四葉のもう一人の後継者   作:fallere

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データ消えることがよくあるのは私の管理不足だろうか・・・?
投稿遅れてごめんなさい。サボってました。


追憶編 五節

深雪side

 

 

私の頭の中には一人の男の笑顔が残って離れない。

 

四葉昼夜、四葉家次期当主筆頭候補にして、私の従弟。

 

でも、従弟なのに私は昼夜の事をほとんど知らなかった。

 

当たり前だ。私は昼夜を四葉家次期当主候補としてしか見ていなかったから。

 

従弟としての昼夜を私はほとんど知らない。

 

さっき私を助けてくれたが、もしかしたら貸しを作って、

 

候補戦で優位に立つつもりかもしれない。

 

でも、私にはどうしてもそうは思えなかった。

 

その後に向けられた笑顔があまりにも優しかった。

 

演技だなんて思えない、純粋な優しさをそのまま形にしたような表情。

 

・・・って!これじゃあまるで私が昼夜の事を好きみたいじゃない⁉

 

「・・きねぇ、みゆきねぇ、深雪姉ぇ?」

 

「ひゃっ、ひゃい‼」

 

しまった、意識してるところに声かけられたせいで変な反応に・・・。

 

「?、大丈夫?深雪姉ぇ、ぼーっとしてたけど?」

 

「え、ええ、大丈夫です。少し考え事をしてただけです」

 

「そう、無理はしないでね」

 

あぁ、またこの笑顔。私はいままで昼夜の何を見てきたのだろう。

 

 

 

とりあえず注文は全部済んだ。伝統料理は初めて見るものばかりで新鮮だ。

 

「ねぇ、深雪姉ぇ」

 

「なんですか、昼夜?」

 

「できればでいいけどさ、その敬語辞めて欲しいんだけど、従姉弟なんだからさ」

 

「え?でも・・・」

 

いや、もしかしたらいい機会かもしれない。

 

言葉を直せば自然と昼夜を従弟として見れるようになれるかもしれない。

 

「わかったわ、昼夜。これでいい?」

 

「うん、やっと表情も柔らかくなったね」

 

え?私そんなに固い顔してた?

 

「ところでお前たち、俺が置いてけぼりなんだが」

 

「「⁉」」

 

お兄様の方を見ると少しあきれたような顔をしているが、

 

昼夜に何やら威嚇の感情が多分に含まれる視線を向けている気がする。

 

「あ、お兄様!これは別に無視してたわけじゃなくてですね・・・‼」

 

って、私はなんで昼夜を庇おうとしているの⁉

 

「そうそう!深雪姉ぇと話してたのは事実だけど決して無視してたわけでは・・・‼」

 

私たちがお兄様を何とか昼夜に向ける視線を止めさせようと努力しているところに、

 

「お客様、ご注文の品です」

 

丁度料理が運ばれてきて、気をそっちに向かせる事が出来た(かは分からない)。

 

「でもよかったの、昼夜?ここは全部払うことにしてもらって・・・?」

 

「気にしなくていいよ、お小遣いは嫌というほどもらってるから。

それに、深雪姉ぇのバックに財布は入ってなかったんでしょ」

 

そうだった。確かバックを用意したのも桜井さんだったはずなのだが。

 

桜井さんがこんな初歩的なミスをするなんて思ってもいなかった。

 

ということで、今私は一銭たりともお金を持っていない。

 

お兄様持っているが、最低限の分しか持っていないそうだ。

 

「まぁ、桜井さんも人だから失敗もするさ。

それに、俺がこの店を選んだんだから気にするなって」

 

そう言ってもらえると安心するのは何故だろう?

 

え、お兄様は、って?さっきからずっとご飯を食べてるわ。

 

「昼夜、ここはホントにお前のおごりなんだな?」

 

「え?だからそう言ってるじゃん」

 

「そうか、そう聞いて安心した」

 

不器用なお兄様だが、私は確かに(悪く)笑ったのを見た。

 

「すみません、追加お願いします。

ソーキそばとラフテー、ゴーヤチャンプルーに海ぶどうのお造り、それから・・・」

 

するとお兄様は次から次へと注文を始めた。

 

「え・・・えっと、達兄ぃ?どうしたのかな?

