遊戯王OCG’s─変態デュエリスト「古霊 真由美」の1日─ 作:レモンの人
遊斗「おい、ネタバレすんな!」
「セバス、デッキレシピの確認をしてくれ」
「ふむ……」
セバスにデッキレシピを確認してもらいながらオレは完成したデッキを一瞥した。
「よくここまで上達しましたね」
「何回セバスに手直しされたと思ってんだ全く…」
古霊さんが足繁く通うカードショップにて大会が近づいている事を知ったオレは、社交パーティに顔を出しつつも大会向けに最高のデッキを構築していた。
「(古霊さんの手は煩わせねぇよ……ガチデッキを使うクズ共はオレが潰してやる)」
「(遊斗様…最高に小悪党な顔をしております)」
****************
「みんな殺気立ってるわねぇ…」
「大会の賞品が大きいから仕方ないよ」
仕事終わりにカードショップに寄ると昨日以上に遊んでいる人達が殺気立っていた。それもその筈、大会の賞品は「店長が偶然手に入れた『定山渓温泉ペア2泊5食3万円分無料券』と『寝台列車ペア往復無料券』」だからだ。私も当然狙っている。遊斗君が優勝すれば間違いなく私と2人きりで旅行しようと迫ってくるに違いない。絶対に阻止して優勝しないと!
「やぁやぁ、元気かな諸君!」
「(噂をすれば…!)」
やって来た遊斗君はいつものカウボーイスタイル。だが、いつも以上に根拠の無い自信に満ち溢れていた。
「ハハハ!なんだいなんだい!みんな揃って【SPYRAL】かい?全く、脳味噌が空っぽな奴はいいな!同じ強いデッキにすれば勝てると思い込んでるんだからな!」
煽る煽る。SPYRAL同士のミラーマッチをしている中学生達の間に割って入るなり煽りまくっていた。一体何のつもりなのかしら…?
「いい加減にしろよ遊斗!」
「ん〜?誰だっけ君?」
とここで小林君が我慢出来ずに遊斗君に噛み付いた。が、遊斗君はあくまでヘラヘラとした笑みを絶やす事はない。
「俺とデュエルしろ!俺が勝ったらお前は出禁だ!」
その言葉に「よく言った」とばかりにその場にいたみんなが殺気立った目で遊斗君を見た。なのに彼は平然としている。
「じゃあオレが勝ったらどうする?」
「……俺はSPYRALを使う。お前の安っぽいファンデッキなんかに負けはしない」
「そ、じゃあオレが勝ったら今大会の【SPYRAL】使用禁止な」
「ッ!?」
遊斗君…大きく出たわね。小林君も嵌められたみたい……というか、こういう状況を作る為に敢えてヒール役になったみたいね。
「で、いいよな?店長」
「お、おう」
「じゃあ始めようか!なぁに、オレが勝ったところでデッキを変えればいいだけの話だろ?色鮮やかになると思うぜ」
「ほざいてろ…!」
中央の席に座った遊斗君と小林君はそれぞれの思いを以って対峙した。互いにマットを敷いてデッキをセットする。
「かかっておいで」
「圧勝してやる!」
「「デュエル!!!」」
遊斗 LP8000
小林 LP8000
そして、デュエルが始まった。もしかしたら遊斗君のデュエルは見納めになるかもしれないから私は真剣にその様子を見ていた。
「先攻──」
「先攻後攻の権利は君に委ねるよ。」
「ッ…!なら俺は先攻を取る!」
遊斗君…SPYRAL相手に慢心してるけど大丈夫なの…?
