ゴクウブラックが第四次聖杯戦争に喚ばれてみた (タイトル命名 ゴワス様)   作:dayz

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絡んでくるやつらにトレイン行為してみた(低評価3 ランサー×1 ウェイバー×1 ライダー×1)

 冬木市の住宅街付近にある下水施設。

 人の尊厳を陵辱し、神への背徳の祭壇となったこの場所は、キャスターが自分と己のマスターの為に作った人工の地獄。

 ここにはこの地獄の主たるキャスターとそのマスター。そして彼らに消費される哀れな生贄しかいないはずだった。……つい先刻までは。

 キャスターが突然現れた侵入者に目を向いて叫ぶ。

 

「貴様……セイバー! なぜここに!?」

 

「これは面白いことを言う。お前が私を呼んだのだろう。……神罰を与えて欲しいと」

 

 キャスターの魔力を辿り、瞬間移動で現れた黒い道着を着た黒髪黒目の男―――セイバーは、そう言ってキャスターをあざ笑う。最も彼は本当の事情を説明する気はなかった。本来はランサーのほうを探していたのだが、彼らよりも先にキャスターの魔力を探知したためにこちらに来ただけだということも。

 

 セイバーは一言でキャスターの疑問を切り捨てると下水施設に広がる惨状に目を向ける。その目に宿るのは怒りではなく、哀れみと嘲りだ。

 

「貴様の演説は聞かせてもらったぞ、キャスター。……本当に度し難いな、人間というものは。まさかこんな乱痴気騒ぎが神への直訴になると思っていたとは。人の無知と愚かさの極み、ここにありと言った所か」

 

 そのセイバーの言葉にキャスターは落ち着きを取り戻したのか、先程よりも冷静になって問いただしてきた。

 

「まさか……貴様は本当に神だとほざくつもりか!?」

 

「如何にも。私は銀河と宇宙を統べし神。かつて界王であり界王神に到達したもの。貴様の言う、この地の神以上の神格を持つ絶対神だ」

 

「……ならば! なぜ貴様は生前の私を裁かなかった! あらゆる悪徳を成し遂げた私を裁きもせず、神の為に戦った聖処女を救いもしなかった! 答えて見せなさい! 神であるならば!」

 

「愚か者。人間風情が神の意図を想像し、その行動に口を挟む。それ自体が大罪と知れ」

 

 冷え冷えとした答えが熱したキャスターの思考を一気に冷やす。

 そんなキャスターの様子を知って知らずか、セイバーは肩をすくめて言葉を続けた。

 

「だが特別に神としての視点から答えを教えてやる。そうだな……私以外の神々ならば、貴様ら人間の事をいちいちつぶさに観察しているほど暇ではない。そう答えるだろうな。

 神というものはな、お前達が思っているよりも遥かに人間に対して無関心なのだ。或いは観察しても決して手を出さない。

 アクアリウムの中で多少生態系の変化が起きても、致命的な事にならない限りは手を出さないだろう?それと同じことだ。宇宙や星というものは神にとっての水槽に過ぎないのだ。お前は巨大な水槽の中の小魚や虫けら一匹一匹にいちいち気を配るというのか?」

 

 淡々と語られる神の考えにキャスターは怯えるように後ずさった。

 

「では……私の悪行が放置されていたのも……」

 

「この星の神はお前の悪行とやらを見ていたかもしれん。もしかしたら苦々しく思っていたかもしれん。だが手を出さなかったということは、つまりどうでもいい、その程度の些末事でしかなかったのだろう」

 

「それでは……我が聖処女が聞いた神の声は……」

 

「さあな。ただの余興だったのか……或いは、神の声自体がその女の単なる妄想だったのかもしれんぞ?」

 

「嘘だっ!!!」

 

 余りにも突き放した神の言葉にとうとうキャスターが激発した。

 

「そのような無関心なだけの凡愚が神であるはずがない! 神とはすべからく偉大で崇高であり……それ故に無慈悲な存在なのだ!」

 

 それはかつて誰よりも神を信じた男の魂の叫びだった。

 怒り狂ったキャスターは懐から自らの宝具たる魔本を取り出し、戦闘態勢に入る。眼前の神を詐称する男を滅する為に。

 しかしそれを止めたのは彼の隣にいた龍之介だった。

 

「ちょ、ちょっと待った! あんた本当に神様なの!? だとしたら聞きたいことがあるんだけど!」

 

 キャスターにつられて戦闘態勢に入っていたセイバーは、視線だけそちらに向けると続きを促した。

 

「言ってみろ。冥土の土産に答えてやらんでもない」

 

「あ、ありがと。じゃあ一つだけ。神は人間を愛しているのかい?」

 

 質問を許された龍之介は、かねてからの疑問を神と名乗るこの男に尋ねることにした。彼としては驚きと愛に満ちたこの世界は、神も自分達と同じように愛し、楽しんでいるのではないのかと思っていたからだ。

