鉛色の巨人になったが、楽しんでいこうと思います! 作:バサカバサカ!
長い間エタってすいませんでした!!
待っている、のお声を頂いて書かなければ!と思いつつもこんなに遅くなってしまいました。
評価や感想ありがとうございます!
久し振りすぎて文章がめちゃくちゃかもしれませんが、楽しんでもらえると嬉しいです!
俺の朝は早い。
日が出る前に馬小屋の管理人さんが作ってくれたテントを出て、朝の準備を終わらせる。
特注した服から白い一枚の大きな布と赤い布を選んで身に纏う。
そして特注のベルトを腰に巻く。
そうすると何という事でしょう!
まるで古代ギリシャ人が出来上がったではないですか!?
まぁ、ヘラクレスって古代ギリシャ人だけどね!
あれ? ちがったっけ?
そんなどうでも良い事を考えつつ軽く柔軟体操。
起きてきた馬小屋の管理人さんに挨拶をして、仕事を手伝う。
これは俺の為に態々テントを作ってくれた管理人さんへの感謝の気持ちだ。
俺の身体能力なら、力仕事も簡単なもんだ。
「いつもすまんのぅ。ワシがした事なんてテントを用意したぐらいだっていうのに」
「■■■■」
言葉にならない声で相槌をうって、首を横に振る。
俺が寝転がっても大丈夫なくらい大きなテントなんて、そう簡単に用意できるはずがない。
この管理人のお爺ちゃんが馬小屋生活5日目に持ってきてくれたのだ。
お金があっても宿に寝泊まりできない俺からしたら、大恩あるお方だ。
恩には報いるのは当然の事である。
むしろ朝だけしか手伝いできないことが申し訳ない。
「しかし凄い筋肉じゃな。ワシもまだまだ現役じゃが、お主の体には負けるわ」
カッカッカと楽しそうに笑いながら上半身を開けさせて、俺と同じように藁束などを運び始める。
このお爺ちゃん、御年80歳なのに前世の俺よりも凄い体してるよ。
ヘラクレスほどの筋肉じゃないけど、シュッとしたスマートな筋肉だ。
きっと若い頃は細マッチョでさぞかしモテただろうな。
お爺さんとコミュニケーションを取って、俺は朝の仕事を終え、ギルドへと向かう。
ギルドに向かう頃には既に、町の人たちは活動を始めている。
魔王軍の脅威にさらされているはずの町は、どこまでも活気づいている。
そんな街を歩いていると、俺は必ず声を掛けられる。
「おーい! 巨人の兄ちゃん! ちょうど出来立ての飯があるぞ!! 食ってけよ!」
「お兄さん今日も元気そうだねぇ! 今日も一日頑張りなよ!」
「あ! 巨人のお兄ちゃんだ! おはよう!」
「おはよう! 巨人の兄ちゃん! 今日も肩車してくれよ!」
「巨人の兄さん! 今度一緒に討伐に行きませんか!?」
とまぁ、大人気である。
巨人と呼ばれているのは、俺が名前を言えないから見た目で呼び名が定着した。
「■■■■」
そんな彼らに笑みを浮かべて声を返しながらも不思議に思う。
ヘラクレスの外見ってかなり威圧感があって怖いと思うんだけど、冒険者や屋台のおっちゃん達に限らず、子供達にも何故か大人気です。
屋台のおっちゃんとかはお金を落としていくことを期待しているから、わかるのだが子供達はわからんとです。
まぁ、俺もこの町に馴染んできたと言う訳だ。
俺を手助けしてくれていたクリスは、今はダクネスと言う金髪の少女と一緒にクエストを受けている。
というか、元々そちらとクエストを受けていたが、神託を受けてしばらく俺を手助けしてくれていたらしい。
近い内に一緒にクエストに行こうと言う事になっているので、実に楽しみだ。
そんなことを考えつつ、クエストに誘ってくれた女の子にサムズアップして頷いておく。
弟の為に頑張っているお姉さんな彼女の力になれるなら、ヘラクレスだって喜んで協力してくれることだろう。
しかし、ノートとペンを用意できなかったことが本当に悔やまれる。
ヘラクレスが使えるサイズの筆記用具は流石に無理があったらしく、雑貨屋、道具屋、魔道店の店主に謝られてしまった。
