなた達に返すわ。あなた達妙高型が深海棲艦のなかでなんて言われてるか知ってる?OL艦娘(笑)よ」
那智の言葉がブーメラン、それもより一層威力を上げて反ってきた上、ル級の言葉に話をふった本人の那智よりも足柄の方がダメージが大きかったようで足柄は机に突っ伏してしまった。
那智は机に突っ伏した足柄の横からゲストの入館許可証をル級に渡すと足柄の肩を揺らし。
「ほら、足柄。何時までも突っ伏してないで長門に連絡を入れろ、私は三人を小会議室に案内するから」
足柄は渋々といった様子で頭をあげて受話器を取り内線を小会議室へ繋げる。
『受付の足柄だけど、タ級とル級、それとヲ級が来たわよ』
足柄は小会議室にいる長門へと連絡を入れ、那智は入館許可証を首から下げたル級達三人を小会議室に案内する為に腰を上げる。
捕捉、IDの発行には幾つかの条件があります。
一つ、穏健派であること。
二つ、問題なくコミュニケーションがとれること。
三つ、人型であること。