 だがその疑問が投げかけられると同時にセイバーの雰囲気が変わった。

 怒っているのか、哀れんでいるのかどちらともつかない表情になる。

 

「……それは神によって変わるな。確かに神々の中には過度に人間に入れ込む愚か者もいる。だが大半は生態系の維持に必要な一種族として大事にしているだけだ。個人個人に注目するほど気にしてはいない。

 あくまで宇宙のバランスを崩さないかどうか観察し、必要とあらば間引く。それが一般的な神々の視点だ」

 

「え~。なんかそれがっかりだなぁ。……でもその言い方だと、アンタはその一般的な神々とは違うみたいだけど?」

 

 予想以上に無関心な言葉が返ってきて、龍之介は幻想が壊された気分になった。だが彼にはそんな感傷に浸る暇は与えられなかった。龍之介の最後の言葉によってセイバーが劇的な変化を起こしたからだ。

 今まで冷笑的だったセイバーの雰囲気が一変し、薄暗い下水道を激烈なまでの殺意が塗りつぶす。そこで龍之介はセイバーの地雷を踏んだ事に気がついた。

 

「その通りだ人間よ。そして喜ぶがいいキャスター。私はな、他の神々と違って貴様ら愚かな人間共を星を汚すだけの価値の無い、唾棄すべき存在だと思っている。

 お前達人間は暇があれば同族同士で殺し合い、搾取し、己の愚かさを上書きしていく。この醜悪な空間がその証だ。

 キャスターよ。お前は神に罰せられることを望んでいたな? 光栄に思え。貴様にはこの絶対神ザマス自らが神罰を下してやろう!」

 

 そう言い切るとセイバーは全身から黒い魔力炎を発生させた。凄まじい突風と炎が狭い地下に吹き荒れ、死に損なっていた哀れな芸術品達を薙ぎ払っていく。

 

「ほざけ! 貴様が真に神だというのなら! 今! この場で! このジル・ド・レがジャンヌの無念を晴らし、神を地に貶めてくれるぅぅぅぅ!」

 

 叫ぶやいなやキャスターは今まで蓄えた膨大な魔力を全て己の宝具に注ぎ込む。

 次の瞬間、魔本より大質量の肉塊が発生し、地下空間を崩落させた。

 

 

 ◆    ◆

 

 

「深山町の住宅街に全長数十メートルの怪物が現れただと!?」

 

 深夜に突然かかってきた電話から告げられた報告に言峰璃正は頭を抱えた。

 現地からの報告では冬木市を流れる川の付近にあった下水施設から、巨大な肉塊のような怪異が現れて、住宅地に向かい暴虐の限りを尽くしているという。

 そのような怪物を使役出来る存在は、恐らくキャスターしかいまい。ようやく先日キャスター狩りの告知を各マスターに伝えたというのに先手を打たれた形になった。

 

 しかも現れた場所も悪い。人口密集地ということもあって怪物は現在進行形で住民を食らって膨れ上がっているということだ。

 

「……これは時臣君のアーチャーに動いてもらわねばならんな」

 

 言峰璃正は遠坂家への連絡手段である魔道具を使用する準備を始めた。これほど派手に暴れられては隠蔽どころではない。迅速にあの怪異を仕留めなければならない。

 しかも遠坂家もまた怪物が暴れている住宅地からさほど離れていない。放置すれば遠坂家は物理的に潰されることになるため、土地の管理者としても遠坂時臣個人としても他人事ではないのだ。

 あのアーチャーを持ってすれば巨大なだけの怪物など物の数ではない。

 問題があるとすれば―――戦いの後、冬木市が残っているかどうかと、例え被害を最小限に抑えることが出来たとしてもどうやってそれを隠蔽するかだ。

 言峰璃正はこの戦争中に自分は過労死するのではないだろうかと思い始めた。

 

 

 ◆    ◆

 

 

 キャスターが喚び出した巨大海魔による惨状は、当然他のマスター達にも知ることとなっていた。

 住宅地の中を進み、人々を食らいながら更に膨れ上がっていく醜悪な肉塊。

 神秘の隠蔽どころの問題ではない。これを片付けねば聖杯戦争そのものが台無しになるのは明白だった。

 更にこのキャスターを討伐すれば討伐者には令呪が与えられるという。そんなわけでほぼすべてのサーヴァントが海魔の付近に集結しつつあった。

 

 一番最初に到着したのは「神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)」なるチャリオットを持つライダーとそのマスターであった。

 彼らは真っ先に触手をまき散らし、手当たり次第に家ごと人々を捕食している巨大な海魔と、腕からエネルギーブレードを出して迫る触手を切り飛ばしながら空を駆けるセイバーを見て顔色を変えた。

