遊戯王OCG’s─変態デュエリスト「古霊 真由美」の1日─ 作:レモンの人
遊斗「ちょっ!?」
嘘です
「おはよう、翔太君」
「おはよう、真由美さん……やっぱり照れくさいッス」
「駄目よ!ッスは付けない約束でしょ?」
そんな事を言いながら起床した私達は互い違いに風呂に入り汗を流した。結局、互いにダブルベッドで眠れず壮絶な譲り合いの末にどっちもベッドを境にして翔太君が用意した寝袋に入って床で寝てしまった。もっと前に進んでもよかったのかもしれないけど…全年齢版はここまで!
「よーし!今日は海行ってデュエルして帰るわよー!」
「やっぱりデュエルはするんだ」
「この日の為にとデッキを2種類作ったのよ?使わずじまいなんて事はしないわ!」
必要な荷物だけエコバッグに投入したり金庫に預けたり見えにくい場所に隠したりした私達はそれぞれに別の場所で着替えをした。
「じゃーん!どうかしら?」
「すごく似合ってるよ!(安物で正解だったんだな…)」
私が選んだのは所謂紐ビキニという物で白を選んだ。
「なんか…僕と釣り合うかな……」
対する翔太君は黒にデフォルメされた流れ星がプリントされたサーフパンツだった。身長低いけど…鍛え過ぎずだらけずの中々良い体に幼さの滲み出た海パン…ぶっちゃけ好みです!
「ガン見しないでくれよ」
「あっ///ごめんね!じゃあ行こうよ!」
「夏の海にブーツは違うと思うけどなぁ…」
「そうね…盲点だったわ……トホホ…」
完全に舞い上がって忘れていた私だったが、ドアを開けるとそこには一足のサンダルがあった。高めのピンヒールが入った結構オシャレなサンダル……。
「(ありがとう!セバスティアンさん!!!)」
誰もいない廊下で手を合わせた私はサンダルを回収し履いた。履きやすく私にピッタリに調整されていた。ここもゾッとするのよねぇ…何で知ってるの?
「行こう!翔太君!」
取り敢えず、翔太君と一緒に私は外へ出た。
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日焼け止めもないし、正直焼く覚悟で来ていたけど…外へ出てみると思っていたほど日差しは強くなく、快適な環境になっていた。これも遊斗君の計算通りなのか…。
「そういえば、セバスティアンさんと遊斗君がまだね」
「あー!みんな!待ってたぜ!」
遅れて遊斗君とセバスティアンさんがやって来た。遊斗君は何故かダイビング用のスーツ、セバスティアンさんは色気漂う黒いパレオだった。
「うーん……古霊さんそれ選んだのか〜…もしかしてと思ったんだけどやっぱりかー……」
私の水着姿を凝視した彼は何故が落ち込んでいた。何でだろ?
「え?これそんなに変なの?」
「はい、近くのスーパーマーケットに売っていた3000円の水着です」
「え……」
マジですか〜……完全にブランド物だと思ってましたわー…。私って絶対アブラガニとタラバガニを間違える人間ね。格付け最底辺。
「今からでも遅くないですのでお着替え致しませんか?」
「いいのいいの!身の丈に合う服を着るのが一番よ」
「すみません…真由美さんはこういう人なんですよ」
呆れ返る私以外のみんなに私は口笛を吹きながらエコバッグからビニール風船を取り出し、膨らませた。取り敢えず…話を逸らそう。
「せっかくだし、ビーチバレーでもやりましょう!」
「賛成〜!オレ古霊──ふぎょっ!?」
私に早速絡もうとした遊斗君とセバスティアンさんが羽交い締めにした。
「申し訳ありません。念入りに発情しないようにしたのですが…」
「気にしないで!…あ、そうだ!セバスティアンさん!私とやりましょ!」
「私ですか?」
「真由美さん!?」
これは女の子同士でチームを組むべきなんじゃないのかなぁ〜…と思っていたが、セバスティアンさんはバッテン印のジェスチャーをした。
「私は遊斗様のお世話がありますので今回は遠慮させていただきます」
「分かったわ。翔太君!一緒にやるわよ!」
「よし!絶対負けないぞー!」
