現れた新手に対応をしながら道を進む。
敵も学習したのか銃の射線上に出てこなくなってきた。
「このまま正門まで行くぞ! 突っ切れ! 走れ走れ走れっー!!」
フィリスの号令に全員がペースを上げて進む。
ふと路地裏の道から出てきた敵がフィリスに剣で不意打ちをかけるが剣士としては何枚も上手のフィリスには通じずあっけなく反撃を食らわせた。
「やるな、あの剣士。」
ブリーダーがフィリスの腕を称賛しつつ後方から迫る敵に対しMk18を撃ち続ける。
そしてついに正門までたどり着いた。
「止まれ! こんな夜更けに何をしている!」
「火急の用事だ! 小口でいいから開けてくれ!」
「通りたくば用件を言え!」
2人組の門番にフィリスが対応するがあまり融通が効かないせいか停滞してしまう。
「殺し屋に狙われてるんだ、私たちが外に出ないと街に被害が出る!」
「出鱈目を言うな! 貴様ら・・・」
門番が槍を向けようと構えを取ろうとした時、スタンプが屋根にいたボウガン使いをMk16PDWで撃ち殺すと屋根から地面に落下し死体は無残な形になった。
「・・・信じてもらえたか?」
「・・・」
門番が突然起きたことに対応できず呆気にとられているとブリーダーが出てきた。
「ラビット、こう伝えろ。 『通さねぇなら奴みたいにしてやる。』ってな。」
本来武力行使や脅迫などによる突破は現地民の敵愾心を刺激してしまうが仕方ないと判断した。
それを聞いた門番が青ざめ急いで小口の扉を開き全員を通した。
「やるわね・・・」
数人の部下を引き連れ閉ざされた小口を遠目で眺めていた。
「あの男たちが持っているのはなんなのでしょうか?」
「さぁ? これと同じようだけど、あっちのがよさそうねぇ。」
部下の質問に持っているボウガンをいじりながら答える。
「さぁ、後を追うわよ。」
部下を引き連れ正門へと向かって行く。
獲物を追い詰める為に。
「よし、敵はいない。」
周辺をクリアリングし安全を確保すると大急ぎで全員ハンヴィーに乗る。
ブリーダーが運転しスタンプがM2、そしてMk19擲弾銃にラビットがついた。
「出発だ、行け!行け!」
「なんだ、これはぁ!?」
「うわっ、押しつぶされるっ!」
「うぅ・・・ぅぇ」
ハンヴィーのエンジンをかけその場を離れる。
ブリーダーの運転する中初めて乗るセナやフィリスが車内で振り回されリーエが吐きそうになるなど破天荒なことがあった。
走り抜けるハンヴィーに襲いかかるものなどおらず順調に進む。
ブリーダーの宛に向かって。
門番を殺害し追跡を続けていたが走り去るハンヴィーには追いつけなかった。
「サシャさん。 どうしますか、馬で追いかけますか!?」
「慌てちゃダメよ。 それに・・・わかりやすく残してくれてるじゃない。」
その場にしゃがみこみハンヴィーの軌道を触れる。
土に非常にはっきりと残っておりしばらくは消えることがないだろう。
「山の中なら私の十八番ね・・・」
不気味な笑みを浮かべてボウガンの矢を装填した。
「すぐに本隊から強襲隊を編成しなさい。 100人くらい。」
「100!? 戦力が過剰すぎます!!」
「最近40だったかしら? 前線に送って帰ってこなかったのだけれど?」
「そ、それは・・・」
「つべこべ言わずに早く行きなさい。」
威圧するように声色を変えると「は、はい!!」と部下は情けない声を出して伝令に向かった。
「さぁ、楽しませてちょうだい・・・?」
現在は森の中を進んでいる。
夜の森は非常に視界が狭く、静かで、冷たいものだった。
「9-0、9-0。9-4、9-4。 連絡通話を行う。オーバー。」
車載されている遠距離無線機を使い周波数を合わせて連絡を取り始める。
先に相手を呼び出し、自分の呼び名、そして用件
『9-4、こちら9-0。 通信は良好だ。』
「今から帰投する。 20分後にハンヴィーで通る。 ラビットと一般市民4名も入る。一般市民1名が重体、搬送要求をする」
『了解。 無事帰ってこい。』
「それと、数時間以内に捜索隊か襲撃隊が来るかもしれない。 拠点を防衛線にしたい。」
『迎える準備をする。アウト。』
通信を終えて中の人員はだいぶ落ち着いてきていた。
寝る者、考え込む者、外をぼぅっと見ている者、それぞれが先ほどの戦闘で消耗してしまったせいだろう。
しばらく悪路を進んで行くとそこには取り残された砦があった。
セナの記憶ではここはかつて戦争があった場所であり砦や他の物が残置されているのだ。
しかしモンスターも多く危険なため近寄るものはいなかった。
しかしこの砦は不思議と明るい。
松明の火か光の魔法でも使っているのか魔道具の照明なのか、いずれにせよ人がいることが確かだった。
「門を開けてくれ! 門だ!」
門が開け放たれるとハンヴィーは中に入り門は閉まった。
松明で照らされている光景は異質でラビットたちと同じ斑点柄の服や茶色の目が錯覚を起こしそうな服を着ている男たちが慌ただしく荷物や銃を持って見張り台や屋上に登っている。
すると数人のが走ってこちらに近寄ってくる。
2人は担架を用意していた。
「ブリーダー! 屋上に武器弾薬、見張りを配置した!」
「よし、マーチェスはどこだ?」
「作戦室だ!」
「よし、黒髪の女が毒物で重体だ、見てやってくれ!」
搬送の準備も住んでいたのか担架に乗せられセラは奥の病棟まで連れていかれた。
「ラビット、其奴らも連れてマーチェスのところに行く! 付いて来い!」
大急ぎで全員がブリーダーについて行く。
忙しなく動く者とすれ違いざまに注目を浴びるがそれも気にせず作戦室へと走る。
木製の扉を開くとそこには髭を濃く生やす歴戦の戦士といった風格を持つ男とその数人の者が机上に広げられた地図を囲んでいた。
突然入って来たブリーダーたちに驚き全員がライフルを構えがブリーダーと分かるとすぐに銃を下ろした。
「マーチェス!」
「ブリーダー、スタンプ。 そして久しぶりだな、ラビット。 しかし敵が来る、再会の喜びは後だ。」
マーチェスと呼ばれた男は地図を指差して示す。
「お前たちも防衛戦に加わってもらう。 補充をして3人は直ぐA塔に行け。」
「サー。民間人はどうしますか?」
「今はどうにもできん。 ここで待機していろ。」
その節を伝えると異世界組の彼女たちは不満げにしていたが3人はすぐにそこを出た。
A等に着くと3人配置されておりいつでも来いと言わんばかりに構えいる。
「よぉ! 早かったな!」
「ラビット! 無事でよかったぜ!」
2、3言葉を交わしヘルメットにつけている暗視装置をマウントを使い使用位置にし銃を構える。
「お祭りが始まるぞ。」
「砦がドンパチ、賑やかになるぞ。」
目の前に広がるのは闇と静寂だった。