まぁ、ヘラクレスが満足に使える筆記用具っていったら、テレビCMで見るような大きな紙と筆が必要になるからね、仕方ないです、うん。
ギルドについた俺は、依頼掲示板の前に座り込んで依頼を見る。
そうしていると、ルナと言う受付嬢さんが近づいてきた。
ルナさんは、クリスが居ない時には態々付き添ってくれるのだ。
俺が剥がそうとすると破れてしまう+掲示板を壊してしまう可能性があるから、こうして毎回付き添ってくれている彼女には感謝している。
「今日は土木工事の親方さんから指名依頼が来てますよ。強制ではないですけが、どうしますか?」
親方が俺を呼んでいるのか。
なら行くしかないだろう。
ルナさんに向けてグッとサムズアップすると、綺麗に笑ってくれた。
「では、親方さんの依頼を受けるんですね?」
こうして確認を取るのは、YES、NOで返答ができるからだ。
態々俺の為にこうして分かりやすくしてくれることが凄く嬉しいぜ!
その問いに俺は頷いて、依頼を受諾した。
「はい、ありがとうございます! では、集合場所はいつもの所だそうです。今日も頑張ってきてくださいね!」
「■■■」
勿論頑張ってきますとも!
といっても、俺は親方の指示に従ってモノを運んだり支えたりするだけだけどね。
それでも俺が一人いるだけで、百人力だと言ってくれるので、日々頑張っている。
喋れないからこういった所でコツコツ信頼を積み重ねていかないとね!
そんなこんなで現場へ。
「おう、今日も来てくれたんだな。巨人の兄ちゃん」
「■■■■■」
「早速で悪いが、俺の指示に従って動いてもらえるか」
「■■■■■■■」
いつものやり取りを終えて、俺は親方の指示に従って建材を運ぶ。
「おら、お前ら!! 巨人の兄ちゃんが来てくれたぞ!! 気張れよ!!」
「「「ウッス!」」」
本日の依頼が始まり、キリが良い所まで続くのだ!
仕事を終え、銭湯で汗を流す。
ここの爺さんがまた凄い優しくて、お湯だけ貰いに来ていた俺の為に態々改築してくれたのだ。
俺専用の大きな湯舟と洗い場があって本当に助かる!
やっぱり日本人だった俺としてはお湯に浸かりたいからね!
番台の爺さんには、かなり多めのお金を払ってる。
これ、掃除するのもお湯を貯めるのも大変だろうからね!
その分のお代は払わないといけないよね!
「いつもすまんのぅ、というかいつも貰いすぎというくらい貰っておるんじゃが」
「■■■■」
迷惑料だからね! 遠慮なく受け取ってください!
「まぁ、そんなお主じゃから皆、お主向けのサービスを始めておるからのう」
あ、そうなんだ?
でも俺としては大助かりなので、そういう所にはたくさんお金落とすよ!
もうアクセルから離れるつもりないからね!
この世界に転生して早数カ月、既にこの町に永住するつもりの俺であった!
家を建てるための資金はまだまだま足りないけどね!
俺が普通に生活できる家っていったら結構なお金が必要なのです、世知辛い。
床板にしたって普通の倍以上の厚さが必要だからね……うん……。
考えるとブルーになってきた。
まぁ、英雄ボディのおかげで家がなくたって平気なんですけどねー……でもやっぱり家に住みたいよね。
「あ、ようやく戻ってきた……ってなんでしょげてんのさ?」
「■■■■」
馬小屋のテントに戻ると、俺専用の羽毛ベットに埋もれているクリスがいた。
今日の帰りは早かったようだ。
なんでもないと首を横に振ってからクリスの隣に倒れ込む。
コカトリス10匹分の羽毛でできたベットが思いっきりたわんだ。
「わきゃぁ!?」
その反動でクリスがベットから軽く射出された。
ベットの外側へ落ちそうだったクリスを受け止めてベットに戻す。
「びっくりしたぁ……もぅ、気をつけてよね!」
ぺしぺしと俺を叩かくクリスに笑みをこぼす。
今日もクリスはかわいいな!
