即死した男は脳を貫かれ後ろ向きに倒れた。
そして間髪入れずただたっていた男も女を盾にしていた者も倒した。
その速さは正確で神業とも取れる繊細かつ大胆な行動だった。
私は未だ体に手を掛けている男の手を振り払った。
そういえば私裸で・・・!
慌てて大事なところを隠すと何かが被せられた。
ラビットが近づきローブを脱ぎ私に投げ渡してくれた。
それはローブ、当然ラビットのだろう。ありがたく着させてもらう。
ローブを脱いだラビットの姿に、唖然とした。
上下が明るく茶色が基調で同じ柄のような服を着込み、皮鎧にしては素材が皮ではなさそうな、面積が小さく物入れのようなものが多く着いている。
そしてあの黒く、ゴツゴツした杖のようなものが紐でぶら下げられていた。
「ラビット・・・?」
ぼんやりと思い出す、この姿。初めて助けてもらったあの時の格好に近かった。
差し出された手を取り立とうとするけど体に力が入らない。
それを察したのかラビットはMk18を片手にセラを担ぎあげた。
「・・・私はタイアニア家長女のユミール・フォン・タイアニアと言います。 助けていただきありがとうございます。」
どうやら貴族の娘だったようだ。
埃を払いながら立ち上がるとラビットに対しお礼を言う。
「それにしても先ほどの攻撃、見事でした。 それはそうと、その忌子も助けるのですか?」
どうやら彼女は私を助けることに反対なのかしらね。
ラビットはちらりとユミールを見るがどうでもいいのか私を担いでそのまま移動を始めた。
「あ! お待ちになって!」
その後をユミールも付いて来た。
道中を警戒しながら進みハンヴィーまでたどり着いた。
もうほとんど敵はいないのか襲われなかった。
助手席にセラを乗せとりあえずといった形で後部座席にもユミールを乗せる。
「これは一体・・・!?」
「細かい説明はあとよ、早く乗って!」
バック走行で来た道に戻ると炎の弾がハンヴィーに被弾したが大した威力ではなかったのか被害は特になかった。
生き残り達が火の玉を放つ魔術師と弓矢でこちらを撃ってきていた。
弓矢はともかく魔法が装甲やエンジンに影響しないとは思えない。
M2はリモートコントロールが故障してしまい今は使えず悠長に直している場合ではない。
一度車を止め矢に当たらぬように車両後部についているMk19を使い砦を攻撃し始める。
40mm×53のグレネード弾が容赦なく敵を襲う。
破片効果と爆風で死傷させ、すぐにその場を離れた。
「なんだったのだ、あれは・・・」
どうにか生き残った魔術師が去ってゆくハンヴィーを呆然と眺めていた。
雇われの身でいつも彼ら傭兵たちと行動してとある貴族に言われた通り仕事をしていた。
もっともその仕事は合法なものではないが金払いもよく自身もあまり立場のないしがない魔術師だったためどうでもよかった。
今回生き残ったのは一重に運だろう。
もしラビットが砦内を捜索や迫撃をすればおそらく彼は生き残ってはいなかったからだ。
生き残っている数名を集めてその場を逃げるように去った。
ハンヴィーを走らせ元の位置に着くとラビットが降り、助手席と後部座席の扉を開けると2人は降りた。
ハンヴィーに偽装をし背景に偽装する。
どうやらここからは歩くつもりらしい。
「なんなのですか・・・この乗り物は」
ブツブツとユミールが言うがどこ吹く風とラビットは聞いてない。
私はただ先を歩くラビットについていくだけだった。
車内で服を受け取りそれに着替えるとローブは返した。
さっきの服は一体なんだったのかしら・・・
街に入る前に衛兵に止められるとユミールは衛兵たちが顔を知っていたのか保護された。
私とラビットは今は私の家へと向かう最中だ。
やっぱり彼は何も喋らない、ただ黙って隣を歩いていている
私の家に着いた
今はもう日も暮れ夕日が景色を照らす。
ラビットはもう行ってしまうわ、きっと私の知らないどこかへ
気がつけば私はラビットのローブを掴んで止めていた。
「ねぇ、ラビット。 今日は泊まって行って・・・?」