こうして、私&翔太君 VS 遊斗君&セバスティアンさんの構図が出来上がった。一応、学校で習った経験から少しくらいは動けるかなぁ…と思ってたんだけど……。
「そらもう1発ッ!」
「きゃっ!?」
「申し訳ありません。負ける訳には参りませんので」
「くっ───!?」
ぶっちゃけビーチバレーなんて楽しむ余裕もクソもなかった。だって遊斗君もセバスティアンさんも大人気なくガチプレーで1点もくれないんだもん!正直、球の速度が速過ぎて飛んで行ったボールを拾いに行くので必死だった。
「(真由美さんの乳揺れを見る余裕なんて無かったッス…)」
「(セバス、手加減しろよ!真由美さんの乳揺れ見れなかっただろうが!)」
事件があったのは……何故か不満げな男性陣を一瞥し、人生で一番と思えるくらい強烈なサーブを放った時だった。遊斗君が衝撃を抑え切れず胸にボールが直撃し……
「あ……ヤベ………」
次の瞬間、遊斗君は後ろを向いた。セバスティアンさんも何故か慌てて遊斗君のスーツに手をかけた。そして、私は翔太君によって後ろを向かされた。
「なんで!?」
「良いから、遊斗の尊厳に関わるから見ないで欲しいんだ」
「?」
よく理解出来ないまま私は翔太君に手を引かれてビーチバレー用のコートを出た。
******************
「あ…危なかった」
「諸星様には御礼を差し上げなければなりませんね」
何とか処理が終わったオレは、セバスに感謝の言葉を告げた。
「仕事ですから」
セバスの無表情な顔からはその感情を読み取りにくい。でも、心配してくれている事だけは分かった。
「では、直しますので…じっとしていてください」
「キツイくらいでいい」
いつまでこの嘘が隠し通せるのだろうか……そんな恐怖心だけがオレの心の中を蝕んでいた。オレとセバス以外に唯一オレの秘密を知っている諸星………オレの秘密をアイツに見られた時…最初は口封じをしてやろうと思った。だが、諸星は今まで秘密を一緒に守ってくれた…古霊さんにもまだ言っていないようだ。
「調整が終わりました」
「ご苦労。さて、あの2人に何か埋め合わせをしてやらない……と…」
そう言って移動しようとした時、セバスがオレの右手を手に取り、それを自分の胸に押し当てた。掌がセバスの柔らかな胸に沈み込み……心音が手を伝って聞こえてきた。
「遊斗様」
「何だよ」
「私も遊斗様も同じ心臓が脈打っております。血も同じです……貴方は決して怪物ではございません」
「………あぁ、何せこの企画はオレの秘密を伝える為なんだからな…」
「どうか無理はなさらないでください。遊斗様は旦那様の子…何かあればこのセバス…腹を切らねばなりません」
「あぁ、だから頑張って伝えるよ」
掴んでいた手の力が緩み、オレは1人…2人を追った。セバスの不安げな顔がまだ頭の中に残っていた。
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「こんなの海外ドラマでしか見た事ないわ!凄いわね!」
ビーチチェアに仰向けに寝転がり、ビーチパラソルで日差しを避ける…こんなの今までやった事が無かった。
「これでマズイ焼きそばがあればサイコーだけどね」
「そうねぇ…あとは甘じょっぱい味噌がかかったおでんとか!」
何故かカラフルなお酒を飲む発想にならない私達はビーチチェアで寛いだ。
「悪い!遅れた」
「遊斗、大丈夫か?」
「あぁ、心配すんな」
男同士で何やらやり取りした後で、遊斗君はスタッフに何やら電話していた。なるほど、色々アイテムを装備出来るのはダイバースーツの利点ね。
「折角だし、豪華なランチを食べるとしよう。遠慮はしなくていい」
「では私が調理を───」
「セバスは切り分けを頼む」
「……」
あ、セバスティアンさん…しゅんとした。
「お待たせ致しました」
「サンキュ、チップは弾ませてもらうぜ」
遊斗君はバーベキューセット・テーブル・包丁・俎・クーラーボックスを持って来たスタッフ達にチップを渡していた。
