ゴクウブラックが第四次聖杯戦争に喚ばれてみた (タイトル命名 ゴワス様)   作:dayz

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金ピカや征服王と態度のデカさで競ってみた

「双方武器を収めよ! この勝負、余が預かる!」

 

 巨大なチャリオットと共に突然現れてそう言い放った大男に対して、ランサーは勿論さしもののセイバーも唖然とした表情を見せた。

 

「余の名は征服王イスカンダル! この度はライダーのクラスを得て現界した!」

 

 チャリオットの上に仁王立ちした大男が、どこか楽しそうに自らの真名とクラスを名乗る。余りの事にその場にいる全員が沈黙した。その後一番早く再起動したのはチャリオットの中にいた小柄な少年だ。

 ライダーのマスターらしきその彼は、泣きながらライダーに勝手に真名をばらした事に対して抗議していたが、ライダーはデコピン一つで彼を黙らせると再びその場にいるサーヴァント達に向き直った。

 

「で、だ。わざわざ余がこうして姿を現し真名も明かしたのはお主らを勧誘するためよ」

 

「勧誘だと?」

 

 ランサーが不機嫌そうに聞き返す。それに対してライダーはうむと楽しげに頷いた。

 

「我らは聖杯を巡って相争う間柄。……しかしそれはそれとして古今東西の英雄達と顔を合わせる機会なぞ早々来ない。だからこそ戦の前に尋ねたいのだ。うぬらの願望を。その重みを。その願いが我が天地を喰らう大望に比しても尚、重みがあるものなのか―――」

 

「その無駄に仰々しい言い方をやめろ。要点を言え」

 

 やはり不機嫌そうになったセイバーが、苛立ちながらライダーの言葉を遮る。

 セイバーの後ろにいたアイリスフィールはその言葉を聞いて、それに対しては貴方が言えた事じゃない、と思ったがあえて口には出さないでおいた。言っても多分無駄だからだ。

 よく見るとランサーですらアイリスフィールと似たような表情をしている。思う所は皆一緒なのだろう。

 そんな2人を尻目にライダーはうむ、と頷くと威厳はそのままに何処か馴れ馴れしい口調に変わった。

 

「まあ、わかりやすく言うとだな。要は余に聖杯を譲り、余の配下に下らんか?さすれば余はうぬらを朋友として迎え入れ、共に世界を征服する喜びを分かち合う所存である!」

 

 再び沈黙が降りる。

 しかし今度の沈黙は先程の混乱による沈黙ではなく、敵意が混じった沈黙だった。

 まず最初にランサーが口を開いた。

 

「己の真名を明かしてまでのその態度はある意味感服するぞライダー。だが俺は聖杯と勝者の栄誉を今の主に捧げると心を決めている。今更寝返ることなどありえない」

 

「うーむ。ランサーは駄目か。じゃあセイバーよ、お前はどうだ……」

 

 ぼりぼりと頭を掻きながら次はセイバーとばかりに視線を向けると、ライダーのセリフはそこで途切れた。

 彼の視線の先には絶対零度の眼差しになったセイバーの顔があった。

 無茶苦茶怒っているというのが一目瞭然だった。

 

「ええと……。セイバーよ。お前さんも駄目っぽい?」

 

「当然だ。何を言い出すかと思えばまさしく時間の無駄だったな。貴様の矮小な願いと引き換えにこの私の崇高な望みを捨てよとほざき、あまつさえ私に配下になれとうそぶくか。それだけで万死に値する罪だ」

 

 だがライダーはそのセイバーの罵倒よりも、もっと別のところに気を取られたようだ。

 

「ほう。我が世界征服の夢を矮小と呼ぶか。ではセイバーよ。ではお前の聖杯にかける願いは何だ? 余の野望を矮小扱いするなら、さぞやお前の願いはでかいんだろうな?」

 

 わかりやすい挑発だが、セイバー相手には充分だった。

 自分の事を語ることが機会が巡って来たせいか、先程までと違ってあっという間に上機嫌になって嬉々として語り始めた。

 

「無論。我が望みは正義の執行。永遠の理想郷の建設。決して壊れることのない神の楽園。その偉業を成し遂げた時、私はこの世で唯一の絶対神となって理想郷となった宇宙を永遠に支配するのだ」

 

「ほーう! 宇宙に絶対神と来たか! こりゃまたスケールがでかい。なるほどのう~。そんな目的があったんじゃ、むしろ余は商売敵になってしまうわけだ」

 

「自惚れもいい加減にしろ。貴様など私の敵にすらならん。精々が駆除の対象よ」

 

 怒りと自説をぶつけられても全くペースを変えようとしないライダーに、流石に苛立ったのかセイバーの口調に怒りが混じり始める。あわや再びライダーを交えての戦闘再開―――と言った所で、第三者の声が響き渡った。

 

「その通り。自惚れも大概にしろ。雑種共」

 

