このぞんぞんな世界に救済を! 作:ちょむすけ
「『ターンアンデッド』『ターンアンデッド』『セイクリッド・ターンアンデッド』!!か、カズマさん。効かないんだけど、私の『ターンアンデッド』なんでかあのゾンビには効かないんだけど!?」
俺たちは今日本の大通りを思いっきり走り回ってた。
「カズマカズマ、ここはもう爆裂魔法で一網打尽にしてしまうしかないのでは!?」
「アホか!そんなことしたらもっと大量に集まってきて大変なことになるわ!」
「ああ、今あのゾンビたちに捕まったら、私は抵抗することも出来ず全身を隈なく蹂躙され…だ、だがどうなろうと私は騎士としての誇りは失わない!!いってくりゅ!!」
「行くな変態クルセイダー!そんなことしたらあの連中の仲間入りだぞ、自重しろ!」
「へ、変態、変態クルセイダー…くぅっこ、こんな時にそんなプレイを…」
「こんな時に感じてんじゃねえ!ほんっとにブレないなお前は!!最近はアイリスの前でも本性隠さなくなりやがって!!」
そして、逃げ回る俺たちの前方に敵感知スキルが反応する。
当然のことながらゾンビの群れ。
ちょっと危ない殺気を垂れ流すクリスとか、聖剣を抜きそうなアイリスとかも宥めつつ俺たちはとにかく走る。
「みんなそこの建物の中に取り敢えず飛び込め!中にゾンビいたら俺がなんとかするから!」
なんで俺たちが、日本にいて、なおかつこんなバイオハザードな状況になっているかというと…
「これが今回頼まれた神器です」
「ありがと、えっと一応確かめさせてもらうね」
お頭が神器の確認を済ませている間、俺たちは思い思い過ごしていた。
俺が魔王を倒した後、仮面盗賊団の神器回収の活動に王族というバックがついたので最近仮面をつけることも少なくなったから、少ししんみりしつつさっきクレアが淹れて行ったお茶を飲む。
「それはそうとお兄様、もう少しで私も結婚ができる歳なので…」
俺が魔王を倒した後から、アイリスが俺になんか積極的になってきたりもした。
「お、おう」
「何を言ってるんですかこの下っ端は。カズマは渡しませんよ?」
「お頭様、お兄様が魔王を倒した今となっては私とお兄様の間に障害はないのですよ。いえ、むしろ魔王を倒した勇者であるお兄様と結婚するのは私の義務であり、権利でもあります」
「フッ、何を言うかと思えば…今の私はとうの昔に親の公認を得た身。さらに私はもう結婚できる年です。その点で言えば貴女は私どころかダクネスにすら劣っているのです。そしてダクネスはバツ1ですから、どう見ても私が一人勝ちするにちがいありません」
「なっ、私はバツ1などではないぞ!」
「それは貴女が戸籍をいじったからでしょうが、私利私欲のためには権力は使わないとか言っときながらこの娘は」
「ぐぅっ、だがなめぐみん。私はカズマと一線を越える直前まで行ったのだぞ、具体的には押し倒されたことがある」
「その話はもう聞きましたよ。結局一線を越えようと誘ったのは貴女からだったと言うじゃないですか。それを何が押し倒されたですか、エロネス」
「誰がエロネスだ!!」
「!!!!!?????ら、ララティーナその話を詳しく!」
ダクネスはその時のことをこと細やかに話す。あくまで自分が押し倒された風に話すダクネスは初めて会った時より大分小狡くなったもんだ。というかあの時俺にお前を押し倒したときは話をしたかっただけで一線を越える意思なんてもってなかったぞ
「…お前の家でお前を押し倒したのはお前と話すためだし、初めはそんな意思なかったぞ」
「でも結局流されかけたではないか」
「それはお前があんなこと言うからだし、それも結局お前がブチ切れてなかったことになったけどな」
「その程度のこと私もすぐに起こせます。今でこそカズマとは仲間以上恋人未満な関係ですが、その気になればすぐに上へ持っていけます」
「ふっ、だが忘れるなめぐみん。既にカズマのファーストキスは私のものになったということを」
それを言ったあと、ダクネスは城の調度品に不用意に触ろうとしてるアクアを止めるために会話から外れた。
「それをいうなら私もキスなど済ませてます。結局のところ貴女が一番出遅れてるのですよ」
「むっ、私はお兄様に指輪をもらいましたし、この中では一番進んでいます」
「そもそも、私はあの時邪魔さえ入らなければ確実に一線を超えてました。この時点でアイリスでは届かない遥か高みにいるのですよ」
確かにあの時アクアの邪魔が入らなければそうなってただろう。
けど、俺が未だに一線を超えてないのはお前達が期待させといてお預けするからであり、そのせいで俺はサキュバスの店に行かざるを得なくなり、結果的に賢者モードになってその気がなくなるのである。