「親父の方針でね…『アメリカ人の男はバーベキューを取り仕切られる人間になれ』ってね。今日はオレが用意した肉を味わってもらうよ」
クーラーボックスを開けると、分厚い牛肉の塊や野菜が入っていた。青空の下でバーベキューを食べるなんて素敵じゃないの。
「そいつはアメリカ産だけど、個人契約した酪農家から買い付けている良質なランプ肉なんだ。まぁ、食べてみりゃ分かる。和牛にも決して劣らない味を保証するよ」
「本当か〜?」
「オレを疑うってのか!?」
軽い口論になっている間に私とセバスティアンさんは野菜と肉を切っていた。確かに…従来のアメリカ産のイメージとは違って柔らかくてすぐに包丁が入る。
「遊斗様はバーベキューと言っていますが、実質ステーキです。遊斗様の方針で分厚く切らせていただきます」
「一口サイズの方がいいのに」
「“日本のステーキは貧相過ぎる”との事で本場のステーキを食べさせたいそうです」
「なるほど…」
「サンキュ、セバス!」
セバスティアンさんが分厚く切ったステーキを遊斗君はブッチャーナイフで突き刺し、オリーブオイルと刻んだニンニクを炒めた鉄板の上に移動させた。すぐ隣では無塩バター・オリーブオイル・塩などを混ぜたタレ(?)のような物を作っており、如何に本気かが分かる。
「まぁ、見てろよ」
凄く良い香りが広がる中で遊斗君は真剣な眼差しで肉を焼いていた。しばらく待ってから、遊斗君特製のステーキが焼きあがった。5分程寝かせた後…
「本物のステーキってのは素材そのままの旨味を味わうものなんだけどな、オレは自信無いから味を付ける主義だ。よし、後はこの溶かしバターソースをかけて…完成だ!」
「美味しそう…!」
「セバス、切り分けておけ」
「畏まりました」
セバスティアンさんが手際よくステーキを切り分け、サイコロサイズにして紙皿に移した。もう食べられるという事かしら?
「どうぞ、熱々の内にお召し上がり下さい」
「いただきまーす!」
ご丁寧に箸も用意してくれていたので早速ステーキを口に運──
「……私…生まれて初めてアメリカ産の肉が美味いって思ったわ」
「美味すぎて死にそうッス」
語尾に『ッス』は……まぁいいか。その内慣れるでしょ。
「野菜も焼けてるから食べろ」
「えー…食いたくないんだけど」
「あ?野菜も食わないと嫌な体臭が出たり、健康にも悪いんだぞ!」
「たまにくらいいいだろ!?」
何やってるんだか。仲良く喧嘩してなさいな。あ、美味しそうに焼けたニンジン…食べようかな。
「古霊さんを見ろ、文句言わずに食ってるぞ!」
「バターソース使っていいかしら?」
「いいぜ。使えよ」
「くー…っ!僕も食べてカッコイイとこ見せなきゃ!」
「その調子だ!ピーマンも食えよ!」
こうして、昼はワイワイ騒ぎながらステーキと野菜を食べた。何故遊斗君が尊大な態度を取っていたのか聞いてみたところ、セバスティアンさん曰く「ピットマスターだから」。ナニソレイミワカンナイ。
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「楽しかったわね!」
「何か…昼食べたらもうゆっくりしたくなりますね」
結局、お昼を食べたら休みたくなってしまった私達は部屋に戻り、シャワーを浴びていつもの服に着替えた。
「真由美さん、もう帰る時間になってきたね」
「あっという間だったわね…」
荷物を片付けながら、私達はデュエルの用意も始めていた。
「あと残されたもう1個のデッキか…」
「こっちも水属性だけど一味違うわよ」
シャッフルしながら、私はたっぷりと自信を滲ませた。このデッキこそ本命。ネタに走った…色々とすごいデッキ。
「じゃあ、この部屋ともお別れって事で!ラストデュエル行きますか!」
「負けないぞ!」
「「デュエル!!!」」
真由美 LP8000
翔太 LP8000
「先攻!」
「後攻!」
「「じゃんけんぽん!!!」」
「先攻はもらったわ!私の先攻!」
いきなり引けたわね…!