 その言葉と共に黄金の輝きが半壊した倉庫街を照らす。

 奇跡的に生き残っていたポールの上に現れたその黄金の光は、人の形になってポールの上に直立した。

 突如として現れた第四のサーヴァントに対して、その場にいたサーヴァント達が警戒と好奇の眼差しを送る。

 その場の注目を一心に浴びながらも、その新たに現れた黄金の甲冑を身につけたサーヴァントは、尊大な眼差しで彼らを見下ろした。

 

「我を差し置いて王を名乗る不埒者どころか、神を自称するうつけまで湧くとはな。この時代は己の身をわきまえぬ愚か者が多すぎる」

 

 そのサーヴァントはなんとも派手なサーヴァントだった。黄金の甲冑を着こみ、輝くような金髪を立てている。そして何よりもその態度。天上天下唯我独尊と言わんばかりのその態度は豪快なライダーやナルシズムなセイバーとはまた違う傲慢さを有していた。

 そしてその姿は誰もが知っていた。遠坂の魔術師が喚び出した黄金のアーチャーである。彼がアサシンを無数の宝具で串刺しにしたのはマスターなら皆知っていることである。

 自分とはまた別の方向で偉そうな新たなサーヴァントの突然の出現を見て、ライダーは興を削がれたのか、どこか毒気の抜かれたようにとりあえず反論した。

 

「そんなこと言われても余は誰もが知る征服王イスカンダルにして、アレキサンダー大王なわけで、不埒者と言われても困るんだが」

 

「たわけ。この世で王を名乗れるのは天上天下に置いて我ただ一人。他のものは王を詐称する有象無象の雑種にすぎんわ」

 

 その余りの態度の大きさにむしろ面白さを感じたようで、ライダーは呆れながらもどこか楽しそうにした。

 

「いやはや。余も大概だと思っておったが、貴様もまたなかなかの傍若無人ぶりよな。だが、そこまで大言を吐くからには、当然名乗りぐらいはあげれるのであろうな?」

 

「我に名を聞くのか?我の名など雑種なら知っていて当然、知らねばそれだけで死に値する愚かさよ。全く度し難い時代になったものだ。この世界は愚か者に甘すぎる」

 

 その言葉に返したのはライダーではなくセイバーだった。

 

「愚か者が多いというのは全くの同感だ。もっともこの時代での最大の愚か者は、神と正義の何たるかも知らない成金趣味の間抜けのようだが」

 

 なぜか彼はわざわざ舞空術でゆっくりと上空に登りながら、黄金のサーヴァントに先のお返しとばかりに嘲りの言葉を吐く。なぜ上空に登るのか? それは恐らく視線の高さで負けているのが気に入らないのだろう。このセイバーはこういう性格なのだ。

 とは言え、この言葉は傲慢故に煽り耐性が低そうなアーチャーには覿面だった。ましては相手は高度的な意味で、自分より上の高みへと至りつつあるのだ。

 ビキビキとこめかみに血管を浮かばせながら、アーチャーはセイバーに怒りの視線を向ける。

 

「道化が……。我に無礼な言葉を吐いただけでは飽きたらず、常に地を見下ろすべき我を見上げさせるとは、我の寛容にも限度があるぞ」

 

「神である私が上に立ち、王風情の貴様が地を這うのは必然。人は真実をつかれると常に貴様のように怒り狂う。何故か? それは愚かだからだ。そしてその性質は決して変わることはない。貴様が王を名乗ろうと、私から見れば同じ害虫には変わりない。虫けらの王は所詮虫けらに過ぎないのだ」

 

 突如として始まった傲慢の固まりとナルシズムの固まりの対決。しかしこの状況に慌てているのはセイバーのマスターとライダーのマスターだけで、ライダーは楽しげに、勝負に水を差されたランサーは少々不満気に2人のやりとりを見守っている。ここでアーチャーが激昂してセイバーに仕掛ければ、2人からすればそれはそれで好都合なのだ。

 どのみち罵倒合戦の勝敗は分かりきっている。

 いくら怒りや罵倒をぶつけてもナルシストゆえに罵倒が届かないセイバーと、傲岸不遜な王ゆえに舐めた態度を許さないアーチャーでは勝負にならない。途中でアーチャーが切れて暴発するのは明らかだった。

 

「貴様が神を騙るだと? よりにもよってあの無能どもをか? 妄想をするのは構わんがせめて有意義な方向にしたらどうだ」

 

「その通り。神は無能だった。だからこそ、この正義の化身たる私が神々の愚行を償わさせて、新たなる理想郷を創るのだ。そしてそこには貴様らのような無能の居場所もない。今のうちにせいぜいこの世を満喫していくがいい。」

 

「よくほざいた。その大口の対価は貴様の死を持って償わせることにしよう。塵のように引き裂かれて命乞いの悲鳴を上げろ……!」

 