確か暴食は嫌いなんじゃなかったっけ・・・?」

 

「何を言っている?ここには育ち盛りの男が二人、これでも足りないんじゃないか?」

 

「え?俺って結構小食な・・・」

 

「そうかそうか、やっぱりデザートは必要だもんな。

そうだな・・・サーターアンダギーも追加しようか」

 

「え、話聞い・・・」

 

「あぁ、分かってる。一人前じゃ足りないよな。

今まで言ったやつ全部二人前でお願いします」

 

「かしこまりました」

 

店員は良客を逃がしてなるものかと昼夜の反論の前に厨房に戻った。

 

「あ・・・あぁ・・・た、達兄ぃ・・・」

 

「昼夜、店の中大声を出すのはマナー違反だぞ」

 

「・・・・・・(怒りの視線)」

 

「どうした?まだ足りないか?」

 

            ブルンブルン(全力で首を横に振る)

 

どうしてだろう?足りないか、がいくつもの意味があるのではと思ってしまう。

 

結局昼夜は、大量の食べ物を口に突っ込まれた挙句、多額の料金を請求された。

 

 

 

昼夜side

 

 

今は別荘に帰った。うぷッ、気持ち悪い。

 

これからクルージングなんて行きたくないが、達兄ぃに嫌でも来いと言われた。

 

ていうか自分で注文しておいてほとんど俺に擦り付けてきやがったし‼

 

うぷッ、だめだ。怒ろうと思うとサーターアンダギー出てきそう・・・。

 

どうでもいいことだが、俺は甘党だ。甘いものは別腹だと思っている。

 

けれど、あれだけ食べさせられた後でサーターアンダギー三人前は無理だ。

 

嫌でも笑顔で無理矢理入れられるし、それを見た深雪からは嫉妬の目線を向けられる。

 

あの後深雪が部屋に戻ると、『深雪は誰にも渡さん』って言われた。

 

俺が何をしたっていうんだ・・・。

 

「昼夜、じご・・・クルージングの時間だぞ」

 

「達兄ぃ、今明らかに地獄って言いかけたよね?」

 

「準備はできてるか?あまり深雪を待たせるな」

 

見事なまでにスルーされた。

 

「はぁ、もういいよ。すぐ行くから」

 

簡単に荷物の確認をしてからすぐに外に出た。

 

 

 

海の風は思ったより気持ちのいいものだ。

 

酔うかもと思っていたが、逆に気分が楽になった。

 

「昼夜、大丈夫か?何なら酔い止めを・・・」

 

「大丈夫、何時かの胃もたれは潮風で楽になったから」

 

「そうか・・・・・・チッ!」

 

「もう達兄ぃ隠す気もなく口撃してくるね‼」

 

一体何が達兄ぃ怒らせる原因になったのだろう?

 

「お兄様、昼夜はどうですか・・・って、元気そうね」

 

「お、深雪姉ぇ、潮風のおかげでね」

 

「あの、昼夜、私達誕生日も大して変わらないのだから『姉ぇ』もやめてくれない?」

 

「え?」

 

あんなに嫌ってたのに呼び捨てしていいの?

 

いや、きっと僕の事を従弟と思いたくないからだよね・・・。

 

あれだけ嫌ってたんだもん。きっとそうだ。

 

とは言え断ったら余計嫌われるだろうからな、ここは呑むのが正解だろう。

 

別に従姉弟じゃなくても仲を改善できればいいのだし。

 

何故かにらみを利かせてきた達兄ぃは無視することにした。

 

「ところで昼夜、気づいてるか?」

 

「ん、ああ、あれね。どうする?俺が沈める?」

 

「いや、念のため撃たせて正当防衛の形を取ろう」

 

「お兄様?昼夜?いったい何を・・・」

 

「深雪、俺の後ろにいるんだ」

 

「え、はい、お兄様」

 

丁度そこにこの船の船長から声が聞こえてきた。

 

「潜水艦から魚雷が発射されたぞ‼」

 

「達兄ぃ、種類は?」

 

「発砲魚雷だ、向こう沈めれば機能を失う」

 

「了解」

 

俺は二種類の魔法を発動する。マルチはともかくパラレルはまだ3つが限度だ。

 

一つ目は、魚雷の速度を奪う減速系統魔法『減速領域(ディーセライレーション・ゾーン)』。

 

そしても2つ目は、母を世界最強と謳わせる魔法『流星群』。

 

減速領域が魚雷を受け止める。

 

同時に展開される夜。流星のような光は海上から水を気化させ、

 

潜水艦の甲板も気化させ穴だらけにし、海に沈めた。

 

「ふう、こんなものか」

 

これは四葉昼夜の戦略級魔法師としての前哨戦だったのかもしれない。

 

 




追伸

昼夜の偽名を『白爪 中也(シラツメ ナカヤ)』に変更しました。
理由は同じ名前を使うのはどうかなと思ったからです。
今のところは関係ないので気にしないでください。

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