「スタンバイフェイズと同時に速攻魔法カード『手札断殺』発動!互いに手札を2枚墓地へ送り、その後2枚ドローする!さらに、墓地に送った『黄泉ガエル』の効果発動!スタンバイフェイズ時に自分フィールドに魔法・罠カードが存在しない場合、墓地から特殊召喚出来る!」
黄泉ガエル 星1 DEF100
「このカードは魚族・水族・海竜族が召喚・特殊召喚に成功した時、手札から特殊召喚出来る!『シャーク・サッカー』を特殊召喚!」
シャーク・サッカー 星3 DEF1000
「召喚条件はレベル1モンスター1体!黄泉ガエルをリンク素材に『リンクリボー』をリンク召喚!」
リンクリボー LINK-1 ATK300 リンクマーカー【下】
「前と変わり映えしないような………」
「それはどうかしら?私はリンクリボーとシャーク・サッカーをリリースして『ビッグ・ホエール』をアドバンス召喚!」
「ビッグ・ホエール!?」
ビッグ・ホエール 星9 ATK1000
「ビッグ・ホエールの効果発動!このカードがアドバンス召喚に成功した時、このカードをリリースして発動できる。デッキからレベル3の水属性モンスター3体を特殊召喚!私は『水精鱗─ネレイアビス』・『キラー・ラブカ』・『オイスターマイスター』を特殊召喚!」
水精鱗─ネレイアビス 星3 DEF2000
キラー・ラブカ 星3 ATK700
オイスターマイスター 星3 ATK1600
「ただし、この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される」
「モンスターが増えた…!」
「召喚条件は水属性モンスター2体!オイスターマイスターとキラー・ラブカでリンク召喚!来い!『マスター・ボーイ』!」
マスター・ボーイ LINK-2 ATK1400 リンクマーカー【左下・右下】
「まだよ!オイスターマイスターの効果発動!オイスターマイスターは戦闘以外の方法でフィールドから墓地へ送られた時、オイスタートークンを特殊召喚するわ!」
オイスタートークン 星1 DEF0
「マスター・ボーイが存在する限り、私のフィールドの水属性モンスターの攻守は500ポイントアップする!」
マスター・ボーイ ATK1400→1900
水精鱗─ネレイアビス DEF2000→2500
オイスタートークン DEF0→500
「このカードは通常召喚できず、自分の墓地の水属性モンスターが5体の場合のみ特殊召喚できる!『氷霊神─ムーラングレイス』を特殊召喚!」
「げぇっ!?」
氷霊神─ムーラングレイス 星8 ATK2800→3300
「このカードが特殊召喚に成功した時、相手の手札をランダムに2枚選んで捨てる!」
「戦線復帰とアイス・ベルが…!」
やった!ピンポイントで落とせた!
「続けて!ネレイアビスとオイスタートークンで2体目のマスター・ボーイをリンク召喚!」
マスター・ボーイ LINK-2 ATK1400→2400 リンクマーカー【左下・右下】
マスター・ボーイ ATK1900→2400
氷霊神─ムーラングレイス ATK3300→3800
「ネレイアビスがフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。自分はデッキから1枚ドローし、その後手札を1枚選んで捨てる。この瞬間、墓地へ送られた『水精鱗─アビスグンデ』の効果発動!このカードが手札から墓地へ捨てられた場合、自分の墓地からアビスグンデ以外の水精鱗と名のついたモンスター1体を選択して特殊召喚できる!墓地のネレイアビスを特殊召喚!」
水精鱗─ネレイアビス 星3 DEF2000→3000
「カードを1枚伏せてターンエンド」
終わってみれば手札こそ使い切ったものの、翔太君の手札を2枚削り・モンスターを4体展開し、伏せカードも1枚用意出来た。中々の盤面だ。
「僕のターン、ドロー!」
「そして、罠カード『水霊術─「葵」』を発動!自分フィールドの水属性モンスター1体をリリースして相手の手札を確認し1枚選んで捨てる!ネレイアビスをリリースして…っと。さ、手札を見せて♪」
「………っ!」
ふむふむ……
●SRベイゴマックス
●SRタケトンボーグ
●WW-グラス・ベル
●ハーピィの羽根帚
か……。
「じゃ、SRベイゴマックスを捨ててね♪」