 噛み合っているようで噛み合っていない会話の結果、予想通りとうとうアーチャーのほうが先に我慢の限界に達したようで、アーチャーの背後の空間が揺らめいて無数の宝具の切っ先が現れる。アサシンをボロ屑のように引き裂いた宝具の一斉射撃だ。余りにも非常識なその光景にマスター達は慄き、サーヴァント達はその能力を見極めようと目を凝らす。

 そして宝具に狙われた当のセイバーは、顔に張り付いた嘲りの笑みをなくすことなく悠然と腕を組んで構えている。

 

「せめて断末魔の叫びで我を興じさせよ、雑種―――!」

 

 王の一斉射撃の号令と共に背後の空間から数十もの宝具が展開し、砲弾の如き勢いで射出される。それに対してセイバーのやったことは笑いながら腕を一振りすることだけだった。

 ただの腕の一振り。だがその一振りでセイバーの手から無数の光弾が射出され、迫り来る宝具の群れを全て叩き落としたのだ。光弾と宝具が激突して両者の中間の空間で次々と爆発が巻き起こる。連続的に巻き起こる爆発は粉塵を巻き上げ、辺り一帯の視界を奪った。

 そしてそれは当然アーチャーも例外ではない。

 

「おのれっ!小癪な真似を――」

 

 煙にまみれて顔が汚れるのを良しとせず、反射的にアーチャーは腕を上げた。それが彼にとって幸運だった。なぜなら次の瞬間に煙に紛れて高速で接近したセイバーが、アーチャーの首目掛けてギロチンじみた廻し蹴りを叩き込んでいたからだ。

 咄嗟に上げた腕がガードになってアーチャーは首を蹴り飛ばされることはなかった。代わりにガードごと吹き飛ばされて、ポールの上から叩き落とされただけですんだ。

 もっともアーチャー本人がこの程度で済んだと喜ぶわけはない。

 

 地面に叩き落とされたアーチャーは怒り狂うわけでもなく、無言で―――そう本当に無言でゆっくりと起き上がった。

 そして顔を上げてセイバーを見上げる。圧倒的な無表情で。

 その無表情から放たれる凄まじい殺意に反応したのは、むしろ周りにいたマスター達だ。人外の殺意にあてられて、ライダーのマスターに至っては腰を抜かして戦車の中に落ちてしまった。 

 常に相手を見下しているセイバーですら眉をひそめ、反射的に構えるほどの殺気だった。

 

「雑種、貴様は我が処する」

 

 簡潔にそう言うとアーチャーの背後の空間が揺らぎ、アーチャーはそこに手を突っ込んだ。今から引き出されるのはアーチャーの最強の武装。その場にいる全員がそれを本能で感じ取った。

 もっとも当のセイバーはまるでワクワクするかのように楽しげな笑みを浮かべている。

 

「面白い。つまらん虫どもの王かと思いきや、なかなか楽しませてくれる。貴様は私の餌としてピッタリの相手のようだ」

 

「空間ごと消し飛ばされて、まだそのような寝言をほざけるなら褒めてやろう」

 

「試してみるといい。できるものなら」

 

「言われずとも―――ガッ!?」

 

 突然歪んだ空間から武器を取り出そうとしていたアーチャーの動きがピタリと止まる。

 そして苛立しげに虚空へ向かうと猛り狂った。

 

「令呪と自分に免じてこの場は下がれだと!? 随分と大きく出たな時臣! ―――おのれ。仕方あるまい」

 

 どうやら彼のマスターから令呪で呼びだしがかかったようだ。

 令呪の効果で頭が冷えたのかアーチャーは冷静さを取り戻した様子で、セイバーに向かって吐き捨てた。

 

「今のうちに己の首に別れを告げておけ。次に会った時が貴様の最後だ」

 

「その捨て台詞、三日は覚えておいてやろう。私が忘れん内にさっさと来ることだな」

 

 最後まで罵倒しあって、アーチャーは姿を消した。

 そしてその様子を物陰から見ていたマスターが1人。

 

「……出遅れた……」

 

 途方に暮れた様子で間桐雁夜は呻いた。怨敵、遠坂時臣のサーヴァントが現れた時はすぐにでもバーサーカーをけしかけようとしたが、彼がバーサーカーを差し向けるよりも早く別のサーヴァントと舌戦になった挙句、敗北して逃げ帰るなど彼の予想の範囲外だったのだ。

 

「……まあ、いいか。一応時臣のみっともないところが見れてスカッとしたし……帰ろうか、バーサーカー?」

 

 集まったサーヴァント達に特に何も思うところのないバーサーカーは、返答代わりに唸り声を上げた。

 




 ゴクウブラックは中身超キモいのに、あんなにかっこよく見えるのはやっぱ野沢さんのお陰。
 逆にザマスは中の人のお陰で更に気持ち悪くなってて声優ってすごい。

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