 

「なんかえらいことになってるんですけど……」

 

 如何にウェイバーが未熟な魔術師見習いといえど、この事態を放置すれば聖杯戦争そのものが瓦解するのは理解できる。

 今は深夜なのとあの巨大海魔が自分の周辺に濃度の高い霧を発生させているため、冬木の行政も市民たちもなにが起こっているのか完全に把握しきれていないだろうが、朝になれば全てが露見する。朝までに冬木市が残っていればの話だが。

 

「これはまた……。あのキャスターもとんでもない隠し球を持っていたもんだな。しかしセイバーはありゃ、戦う気があるのか?」

 

 ライダーの危惧する通り、セイバーは空を駆け触手を次々と腕の光剣で切り落としているものの、積極的に攻撃に移ろうとしていない。挑発するように触手の射程範囲ギリギリを飛び回るその姿は、まるで―――。

 

「奴め。あのデカブツを誘導しているな。あの先は―――アーチャーめの根城か!」

 

 ライダーはセイバーの行動の意図を見抜いた。セイバーはまともな思考も持たないであろうあの巨獣を誘導して、自分の敵対者にぶつけようというのだ。

 

「セイバーもキャスターも放置しておくとろくな事にならんな。とりあえず我らもあれを食い止めるぞ!」

 

 

「ならば俺も行こう」

 

 突然響いた涼やかな美声。ふと下を見やると近くの家の屋根の上に、二振りの魔槍を持った美丈夫が佇んでいた。ランサーのサーヴァントだ。

 

「流石にこの状況で聖杯戦争を続けられるとはこちらも思っていない。あの怪物を始末するために我らも一時的に手を組む必要があるだろう。マスターの許可も降りている。我が宝具ならば、あの海魔を喚び出し現世に固定している術式を一撃で破壊できる。ただしそれには奴の本体を引きずり出さねばならないが」

 

「ふーむ。まあ余と、気に食わんがあのセイバー、そして後からやってくるであろうアーチャーがいれば、あの肉塊に穴を開けることぐらい出来なくもないか。ではランサーよ。貴様には我らが好機をつくる故、そこに止めの一撃を頼みたい」

 

「了解した。我が槍にかけて奴を仕留めてみせよう」

 

「うむ、任せた!では行くぞゼウスの子らよ!お前達の力見せてみよ!」

 

 そう叫ぶとライダーは戦車を牽引する神牛に鞭をくれて、一気に海魔目掛けて突撃を開始する。ライダーの雄叫びと雄牛の嘶きと、ついでに心の準備ができていなかったウェイバーの悲鳴が連続して響き渡った。

 それを見届けたランサーは槍を投擲するのに適したポイントへと移動を始める。

 別のサーヴァントと手を組むなど、彼のマスターはいい顔をしないであろうが、あのような悪辣な怪物は騎士の誇りにかけて一刻も早く殲滅しなければならない。奴を一分一秒でも生かせばそれだけ大勢の犠牲者が増えていくのだから。

 

「AAa――AAAAALaLaLaLaLaLaie!」

 

 ライダーの咆哮と共に宝具『神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)』が雷光と共に空を疾走し、逃げ惑う住民たちを襲わんとしていた触手の群れが纏めて消し飛んだ。

 そこで巨大海魔はセイバー以外にも自分の邪魔をする存在に気がついたのか、その肉塊に着いた目玉がギョロリと動きライダーが駆る戦車を捕捉した。

 次々と迫り来る触手を戦車の雷光で吹き飛ばしながら、ライダーは空中に浮遊するセイバーの近くに戦車を寄せて声をかけた。

 

「よう、セイバー! 派手にやっとるな! 余も混ぜてもらおうか!」

 

 それに対するセイバーの返答はライダーの予想の埒外にあるものだった。

 彼は獲物が罠に引っかかったと言わんばかりの禍々しい笑みを浮かべると、人差し指と中指を額に当てて、こういったのだ。

 

「なあに。気にするな。此処から先は貴様一人で存分に楽しむがいい」

 

 その言葉と同時にセイバーの姿が、文字通りその場から掻き消える。

 後に残されたのは呆気にとられたライダーとそのマスター。そして彼が駆るチャリオットのみである。戦車を引く神牛二頭がどこか悲しげにブモーと鳴いた。

 数瞬後、事態を把握したライダーが頭を掻き、ウェイバーが悲鳴をあげた。

 

「オイオイ、やりおったわ、あやつ」

 

「え? 嘘だろ、あいつ……!? 僕達にこのデカブツ押し付けて逃げやがったああああぁ!?」

 

 次の瞬間、大海魔の触手の大半が雪崩を打ってライダーの駆る戦車へと襲いかかった。

 

 

 ◆     ◆

 

 

 当然そのやりとりは海魔から離れた場所で宝具『破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)』を投擲する準備をしていたランサーも確認していた。