「あ…あんまりだぁ……」
「さらに、ネレイアビスの効果発動!デッキからカードを1枚ドローし、その後1枚を捨てる(……これは…!)」
これで打つ手の殆どは削った。後は最後の悪足掻きをするしか無い。
「僕はまだ諦めない!チューナーモンスター『WW-グラス・ベル』を召喚!」
WW-グラス・ベル 星4 ATK1500 チューナー
「グラス・ベルの召喚・特殊召喚に成功した時、デッキからグラス・ベル以外のWWを手札に加える。僕は『WW-スノウ・ベル』を手札に加える。さらに!タケトンボーグは、自分フィールドに風属性が存在する場合に手札から特殊召喚出来る!」
SRタケトンボーグ 星3 ATK600
「まだまだ!手札のチューナーモンスター『WW-スノウ・ベル』は自分フィールドに風属性モンスターのみが2体以上存在する場合に特殊召喚出来る!」
SRスノウ・ベル 星1 ATK100 チューナー
「レベル3のタケトンボーグにレベル4のグラス・ベルをチューニング!シンクロ召喚!『WW-ウィンター・ベル』!」
WW-ウィンター・ベル 星7 ATK2400
「ウィンター・ベルの効果発動!自分の墓地のWWモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターのレベル×200ダメージを相手に与える!グラス・ベルを選択し800ダメージを与える!」
真由美 LP8000→7200
「レベル7のウィンター・ベルにレベル1のスノウ・ベルをチューニング!シンクロ召喚!『クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン』!」
クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン 星8 ATK3000
「ムーラングレイスさえ破壊出来ればまだチャンスはある!バトル───」
「この瞬間、墓地から罠カード発動!『仁王立ち』!」
「え?そんなカードいつ………!」
回想───
真由美「スタンバイフェイズと同時に速攻魔法カード『手札断殺』発動!互いに手札を2枚墓地へ送り、その後2枚ドローする!」
回想終了──
「あの時か……!」
「このカードは墓地から除外する事でモンスターの攻撃対象を1体に固定させる事が出来る!私は攻撃対象をメインモンスターゾーンのマスター・ボーイに変更!」
「ならマスター・ボーイを攻撃!」
「さらに墓地から『キラー・ラブカ』の効果を発動!このカードを墓地から除外する事でモンスター1体の攻撃を無効にする!」
「させるか!クリスタルウィングの効果発動!1ターンに1度、モンスター効果を無効にし破壊する!」
真由美 LP7200→6600
氷霊神─ムーラングレイス ATK3800→3300
マスター・ボーイ ATK2400→1900
「うっ……!でも、マスター・ボーイの効果発動!このカードが戦闘・効果で破壊された場合、自分の墓地の水属性モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを手札に加える!私はビッグ・ホエールを手札に加える!」
「くっ……、今さっき墓地へ送られたカードは『ブレイクスルー・スキル』。って事は……」
「お仕置きの時間よ!」
私は腰に手を当て渾身のドヤ顔を披露した。
「カードを1枚伏せてターンエンド…」
「私のターン!ドロー!この瞬間、墓地の黄泉ガエルの効果発動!さらにチェーンして墓地のブレイクスルー・スキルの効果発動!このカードを除外する事で相手モンスター1体の効果をエンドフェイズまで無効にする!」
「クリスタルウィングが…!」
「さらに、黄泉ガエルの効果を処理し墓地から特殊召喚!」
黄泉ガエル 星1 DEF100
「魔法カード『サルベージ』を発動!墓地の攻撃力1500以下の水属性モンスター2体を手札に加える!私は『水精鱗─ネレイアビス』と『水精鱗─アビスグンデ』を手札に加える!さらに、サルベージで手札に加えたネレイアビスを召喚!」
水精鱗─ネレイアビス 星3 ATK1200→1700
「召喚条件は効果モンスター2体以上!そして、マスター・ボーイはリンク素材2体分とする事も出来る!マスター・ボーイとネレイアビスでリンク召喚!『デコード・トーカー』!」