「俺のターン!『SPYRAL─ジーニアス』を召喚!」
SPYRAL─ジーニアス 星1 ATK500
「ジーニアスが召喚・特殊召喚に成功した場合、デッキからSPYRAL GEARカードを手札に加える!俺が手札に加えるのは『SPYRAL GEAR-ドローン』!さらに魔法カード『機械複製術』を発動!自分フィールドの攻撃力500以下の機械族を対象とし同名モンスターをデッキから2体まで特殊召喚する!2体のジーニアスを特殊召喚!」
SPYRAL─ジーニアス 星1 ATK500
SPYRAL─ジーニアス 星1 ATK500
「ジーニアスの効果で俺は『SPYRAL GEAR-ビッグ・レッド』、『SPYRAL GEAR-マルチワイヤー』を手札に加える!さらに魔法カード『二重召喚』発動!このターン、通常召喚権をもう1つ得る!手札に加えた『SPYRAL GEAR-ドローン』を召喚!」
SPYRAL GEAR-ドローン 星1 ATK100
「このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、相手のデッキの上から3枚を確認し好きな順番でデッキに戻す」
「フフ…いいともお好きなように……」
遊斗君はデッキの上から3枚を裏側のまま抜き出し小林君に見せた。小林君はそれを弄ってからデッキに戻した。
「俺はドローンとジーニアスでリンク召喚!『SPYRAL─ザ・ダブルヘリックス』!」
SPYRAL─ザ・ダブルヘリックス LINK-2 ATK1900 リンクマーカー【左・下】
「ダブルヘリックスの効果発動!相手のデッキトップのカードの種類を当て、互いに確認。正解ならデッキまたは墓地からSPYRALを1体手札に加えるかこのカードのリンク先に特殊召喚する!宣言するのは魔法カード!」
「うん、『所有者の刻印』。当然正解だね」
「俺は『SPYRAL─グレース』を特殊召喚!」
SPYRAL─グレース 星6 DEF2800
「グレースの効果発動!デッキからSPYRAL MISSIONカードを手札に加える!『SPYRAL MISSION─救出』を手札に加える!さらに墓地のジーニアスの効果!SPYRAL─ダンディがフィールドに存在する場合に手札を1枚捨て、このカードを特殊召喚する!ダブルヘリックスはダンディとしても扱える為効果は機能する!」
SPYRAL─ジーニアス 星1 ATK500
「ジーニアスの効果で俺は『SPYRAL GEAR-ラスト・リゾート』を手札に加える!さらに、ダブルヘリックスとグレースで『電影の騎士ガイアセイバー』をリンク召喚!」
電影の騎士ガイアセイバー LINK-3 ATK2600 リンクマーカー【左・下・右】
「グレースの効果発動!このカードがフィールドから墓地へ送られた場合、デッキから『SPYRAL─ダンディ』と『SPYRAL RESORT』を手札に加える!」
「ガイアセイバーと蘇生していない方のジーニアスで『ファイアウォール・ドラゴン』をリンク召喚!」
ファイアウォール・ドラゴン LINK-4 ATK2500 リンクマーカー【上・左・下・右】
「ジーニアスの効果で墓地へ送った『SPYRAL MISSION─救出』の効果!このカードを除外し墓地のSPYRALを蘇生する!リンク素材にしたジーニアスをファイアウォールのリンク先に特殊召喚!」
SPYRAL─ジーニアス 星1 ATK500
「ジーニアスの効果で俺は『SPYRAL GEAR─エクストラアームズ』を手札に加える!そして、3体のジーニアスでリンク召喚!『トライゲート・ウィザード』!」
トライゲート・ウィザード LINK-3 ATK2200 リンクマーカー【上・左・右】
「リンク先のジーニアスが墓地へ送られた事でファイアウォールの効果発動!手札からモンスター1体を特殊召喚する!『SPYRAL─ダンディ』を特殊召喚!」
SPYRAL─ダンディ 星4 ATK1900
「さらにフィールド魔法『SPYRAL RESORT』を発動!1ターンに1度、デッキからSPYRALを手札に加える!俺は2枚目のダンディをサーチ!そして、手札のダンディの効果!カードの種類を宣言し相手のデッキトップを互いに確認。宣言した種類なら手札から特殊召喚する!デッキトップは魔法カード!」