 

「おのれ、セイバー! この様な非常時に真っ先に逃げるなどと……! 奴には戦士の誇りというものはないのか?!」

 

 思わず歯噛みするが、これで状況は更に悪くなった。ライダーの宝具戦車『神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)』は確かに強力だが、あれほどの巨体相手では分が悪いし、なにより彼単独では周りの住民を襲う触手の群れを完全に抑えることもできないだろう。時代は違えど無辜の民がこれ以上あのような怪物の犠牲になる様を見るのは、高潔な騎士であるディルムッドには耐えられなかった。

 ランサーはここで狙撃ならぬ投擲のチャンスを待つつもりだったが、予定を変えるしかない。

 

「こうなっては仕方があるまい。俺も行って攻撃に加わるしか……」

 

「いいや。残念だが貴様はここで居残りだ、ランサー」

 

 突如として背後からかけられたその聞き覚えのある声にランサーは、脊髄に氷柱を突っ込まれた気分になった。

 反射的に前方に身を投げ出し、空中で身を捻って後ろへと向き直る。

 そこには予想通りの人物がいた。

 鍛え上げた肉体を黒い道着で包んだ、刃物のような鋭い目をした黒髪黒目の青年―――セイバーだ。

 海魔と戦うために現れたランサーの魔力を感じ取り、瞬間移動で現れたのだろう。

 セイバーは笑いながらランサーに傷を付けられた右腕を掲げた。

 

「ずっとお前を探していたぞランサー。そしてこの時を待ちわびていた。この私に身の程知らずにも傷を付けた貴様に神罰を与える時をな」

 

「馬鹿な……! 状況を考えろセイバー! 今は俺達が争っている場合か! あの怪異を放置すればこの街は終わりだぞ!」

 

「それで?」

 

 余りにもあっさりとしたセイバーの返事にランサーは言葉を失った。

 

「虫けら同士がいくら食い合おうとこの私の知ったことではない。命乞いをするならもう少しマシなセリフを考えたらどうだ?」

 

「……どうやら貴様を戦士として見ていたこの俺が間違っていたようだ。貴様はキャスター以上に生かしておいてはこの世の為にならぬ! ここで死ね! セイバー!」

 

「身の程知らずが! 消え失せろ!」

 

 深夜の住宅地で海魔の咆哮と神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)の雷音をBGMにして、再びランサーとセイバーが激突した。

 

 

 ◆    ◆

 

 

 海魔をそっちのけにして戦闘を始めたランサーとセイバーの姿は当然ライダーにも見えていた。が、見えていたからといって海魔の攻撃が激しく仲裁どころか文句を言いに行くことすらできない。

 いや、これは最初からセイバーの奸計と見るべきだったのだ。キャスターにあの大海魔を喚ばせ、町中で暴れさせることによって、全てのサーヴァントを集結させる。

 そして大海魔の対処に手一杯なところを狙い、瞬間移動を使って各個撃破するつもりだったのだ。

 

「奴め……。予想以上に頭が切れる。しかもここまで悪辣とはな」

 

 実際ライダーは大海魔に完全に拘束されて動けない。あれほどの巨体相手では自分の奥の手を使っても攻め切れるか怪しい所だ。せめて後一騎、サーヴァントの援軍がいれば……と思ったその瞬間、彼の視界に豪華絢爛な黄金の船が入った。

 その船の上には黄金の玉座に腰掛ける黄金の王、即ちアーチャーと、その椅子の隣に顔を真っ青にしている貴族風の格好をした中年の男性魔術師がいる。アーチャーのマスターだろう。

 何にせよ僥倖である。あのアーチャーの火力ならこの肉塊の核になっているであろうキャスターを撃ちぬくこともできる。

 

 迫る触手を雷撃で打ち払いながら、ライダーはアーチャーに向かって叫んだ。

 

「ちょうどいい所に来た! アーチャーよ! 手を貸せい! 余一人では手が回らんのでな!」

 

 だがその援軍要請に対するアーチャーの反応は冷淡なものだった。

 彼は気怠げな顔をして鬱陶しそうに答えてくる。互いの距離はライダーが声を張り上げなければ届かないほど離れているのだが、そんな距離にも関わらず、不思議とアーチャーの声ははっきり戦車上のライダーとそのマスターに届いた。

 

「そのような汚物に我が出る道理などないわ。我の宝具を汚す気か?」

 

「おいおい! そんなこと言っとる場合か?! そもそも我らは同盟を結んだのだからここは一致団結して事に当たるのが道理であろうが!」

 

「同盟はあくまであの忌々しいセイバーに対してだ。その程度の肉塊に対して、我の力を求めるなど不敬にもほどがある。むしろ我と轡を並べたいと申すのなら、その程度の相手など貴様一人でどうにかしてみせろ」

