四葉のもう一人の後継者   作:fallere

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今日はあと一本出して終わります。
二月までは暫く出せません。少し待ってください。


九校戦編 三節

発足式も終わり、もうすぐ九校戦の舞台である富士演習場に向かう日が来る頃。

 

『やあ、白爪特尉』

 

「お久しぶりです、風間少佐。本日はどのような要件で?」

 

電話をかけてきた相手は一〇一旅団、独立魔装大隊隊長の風間さん。

 

『事務連絡はほとんどないんだが、君の家のセキュリティーは固すぎでは?

お陰で藤林君に手伝ってもらうまでだったんだが』

 

うちのセキュリティーをどう破ったかと思えば藤林少尉のハッキングか。

 

「うちは色々見られてまずいものがありますからね・・・家の関係で」

 

『我が隊としても君の詳細な情報が外に出るのは避けたいから理にはかなっている』

 

「で、態々ここまでしたということは何かしらの忠告でしょうか?」

 

『ああ、君たちの行く富士演習所だが、該当エリアに不穏な動きがある』

 

「九校戦絡みの厄介ごとですか・・・」

 

富士で不穏な動きなどこの時期は九校戦しか考えられない。

 

「国際犯罪シンジケートですか?」

 

『察しがいいな。こちらの調べでは香港系の『無頭竜(No Head Dragon)』と思われる』

 

「情報、ありがとうございます」

 

『富士では会えるかもしれん』

 

「楽しみにしています」

 

それで回線は途切れた。と、思ったら。

 

『昼夜、こんばんわ』

 

「お母様、こんばんわ」

 

誰かと思えばお母様か。こちらは一体何が飛んでくる。

 

『九校戦に出場するようね?』

 

「はい。で、実力はいかほど出してよろしいのですか?」

 

『そうね、最後の切り札と『常闇』さえ見せなければそれでいいわ』

 

それはほぼ自由に戦っていいという意味と同義なのだが。

 

『それから、富士にて国際犯罪シンジケートが動いているわ』

 

「無頭竜ですか?」

 

『四葉が掴んでいる限りはね。風間さんにでも教えてもらったかしら?』

 

「肯定です」

 

『・・・さて、言う事はこれくらいね』

 

ならばと俺はすぐに電話を切ろうとしたのだが・・・

 

『お話ししましょう、昼夜♡』

 

いう前にきれなかった。いった後じゃ復讐が怖くて夜も眠れない。

 

因みにお話しても夜はほとんど眠れないだろう。諦めよう。

 

結果、気づけば翌日の昼になっていた。葉山さんがお母様を〆てくれて助かった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

8/1、今日は会場に向かう日だ。その朝なのだが・・・。

 

「ナルはともかく何故ホロまで?」

 

俺のペット兼諜報員がまるで連れて行けというかのように窓の外にいる。

 

昨日のうちに今日からは来なくていいと言ったはずなのだが・・・。

 

「取り合えず餌やらないとな・・・」

 

焦るな、いつも通りの行動をすれば落ち着くものだ。

 

それから、用意していた大きめの鳥籠を用意する。準備はしておくものだ。

 

「ほい、入れ入れ」

 

この二羽はものすごく賢い。下手したらオウムみたいに話すんじゃないかって位に。

 

今回はちゃんと話を聞いてくれて、鳥籠の中に入ってくれた。

 

「水波、後からこいつら連れて行って・・・」

 

食事の時に言おうとしたら、二羽が鳴きだした。

 

「う~ん、朝と言い一体なんだ?」

 

「もしかしたら何か危険が近づいていたりするのでは?」

 

確かに動物は危機察知能力が非常に高いというが・・・。

 

「そう言えば四月、雫たちの危険を教えてくれたのはナルだったな」

 

他にも色々助けてもらったりしてくれている。

 

「しょうがない、俺が連れていくか」

 

「私は後から参りますので」

 

水波も、魔法の使い方を学ぶいい機会なので向こうで合流する予定だ。

 