「まぁ、所有者の刻印だよな」
「よって特殊召喚!」
SPYRAL─ダンディ 星4 ATK1900
「そして、ダンディ2体で『ダイガスタ・エメラル』をエクシーズ召喚!」
ダイガスタ・エメラル ランク4 ATK1800
「エメラルの効果発動!墓地の効果モンスター以外のモンスターを墓地から特殊召喚する!ガイアセイバーを特殊召喚!」
電影の騎士ガイアセイバー LINK-3 ATK2600 リンクマーカー【左・下・右】
「エメラルとガイアセイバーで2体目のファイアウォールをトライゲートの左側のリンク先に特殊召喚!」
ファイアウォール・ドラゴン LINK-4 ATK2500 リンクマーカー【上・左・下・右】
「装備魔法『SPYRAL GEAR─ビッグ・レッド』発動!墓地のSPYRALを特殊召喚しこのカードを装備する!ダブルヘリックスをトライゲートの右側に特殊召喚!」
SPYRAL─ザ・ダブルヘリックス LINK-2 ATK1900 リンクマーカー【左・下】
「さらに手札の『SPYRAL GEAR-ラスト・リゾート』と『SPYRAL GEAR─エクストラアームズ』をダブルヘリックスに装備!ラストリゾートの効果で装備モンスターは破壊されず、効果対象にならない。そして、エクストラアームズの効果で装備モンスターの攻撃力が1000アップし、装備モンスターが相手モンスターを戦闘破壊した場合、相手フィールドのカードを1枚選択しそのカードと共に除外する!俺はこれでターンエンド!SPYRAL RESORTの維持コストで俺は墓地のモンスター1体をデッキに戻す。ダイガスタ・エメラルをデッキに戻す!遊斗…突破出来るってんならやってみろ!」
「おぅおぅ、すげぇ盤面だ。追い込まれてる気分だぜ」
対する遊斗君はずっとヘラヘラ笑っている。全然読めない。でもこの盤面は厳しいわよ……2体のファイアウォールの効果で合計6枚ものカードがデッキに戻り、トライゲート・ウィザードの効果で毎ターンに1度カード効果を無効にし除外・相互リンク先モンスターの戦闘ダメージの倍化・毎ターンに1度カードを1枚除外する。そして、頑丈過ぎるダブルヘリックス……どう突破する気なの?
「確かに見た目は派手だね。ククク……ドロー!」
遊斗君は一切動じる事なくデッキトップの所有者の刻印をドローした。
「さて、マニュアル通りにしか動けない奴には相応の態度で応えてあげるよ。俺はダブルヘリックス、ファイアウォール2体をリリースして『ラーの翼神竜─球体形』をお前のフィールドに特殊召喚!」
「!?」
ラーの翼神竜─球体形 星10 ATK?
「たとえ無敵といえる盤面だろうが召喚コストにリリースされちゃあ意味ねぇよなぁ?ん〜?」
「ッ…!」
「さらに、魔法カード『所有者の刻印』を発動!この効果で俺はラーの所有権を取り戻す」
ラーの翼神竜─球体形 星10 ATK?
「ラーの効果を発動!このカードをリリースする事で手札またはデッキから『ラーの翼神竜』を召喚条件を無視して攻撃力4000のモンスターとして特殊召喚する!」
ラーの翼神竜 星10 ATK?→4000
「さらに魔法カード『融合』を発動!手札の『ラーの翼神竜─不死鳥』と『サクリファイス』を融合!いでよ!『ミレニアム・アイズ・サクリファイス』!」
ミレニアム・アイズ・サクリファイス 星1 ATK0
「ラーの翼神竜の効果、ライフを1000払い、フィールドのモンスター1体を破壊する!トライゲートを破壊!」
「クソッ…!?」
遊斗 LP8000→7000
「バトル!ラーの翼神竜でダイレクトアタック!!!」
小林 LP8000→4000
「この程度……!次のターンで──」
「次のターン?そんなのある訳ねぇだろ」
「!?」
「速攻魔法『神秘の中華なべ』。自分フィールドのモンスター1体をリリースしその攻撃力か守備力分のライフを得る!俺はラーをリリースして攻撃力分のライフを得る!」
遊斗 LP7000→11000
「ラーがフィールドから墓地へ送られた場合、このカードは墓地から特殊召喚出来る。いでよ!『ラーの翼神竜─不死鳥』!!!」
ラーの翼神竜─不死鳥 星10 ATK4000
「そんな………」