もちろん、わざとやりましたが何かわるいことしましたかね!?
そんなことを考えているとジトっとした目で見られた。
「君、反省してないね? というよりもわざとやったよね?」
なんということだ!? バレていただと!?
いや肯定しなければわからないはずだ! ここは笑って誤魔化そう!
そう考えた俺はとても、とても穏やかな笑みを浮かべた!
「……………………」
「穏やかに笑っても誤魔化せないからね!?」
「■■■■■■」
誤魔化せなかったので、素直に謝った。
あ、羽毛が少し飛び散ってる。
どうやら勢いが強すぎたみたいだ。
ベットから降りて、羽毛を詰め直す。
こういう時チャック式だったら楽なのになー。
「なんで君はこう、考えなしに悪戯するかなぁ……」
クリスがそんなことを言いながらベットの上で俺の作業を見ていた。
クリスが可愛いから仕方ないと思うんだ。
クリスの可愛い所が見れるなら多少の意地悪は仕方ないと思うんだ……あれ、これって好きな子を虐める小学生男子みたいじゃね?
いい年して何してんだ俺……行きついた思考に絶望して、四つん這いになって落ち込んだ。
「あ、あれ? どうしてそんなに落ち込んでるの? も、もしかして言いすぎた? ご、ごめんね? そんなにきにしなくてもいいから! 本気で嫌ってわけじゃないし、私もちょっと楽しんでるから! だからそんなに落ち込まないで!?」
……どうかわたしを放っておいてください……いや、むしろこんなバカな私を罰してください、エリス様、アクア様……
──エリス教が相手ならいいわ! むしろどんどんやりなさい!
「いえ、罰するほどのことじゃないですからね!? あっ」
なんかアクア様とエリス様の聞こえた気がする。
アクア様、それは流石に人としてどうかと思います。
エリス様、慰めてくれてありがとうございます……って、なんか近くから声が聞こえた気がする?
顔を上げると何やら焦った顔をしたクリスが。
「■■■?」
「な、なんです……んんっ! なんだい?」
んんー? なんかクリスの後ろにクリスに似た髪の長い女性が見える。
じっと見てると、何やら焦っているご様子。
もしかしてあれがエリス様なんだろうか?
なんか凄いクリスに似てる……はっ!? ま、まさかクリスは……!?
俺はあまりの驚きに目を見開いた。
震える手でクリスを指さすと、クリスは困ったように頬をかいた。
「これは、流石に誤魔化せないかな……?」
あははと困ったように笑うクリスの様子に、俺は自分の考えが間違いではないことを悟った。
まさか、クリスがそんな方だったとは思わなかった……
「──-■■■■──-」
「やっぱり気付いたみたいだね」
どうやらクリスは俺の心を読んだみたいだ。
クリスの背後に浮かんでいるエリス様も困ったように笑っている。
「バレちゃったものは仕方ないね……そうだよ、君が察した通り私は……」
エリス様……クリスは……女神エリスの巫女だったのか!!
「そう、私は女神エリスです……え?」
え?
「え!? ちょ、ちょっとまって!? 今、君なんて思った!? ちょっと私に意識を向けて祈ってみて!?」
え? エリス様じゃなくクリスに祈るの? っていうか、クリス、自分が女神エリスだって言わなかった?
「…………」
……なんかめっちゃ汗かいてるね、クリス?
「そ、そんなことないよ?」
なんで俺が考えてることがわかるんですかね。
「……は、ハメられた!?」
流石にここまでボロを出せば、馬鹿になった俺でも気づきますよ?
っていうか、思いっきり自分の正体言ってたじゃないですか、エリス様。