このぞんぞんな世界に救済を! 作:ちょむすけ
「カズマカズマ」
「あ?どうしためぐみん」
「そろそろ爆裂魔法が撃ちたいです!我慢の限界なんです!もう三日も撃ってないのですよ!!?」
確かにめぐみんにしては爆裂魔法を三日もがまんできたのは凄いことなんじゃないかと思う。
「ちょうど校庭のところにわらわらと集まってますし、撃ち込んでいいですか!」
「却下に決まってんだろ」
そんなことされたら昨日雨が止んだあと即席で出涸らしのゾンビ数十体を積み上げフリーズで作り上げたバリケードがパーになる。
因みにバリケード自体はそこまで苦戦することなくできた。
ある程度のゾンビが散ったあと。残ったのをバインドで縛り上げて、魔力と体力をもらって出涸らしになったのはバリケードの材料にしたわけだ。
唯一の難点はといえば夏に入りかけてる今の気温だとそんなに長く持たないことだ。
「なっ…では私のこの爆裂欲はどうやって晴らしたらいいのです!」
「心配するなって。おまえが爆裂魔法を撃ち込むべき場所はもう見つけ出してるから」
「それ本当ですか!?」
「おう。だから飯食って少しダラダラしたら行くぞー。あとついでにダクネスも付いてきてくれ」
「私もか?」
「ああ。おまえにもやってもらいたいことがある」
そうやって話がまとまりかけた時。
「ちょっと待って!」
佐倉さんが俺たちに焦ったような顔で言ってくる。
「貴方達まさか外に行く気なの!?」
「行くけど?」
「何考えてるの!外は彼らがいっぱいいるのよ!」
この人は今更何を言ってるのやら。昨日話したことを既に忘れているらしい。
周りにゾンビが溢れてる?向こうでも爆裂散歩に行くときにモンスターに遭遇することなんてしょっちゅうだし、ぶっちゃけた話しいつもより周りに出る被害に気をつけるだけであとはいつもと変わらない。
敵感知と潜伏があればゾンビなんて怖くないんだよ!
「おいおい今更何をいうのやら、俺は今までに数多の魔王軍幹部や賞金首を相手にして、ついには魔王すら倒したカズマさんだぞ。ゾンビなんざ怖くねえし、むしろ魔力の予備タンクとして道中のゾンビを逆に襲ってやるわ!」
正直に言って触ったときにベチャってなる腐った体に触りたくはないがここにはマナタイトとかないからしょうがない。
「ねえねえカズマさんあなた今最高にゲスい顔してるわよ」
「助手くんは敵感知と潜伏以外にも千里眼とか色々持ってるしね」
「それにお兄様は城の騎士や腕利きの冒険者達を手玉に取った正義の盗賊でもあるんです!それはそれとして、そのお散歩には私も付いて行っていいでしょうか?」
「今日はアイリスはここでゆっくりしててくれ」
そうですか、とアイリスがしゅんとした顔をして、俯いた。
やばい。なんか、心が揺れそうだ。
まて、待つんだ俺。
今日は爆裂以外にも外に用事があるのだ。
その用事にアイリスを連れて行くわけには行かない。
めぐみんもちょっとアウトな気がするが、もう結婚もできる歳だしまあいいだろう。
「ああ。また明日も行くことになるだろうしそしたら連れてくから!」
「約束ですよ」
「ああもちろんだ」
「それでカズマ!出発はいつですか!?」
「もうちょっと待て。俺はまだ動きたくないから」
数時間後、俺たちは河川敷にいた。ここなら周りに特に何もないからいい。
俺たちは河川敷の横の道路に面した爆裂魔法の被害からギリギリ逃れられそうな民家の塀の中から河川敷を見ていた。
「敵感知と潜伏だったかしら…本当にすごいわね…」
ここに着くまでこれといったゾンビとの戦闘もなく、河川敷までやって来た。
因みに散々反対して来た佐倉さんは結局妥協案として俺たちに付いてくることになった。
「じゃあさっき説明した通りに、俺たちはここで待機。そしてダクネスがこの辺りを歩き回ってあたりにいるゾンビを『デコイ』で引きつけてここまで連れてきてくる。そしてある程度引きつけたらダクネスはこっちに戻って来てくれ。そして俺はダクネスの移動の邪魔になりそうなゾンビを狙撃。それで合図したらめぐみんは爆裂魔法を撃つ。いいな」
そもそもなぜゾンビを集めるかと言うと、最初に周りのゾンビを爆裂魔法で消し飛ばしておいて後から来るゾンビが集まるまでの時間を伸ばすためである。
「わかりました」
「わかった。ああ、たくさんのゾンビに追いかけ回されるのはどのような感じなのだろうか…いってくる!」
ダクネスは顔を赤らめてにやけながら走っていった。
「あの、見間違えじゃなかったら…なんかダクネスさん笑ってなかった?」
「あいつドMの変態だからな。ていうか昨日散々見てただろ」
「あー…」
昨日のダクネスを見てればあいつが救いようのない変態だってのはわかってるはずなんだが。
因みに俺は佐倉さんに敬語を使うのをやめた。そもそも俺今巡ヶ丘高校の生徒じゃないし。もっと年上の年齢不詳の女神やリッチーにも初対面の時からタメ口だし。
でも、この人はエリス様以外で初のまともな人っぽい雰囲気を持ってたからさん付けにすることにした。
それにしてもなんかこの人年上っぽい感じしないんだよな。
そうして何分か喋ったりしてるうちにダクネスが帰ってきた。
「よし、めぐみん!ダクネスが帰ってきたから爆裂魔法を準備しろ!」
「はい!」
「お、ダクネスの前にも何匹かいるな。『狙撃』っと」