水波は既にかなり魔法の使い方を習得しているのだが。

 

他にも澪さんも九校戦の常連なので向こうで会えるかもしれない。

 

「よし、じゃあ行ってくる」

 

食事も済ませ、準備はすでに済んでいる。俺は集合場所に向かった。

 

 

 

「やあ昼夜、おはよ・・・って、なんだい? その鳥籠は?」

 

始めに会ったのは鋼だった。

 

「俺のペット、こっちが烏のナルでこっちがミミズクのホロ」

 

最近知ったが、ホロはフクロウとの雑種だ。遺伝子まで見てないから分らなかった。

 

「普段は片方だけで頭にのせるんだが二羽じゃそうもいかない」

 

「その前にミミズクはともかく烏ってペットにするような動物だっけ?」

 

「意外と飼ってる人っているんだぞ。賢いからある程度命令聞くし」

 

鋼はかなり意外という顔をする。他のメンバーにもそう言うを顔をされた。

 

「私たちを助けてくれた時、昼夜を呼んでくれたのがそのナルってこと?」

 

雫の質問にナルは鳴いて返事する。

 

「賢いんだね」

 

「ナルもホロも俺の指示は結構こなしてくれるぞ・・・そうだな」

 

俺はナルを籠から出し、先ずはナルの足にカメラを取り付け指示を出す。

 

「行け!」

 

そう言うとナルは大通りの方に飛んでいき、暫くして戻ってきた。

 

足のカメラから、情報を確認する。そこには・・・

 

「達也と深雪が来てるな・・・よくやった、ナル」

 

撫でてやると結構喜ぶ。ていうか達也、うちのナルに睨みをいれるな。

 

「「「すごい・・・!」」」

 

ホロも同じ事が出来る・・・が、夜行性なので寝させておいてやろう。

 

やって来ると達也にナルについて尋ねられた。ちょっと見ただけじゃないか。

 

で、どうにも真由美さんが家の用事で急遽来るのが遅れているそうだ。

 

「で、達也が外で待機してるんだが・・・」

 

バス内は少し肌寒いくらいになっている。深雪の魔法が無意識に発動している。

 

え? いつもは俺が止めてるって? なんだか面倒くさいんだよ。

 

とは言えこれで選手が風邪をひいても困るし、俺も寒くなって来たし温めよう。

 

「深雪、達也は凄いよな。出欠確認なんて正直どうでもいい仕事を、

文句の一つも言わずにこなしてるんだからな。

こういうことを手を抜かず当たり前にあり遂げるのはそう簡単なことではないからな」

 

室内の寒冷化はやみ、俺は少し室内を温める。

 

「そうよね、流石お兄様よね」

 

どうでもいいけど、俺と達也の立場が逆だと吹雪が吹いていた気がする。

 

後ろから皆のグッジョブと言う声が聞こえていた。

 

小悪魔は集合時間の一時間半後にやってきた。

 

 

 

「えーと・・・あ、昼夜君の隣が空いてるわね」

 

小悪魔は前の席が空いてるのに俺のところまでやってきた。

 

「昼夜君、隣空いてるかs・・・って、何この臭い‼」

 

「え⁉ もしかして昨日返り血を落としきれて・・・!」

 

「「「「「「⁉」」」」」」

 

「・・・・・・冗談ですよ」

 

バス内の皆は何故か胸をなでおろす。

 

「昼夜君、ちょっと冗談に聞こえないわよ」

 

「失礼な、そう言う事した後はちゃんと魔法も使って血を落としますよ」

 

「そっちじゃないわよ・・・」

 

会長は俺の隣に座ろうとするが・・・

 

「そこはナルとホロの鳥籠置くのでダメです。

恐らく臭いもこの二匹かと、臭い分子シェルターはかけてますので」

 

そう言うと、小悪魔は前の席に戻っていった。

 

さて、出発して暫くすると山道に出る。

 

途中、服部さんを小悪魔が遊んだり、

五十里先輩の彼女、千代田さんが委員長を困らせたりとあったが他は特に問題はない。

 