デコード・トーカー LINK-3 ATK2300 リンクマーカー【上・左下・右下】
氷霊神─ムーラングレイス ATK3300→2800
「さらに、ネレイアビスがフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。自分はデッキから1枚ドローし、その後手札を1枚選んで捨てる。この瞬間、墓地へ送られた『水精鱗─アビスグンデ』の効果発動!このカードが手札から墓地へ捨てられた場合、自分の墓地からアビスグンデ以外の水精鱗と名のついたモンスター1体を選択して特殊召喚できる!墓地のネレイアビスを特殊召喚!」
水精鱗─ネレイアビス 星3 ATK1200
「召喚条件は効果モンスター2体以上!そして!デコード・トーカーはリンク素材3体分とする事が出来る!デコード・トーカーとネレイアビスでリンク召喚!来い!『トポロジック・ボマー・ドラゴン』!」
トポロジック・ボマー・ドラゴン LINK-4 ATK3000 リンクマーカー【上・左下・下・右下】
「さらに魔法カード『ミニマム・ガッツ』を発動!自分フィールド上のモンスター1体をリリースし、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターの攻撃力はエンドフェイズ時まで0になる。このターン、選択したモンスターが戦闘によって破壊され相手の墓地へ送られた時、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手ライフに与える!黄泉ガエルをリリース!」
「しまった!?」
クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン ATK3000→0
「バトル!トポロジック・ボマー・ドラゴンでクリスタルウィング・シンクロ・ドラゴンを攻撃!《必滅のプロミネンス・ストリーム》!!!」
「うわっ!?」
翔太 LP8000→5000
「さらに、トポロジック・ボマー・ドラゴンが相手モンスターを攻撃したダメージ計算後に発動する。その相手モンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える!」
翔太 LP5000→2000
「そして!ミニマム・ガッツの効果により追加で3000ダメージよ!」
「負けた〜!!!」
翔太 LP2000→0
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荷造りを終え、外へ出た私達は遊斗君とセバスティアンさんが見送りで待ってくれていた。
「今回は本当にありがとう。いい経験が出来たわ!」
「遊斗、ありがとな!」
「ま、オレもちょっとはカッコイイところを見せられたかな〜って思ったが…ホントは感謝してるんだぜ?」
「え?」
遊斗君はポリポリと頬を掻くと、照れた。と…ここでセバスティアンさんが真面目な表情をした。シリアスタイムらしい。
「遊斗様は御二方のおかげで変わられました。日本へ来た時の遊斗様はしきたりと欲望に満ちた社交界から逃げかなり怯えていました。権力と美貌を生かし、己を偽って常に強者のフリをしていました……」
「おい、セバス…!」
遊斗君が何かを止めようとするのをセバスティアンさんは手で制した。
「諸星様は既に御存知なので、古霊様に真実を告げましょう。遊斗様は今日の為にかなり勇気と覚悟を決めて御二方を招待しました。が、やはり遊斗様がヘタレましたので私が代わって申し上げます。この真実はかなり深刻なので遊斗様のお言葉を聞いた時…私は幾度も問いました。『それで良いのか』と……」
「あーもう!勿体ぶらないでシャキッと言いなさいよ。こういう空気苦手なのよ私…」
何か嫌な予感がしつつ、私は翔太君の不安げな表情を一瞥した。恐らく…そうとうヤバイ話なのだろう。不安過ぎてドキドキする……。セバスティアンさんの小さな唇が開き、言葉が紡ぎ出された。
「太陽 遊斗は『半陰陽』と呼ばれる身体障害を抱えております」
「……?」
「あーもう!言葉じゃ分かんないなら…!」
遊斗君はそう言うと、背中をゴソゴソと弄り…直後。
「えっ…?」
遊斗君の胸が急に膨らんだ。それじゃ…まるでコルセットか何かで押さえつけてたみたいじゃない……?