 

 余りにも傲然にして一方的な通告にさしものライダーも言葉を失った。そしてそれ以上に色を失っているのがアーチャーの隣にいる彼のマスターだ。

 どうやら彼は自分のサーヴァントが他のサーヴァントと勝手に同盟を結んでいることをまだ知らされてなかったようで、泡を食ったような顔でアーチャーに話しかけている。

 

 ……が、すぐにアーチャーの冷たい一瞥で黙らせられる羽目になった。途方に暮れた哀れなアーチャーのマスターを遠目に見たウェイバーは、もしかしてライダーはサーヴァントとしてかなり優良物件なのかもしれない、と今更ながらに思うのであった。

 だが、今はそんな事を呑気に考えていられるときではない。未だに大海魔の攻撃は続いているのだ。

 ライダーは已む無しと言った感じで大きく息をつく。こうなっては自身の最終宝具を開帳するしかないと考えたのだ。もっともあのような大物の相手とは相性が悪いので仕留めきれるかどうか怪しいところだ。

 

 だが、そこでとうとうアーチャーのマスターが精神的な限界を迎えたのか、文字通り床に叩きつける勢いで頭を下げ、アーチャーに対して直訴の姿勢を見せた。ここからでは見えないが、もしかしたら泣いてるかもしれない。まあそれも仕方ないことだ。

 このまま海魔が進み続ければ、彼の拠点である遠坂邸が瓦礫の山になる。というか遠坂家はこの土地の管理者でもあるわけだから、この事態をおさめることができなければ、魔術協会からセカンドオーナーの地位を取り上げられるのは間違いない。

 余りにも哀れで必死なその姿にさしもののアーチャーも閉口したのか、面倒そうに黄金の船の機首を大海魔に向けたその時だった。

 

 直上から魔力を纏った無数のミサイルがアーチャーの駆る黄金の船に降り注いだのは。

 

 

 ◆    ◆

 

 

「ようやく見つけたぞ……! 時臣……!」

 

 大海魔が暴れる現場から遥か数キロは離れた雑居ビルの上から間桐雁夜は、怨敵である遠坂時臣のアーチャーが駆る黄金の船を視認していた。

 元々は彼は新都で敵の探索をしていたのだが、異様な魔力を察知して見晴らしのいい場所を求め、手近なビルの屋上に登ったのだ。

 しかしビルの屋上からは川向かいは一応見ることは出来たのだが、肝心の現場である住宅地は異様な濃霧に包まれており、蟲の使い魔を飛ばしても、距離がありすぎて結局何が起きているのかがわからなかった。

 今から住宅地に向かうにしても蟲に蝕まれ、運動能力が低下した間桐雁夜の肉体では最低でも十数分はかかる。

 どうしたものかと途方にくれていた時、濃霧の上に現れたのだ。黄金の船を駆る時臣のサーヴァントが。しかもその船にはあの遠坂時臣も同乗している。

 

 もしここで大海魔の発生させる濃霧がなく、今住宅地の中で何が行われているのかを間桐雁夜が知ることができれば、或いは時臣への憎悪を飲み込んでライダーや、場合によってはアーチャーと共同戦線を張ったかもしれない。

 だがそれをするには全てが遅すぎた。

 

 彼は殺意を持ってバーサーカーにアーチャーを殺せと命じ、バーサーカーは狂気に侵されながらもその卓越した戦闘者としての判断力で、アーチャーを倒すことのできる武器を探し出す。幸いにもそれはすぐに見つかった。何しろ彼らの上空をジェットエンジンの轟音を響かせて飛んでいたからだ。彼は霊体化してそれに向かうとその武器を乗っ取った。

 その武器の名前は哨戒任務中に冬木市の異変を察知し、様子を見に来た自衛隊の戦闘機、F-15Jと言った。

 

 バーサーカーはF-15Jに取り付くとその宝具『騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)』によって戦闘機に自身の魔力を流し込み、己の支配下に置いた。

 そして間髪入れず、事態が把握できていない僚機を置き去りにして機体を加速させると(この時点で戦闘機のパイロットは脊髄が折れて即死した)アーチャーの乗る黄金の船に向けて呪装兵装と化したミサイルを発射する。

 間桐雁夜が認識できたのはそこまでだった。余りにも派手にバーサーカーが行動し魔力を大量に食らったため、未だ実戦経験がなくサーヴァントの使役に慣れていない彼はそのままビルの上で意識を失った。

 だがバーサーカーは止まらない。彼の感覚はアーチャーが防御宝具を持って初撃のミサイルを迎撃したのを見抜いていた。バーサーカーは更に機体を加速させ今度は機銃による掃射を加えるべく、アーチャーの船に向かって距離を詰めていった。

 

 

 ◆     ◆

 

 