ダクネスが川を渡りきってこっちに近づいてきたので潜伏スキルを解く。
もちろん敵感知はそのままだから後ろから不意打ちくらう事はない。
「ハアハア。カ、カズマ!何匹ものゾンビが、私の前に欲望に赴くまみ腕を伸ばしてきてだなこれがなんとも…うぅんっ!」
「よしわかった。お前はとりあえずそのだらしなくなってる顔をどうにかしろ」
「だ、だらしない顔などしていない!」
このゾンビたちは足が弱いのかダクネスが引きつけてきたゾンビはほとんどが河川敷の坂で足を取られて転げ落ちている。
「やれ、めぐみん!」
「ええ!三日ぶりの我が愛しき爆裂魔法をお見せしましょう!『エクスプロージョン』!!!!」
河川敷の川辺で転んで唸っていたゾンビの山の中心に爆裂魔法が炸裂する。
そして凄まじい爆風が吹き荒れた。
「」
佐倉さんは完全に固まっている。
確かに爆裂魔法は凄まじい威力だ。爆裂魔法が当たったところのゾンビは跡形もなくなって、そこにはクレーターができてちょっとした池みたいになっている。
「ふっ、慈は我が爆裂魔法の力に驚き声も出ないようですね。それでカズマ今日の爆裂は何点ですか?」
「今日の爆裂は九十五点!威力はもちろんのことだが、周りにいたゾンビを一掃する実用性もある。これで芸術点があればさらなる追加点を与えていたところだ」
「まあ、今回はゾンビが大量にいたせいで芸術性なんてかけらもありませんでしたから仕方がないです。それでもこれは久しぶりの高得点です、今日はいい一日になりそうです!」
俺は満足げに倒れているめぐみんに最低限動けるだけの魔力を渡し、固まっている佐倉さんを現実に戻した。
佐倉さんは未だに呆然としてるけど歩くことくらいはできるだろう。
「よし。撤収」
俺たちは行きと同じように、潜伏スキルを使ってその場を離れた。
佐倉さんもいることだし、途中のレンタカーの店の跡地でレンタカーを無期限で貸してもらっていくことにして、俺たちはついでに入口のフリーズで固めたゾンビのバリケードを普通ものに変えるための資材を集めることになった。
何せあの爆音である。市内のゾンビたちは街灯に集まる虫見たく集まっていることだろう。
建物でゾンビ化して外に出れなくなった奴ら以外はほとんど道中では見なかった。
作戦通りだ。
ここら一帯にゾンビはそうそういない。帰り道も安全だ。
あいつらは生前の行動に引っ張られてるらしいし、効果はそこまで長くは続かないだろう。
でも、もし明日もあの位置にわらわらと群がっていたら爆裂させてやろう。
それはそれとして、資材は資材で後で取りに行くが、その前に俺にとっての本来の目的地である、近場のレンタルビデオ店に来ていた。
学園生活部の連中は娯楽に飢えてるだろうし、俺も俺でアレが限界だし。
「じゃあ三人はその辺でゲームなりDVDなり探してくれ。俺はあっちに行ってくるから」
と言って俺はR18マークのついた暖簾を指差した。
「か、カカカカカズマくん!?何を言ってるの!?しかもめぐみんさんみたいな小さな子の前で!!」
「おい、私が小さいとか言うその言葉について詳しく聞こうじゃないか!」
「あ、めぐみんさんごめんなさい!!だから待って摑みかからないで!」
案の定佐倉さんは顔を真っ赤にし、そして地雷を踏まれためぐみんは佐倉さんに向けて紅く目を輝かせて、ダクネスは何かを察したらしい。
「おいカズマあそこに何があるのだ」
「エロいDVD」
俺は素直に答えた。
「少しは取り繕ったりしたらどうなんだ。しかし普段家でだらだらしてるお前が外に出ることに妙に積極的だと思ったら理由はコレか」
こいつはさも呆れたように言っているが、そもそもお前がこれを取りに行かせた原因だってことをわかっているのだろうか。
「そうだよ悪いか。言っておくが、最近特にお前らは心臓に悪い行動とる上に盛り上げといてお預けするなんていう等の悪い行動とるからだからな。男ってのはアレがああなると辛いんだよ」
そして、その度にサキュバスのお姉さんたちがやってる店にこっそり行ってどうにかしていたのだ。
「じゃあ俺はちょっと行ってくるから」
「わかった。しかし、くれぐれもそこから持って行くものをアイリス様には見せるなよ」
「わかってるって」
そうして、俺は暖簾の中に入って行った。普段ならもう少しダクネスをからかってやるところだが、俺にそんな余裕は既にない。
そこに広がるのは約二年ぶりに広がる現代の楽園だった。
眼に映る肌色の中から慎重に吟味して、俺好みのものを貸し出し用に使われてたのであろう袋の中に突っ込んで行く。
この世界にはサキュバスがやっているあの素晴らしいお店がない。だから次善の策でここに来たわけだ。
みんなが賢者タイムなら争いなんて起こらない。
それにしても流石の品揃えだ。結構数が多いな。それに小型の再生プレイヤーも持ってかなきゃいけない。
「よし、こんなもんだな。向こうに帰ったらアクセルの外に住んでる日本人転生者かダストあたりに高値で売れるだろうし、また取りに来るか」
きっと電池の問題はバニルあたりがなんとかしてくれるだろう。もしかしたら紅魔族とかならプレイヤーを魔道具として作れるかもしれない。
そう考えつつ俺は暖簾の外に出た。
その後は、普通にゲームを選んで資材をとって帰った。
文章がうまく描けない…ッ