強いて言うなら・・・

 

「四葉君、何か趣味はあるの?」「四葉君、九校戦が終わったら一緒に遊ばない?」

「司波さん、御趣味は何ですか?」「司波さん、会場でお茶しませんか?」

 

俺と深雪が主に一年、それに交じって二年三年の異性に話しかけられてるくらいだな。

 

それを見て委員長が俺たちを克人さんと委員長の間に隔離した。

 

そんな時・・・ナルとホロが俺を見て鳴きだした。ホロ至っては急に起きてだ。

 

俺は視界を広げた・・・。

 

「市原先輩ブレーキを! 克人さん前方に障壁! 深雪鎮火の準備をしておけ!」

 

俺の声にただ事じゃないじゃないと判断した三人は俺の指示を実行した。

 

前方から飛んできたのは宙返りして炎上している大型車だった。

 

「吹っ飛べ!」「消えろ!」「止まって!」

 

数人が大型車に対して魔法を発動する。

 

「チッ、邪魔な魔法は俺が!」

 

術式解体を使い、その魔法式を吹き飛ばす。

 

車の炎は消化され、前方の障壁に受け止められた。

 

「・・・ふぅ、一件落着だな。委員長、俺は車を見てきます」

 

「あ、ああ、わかった」

 

「昼夜、お供するわ」

 

「深雪はバスにいろ、追撃があってもまだ安全だ」

 

「ッ!・・・わかりました」

 

俺は大型車に向かう。達也も後続の作業車両から出てきた。

 

「達也、悪いがここを少し頼む」

 

「? わかった」

 

俺は崖を重力の向きを操作して走る。

 

そこにいたのは双眼鏡をもってフードを被った人間だった。

 

「请稍等! 我不想打架!」

 

「悪い、何言ってるかわからない」

 

俺はすぐさまこいつを『恒星(ファイクスド・スター)』で消し去った。

 

俺は崖から(無論、魔法を使って)飛び降りる。

 

「昼夜、殺ったか?」

 

「達也なら見ればわかるだろ? 大丈夫、死体も装備も残ってないよ」

 

「・・・ならいいが」

 

「んで、俺は直接視たが・・・魔法を使ってたな」

 

達也は頷く。魔法は最低限の想子で発動すれば兆候はほとんどない。

 

俺は想子光にも多感だが、このレベルは普通ほとんど気づかないだろう。

 

「使い捨てには惜し過ぎるね。俺なら毎日三食おやつ付きで雇ってやるのに・・・」

 

「どちらにせよたかが高校生の行事でここまでとなるとはな・・・」

 

この時、互いに達也(昼夜)のトラブル体質か・・・と思っていたそうだ。

 

「取り合えず車をどけたいけど・・・」

 

「警察が来るまでそう言う訳にはいかないだろうな・・・」

 

家の名前でごり押すのも考えたが、それはお母様の事を考えると癪なのでやめた。

 

俺たちはそれぞれバスに戻る。

 

「昼夜! 大丈夫⁉」

 

「深雪、俺はただ外に出てただけだぞ」

 

「そうじゃなくて・・・殺したでしょう?」

 

「こんな程度、問題の内には入らないって。俺を誰だと思ってるんだ?」

 

相手もこんなこと公にしたくないだろうしな。

 

「昼夜? 大丈夫だった?」

 

鋼にエイミィ、雫にほのか、他にも駿や委員長もやってきた。

 

「な~に、大したことないただの事故だよ」

 

どうにも俺の作り笑いの効果は多少あったらしく、少しは皆落ち着いた。

 

 

 

 




文章中に出てきた「请稍等! 我不想打架!」は中国語の簡体で、
意味は「待ってくれ、戦う気はない」と言った感じです。
昼夜君は孔子などは読めても真夜の事件があり中国語は話せません。
四葉がそう言う方針を取っています。語学は中国語なしです。
昼夜君、英語とかはほぼ何でもできます。

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