「はははっ、なかなか愉快な祭りになっているようではないか! ランサーよ! 貴様も存分に楽しめ!」

 

 ライダーと大海魔の激戦。バーサーカーに侵食されて宝具化したF-15戦闘機と、アーチャーの飛行宝具ヴィマーナの空中戦。

 それらを背景に空中から無数の光弾を発射しながら、セイバーは叫んだ。ランサーは咄嗟に跳躍して回避するもの、足場にしていた屋根がその下の家ごと吹き飛んで苦い顔をする。中の住民が避難していればいいのだが。

 

 セイバーの放った光弾が空中で炸裂して、ランサーの視界を一瞬塞ぐ。

 そして再び爆炎が晴れた後、セイバーの姿が消えていた。

 

「バカめ、うしろだっ!!」

 

 次の瞬間ランサーは背中に衝撃を受けて、十数メートルの距離を吹き飛ばされていた。

 それが背後から蹴りを受けたのだと理解したランサーは、別の住宅の屋根の屋上に受け身を取りながら着地しようとして―――その先に人差し指と中指を額に当てたセイバーが何の前触れもなく出現してその美貌を驚愕に歪めた。

 防御を取る暇もなく再び蹴り飛ばされて、また十数メートルの距離を飛ばされる。

 今度は槍を構えつつ着地し、同時に背後にも気を配るがセイバーは先にランサーを蹴り飛ばした場所から移動することもなく、気に障る笑みを浮かべながらこちらを見ていた。

 

 ランサーは改めて槍を構え直すと、セイバーは戦闘中に瞬間移動ができる事実を苦々しく認めた。距離が離れていても一瞬で詰めてくる。或いは一瞬で射程の外に逃げる。これではセイバーから一瞬たりとて目が離せない。

 

 実際ランサーはセイバーの猛攻に防戦一方を強いられている。

 セイバーはランサーの『必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)』を警戒しているのか、接近戦を挑むことなく、空からの射撃戦がメインで、たまに距離を詰めても瞬間移動を駆使した徹底したヒット・アンド・アウェイに徹してその影を捉えることができない。

 

 だが、ランサーの宝具は必滅の黄薔薇一つではない。あらゆる魔力効果を打ち消す赤の長槍、『破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)』もあるのだ。

 これはセイバーの発射する魔力の光弾に意外と有効で、光弾をこの槍で打ち払うことによって四散させることができる。

 

 しかし四散させるといっても刃が触れた瞬間、光弾を瞬間的に四散させることができるのみで、拡散した魔力の余波までは完全に無効化させることができず、ランサーは全身に飛び散った魔力弾の余波で無数の裂傷を追っていた。

 とはいえこの程度ならばマスターが健在ならば、彼のマスターの支援である回復魔術でどうにでもなる。問題はこちらから攻め入る隙がないということだ。

 なにしろ相手は常に空中にいる。如何にランサーが俊足を誇っても空に逃げられればどうにもならない。

 

 となると、後は槍を投擲するしかないのだが―――、戦士としての技量にも優れているセイバー相手にまともに槍を投げても、回避されることは目に見えている。

 そしてそれはセイバーの目論見でもあるのだろう。だがそれしかないのも事実だった。

 問題はどちらの槍を投げるかだ。

 破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)を投げれば、セイバーの魔力弾に対抗する術がなくなり、遠距離から圧殺される。

 逆に必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)を投げれば、厄介なものが無くなったと見たセイバーは嬉々として接近戦を仕掛けてくるだろう。

 

 だがそれはランサーにとって望む所、接近戦なら槍一本になろうが、こちらもそうやすやすと遅れを取るつもりはなし。

 投げる槍は決まった。戦術もだ。

 ランサーが空中にあるセイバーを睨みつけ、必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)を投擲しようとしたまさにその瞬間、彼の腕は必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)をセイバーにではなく自身の胸に突き刺していた。

 

「……ば、馬鹿な」

 

 余りの事にランサーはそれだけを言うのが精一杯だった。口から大量の血が溢れる。

 抵抗も意識をすることも出来ずに行われたこの一連の行為。これは間違いなく令呪によるものだ。

 霊核を自らの槍で打ち抜き、致命傷を負ったランサーはその場に膝を着いた。

 そこにセイバーが降りてきて、気取った仕草で拍手をしながら近づいてくる。

 

「どうだランサー。我がマスターの手並みは。少々お前のマスター達を探すのに手間取ったようだが、なかなか見事なものだろう?」

 

「き、貴様、我がマスターを……。」

 

「戦場に女など連れてくるべきではなかったな。お陰で随分と素直になってくれたそうだ。この私との戦いに桟敷席などないということを知れ」

 

 その言葉でディルムッドはこのセイバーのマスターがどんな手段を用いて、自らのマスターを罠に貶めたのか直感的に理解した。

 