「お兄様は誘われればホイホイついっていってしまうではないですか!それでまだ一線を超えてないのはめぐみんさんに魅力がたりないからなのでは!?」
「むむむ…なるほどどうしても負けを認めないというのですか…なら今日カズマを私の部屋に呼び現実というものを「させませんよ!」」
こうして、アイリスとめぐみんのじゃれ合いはヒートアップしていく。
これは長く続きそうだ。まあ、ほっといても大丈夫だろう。このままこの話に混ざってたら危ない気がする。
「お頭。そもそも、今回の神器はどういうものなんですか?」
「えっとこれは、日本から任意の物を召喚するってやつなんだけど。まあ、本来の使用者以外が使うと完全にランダムで出「お頭」」
「ダメだからね」
「ちょっとだけ、ちょっとだけだから!」
「ちょっと言い方!本当にダメだからね?日本っていうかあの世界の兵器がこっちに流れたりなんかしたら本当に危険なんだから」
「大丈夫です。仮にライフルとか出てもすぐ壊すくらいのことはします。そんなもんいらないんで」
そう。魔王を倒した今、銃なんかはクソの役にも立たない。
そんなものよりゆんゆんあたりに攻撃してもらった方がつよいし。
「じゃあ何が欲しいのさ」
「ゲームっすよ」
「もうお屋敷にいくつかあるじゃんか」
「いや、あんなドットのやつじゃなくて、PS◯ITAとか3D◯みたいな最近のが欲しいんですよ」
「えっなになに、その神器日本から物を呼び出せるの?ちょっと私に貸しなさいな」
ああ、余計なのが出てきてしまった。
「だめだ。お前がこういうのに触ると大抵ロクなことにならないからな」
「なっ、この水の女神アクア様になんて言い草!謝って!神聖な女神様に生意気な口聞いてすみませんって謝って!」
「おい、誰が神聖な女神だ。借金をこさえるのと宴会芸しか脳のない駄女神が。ちょっとはエリス様を見習え」
こいつがこの世界に来て遊び呆けている間にも義賊として神器を回収してるエリス様とコレなんて比べるべくもない。
「この私があの上げ底エリスより下だって言ったわね!目に物見せてやるわ!っていうわけで貸しなさいよそれ」
「やめろ!本当にお前が絡むとロクなことにならないから!はな…はなせぇ!」
「もうこうなったら!」
アクアが俺との取っ組み合いの中で力を込め始める。
なんでこいつはこういうときだけ頭が回るんだろうか。
「アクアさんストップ、そんなに魔力込めたら暴走するから!」
「アクア、一旦落ち着け。貸してやるから落ち着け。本当にやばそうだから」
「ついに負けを認めたわね。いいわ見てなさい、私がここに貴重で金目の物を召喚してみせるわ」
「いいから魔力を流すのやめろこのバカ!!」
「アクア落ち着け、ここはカズマやクリスの言うことを聞いたほうがいい」
「カズマさんやクリスこそバカじゃないの?こういうのはね、魔力を込めれば込めるだけいいのが出るもんなのよ!」
「ちょ、本当に危ないですからやめてくださいアクア先輩!」
「えっクリス今先輩って」
そう言った瞬間、神器が光り始める。
「まあいいわ。さあ、来なさい。貴重でお金になりそうな物!若しくは日本酒!」
そして、光は部屋を包み込んだ。
なんかこの流れ見たことあるぞ、アクアが調子になった時は本当にロクでもないことが起こる。
きっとなんかとんでもないものが召喚されるに違いない。
「は?」
「…さあ来なさい金目の…はえ?」
「あああああもおおおおお!」
「おいカズマ?これは一体どういう…」
「よし、さっきから私に喧嘩を売っているのなら買おうじゃないか!…は?」
「なんですか!?やるんですか!?いいですよ、王族は強いんですから!」
光が止んだ後、目に映ったのは高層ビル群。
きっとここは日本だろう。なんかビルとかボロボロになってるし、そこかしこに壊れた車やらが転がってたりもするけど…
「おいおい、これって逆に俺たちが召喚されたパターンなんじゃ…なんて事してくれたんだ、この駄女神!!」
「何よ!しょうがないじゃないの!こんなんになるなんて知らなかったんだから!」
「とりあえず謝れ!ここにいるみんなに謝れ!」
「ってカズマさん後ろ後ろ!!」
「はっ、騙されないぞそんな古典的な手に今更この俺が引っかかるとでも思ってんのかお前は!」
「いや、本当に本当だから!!」
「だからそんな手に今更引っかからないって、お前じゃあるまいし…ってなんだよ」
アクアに説教をしようとしてると俺の肩に何かの感触が…ってか今ベチャって音しなかったか?
「オ”オ"オ"オ"オ"」
そして振り向いた俺の前にはそのままの意味で腐った顔があった。
というかゾンビである。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!?」