「オレは男でもあり女でもあるって事だ!!!いい加減気付けよ!」
遊斗君が大声で叫んだ。顔は羞恥と悔しさで歪んでいる。そうとうな勇気を出して私に打ち明けてくれたのだろう。私は大きく溜め息を吐くと言葉を返した。
「………で?」
「で?……って!」
「それがデュエルにどんな影響を及ぼすの?遊斗君のデュエルタクティクスにはいつも驚かされてるし、奇想天外な発想…私大好きよ?でも、そこに半陰陽だっけ?そんなの関係無いじゃない」
「なっ…!オレがこの日の為にどんだけ緊張したか知ってんのか!?オレ…怖かったんだぞ!心は男なのに体の9割は女なんだぞ!この体を知られたくなくてオレは…十何年間もの人生を純粋な男と偽って生きてきたんだ……あぁ!だから体育の授業なんて賄賂使って受けないよう工作したし、着替えをする授業は一切出なかった!だからオレは逆らえば恐ろしい男を演じ続けた!……バレるのが怖くて…」
なるほど…全部繋がった。遊斗君がテンプレな金持ちチャラ男を演じていたのも…極神皇ロキを『化身』と言ったのも…やたら肌を隠していたのも……。
「でも、そんな事で私が拒絶すると思った?」
「………」
「勿論、貴方の愛は受け取れないわ。私は翔太君を愛してる…でも、私は貴方のデュエリストとしての姿勢は尊敬してる。それでいいじゃない!いつものまんまよ?遊斗君は遊斗君!私に絡んで飄々としてるいつもの遊斗君でいなさい」
「……ははは、とんだデュエル馬鹿だ。頑張って告白したオレが阿呆みてぇだ…」
「だから言ったでしょう?大丈夫と」
「言ってねぇよセバス!お前心配してたろうが!!!」
「「ハハハハハ!!!」」
まるで夫婦漫才みたいな会話に、私と翔太君はお腹を抱えて2人の痴話喧嘩を笑った。遊斗君の顔からはいつも表情に混じっていた負の感情は消えて無くなっていた……。
この2日間…本当に楽しかったわ!ありがとう!二人共!
遊斗「えー…改めてよろしく〜…」
真由美「改めてよろしくね、遊斗“ちゃん”♪」
遊斗「うがあああああああ!!!幼少期のトラウマがぁああああああああ!!!」
真由美「冗談よ、おっぱいついてよういまいと遊斗君は遊斗君よ♪ね?」
翔太「そうそう、あっても無くてもデュエルに関係ねーよ」
遊斗「……だよな。よぉし!今日はオレがデッキレシピを紹介しよう!幸い、このデッキタイプは見た事があるしな」
デッキ総枚数(40)
モンスター(22)
●ビッグ・ホエール×3
●氷霊神─ムーラングレイス×1
●水精鱗─ディニクアビス×2
●水精鱗─ネレイアビス×3
●水精鱗─アビスグンデ×2
●キラー・ラブカ×1
●オイスターマイスター×2
●シャーク・サッカー×3
●鬼ガエル×3
●黄泉ガエル×2
魔法(14)
●手札断殺×2
●サルベージ×3
●貪欲な壺×1
●浮上×2
●ワン・フォー・ワン×1
●おろかな埋葬×1
●死者蘇生×1
●簡易融合×2
●ミニマム・ガッツ×1
罠(4)
●水霊術─「葵」×2
●仁王立ち×1
●ブレイクスルー・スキル×1
EXデッキ(15)
●テセウスの魔棲物×2
●白闘気白鯨×1
●レッド・デーモンズ・ドラゴン×1
●白闘気海豚×1
●瑚之龍×1
●ヴァレルロード・ドラゴン×1
●トポロジック・ボマー・ドラゴン×1
●デコード・トーカー×2
●マスター・ボーイ×3
●プロキシー・ドラゴン×1
●リンクリボー×1
遊斗「基本は水精鱗の動きで展開する水属性ビートダウンデッキだが、このデッキの魅力は何と言っても場持ちの良さだ。黄泉ガエルは毎ターンにリンクリボーへと変化出来るし、ビッグ・ホエールさえ手札に加われば場持ちの良さを生かして一斉展開しリンク召喚で叩き伏せる!」
真由美「水属性の枚数を調整出来るからピンでムーラングレイスを入れているわ。上手く噛み合えばハンデスで相手を妨害出来るの」
翔太「なるほど…テセウスの魔棲物を入れる事でリンク召喚とシンクロ召喚にも対応出来るようにしたんだね」
真由美「そうよ、伏せカードとして伏せるカードを少なくしたから防御面は落ちたけどモンスターで守っていけば1発逆転もあり得るっていうのがこのデッキの魅力かな?」
翔太「ある程度実戦能力も有してるっていうのがポイントだね」
真由美「うん!(言えない…本当は【シャーク・ドレイク】にしようとしていたなんて絶対言えない…!)」
遊斗「さってと、オレはこの後スタッフの皆と打ち上げに行く事になってるからここらで帰るよ。じゃあな!」
真由美&翔太「「バイバーイ!」」