「こ、この外道がぁ! 貴様、ソラウ様を人質にとったのか!」

 

 もはや呪詛と化したランサーの罵倒にセイバーは肩をすくめ、人差し指を自分のこめかみに当て笑いながら答えた。

 

「人質というのは少し違う。なぜならお前を始末した後、お前達のマスター共にも後を追ってもらうからな。あの世で仲良く騎士道ごっこでもするがいい。おっと、英霊であるお前は死んでもマスター共と同じあの世にはいけないかな?」

 

 余りにも辛辣で敗者を踏みにじるその言葉にランサーは―――栄えあるフィオナ騎士団員ディルムッドは血の涙を流しながら咆哮を上げた。

 

「貴様は……貴様らは、そんなにまでして聖杯が欲しいのか!? 大勢の弱者を巻き添えにし! 女を盾に取り! 騎士の誇りを踏みにじりって! お前は何一つ恥じ入ることはないというのか!? 赦さん! セイバー! お前の悪行……決して赦さんぞ! 例えこの身が散ろうとこのディルムッド・オディナの憎悪と怒りは決して消えはしない! 我がこの憤怒は聖杯への呪いとなって必ずやお前を―――!?」

 

 ディルムッドが言えたのはそこまでだった。瞬きの間にセイバーが距離を詰め、ディルムッドの顎を掴んでその顔を覗きこんでいたからだ。至近距離でセイバーと消滅しつつあるディルムッドの眼差しがぶつかり合う。本来なら最後の足掻きをする絶好の機会。にもかかわらずディルムッドは―――畏れた。

 そのセイバーの瞳のなんと昏いことか。なんと禍々しいことか。

 先ほどまで怒りと憎しみに茹だっていたディルムッドの頭が、一瞬にして冷えるほどの無限の闇がそこにあった。

 

「赦さん……だと? 愚か者め。それはこの私のセリフだ。この私の人間に対する怒りに比べれば、貴様如きの下らん怒りなど取るに足らん。薄汚い人間どもを抹殺するこの行為に何を恥じることがあるものか。……いいか、これは罰だ。

 ランサー……いやディルムッド・オディナよ。貴様は人間の身でありながら、この神である私に刃を向け、あまつさえ傷つけた。重罪人にはそれに見合った重い罰を受けてもらう。それが神である私の裁きだ。憎むがいい。嘆くがいい。貴様のその絶望が心地良いぞ。それが私の聖杯をより良い味に熟成させるのだ」

 

 余りにも圧倒的な憎悪と邪悪さを魅せつけるその邪神に対して、半ば呆けながらディルムッドはこう尋ねることしかできなかった。

 

「お前は……一体何者なのだ?」

 

 その問にセイバーは憎悪と歓喜に濡れた目を輝かせながら答えた。

 

「我が名はザマス。人間に失望し、神々に絶望し、全てに反旗を翻した神。この世の全ての人間を滅ぼす者。この世の全ての神々を滅ぼす者。地獄に堕ちても我が名を思い出し、悪夢に震えるがいい!」

 

 その言葉と共にディルムッドの顎を掴んでいたセイバーの掌から凄まじい魔力波が放たれ、ディルムッドを跡形もなく消し飛ばした。

 それがランサーの最後だった。

 

 ランサーを始末したセイバーは自身の右腕の具合を確かめる。

 必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)に付けられた傷の呪いは持ち主のランサーが消滅したことで消えている。後は持ち前の回復力とアイリスフィールの支援魔術で直に治るだろう。これならば両手を使うあの技も問題なく使用できる。

 

 気分をよくしたセイバーは念話をマスターである切嗣に繋げる。

 

「ご苦労だったな切嗣。ランサーは始末した。私の右腕も問題なく元に戻った。そちらはどうだ?」

 

『こちらもランサーのマスターは、婚約者ごと始末した。それよりも約束を守ってもらうぞ。ランサーとそのマスターを始末したら暴れているキャスターを始末するという約束をな』

 

「フフフ……随分とあのくだらん肉塊の事を気にかけているようだな? いや、気にかけているのはあの肉塊に食われている犠牲者のことか?お優しいことだ」

 

 そのセイバーの言葉に堪えられなくなったのか、念話の先の切嗣の語気が荒くなる。

 

『いい加減にしろ……! お前は自分の右腕が治りさえすれば、あの巨大な怪物も敵ではないと言っていたはずだ! まさかランサーを始末するために僕を騙したというのか!?』

 

「落ち着け、我がマスターよ。フフフ……鬱陶しい輩を片付けることができて、少々気持ちが高ぶっていただけだ。気に触ったなら謝罪しよう。では早速生ゴミの掃除をするか。マスター。今お前達は何処にいる?」

 

『そこから15kmほど離れた廃工場だが……? なぜそんなことを聞く?』

 