「オレに勝ちたきゃ……そんなコピーデッキとはおさらばするんだな。ラーの翼神竜─不死鳥でダイレクトアタック!!!」
小林 LP4000→0
嘘でしょ……あのフルスペックの【SPYRAL】相手にワンターンキルを決めちゃった………。
****************
「ははははは!!!さぁ店長!ルール変更を宣言しろ。高々とな!」
「えー今回の大会では【SPYRAL】禁止でーす!いぇーい!」
「店長ェ……」
軽い調子であっさりSPYRAL禁止令が言い渡される中、この大会の為にSPYRALを買い揃えた小・中学生は噎び泣き、たった今買ったばかりのデュエリストはがっくりと肩を落とした。
「ハハハ!残念残念!小早川もよく健闘したなぁ!」
「小林だよ……チクショウ…」
SPYRAL禁止令の原因となってしまった小林君は周囲からの憎悪の視線に耐え切れなくなり、【SPYRAL】を全部店長に売り払ってしまった。彼なりに責任を取ったつもりらしいがそこまでしなくてもいいのに………。
「小林…元気出せよ」
翔太君も流石に小林君を慰めていた。でも、賭けデュエルを挑んだ事自体が間違っていると思うんだけどな私。
「これで敵は殆ど消えた………後は最高の舞台で古霊さんと諸星…君達を打ち倒す!それがオレのこの戦いへの意気込みだ。生半可なデッキで戦いを挑むなよ……いいな!」
「遊斗君の覚悟…この胸に受け止めたわ。この大会…絶対勝つ!」
「小林君の分まで僕が戦うよ。遊斗、僕が絶対倒してやる!」
「気持ちはありがたいけど大会を私物化すんな〜!!!」
こうして、大会前日は終わった。恐らく、今からデッキ調整をし直すとなると出場者達のデッキの完成度は落ちる。必然的にファンデッキ慣れした私達が有利になるだろう。だからこそ、私は遊斗君に絶対勝つ。えぇ、勝ちますとも!!!
遊斗「ハハハ!デュエリスト諸君!オレ様、太陽 遊斗の参上だ!」
真由美「遊斗君、そういうキャラじゃないでしょ?」
遊斗「流石、よく分かってるね。きっとオレ達、相性が良い─」
真由美「いいからデッキレシピ見せなさい」
遊斗「へーい…じゃあ、今回はダミーとして用意した【サクリファイス〜不死鳥仕立て〜】の紹介だ。」
真由美「あれダミーだったの!?」
デッキ総枚数(40)
モンスター(20)
●ラーの翼神竜─不死鳥×1
●ラーの翼神竜×2
●ラーの翼神竜─球体形×3
●雷撃壊獣サンダー・ザ・キング×1
●海亀壊獣ガメシエル×2
●怒炎壊獣ドゴラン×1
●マンジュ・ゴッド×3
●捕食植物サンデウ・キンジー×2
●ミレニアム・アイズ・イリュージョニスト×2
●サクリファイス×3
魔法カード(20)
●イリュージョンの儀式×3
●儀式の下準備×2
●ツイン・ツイスター×2
●融合×3
●神秘の中華鍋×2
●サクリファイス・フュージョン×1
●所有者の刻印×2
●おろかな埋葬×1
●超融合×1
●簡易融合×2
●妨げられた壊獣の眠り×1
EXデッキ(15)
●スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン×1
●捕食植物キメラフレシア×2
●サウザンド・アイズ・サクリファイス×2
●ミレニアム・アイズ・サクリファイス×3
●No.23冥界の霊騎士ランスロット×1
●森羅の姫芽宮×2
●リンクリボー×2
●セキュリティ・ドラゴン×1
●デコード・トーカー×1
遊斗「今回は偽装してラーを採用した。本来ならもっとエグ〜いデッキなんだが、それは追々公開する予定だからよろしく」
真由美「趣味悪いわねぇ…」
遊斗「今回はSPYRAL対策でラーを採用したんだ。どうせオレを潰す為にSPYRALを使ってくる事は織り込み済みって奴さ」
真由美「なんでラーがSPYRAL対策になるの?」
遊斗「だってあいつら大量展開するだろ?どうせ相互リンクでロックを仕掛けてくるだろうから先攻譲ってやりたいだけやらせた後、決める」
真由美「うわぁ…」
遊斗「そこをリリースのコストにして除去してかつ攻め切れるのはラーしか居なかった。それが理由だ。他に適任がいるか?」
真由美「居ないわね…」
遊斗「さて、オレはセバスと一緒にデッキの再調整をするからここで帰るわ。じゃあな!」
真由美「私もうかうかしてられないわね!じゃあ今日はここまで!バイバイ♪」