「なに。マスターを巻き込んでしまうわけにはいかないからな。それだけ離れていれば充分だろう。それとお前からも少々魔力を頂くぞ。そして見せてやる。神の裁きの一撃を」

 

 そう言ってセイバーは切嗣との念話を打ち切ると、ゆっくりと空中へと上がっていった。

 そして高台にあった3階建ての家の屋根の上に着地すると半身を構え、両手を包み込むようにして左腰に構える。

 

「キャスターよ。貴様には予告通り、私自ら神罰をくれてやろう。この一撃を……死出の手向けとしろっ!」

 

 そして全身から爆発的な黒い魔力炎を噴出させた。

 

「か……」

 

 腰に構えた両手の中に黒い光が発生する。

 

「め……」

 

 セイバーを包む魔力炎が増幅されて、一気に膨れ上がっていく。

 

「は……」

 

 両手の中の黒い極光が小さな恒星のように光輝いた。

 

「め……」

 

 セイバーを中心に小規模の台風のような暴風が巻き起こり、彼が足場にしている屋根が吹き飛んでいく。

 そして彼は力を開放した。

 

「波ぁっ!!!!!!」

 

 気合の声と共に前方に突き出した両手から漆黒のエネルギー波が放出される。

 その黒く輝くエネルギーの固まりは進路上にある全ての家屋や建築物を消し飛ばし、一直線に大海魔へと迫っていった。

 

 

 

 ◆    ◆

 

 

 

「セイバーめ! ランサーを殺りおったか……!」

 

 セイバーが遠く離れた家の屋根の上で、ランサーを消滅させる瞬間を視界に入れたイスカンダルは苦々しく呻いた。

 これでまた一つこの巨大な怪物への対抗策がなくなった。

 もう一つ頼みのアーチャーは現代の飛行兵器に乗ったバーサーカーに絡まれ、手助けは出来そうにない。

 進退窮まる状態に陥ったライダーは、時間稼ぎにしかならないと悟りつつも、やむなく自身の最終宝具を展開しようとして―――全力でその場を離れた。

 両手を構え、凄まじい魔力をその手に集中させはじめたセイバーの行動を目撃したが故に。さしものの神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)もこの急激な方向転換には慣性を殺しきれなかったようで、ウェイバーが潰れたカエルのような悲鳴を上げる。

 

「不味いぞ、坊主! セイバーめが何かやりおる! 一旦逃げるぞ!」

 

「逃げる前に言えよ、そういうの! 舌噛んだぞ!」

 

「舌だけですむなら安いものよ! 噛み切らんようにしっかり口を閉じておけ!」

 

 そんなやりとりをしながらライダーはさらに戦車を加速させていく。

 ライダーだけではない。先ほどまでバーサーカーと空中戦を繰り広げていたアーチャーの黄金の船も、狂犬のようにアーチャーを追い掛け回していたバーサーカーすらも、戦闘機のエンジンを全開にして慌ててその場を離れていく。

 彼らも悟ったのだ。これから起きる惨状を。

 

 三騎のサーヴァントがその場を離れると同時。

 セイバーが放った特大の魔力砲撃が大海魔へと突き刺さった。

 

 瞬間。世界を黒い極光が満たした。

 

 数百、数千の落雷が同時に落ちたかのような轟音と、高空にある雲すら吹き飛ばす衝撃波が発生し、砲撃の着弾地点を中心に直径1km近くはありそうな巨大な黒い光のドームが現れて大海魔を飲み込んだ。大海魔は冬木市民達を喰らうことにより300メートルを越えるサイズにまで成長していたが、この光のドームの前には余りにも小さな存在だった。

 黒い光のドームは発生した後も更に膨れ上がり、飲み込んだものを消し飛ばしつつ―――風船のように炸裂した。

 炸裂したドームから弾け飛んだエネルギーが爆風となって、駄目押しとばかりに付近一帯を纏めて飲み込んでいく。

 まるでそれは津波のようだった。ただしそれは爆風と炎の津波であり、それに飲み込まれた人間は誰一人として助からないだろう。

 爆発圏から離脱したはずのサーヴァント達は勿論、状況についていけずに高空で冬木市を旋回していたもう一機のF-15戦闘機もその衝撃波に巻き込まれて、墜落してしまったほどだ。

 

 エネルギーの奔流が収まった後、冬木市の人々は全員がそれを見た。

 吹き飛んだ深山町の住宅地と、そしてその残骸の上に発生した、核兵器でも炸裂させたかのような積乱雲の如き巨大なきのこ雲を。

 それは冬木市全域に避難警報が流れる実に1時間前のことであった。




Q龍之介君どこいたの?
A旦那と一緒に肉の巣の中にいました。さり気なく令呪とか使ってがんばれがんばれって支援してた模様。まあ仲良く一緒に消し飛んだけど。

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